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第九話 チリンと登場あたしがヒロイン!

天晴と木葉が戦いを終えアルバイトに向かうのとほぼ同時刻、宝城家の応接間。

十六夜はソファで目を覚ました。戦いに勝利し現実に戻ってきたのを実感する。

玲花と名乗りや武器の名前について激論を交わしていたところをあの世界に転送された。

玲花が座っていたところに目線をやる。

目を覚ましていない…。まさか…。

すぐに駆け寄る。

「お嬢!お嬢!目を覚ませ!」

十六夜が声をかけるが反応はない。十六夜の心拍数は上がっていた…そうだ。

玲花の胸に耳を当てる。

良かった、生きている…。ホッと胸を撫で下ろす。

「何をしているんですか?」

心臓が止まりそうになる十六夜。玲花の声だった。

「おおっ⁉︎め、目を覚ましたかお嬢。いや、中々目覚めないからもしや…と思ってな」

慌てて弁明する。

「そうでしたか…。すみません、ご心配をかけて」

玲花はソファに座り込んだまま謝罪した。

「実際のところ、身体が重くて動けないというのが事実です。」

そう言う玲花の息は少し荒かった。

「お嬢…。すまん、無理をさせてしまったか」

「気にしないでください。ああでもしないと勝てませんでしたから」

玲花の声は優しかった。

「…少し考えていることがあります」

「なんだ?」

息を整えて、玲花は続けた。

「今後の戦いのことです。あのケムリの敵が言っていたことを素直に受け取ると、おそらく上の存在がいると考えられます。ケムリよりも強い敵が現れる可能性がある以上…」

「ある以上…?」

「5人目が欲しいですね…4人での戦いは厳しくなるかもしれません…情けないですが今回のような戦闘を続けられる自信はありません…」

「5人目か…」

十六夜は少し考えた。

「お嬢が前に言っていた、2.6.8.10以外の絵の具の存在か」

「そうです。敵の可能性もあると言いましたが…味方であることを祈りたいものです」

玲花は意識が朦朧としているようだった。

「お嬢…ご両親を呼んでこよう」

「いえ、少し眠れば大丈夫です」

玲花の声は弱かった。

「わかった。だがせめて、横になるべきだ」

「えっ?」

そう進言し、十六夜は玲花を抱き抱えた。

「ちょっ、十六夜さん…」

「そこの2人かけのソファでもいいか?」

「…お願いします。でも、一声かけてくださいね。私、驚いてしまいました…」

「…気をつける」

玲花をソファに寝かせる。あっという間に寝息を立て始めた。寝顔を見て呟く。

「"十六夜"はもっと…強い…」

拳を握りしめた。




スーパー極彩。天晴と木葉は勤務15分前にたどり着いた。

「おはようございます!」

天晴の元気な声と木葉の優しい声がバックヤードに響く。

「おはようございます。おっ、2人とも今日から新人来てるから」

先輩バイトが言う。

「この前、店長が言ってた人ですね!どんな人なんですかね」

天晴はウキウキしていた。

「確か女の子って言ってたよね…陽向くんと同世代とかじゃなかった?」

木葉が答える。

「まぁまぁ会ってみればわかるよ。マジでいい子だから!」

先輩の言葉に期待を膨らませながら事務所に向かう。扉を開けた!そこには小柄なツインテールの少女が立っていた。少女が振り返る。

「あっ!初めまして!あたし、天然鈴てんねんすずって言います!初バイトでちょっとキンチョーしてますけど…よろしくお願いします!」


