成長
––「メイリーさんこの依頼を受けます」
「ホブゴブリンですね」
幸也は初めて正式なBランクの依頼を受ける、ギルドでは自分よりランクの高い依頼を受けるにあたっての条件は存在しない。ランクが上がった瞬間からそれより一つ上のランクを受けることができてしまう。そのため自分の力を過信している冒険者がすぐランクを上げたいからと一つ上のランクに挑み帰ってこないものが多いのだ。
「幸也様でしたら大丈夫だと思いますがランクを上げる際は十分準備してから行ってくださいね」
「大丈夫ですよ、僕もうBランクのモンスターは倒してるんですから」
––幸也は新しい装備を眺めていた。
「どうしたんだそんな真剣に鎧なんか見つめて、それより代金払ってくれよ」
「あぁ、そうだったな」
五万マナを手渡す。
代金が払われると思ってなかった店主は茫然としている。
「ここで一番堅い鎧てどれなんだ?」
「一番堅い鎧か?お前さんのサイズに合うものだとこれだな」
見た目はあまり良いものとは言えない鎧が出てきた。
「これ本当に一番なのかよ、ほかにもっと良さそうなの飾ってんじゃねえか」
「嫌な今しがた四人組の冒険者が一つ買ってちまったんだよ。時間と金はかかるがオーダーメイドするか?」
「時間がかかるなら大丈夫だ」
「はぁマジか、初めてのBランクの依頼なのに」(痛いのは嫌なんだがな)
「別に大丈夫だぜ、お前さん鎧とか着た事ねえだろ。あんま慣れてないもん装備して逆に弱くなるケースもあるし軽めな装備のほうがいいと思うぞ」
––幸也の装備は一新された、はすねの部分がリザードの鱗で加工され堅くなっている靴、服はチェーンメールが中に編み込まれている少し重みがある物と変わった。
装備は整ったし次は薬草だな。
「すみません解毒草ありませんか?」
幸也の能力にはちょっとした穴がある、それは毒だ。ジャイアントクラブを生で食べた時、寄生虫ではなかったが軽い食中毒になった、軽いと言ってもこの世界の中での話で、地球の食虫毒とはくらべものにならないほどの苦しみが襲ったのだった。
「すみませんね今しがた来た冒険者の方たちが大量に注文していきまして、解毒草は三枚しかありません」
「そうですか、なら一枚で大丈夫です」
「はぁ、今日はついてない、俺を転移させた神様がやめろとでも言っているのか?まぁそんなことはないんだろうけど」
愚痴を言いながらゴブリンの巣を探す、普通のゴブリンならどこにでもいるのだがホブゴブリンは巣から出ずゴブリンたちが運んできた食べ物を食べるだけの生活をしている、いわゆる自宅警備員というやつだ。まぁ自宅警備員とは違い巣を守っているので一緒にするのはかわいそうかもしれない。
––ゴブリンの群れを見つけた。群れと言っても十人なのだが、あらかた食料調達に出向いているのだろう。ちょうどいいと言わんばかりに駆け寄り一人の頭を剣で真っ二つにする、奇襲され連携が崩れている隙に一人ずつ斬り殺していく。一人は刺され、もう一人は頭をたたき割られまた一人は胴体を真っ二つに斬られる。九人を殺し終え右耳を調達する、一人残したのは巣に逃げ帰るように仕向け場所を特定するためである。
逃がしたゴブリンが巣であろう洞窟に入ろうとした瞬間に刺し殺す。
ここがゴブリンの巣か。洞窟には生活感がある道具、それに鼻が曲がりそうなほどのゴブリンの悪臭が感じられる。それにしても何かがおかしい、とうのゴブリンたちが皆死んでいるのだ。耳が刈り取られていることからしてほかの冒険者にやられたのだろう。それでも幸也は足を止めず奥に進み続ける。
音が聞こえるまだ戦っているのか、幸也は急いで戦闘の場所に向かう、獲物の横取りそれは冒険者がしてはいけないことである、もちろん幸也はそんなことをするつもりはない。ただほかの冒険者が戦っている様子を見たかったのである。戦っているであろう広い空間を見つけ、覗き込む。
そこには足が折れ動けないでいる魔法使いと思われる女、それを介抱する男、一人剣で応戦している男
後ろから何かわからない魔法で支援しているであろう女がいた。
誰がどう見ても劣勢だ、(助けに行くしかないか)幸也は気乗りしない。人前での戦闘になるとダメージを負わずに戦闘をしなければならずそれがBランクのモンスターなら不可能と断言できる。(馬鹿、いらない見え張るより人の命のほうが大切に決まてる。さよなら俺TUEEEE生活)
