チームワーク
幸也達は早速依頼を受けにギルドでクエストボードを眺める。
「ジャイアントベアにしないか?この中なら一番強いだろ」
「ダメですよジャイアントベアは繁殖期になってから狩った方がお得です」
「ほらこれとかどうですか筋肉ザルの群れの討伐」
「ダメだ剛力と見分けがつかないだろ」
「正人、言っていいことと悪いことの区別はちゃんとつけてくださいよ」
「その言葉あなたたちにお返しします」
いまだに根に持っているらしい、ちょくちょく嫌味を言ってくる。
「デスワームにしましょうよチームワークを高めるのに一番適してるし」
「そうれでいいか」
狩るモンスターを決め受付に提出しようとしたその時ギルドの雰囲気が一つのパーティーの入場により変わる。
ギルド内は静寂に包まれ皆操られているかのように一斉に視線を向ける。
そこには八人、熟練冒険者のような風貌のエルフ一人、獣人二人(あれは狐の耳か触りたい、あっちは犬男だが、かわいい顔をしてる余裕でいけるな)リザードマン一人、人間四人のパーティーがいた。その中には正人と初めて会ったときにいた長髪男も混じっていた。
「なぁ正人あいつあの時にいた奴だよな?結構すごいパーティーだったのかあれ」
「そうだよあいつが入ってるパーティーはこの町一番のSランクパーティーだからな。あの背が高いエルフいるだろ、あの人はあの中でも別格でQランク相当の凄腕だ」
「だからあの時は幸也を取られたと思ったんだがな、幸也がおれたちのことを選んでくれてめっちゃ嬉しかったぞ」
その後は何事もなく依頼を受けることが出来た。
道中幸也達は陣形を考えていた。
「俺と恵梨香が後衛、幸也はもちろん前衛で剛力お前はどっちにするんだ中衛か前衛」
「ホントなら中衛のほうがいいんでしょうけど、幸也君には回復魔法が必要なさそうだから、いつも通り前衛に行きたいんですけど、ダメですかね?」
「ダメではないですけど私たち魔法使いは前衛で戦う物じゃないんです魔法を発動するのにも詠唱を唱えて体内のマナを陣の形にする必要があるんですよ」
「そんなの戦いながらできる人なんてごく一部、今は魔法を使わなくてよくても今後のためにも中衛がいいと思いますけど」
「でも前から前衛でやっていたわけですし大丈夫ですよ」
「いや剛力お前に前衛をやらせるわけにはいかない。そもそもお前自分のこと回復できないだろ。おれや恵梨香、幸也が大けがをしてもお前が何とかしてくれるが。お前に何かあった時どうすんだ?」
「でもそれだと何もできないじゃないか」
「いやお前には最重要の役割を与える、俺たちの護衛だ。俺と恵梨香は近距離の敵に対しては圧倒的に無力前までは何とかやってこれてたが正直何度か死にかけただからお前には俺らを守ってほしい、それにそのうち幸也みたいに仲間を増やす予定だから今は未来のために中衛をやってくれ」
「わかりました」
「よし陣形は決まったことだし後は役割だなまぁほぼ決まってるんだが」
「決まってるのか?」
「決まってるぞまず幸也お前は敵の注意を引き付けて時間を稼いでくれその間に俺が射殺す。で恵梨香は前と同じ俺の弓の強化と強化魔法での支援と攻撃魔法での援護。剛力はさっきも言ったように俺たちの護衛だ何か異論はあるか」
「ないです」
「なーい」
「俺もない」
(正人のことだから奇想天外なことでも言うのかと思ったがちゃんとしてるし大丈夫そうだな)
––––幸也達は砂漠にやって来た。嫌と言うほど照らしてくる太陽の暑い光、乾燥していて皮膚から水が吸えそうになるほど乾く肌と喉、広大が故に歩く足が少しずつ狭まっていく。
(剛力はともかく正人と恵梨香はなんであんなに余裕そうなんだ?)