OP


「ええか?接客は礼に始まり礼に終わる。武道と一緒や」

バイト歴が最も長い、山海勉さんかいつとむが鈴の指導をしていた。

「はいっ!」

素直さを感じさせる鈴の声がバックヤード内に通る。その他、挨拶のイロハなどを叩き込まれていく。

「まぁ取りあえずは品出ししてもらおか。何事もやってみんと覚えんからな…陰山さん!アッパレくん!」

勉の声に集まる2人。

「てなワケで2人に教えてもろて。大丈夫、2人とも頼りになる。アッパレくんは同世代やしやりやすいと思うで」

そう言われ鈴は2人に歩み寄る。

「では、改めまして天然鈴です!ご指導ご鞭撻のほどって言うんですよねこういう時⁉︎よろしくお願いします!」

弾けるような笑顔の挨拶。

「よろしく。わたしは陰山木葉。こっちは…」

「陽向天晴!アッパレって呼んでくれ。よろしく天然さん!」

先ほど、事務所にて軽い挨拶をしていたが改めて行った。


店内で作業を行う際、鈴の覚えの良さは凄まじいものだった。動きも機敏で、客から何か尋ねられた際も愛想良く対応し…まぁわからないことだらけなので天晴や木葉に振ってきたが、期待の新人と言ったふうに感じられた。


あっという間に時間が経ち、休憩時間となった。天晴、木葉、鈴の3人は同時に休憩を取ることになった。

椅子に座り、ホッと息をつく。鈴が口を開いた。

「お二人ともありがとうございます!凄くわかりやすく教えていただいて助かりました!」

笑顔で頭を下げる。

「そんな…大げさだよ天然さん。」

木葉が謙遜する。

「そんなことないです!陰山さんはわからないことがあっても聞きやすい雰囲気で、あたし的には凄く助かったんです!」

鈴の言葉に嘘はなさそうだった。

「それに!」

と言って天晴の方を向く。

「陽向くんも!すっごく話しやすかったし、同じ代って思えないくらい頼りになったよ!」

変わらず嘘はなさそうだ。そう言われて天晴は少しいい気分だった。

「褒めすぎだって。まぁ天然さんはすげぇ…アッパレだったぜ!」

天晴のいつものアレが炸裂する。…が何も知らない鈴はキョトンとした顔をしていた。

「あっ…今のはね」

慌てて木葉がフォローに入った。


「ヘェ〜、そういうお約束ってやつなんですね!」

納得したのか鈴の顔はパッと明るくなった。

「そういうこと!」

鈴の表情を見て安心する天晴。

「まぁ、あたしって結構アッパレなとこあるからねぇ〜」

「うおっ!早速使いこなすなんて…アッパレだな」

アッパレが渋滞していた。共に喋っているのは2人だけなのに事務所内は大騒ぎといった様相だった。

「元気だな…」

木葉は少し置いていかれているような、馴染めていないような雰囲気を感じていた。

「…陰山さんはどう思います!?」

天晴の声にハッとする木葉。

「えっ…と…ゴメン。聞いてなかった。もう一回言ってもらってもいい?」

あまりの騒がしさに少し疲れ、意識が遠のいていた。戦いの疲れもあるかもしれない。

「鈴って凄く明るくていい子ですよね?」

いつの間にか名前呼びになっている。ボーッとしている僅かな時間でそんな仲に?と木葉は思った。

「うん。確かに。わたしもそう思うな」

静かに答えた。

「え〜っ!そんなことないですって!…褒めても何も出ないですよ!」

わざとらしいくらいの笑顔で鈴が言う。

「あのさ、鈴は人に好かれるでしょ⁉︎そんな感じするよ」

天晴は思ったことを口にした。

と、鈴の呼吸が一瞬止まったような感じがした。

(えっ?マズいこと言ったか?)