ホブゴブリンが剣を叩き上げ戦っている男の手から離れ止めを刺そううと巨大なこん棒を振り下ろした最中、幸也が少年を跳ねのけ剣でこん棒をいなす。いなすことはできたが力負けしてしまい幸也の顔を少しかすめ皮膚が削り取られ、かなりグロテスクな見た目になっている。幸い冒険者達に見られる前に皮膚が生えてきてばれずに済んだ。
「こいつは俺が倒すお前らは逃げろ」
「ありがとうございます」
自分たちが足手まといになることが分かっているのだろう負傷した少女を抱き抱え皆洞窟から出ていく。
(こいつがホブゴブリンか思ってたより強そうな見た目でいらっしゃる)
幸也はデカいだけのデブ体系のゴブリンだと思っていたが目の前にいるのはボディービルの大会に出場していそうな屈強な肉体を持っているゴブリンであった。
残念ながら見た目だけの筋肉ではないらしい、こん棒で洞窟にひびが入るほどの攻撃をしてくる。幸い力任せで動きは遅く幸也でもよけることができる。
幸也は攻撃をせずマナを剣に貯めながらよけ続ける、しかしずっと避けられるはずもなく角に追い詰められてしまう。ホブゴブリンが力をため振り下ろす。避けるスペースがなく左手を叩きつけられる、痛みが襲うが歯を噛みしめ剣に刻まれている魔法を発動しゴブリンの腕を斬る。ゴブリンはこん棒を手放し斬られた腕を抑える。その隙を逃すはずもなく幸也はホブゴブリンの首を斬り落とした。
––幸也がギルドに戻り、受付に向かっている途中、声をかけられる。
「本当にありがとうございました。これは今日のお礼です受け取ってください」
今日助けた冒険者三人が金が入っているであろう袋を幸也に渡す。
「いらないよ、そんなことより怪我してた子はどうしてるんだ?」
「今病室にいます。一週間したら治るらしいので心配しなくても大丈夫です」
「ならよかった」
その後俺は助けた冒険者達と飯に行くことになった。助けられたから何か礼をしたいらしく。金を渡そうとしてくるので、飯をおごることで手を打った。
彼らはDランクになったばかりのパーティーらしく調子に乗ってゴブリンの巣の中まで入って行ってしまったらしい。ホブゴブリンに見つかったら逃げればいいと考えゴブリン狩りに夢中になっている中でホブゴブリンが突進し仲間の足を叩き折り逃げられなくなってしまったのだとか。
「やっぱり佐藤さんはすごいですねたった一人でホブゴブリンを倒しちゃうなんてなんレベルなんですか?」
酒が入り饒舌になっていく。もちろん幸也はまだ未成年なので酒は飲んでない。この世界では十八になれば飲めるが、幸也は現世の法律を律儀に守っている。
「ホブゴブリンを倒して十九レベルに上がったとこだよ」
賑やかだった場が静かになる。
「え、低すぎませんか」
「え」
幸也は唐突に悪口を言われ固まる。
「私たち全員二十レベル超えてますよ。異世界から来た人達ってみんなレベル上がるのが早いんじゃないんですか?」
「こんなもんだと思いますけど」
「山田の魔法使いはレベル上がるの早かったよな」
言われてみれば俊さんレベル二百超えてたな
「逆に聞きますけどそのレベルでどうやってホブゴブリンを倒したんですか?」
「剣でズバッと」
「嘘ですよ俺が斬った時かすり傷しかつけられなかったんですから」
「異世界からきた者達は強いスキルがあると聞いたことがあるがそれで倒したのではないのでしょうか?」
「どんなスキルなんですか!!」
「えっと、別にスキル関係なく、この剣だから斬ることができたんですよ」
腰に付けた剣を見せる。
「確かにこの剣なら斬ることができるでしょうね」
「ほら見てください、ライセンスにもスキルがないでしょう」
「本当ですね、ではただの実力とは、恐れ入りました」
「確かに紙一重で相手の攻撃をいなしてたもんな。技術がすごいんだろ」
「はは、そうですね」
何とか納得してもらえた。
その後かなり酔ったみたいで酒を飲んでない幸也がそれぞれ家に帰してあげた。
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