幸也は今異世界に来てから初めて長時間に及ぶ肉体的な苦痛を感じていた。能力により痛みはすぐに消え去るため幸也は苦痛の耐性が少なく出遅れていく。
「幸也大丈夫か?少し休憩するか?」
「休憩はしなくていい、ただ苦しいだけだ、それよりお前らはなんで平気そうなんだ?」
「最初はおれもお前みたいだったぞ、ただ何年も冒険者やってたからないつの間にか平気になってたのかもな」
––十分ほど頑張って歩き続けたが幸也は我慢が出来なくなり魔法を発動して水を飲んだ。
からからで超再生がなかったら脱水症状で倒れている状態の幸也が水を口にした瞬間感動で涙が流れた。
今まで飲んできた飲み物の中で一番おいしく、初めて魔法を覚えてよかったと思うことが出来た。
生き返る感覚幸也は四度も経験していて感覚が全然違うことはわかっていたがこの言葉を言わずにはいられない。
「生き返るーー」
今まで喉が枯れしゃがれた声しか出ていなかったが潤った喉から出た声は大きくそしてじりじりした砂漠の空気の中で唯一透き通っていた。
その声を聴いたのか正人たちが顔を変えて人間とは思えない速度で駆け寄ってくる。
「お前水魔法が使えるなら早く言えよ、水筒の水ちびちび飲まなくていいじゃねぇかよ」
そういったとたんに水筒の中が空になるまで水を飲む。
「幸也、僕が運ぶので、水魔法を唱えるのに集中してください」
剛力は幸也を肩に担ぐ。幸也は何故かフィットする剛力の肩で運ばれウォーターサーバーの気分にる。
「あの幸也さん私にも水をください」
「自分で水出せないんのか?」
「私は戦いのためにマナを温存しなきゃいけないので魔法を使わないようにしてるんです。それに私の水魔法は下手すると人をえぐっちゃうので。」
さらっと怖いことを言う恵梨香を見て幸也は絶対怒らせないようにしようと心に誓ったのだった。
歩き続けようやく目的の場所に着く。
広大で景色が変わらない砂漠でどうやったら目的の場所とわかるのかと言うと赤い塔が危険と知らせるように立っているのだ。
それを見た幸也以外のものは気を引き締め警戒を強める、とうの幸也はようやく目的地に着き目的も忘れ一人達成感を感じていた。
「幸也お前は足止めをしてくれればいいヤバいと思ったらすぐこっちに来て剛力と交代しろ時間さえ稼いでくれればおれが消し飛ばしてやるから」
第一印象が頼りなさそうな正人の雰囲気の代わりように幸也に緊張が走る。幸也の緊張に気づいた正人は緊張を解こうと幸也の肩を叩く。
「そんな緊張するな。お前に見せてやるよ俺の力をな」
皆戦う体制に入る。
「恵梨香魔法で幸也の支援だ、それとデスワームのおびき寄せろ」
恵梨香は最初に耐久を上げる支援魔法を幸也にかける。
次にデスワームをおびき出すための魔法を使うため耳を塞がせ詠唱を唱えた。耳を塞いでいるその間も瞬きはせず一同周りを警戒する。
「我がマナよ力を振り絞れ」
「レフィタルノイズ」
離れた場所に空気が歪んで見えるほどの音が発生する。
幸也はその音に一番近く耳を塞いでいても体に響く黒板消しを爪でひっかいているような耐え難い音が響き渡る。
その音を聞いて一匹のデスワームが土の中から全身の半分を悶絶しながら出てくる。
それは十メートルに及ぶほどの巨体で直径二メートルの蛇のような体、顔全体が丸い口でその中の全部が大きく鋭い歯で埋め尽くされた気持ち悪い見た目であった。
正人と恵梨香はまだ音が発生しているにも関わらず耳を塞ぎながら詠唱を唱えて準備している。
幸也が動き出したのは音が止んだ頃だったそのころにはデスワームも音の原因が幸也達だと気づき地面をえぐり、食べながら近づいてくる。
デスワームが幸也達の近くに来た瞬間、上に昇り幸也を見下し丸のみにしようと弧を書くように突撃する。
その攻撃は今の幸也には全く通用しなかった。
幸也は受け止める気で剣を振るったが思いの他柔らかく剣がすんなりと通ってしまいデスワームの口が裂ける。
頭の方は動きを止めたが尻尾の方はまだ暴れていたので胴体と思われる真ん中を真っ二つに斬りさきデスワームを討伐した。
それを見ていた正人たちは詠唱をやめ唖然としながら幸也を見ている。
幸也はデスワームの尻尾を片手に正人たちの元に向かう。
「おい幸也お前何してんだよ」
「え俺何かやっちゃいました?」