焦る天晴。

「ん〜…まぁ…それなりに?」

少し貯めて冗談混じりに鈴が答える。

その回答に安心する天晴。緩急をつけただけだった。

「じゃ、そろそろ仕事に戻ろうか。時間になるよ」

木葉が立ち上がる。天晴と鈴が時計を見ると休憩が終わる時間に針が向かいつつあった。

「うお、もうそんな時間か」

「なんかあっという間だったね」

連なるように喋り、2人も立ち上がる。


あの感覚が来た。脳がひりつくあの感覚。

天晴はすぐに木葉のほうを見た。

黙って頷く木葉。

「天然さん…ごめん、ちょっと先行っててもらってもいい?」

天晴の言葉に鈴は反応していないようだった。

まさか…

天晴の頭にある考えがよぎった。鈴があの世界に連れていかれるのではないかと。

「ごめん!何?」

どうやら違った。

「ちょっとここでやることあるから先に戻ってて貰える?」

木葉が言った。その言葉を聞くや否や

「あ…わかりました!先行ってますね!」

と事務所から飛び出して行った。急いでいるように見えた。

「…陰山さん」

「うん…わかってるけど、あまりにも早すぎる。だってさっき戦ったばっかりだよね」

公園からあの世界に行ってから数時間しか経っていない。2人は戦闘の疲れが抜けきっていなかった。

「でも行くしかないですよ」

「そうだね…行こう!」

空間が捩れる。


あの世界。天晴と木葉が立っている。変わらない風景。振り返ると十六夜がいた。

「十六夜ちゃん!前のと間髪入れない感じだけど頑張ろうぜ!」

鼓舞するように声をかける天晴。

「あぁ、そうだな」

十六夜の答えは軽かった。何か考えているような…。

「宝城さんは?」

木葉の言葉に天晴と十六夜は辺りを見回した。人影がいる。

「宝城!こっちだ!」

天晴の声に振り返ったのは玲花ではなかった。そこにいたのは天然鈴だった。

「えっ、天晴に…陰山さん⁉︎」

心底、驚いたという表情。

「天然さんこそ、なんでここに」

同じく驚く木葉。

「意識があるということは連れてこられた訳ではなさそうだな」

冷静な十六夜の声がした。

「貴様、絵の具は持っているのか?」

十六夜の問いに鈴はすぐに答えた。

「えっ…うん。持ってます。これ?」

取り出された絵の具は黄色だった。下部には…11の数字が刻印されていた。

「11…?数字増えちゃったよ…」

天晴が間抜けな声を出す。

(っていうか、男ってオレだけじゃないか?)

「またわからなくなってきちゃったね」

木葉が優しい声をかける。

「ご、ごめんなさい。状況が呑めてなくて。さっき、宝城って言ってたけどもう1人いるの?っていうかもう4人いるってこと?」

わけがわからないという顔の鈴。

「そうなんだ…ってそうだよ宝城は?」

鈴の件は一旦いい。姿を現さない玲花のことが心配だった。

「お嬢は…今、眠っているだろう…おそらくだが。戦いから戻ったあと眠り込んでしまったのを見た。憶測だが、戦えない者は呼ばれないのではないか?」

十六夜の言葉を信じるしかなかった。

「見て!」

鈴が指差す方向に人が倒れていた。見た感じ既に色は抜かれている。

「怪人がどこかにいるな」

天晴が絵の具を構えると木葉と十六夜もそれに倣った。遅れて鈴も絵の具を構える。

「「「彩色顕媄!!!」」」

「えっ、なにそれ!?」

3人の姿は変わった。鈴はまだ変身していない。

「えー!カッコいい!サイショクケンビ?いいなぁー!あたしたちも真似しよ!」

「だろう?」

鈴の言葉に十六夜はご満悦といった表情だった。


「さーて、知らん奴らがいるな」

背後から声がした。聞いたことのない声。あのケムリのものとは違った。即座に振り向く4人。

「あー、そこの赤緑紫がラオホを倒したんだな。なるほどなるほど。で、いつもの黄色」

鈴に目をやる怪人。その姿は砂嵐のようだった。荒々しい形、色はケムリのように無理矢理採食されたかのようなカラフルな色合いだった。

「また来たんだねレルム!」

鈴が叫んだ。

「たりめーだろ。色は無くさないといけないからな。そう言われてんだ」

怪人…レルムが答える。

「鈴!あいつと戦ったことあるのか?」

「うん。何回もね。しぶといんだアイツ」

天晴の問いに素早く答える鈴。

「ちょっと今回はお手並み拝見。行け!」

レルムが叫ぶと透明な影と汚れた黄土色の怪人が現れた!泥のような見た目をしている。

「行こうみんな!」

天晴の声に木葉と十六夜は構えた。

「あたしも行くね!」

鈴が叫び絵の具を捻る。彼女の手には巨大なハンマーが握られた。

「えーっと…サイショクケンビ!」

黄色の奔流が鈴を包み姿を変えた!

「11番!イエロー鈴、登場!」

ハンマーを構え名乗る。

「…イエロー鈴?」

十六夜が小声で困惑の声を漏らす…が誰も聞いていない。

「人の色は奪わせないから!」

巨大なハンマーを軽々と構えながら鈴は敵に突っ込む!

