↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/33

第21話 【勅命】「また王宮へ?」僕に届いた、新たな国王からのお願い

 山頂の水源地から、再び修理したトロッコに揺られて下山したヨシトたちを待っていたのは、地鳴りのような大歓声だった。


 商都ゼムの入り口には、市長バルドルを筆頭に、数えきれないほどの市民が詰めかけていた。

 つい先ほどまで汚れた水しか出なかったはずの蛇口から溢れ出した、清廉な水が並々と注がれた杯が、あちこちで高く掲げられている。


「おお……! 戻られたか、ゼムの救世主ヨシト殿、そしてその御一行殿達よ!」


 ヨシトたちを待ち構えていたバルドルが、馬車から転げ落ちるような勢いで駆け寄ってきた。

 その顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになり、ヨシトの手をがっしりと掴んで離さない。


「見てくだされ、ヨシト殿! 美しい水が戻ったのです! 噴水からも、街中の水路からも、輝きを取り戻した水が流れて出ております!」


「あ、はは……ずいぶんと大袈裟で緊張するな。直ってよかったですね」


 ヨシトは困惑しながら、どうにかバルドルの拘束から逃れようと身をよじる。


 職人として、頼まれた仕事を完遂した自負はあるが、ここまで神のように崇められるのは、彼の控えめな性分では少しばかり気が引けたのだ。


 ヨシトの背後では、シルバーが鋭い視線で周囲を威圧し、不用意に近づこうとする市民たちを無言で牽制している。

 一方、肩の上のベルは、普段にはないほど上機嫌でゴロゴロと喉を鳴らしていた。


「当然の結果よ、市長。うちのヨシトが本気を出して、直らないものなんてこの世に存在しないんだから。さて……これだけの奇跡を見せつけたんだから、報酬の話でも聞かせてもらおうかしら」


「もちろんですとも、たっぷりお礼をさせて頂きます! ……しかしヨシト殿。実はお戻りになられたばかりで非常に心苦しいのですが、至急お伝えせねばならぬことがあるのです」


 バルドルが急に真剣な面持ちになり、申し訳なさそうに声を潜めた。


「皆様が山へ向かわれている間に、王宮から早馬で使者が参りました。……国王陛下より、ヨシト殿へ直々の召還状が届いております」


「えっ……王宮? 嫌だな、行きたくないかも……また、面倒な話なのかな?」


 ヨシトの脳裏に、少し前の忌まわしい記憶が蘇る。

 自分を都合の良い道具のように囲い込もうとした、あの強欲な権力者たちの顔。

 そして、それ以上に面倒だった宮廷魔導師たちの嫉妬の視線。


「やっとあそこから逃げ出して、自由になれたと思ったのに……。あの人達の欲にまみれて修理させられるのは御免だな……」


 ヨシトは本気でトロッコに引き返して、どこか遠くへ逃げ出したい衝動に駆られた。


「使者の話では、内容は極秘とのこと。ただ、陛下が直々に、一刻も早くヨシト殿にお願いしたい事があるとのことです。大変、切迫した様子でございましたので断り切れず……」


 バルドルの困り果てた顔を見て、ヨシトは星天の鍵の事を思い出した。

 あの伝説の鍵を直してしまった時点で、逃げ切れるはずもなかったのだ。


「……ベル、やっぱり僕、あそこには、向いてないと思うんだ。また変なことに巻き込まれるのが目に見えてるよ」


「まあ、しょうがないわよ。アンタが逃げれば逃げるほど、向こうは必死になって追ってくるんだから。私についてるし、嫌なら今度こそ王宮の宝物庫を空っぽにして、跡形もなく消えてやればいいじゃない」


「主様、ご安心を。たとえ王であろうと不敬な者が指一本でも主様に触れようとすれば、その瞬間に王都の全てを一刀に両断して差し上げますので」


「二人とも、余計に不安になるから物騒なこと言わないで!」


 ヨシトは深いため息をついた。

 平穏を望む職人の旅は、彼の意志とは裏腹に、再び国家の深淵へと引きずり込まれようていた。


 王宮で待ち受けているのは、新たな難題か、それともさらなる幸運なのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。