エレオノーレ(2)
この先の戦闘展開をどう表現したものか悩んでいたら期日を大幅に過ぎていた。いったいなにをいっているか(ry
取り合えず出来た分だけ投下します。加筆するか次のお話しとして投稿するかは書き上がった後で決めます。
アルフォンスはリンゼの側に膝を突いてどうするべきか考えていた。
(やってみると言ってはみたけど……)
彼の視線の先には手足をほぼ失い、胸の中身が見えているリンゼがいる。血を失い過ぎたのか恐怖に当てられたのか、恐らくは両方だろう。彼女の肌は褐色だが見慣れていない者でも分かるほどに全体的に肌色が蒼白で血の気が無い。
か細くだが緩やかに胸が上下している事から死んではいない。だがその胸の動きが無ければ死んでいると思われても仕方ないほどの重傷だ。
アルフォンスにとって未だに正体不明である、フードで顔を隠した女性が口移しで飲ませた薬は未だに効果が無い。
そもそもここまで重傷の人間を癒せる薬などあるのだろうかと思う。そんなものがあれば今頃世の中は死ぬ人間すらいないのではないかとも思う。
その証拠に傷が癒える気配は、不詳の女性が暗闇の奥へと消えてもない。即刻治癒の効果を出さねば赤子が母の腕の中で眠りに就くより早く息絶えるだろう。
野性味を帯びたその顔は、獣人の特性の一つと言われる豊かな感情のままころころと表情を変えるだろう。アルフォンスはリンゼと一度も話した事はないが、家を手伝って居た頃には獣人も多く訪れた。ほぼ全ての獣人に共通する鋭く切れた眦は冷酷さを感じさせるが相対すれば分かるように時々の感情によって柔らかく変わる。
耳を見ればそこは本来の人間の耳の形ではなく、垂れた猫耳のようなものがある。薄く開けられた口からは鋭利な牙が見え、仰向けになっている身体の下から肌と同じ毛色の尻尾がある。
今はないが手指があれば獣人が持つ武器の一つである鋭くも女性らしさを示す整えられた爪があるはずだ。
(猫の獣人、かな)
生家を手伝う内に鍛え上げられた獣人の知識がそう結論付けた。そうと分かったアルフォンスは気が少し楽になる。
(猫の獣人なら力はあまり強くないな)
猫の獣人は膂力より瞬発力に重きを置く種族だ。身体的な構造が短い距離を高速で移動する事に向いているためだ。
身体の使い方を熟知した者が本気で動いた時は残像が見えるほどだという。その速度は生半可な者では捉えきる事も出来ないとアルフォンスは聞いている。
だが死に掛けではそんな速度は出せないだろうし、残像が出せるほどの熟練者ならばこんなところで死に掛けてもいないだろう。
だがそれでも念の為に〝神術〟を使い、地精と風精にリンゼを抑えていてもらおうと思ったときにそれは来た。
それは風だった。
それは圧だった。
それは力だった。
「っあッ!?」
身体が浮いた。そう思ったときには既に岩の壁に叩き付けられていた。
特に考えることなく反射でリンゼの服を掴んで自分の胸元に抱き寄せた為、二人分の強烈な衝撃に息が詰まり、己の体内から何かヒビが入ったような音が聞こえる。
周囲に拳大の岩の破片が降り注ぎ、それがアルフォンス立ちを更に傷つけた。一際大きい物が彼の頭に当たり、何かが流れ出す熱い感触をこめかみに感じる。
咳き込む度に胸に鈍い痛みが走った。吐き出す呼気に血は混じっていないがあばらを痛めてしまったらしい。
「クッソ……なんだってんだよ……!」
アルフォンスとリンゼが吹き飛んだ謎の力は崩した壁を更に崩し、ここに訪れた者なら誰もが知る入り口の形に概ね戻っていた。
どうやらあの暗闇の内部で何かが起きたらしい。光精に頼んで明かりをそこに向ける。
そこに居た者にアルフォンスは驚愕した。それは見紛う事無い、彼が憧れ、想いを寄せる人物。
「エレオノーレ……さん?」
アルフォンスが微笑んだ姿しか見たことのない彼女が、戦士の顔でそこにいた。
次は不明だけど一週間は開かないと思われます。




