↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Sランク追放された修理師、物体の全盛期を蘇らせる『概念修復』で無自覚無双!瀕死の黒猫を直したら伝説の大魔女に、古剣からは最強の精霊が顕現「僕は職人の矜持を胸に、世界の歪みすらも修理する」】   作者: hatuhi stand
第3章:地下迷宮ゴーレムとルシフェールの呪い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/34

第25話 【再会】魔女の部屋で待っていたのは「ゴーレムのポチ」でした

 修理を終えたゴーレムに導かれ、ヨシトたちは、通路の奥へと進んで行く。

 ゴーレムが巨大な拳を石の扉に添え、無造作に押し開ける。


 重い石の軋む音が通路に響き渡り、やがて静寂の中に、その先の光景が姿を現した。

 そこには、眩いばかりの光が渦巻いていた。


 天井まで届く金貨の山、精緻な装飾が施された魔導武具、伝説上の獣の角。

 それこそ、小国の国家予算を数年分は賄えるであろう『国宝の山』が、乱雑に積み上げられている。

 空気そのものが、長年の沈黙と重みを帯びてどこか重い。


「凄い宝の山だ……これは、凄まじいな。国王が見れば気絶するかもしれないね」


 ヨシトがため息を漏らす。


 だが、案内役のゴーレムはそれらに目もくれず、宝の山のさらに奥、壁際にひっそりと佇む小さな木の扉へと向かう。

 その背中には、目的を知るもの特有の迷いのなさがあった。


「タカラ……イラナイ。ダイジ……ココ。ゴシュジン……ヘヤ……コチラ、デス」


 ゴーレムが指し示した扉の先は、あまりにも質素だった。

金銀の類は一切ない。あれほどの財宝が眠る部屋の奥にあるとは、到底思えないほどに。


 四畳半ほどの空間にあるのは、使い込まれた木の机と、一脚の椅子。

長い年月の痕跡が、その木目の深さに刻まれている。


 ヨシトは導かれるように机の引き出しに手をかけた。

職人の指先が、最奥に隠された小さな窪みを捉える。


「これ、何か仕掛けがあるようだよ。……ベル、ちょっと、こっちへ来て見てよ」


 ヨシトが隠しスイッチを押し込むと天板が僅かにスライドすると僅かな隙間があった。

 そしてその中から炎のように赤い石が現れたのだ。深い紅の光が薄暗い部屋にじわりと滲み出る。


「……??? この石……なんだか、すごく懐かしい感じがするわ……確か私の持ってた……『魔女の怒り』の石だっけ??」


 ベルが引き寄せられるように石に近づき、迷うことなく一口で飲み込んだ。


「ちょっ、ベル! 何を……!」


 ベルの全身から猛烈な熱気が溢れ出した。毛先が逆立ち、瞳が火炎の色へと染まる。

 床の埃が熱風に巻き上げられ、部屋の空気が一瞬で塗り替わった。


 彼女の喉奥から【火炎魔法】の炎の奔流が溢れ、周囲の空気を焼き焦がした。

 そして、力の覚醒と共にベルの『記憶の断片』が脳裏を駆け巡った。


 自分の傍らでいつも巨体を揺らし、不器用に寄り添っていた砂の下僕。

 あの温もりを、どれだけ忘れようとしても忘れられなかった、大きくて不器用な存在。


「……嘘。嘘でしょ。……アンタ、まさか……『ポチ』! ?」


 ベルの絶叫に近い声に、無機質なゴーレムが反応した。

 重厚な首をゆっくりと傾げ「……キュウ」と壊れたオルゴールのような掠れた音を漏らす。

 それだけで、ベルの胸の奥が決壊したのだ。


「思い出したわ……ポチ! ポチなのね! 何処にも行かないで、ここで、ずっと私を待ってたの!?」


 ベルは炎を纏ったまま、黒猫の自分よりも何倍も大きいゴーレムの元に駆け寄り、その巨体に、愛おしそうに頬を寄せる。


 石造りの肌の冷たさなど、今の彼女には関係なかった。だが、次の瞬間。

 ベルは不敵な笑みを浮かべ、キリッと姿勢を正した。


 涙の気配など、どこにも残っていない。


「……ふふん。ヨシト、シルバー、よーく見てなさい。どれだけの時が経とうと、この子の教育は完璧だってことをあなた達に見せてしてあげるわ!」


 ベルはポチを見上げ、短い前足で宙を指差す。


「ポチ! お座り!」


 ズゥゥゥン! と部屋全体が震えるような轟音と共に、巨大なゴーレムが大人しく腰を下ろした。

 衝撃で机の上の埃が舞い上がり、天井の石灰がパラリと降り注いだ。ヨシトは思わず顔を背ける。


「次は……お手!」


 ポチはキュルルと音を立て、巨大な拳を、ベルの目の前にそっと差し出した。

 そっと、という割には床がミシリと軋んだが。ベルはその拳の上に飛び乗り、ドヤ顔でヨシトを見下ろした。


「どう? これが私の可愛いペットよ。あんたたちも見習ったらどうかしら?」


「いや、見習えって言われても……。というか、ゴーレムの巨体でお手は部屋が壊れるからやめてよ」


 ヨシトは呆れたように溜め息をついた。背後ではシルバーが、伝説のゴーレムがペット芸に興じている姿を見て、難しい顔をして固まっている。

 何か言いたそうにしながら、言葉を見つけられずにいるようだった。


「うるさいわね、次は回れよ! ポチ、マワレ!」


 ゴゴゴゴ……と床を削る凄まじい音を立てて、ポチがその場で一回転した。

 狭い隠し部屋の壁がポチの肩に掠り、パラパラと石灰が落ちてくる。ヨシトは頭を抱えた。


「ベル、もういい、もう分かったから! ポチも、無理してベルに付き合わなくていいんだよ……」


 ヨシトが必死に制止するが、ベルは満足げに尻尾を振り、ポチの鼻先をポンポンと叩いた。

 その表情は、こんな時でなければ、と思わせるほど穏やかだった。


「いい子ね、ポチ。……さて、ポチの調子がいいことも分かったし、そろそろ本題に入るわ。この机、まだ他にも色々隠してあるのよ! 」


 奔放なベルに振り回されるヨシトであった……。



挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。