幻聴
幸也はいつも泊っている格安宿に戻っていた。メアリーのベッドで一晩ねてしまったせいか、いつも通りのはずの堅いベッドに違和感がある。寝転がり腕で目を覆い考える。
(月十万マナどうする日本円にして百万だぞ、今のままじゃ到底払えない。絶対払わなければ人の命がかかってる)
起き上がり窓を開け町を眺めるするとある男に目が行く。
(商人か、一発逆転を狙ってやってみるか、いやここの常識をいまだにわかってない俺がやっても成功するとは思えない)
「クソ、どうすればいいんだ」
壁に頭を打ち付ける、壁は少しへこみ幸也の頭にも一瞬たんこぶができる。
(俺の力を生かすには冒険者しかねのか)
ベッドに座り打ち付けた頭を確認した最中突如現代知識が浮かび上がる。
(臓器売買、そうだよ俺は不死身だ痛のを少し我慢すれば無限に稼げる。そうだよ簡単だったんだ同じなんだよ俺が知ってる異世界と、チートさえ持っていれば簡単に稼げて簡単に無双できるこの世界も同じなんだ)
思いっきりベッドを殴りつける中から羽毛が飛び出し宙に舞っている。
(馬鹿か俺は何のために俊を殺したんだ苦しみたくないから死にたくないからだろ。臓器売買で稼ぐんだったら俺は本当に人殺しになっちまうじゃんか)
一時間以上顔を落ちて来た羽毛に埋め涙を流し続けていた。
そもそも幸也が考えていた臓器売買はこの世界ではできない。犯罪だからというわけではない、そもそもこの世界には臓器を移植する技術も知識も発想もないだけなのだ。大抵の病気や怪我は聖職者が使える回復魔法で大抵は直せてしまう。そのため現代よりも人の体に関しての知識は乏しいのだ。
涙が止まり空を眺め続けていると現実を取り戻し焦り時計を見る。
(一日経過してんじゃねぇか、クソ馬鹿一秒も無駄にできない状況なのに)
すぐさま装備を整え迷いなくギルドに向かった。
「幸也さんよかった昨日は心配したんですよ」
メイリーが依頼を選んでいる幸也のもとに駆け寄り服を掴み上目遣いで話しかけてきた。
「こんな時間になんでいるんですか?!」
幸也が現実逃避をしている時間が長く築いたころには四時だった、今のギルドには一人の受付嬢と夜間に依頼を終え帰って来た冒険者パーティー、そして今の時間帯にいるはずがないメイリーがいる状態だ。
「幸也さんがギルドに向かうのが見えたからですよ。そもそも昨日はギルドに来ないし帰ったと思えば何も言わずに消えてるし少し非常識ですよ」
幸也は異世界に来て初めて人に怒られ少し嬉しく思った。
「すいません、置手紙でも残すべきでした」
照れくさそうに後ろ頭をこすりながら返答する。
「全くです、今度から気をつけてくださいね。今から受付嬢として話すことがあります少し待ててください幸也様には渡さなければいけないものがあるので」
メイリーは駆け足で受付に戻る。かすかだが他の受付嬢と話す声が聞こえてくる。
「メイどうしているのよ」
「早く起きただけです」
「答えになってないよ早く起きても来ないでしょ普通」
受付嬢と目が合う。
「あーそうゆことね」
にやり顔になる。
「そう言う事って何ですか」
メイリーは顔を赤らめ受付嬢から目をそらしている。
「もう照れちゃって」
メイリーをつつきながらチラチラこっちを見てくる
「もう邪魔しないでくださいよ」
準備を終え逃げるかのように幸也のほうに向かってくる。
だが幸也は後ずさる。メイリーは幸也が何かに怯えているように感じた。
「どうかしましたか?幸也様」
そんな心配そうに自分を見つめている顔を見て幸也は聞き間違いだと思う。幸也は受付嬢の話が俊を殺した話に聞こえていたのだ。
(何かの間違いかだよな……あんな話をしてた人が俺の心配をするわけない)
受付に付く。何故だかもう一方の受付嬢がこちらをにやつきながら見ている。
「こちら渡しそびれたグリフォン討伐の報酬です」
金色に輝く十五枚のお金が手渡される。
(十五万万マナ!!これなら一か月分は払えるぞ)