「やっちゃてるよ!!、今のは俺の弓であんなでっかいモンスターを一瞬で倒せるなんてすごいってなる流れだったろ。なんで一人で倒しちゃうんだよ、てかなんであんなデカいモンスターに一人で勝てんだよ。おかしいだろお前の能力超再生だろ攻撃系じゃないじゃんなんで倒せちゃうんだよ」
「そうか?結構柔らかかったぞ」
「と申しておりますが剛力さんあんなことできますか?」
「無理ですね、体をへこますぐらいならできると思いますが、あんなバッサリと斬ることは不可能です」
「お前が強すぎんだよ俺たち何も活躍してないぞ」
「そんなことはない、もし恵梨香さんがいなくてデスワームが地中に潜ったままだったら俺の剣は届かないし、それにもし地中から攻撃されていたら俺は丸のみにされてただろう。それに剛力さんもあの音で傷ついた鼓膜を直していたし、正人も……正人も……………うん俺たちじゃなくて俺だけ活躍してないに訂正した方がいいぞ」
「なんだとテメー、もういいおれは怒ったからな次こそお前におれの全力射撃を見せてやる」
次はおれが倒すから絶対倒すなよ腕がもがれてもだ。どうせお前が強すぎて使い道のないチート能力なんだおれの一撃を見るために一生分使っとけ」
正人が怒ってしまっため依頼は達成しているのにも関わらずもう一匹倒すことになってしまった。一応幸也は反対してみたのだが今の正人は聞こえないふりをして強行突破してきたのだった。
「本当にやるんですか?」
「何があろうとやるから早く魔法で呼び出せ」
嫌な音がまた全身に響く。だがさっきとは違いデスワームが二匹同時に現れたのだ。
「幸也、ちゃんとひきつけろよ、絶対殺すんじゃねえぞ」
殺さないように引き付ける今の幸也には難しいことだ。
俊を殺し前より三倍もレベルが上がり力のコントロールが難しい。そんな状態の幸也がとる選択肢は自ずと一つしかない、そうそれは逃げることだ。
逃げてれば気も引けて傷も負わないおとりは全員逃げてればいいと思ったが現実はそううまくいかない。
砂の上では走りにくい、それに加えデスワームが移動するときに地面が揺れ砂は通り道に向かってなだれ込む。
そのせいで実力の半分も発揮できずに地中の中を進み幸也を狙っていたデスワームが下から幸也を丸のみにしようと下から突き出る。
間一髪幸也は歯の上に乗り高く打ち上げられるだけで済んだが下にもう一匹が口を開け幸也が落ちてくるのを待ち構えていた。
通常の戦闘でさえコントロールができない体を空中でコントロールをできるはずもなく幸也は何もできずただ落ちていく。
(俺あいつの口の中でずっと生活しなきゃいけないのか)
その時マッハ三の速さで矢がデスワーム二匹を射抜く。そして幸也は背中から落ち一瞬気を失うほどの痛みが襲った。
意識を取り戻し何が起こったのか辺りを見るとそこには矢が通ったと一目でわかる痕跡が残されていた。
地面はえぐれ肉眼では確認しきれない程続いている。一匹のデスワームは頭の先と地面に埋まっている下半身の部分だけが残り上半身は見当たらない。もう一匹は体内が地面のえぐれと同化していた。
自分の実力を見せつけ冷静になった正人は幸也に謝る
「すまんな幸也無理難題言っちまって」
「怪我はありませんか幸也さん?」
「正人もっとちゃんと謝んなさいよ」
「本当にすまん俺が悪かった、でもお前も俺に一線超えたこと言ったんだからこれでお相子な」
正人は手を差し伸べ幸也を起こす。
「俺、死にかけてるのにこれでお相子ってのはどうなんだよ(まぁ死んでも生き返るけど)」
「そんな細かいことは気にすんな仲間ってのは迷惑掛け合うもんだろそんなんじゃこれからやっていけないぜ」
幸也はこの場所が少し心地よいと思い始めた。
「あぁぁぁ、正人これ、どうするの、デスワームの尻尾が取れないじゃない一匹は土のなかだしもう一匹に関しては吹き飛ばしてなくなってるし。これじゃあ倒した意味ないじゃないあんたの責任だからね」
「でもお前だって強化魔法で威力挙げたしおれだけのせいじゃなくない」
「それはあんたが幸也さんの前でかっこ付けたかったからでしょ。今回はあんたが全部悪いんだから取り分は三等分にするから」
「そんな~~~~~~」
(このパーティーに入って本当に正解だったのだろうか?)
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