それに十六夜が続く!

「ちょっ!鈴って十六夜タイプなのか⁉︎」

慌てる天晴。

「陽向くん!とにかくわたし達も動かないと」

「そうですね!いつものように援護お願いします!」

木葉と言葉を交わし天晴は2人に続いた。

「十六夜は強いッ!」

いつの間にか鈴を追い抜き、十六夜は透明な影を次々に斬り伏せながら黄土色の怪人に近づいていく!

「紫の子!速いってば!」

鈴の声など十六夜は聞いていなかった。怪人は泥のようなものを飛ばしてくる!

「そんなもの!」

泥を未明刀で両断する!が、連続で放たれる攻撃が十六夜の身体に直撃した!

「なんの…これしきっ!」

踏ん張るが膝をつく。前回の戦いの疲労は確かに残っていた。追い打ちをかけるように攻撃がくる!

しかし、十六夜には当たらなかった。木葉が矢を放ち相殺。そして、鈴がハンマーで攻撃を打ち返していた。

「危ないよ!そんなに突っ込んだら。無理はしないで!」

鈴が声をかける。そこに天晴が追い付く。

「十六夜ちゃんあとは任せてくれ」

「…ダメだ!」

十六夜は立ち上がり怪人に突っ込む。慌てて天晴と鈴は追いかける!

十六夜は怪人の目前!

『十六夜流剣技 稲妻ッ!』

素早い三太刀!が泥のような身体に切り傷こそ与えど、致命傷にはならなかった。傷はみるみるうちに再生していく。

「バカなッ⁉︎」

と同時に怪人は十六夜に覆い被さった。泥に飲まれる!息は出来ない。

「マズい!」

その光景を見ていた木葉


『サイレントアロー!』

矢を放つが効かない。矢は怪人の身体に飲まれていった。

「離れろよドロドロヤロー!」

天晴が辿り着き槍を放つが効かない。ズブリ、と怪人の体内に埋まっている。天晴と怪人は繋がれてるかのように身動きが取れない。十六夜の姿は見えなくなっていく。

「十六夜ちゃん!」

天晴が叫ぶが反応は無い。マズい!

「そのまま槍を離さないで天晴!」

振り返ると鈴がハンマーを振りかぶっていた。


『イエローホームラン!』

鈴は全力でハンマーを振り切った!

凄まじい衝撃で怪人は木っ端微塵に消し飛んだ…。色が飛び出していく。


「すげぇパワーだ…」

呆気にとられる天晴。

「大丈夫⁉︎紫の子⁉︎」

鈴は十六夜に駆け寄った。息はしていた。

「ありがとう鈴」

鈴に礼を言う天晴。

「いーよ。気にしないで。それに、天晴が槍で動きを止めてくれてたから勝てたんだよ」

笑顔で鈴は答えた。

その笑顔に天晴は少し気分が落ち着いた。

「ほーん。ま、こんなところね」

上から声がした。顔を上げるとレルムが空中に浮いていた。

「これなら脅威ってほどでもない。このまま…」

そう言って言葉を止めた。

「いや…増えたな…やめておこう」

姿を消した。

「…なんだ?なんで帰った?」

天晴の頭は疑問だらけだった。

「倒れてた人には色が戻ってたよ…みんな無事?」

木葉が追いついてきた。天晴と鈴が振り向く。

「はい…十六夜ちゃんも…気を失ってるみたいですけどなんとか」

十六夜に目をやる。

「あっ!皆ってば今来たの?遅いよー」

鈴が叫んだ。皆?

鈴の目線の先を見ると、3つの人影があった。

まさか…⁉︎

光に包まれた。


スーパー極彩。天晴、木葉、鈴はすぐに再会した。

「鈴!最後に見えた人たちって⁉︎」

天晴はすぐに問いただした。あの3人はなんなのか知りたかった。

ニコニコしながら鈴は答える。

「うん!あの人たちはね、あたしの仲間!3人ともすっごくいい人たちなんだよ!」


次回ッ!

第10話 四色推参YMCK!

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