「本当なら五万マナだったんですがSランク冒険者の俊様がお亡くなりになられたのでQランクに近いSランクの依頼と見なし報奨金を追加いたしました」
報酬を受け取り心に余裕が生まれる。が慢心せず他の依頼を受ける。この報酬は幸也一人で手に入れたわけではない、俊の魔法と死があってこそ手に入れることができたのだ。まだ自らの力で月十万マナなど稼いだこともなく休む選択しなど今の幸也にはないのだ。
俊を殺したことにより上がったレベルは凄まじく幸也も自らの力を試してみたいと思っていた。Aランク巨大サソリの討伐。グリフォンの軒でBランクに上がった幸也が受けられるクエストの中で最強で最も高い敵だ。早速依頼を引き受け討伐に向かう。
町を歩くと幸也に同情の目が向けられる。Sランク冒険者山田 俊の死は町を騒がすほどの出来事だった。異世界生活の中でかなりの信頼を獲得していたのだろう町には俊の死を嘆くものばかりだ。その一部の悲しみは幸也に向かった。
「お前が死ねばよかったんだ」
すれ違いざまに男がに放った言葉それは幸也を狂わせた。
「俊様はいないのに何であいつはいるの」
「この町のためにもあいつのほうが死ねばよかったのよ」
「この町から出ていけ」
幸也を悪く言っている物はごく少数、だが幸也にはすべての人が自分を憎んでいると思えた。
耳を塞ぎ宿に逃げ帰る。だが耳を塞いでも声は聞こえて来た。
––––一週間経過しただろう。その間幸也は一度たりともギルドに顔を見せることはなかった。
食べては寝て食べては寝てを繰り返す。普通の状態ならこんな生活は耐えられないだろうが、今の幸也にはこの生活が心地よい。とは言え一度も外出せずに暮らすことは不可能であるそのづ度幸也は茶色く全身を包み込むことができるマントを身に着け誰から見ても幸也だとはわからぬ格好で外を出歩く。そうでもしなければ外に出られなくなってしまってたのだ。
食料が尽き人気がない朝早くに買い出しに向かう。フードを深くかぶり地面を頼りに歩く。下を向いて歩いているが人とはぶつからない幸也を不審者と勘違いしてか皆寄り付かないのだ。
三日分の食料を買い帰ろうとすると人にぶつかる。持っていた食料が散らばり転がっていく。
散らばった食料は気にせず外れてしまったフードを即座に被る。
「幸也さん?」
ぶつかった相手はメイリーだったのだ。メイリーは幸也が依頼をバックレて姿をくらましたその日からずっと仕事がない時間は幸也の捜索に充てていたのだ。
「よかった生きてたんですね」
ホッとする。
「ギルドに来てください幸也さん大事な話があります」
幸也の腕を引っ張りどこかに連れて行こうとする。
「俺は幸也じゃない」
フードが破けそうになるほど強く抑える。
だがメイリーは何も言わず幸也をギルドまで連れて行った。
––ギルドの個室に連れ込まれる。ふかふかのソフォーに座らせられる、その間も幸也は一切顔を出そうとはしなかった。
「この町から出て行くのはどうでしょうか」
幸也はメイリーの急な提案に唖然とする。
「幸也様はいまだ俊様の死を忘れることができてない。それが普通なんです私も好きな人が死んでしまったら一生忘れることなんてできない。でも今の幸也様を見てもあの方は喜びません、きっと前に進めと言うはずです。でも逃げてもいいんです、異世界にも逃げるが勝ちってことわざがあるんですから。勝てないなら逃げましょう最後に勝てればいいんですよ」
メイリーはかなり的外れなことを言っているが最善の選択であった。幸也のことを誰も知らないそんな場所に行きたいと幸也も思っていたからだ。
フードを取り顔を見せる。
「この町から出て一からやり直します俺のことを誰も知らない場所で」
「幸也様ならそういうと思ってました。二日後にレイブスに向かう荷馬車の行だけ護衛をしてもらいます報酬はレイブスで貰えるよう手続きしておきますので冒険者登録も兼ねて受け取ってください」
幸也は全て吹っ切れこの日フードを被らずに町を歩くことができた。
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