第八話 RGGV、共闘4色!
「え?名前?」
天晴の素っ頓狂な声。
それは十六夜の変身後の名前を決めようという提案に対してだった。
宝城家にて4人は集まっていた。最早、溜まり場と化している。名目上は勉強会ということになっていた。
「そうだ。姿を変えている以上、何か別の名前を用意するべきだ。」
十六夜の主張。
「そっかー…十六夜紫電的なのを考えなきゃか」
と言って天晴はマズいと思った。
「何を言っている、それは普段の名前だ。それとは別だ」
危なかった…ギリセーフ。
「ねぇ、十六夜って本名なのかな?本人がそう呼ばれたがってるってだけ?」
隣に座っている木葉が小声で聞いてきた。
「そう呼んであげましょう。本名わかりませんし」
木葉の問いを天晴ははぐらかす。名前には触れない方がいいと思った。
「あの…必要でしょうか?」
玲花が疑問を呈した。
「必要だ!仮の名こそ美学!」
十六夜には何かこだわりがあるようだ。
じゃあアッパレッドとか⁉︎
「ということで皆の分を考えてある。」
「えっ、決められてんの?」
「十六夜ちゃんらしい…」
「検討はさせてもらいます」
十六夜がポケットから折り畳んだ紙を取り出す。
「これが皆の名だ!」
バッと紙を広げた。
OP
「レッドツェーン!グリーンツヴァイ!ゴールドアハト!バイオレットゼクス!
どうだ!?」
紙を掲げながら十六夜が読み上げた。
それぞれの色はわかるが…後ろのツェーンやらなんやらは一体なんだ?
「なんかの新メニュー⁉︎」
「違うッ!」
速攻で否定される。
「…あぁドイツ語ですか」
玲花が冷めた口調で言った。
ドイツ語か…。
「ねぇ、十六夜ちゃん。その後ろのツェーンとかっていうのはどういう意味なの?ドイツ語わからなくて」
木葉が困ったような顔で問いかける。すると十六夜は得意げな顔で答え始めた。
「数字だ。それぞれ絵の具に振ってあるだろう。そこから着想を得たのだ!」
十六夜は鼻息を荒くしている。
「へぇ、じゃあ10ってドイツ語だとツェーンって言うんだ…。勉強になるな!」
「あの!十六夜さん。英語とドイツ語を組み合わせる意味は?…ゴールドエイトやゴルトアハトではいけないのでしょうか?」
玲花は訳がわからないといった顔をする。
「ご、ゴルト?」
十六夜が聞き返す。
「えぇと…ドイツ語で金という意味です」
玲花が困惑しながら答える。
「あれ?ちゃんと勉強会になってね?」
天晴が呟くがスルーされる。
「もしかして…なんとなく格好いいからとかそういう理由でドイツ語を用いたんですか?」
玲花の問いに十六夜は焦ったような顔をした。
「な、何か問題があるか⁉︎実際、カッコいいではないか!」
しどろもどろに主張する十六夜。
「確かにカッコいいよ、十六夜ちゃん!アッパレだ!」
それを聞いた十六夜は満足げな顔をする。
「そうだろう?わかっているなアッパレ…いやレッドツェーン」
「え?あぁ、俺のことか。」
「しっかり覚えてくれアッパレ⁉︎」
名前覚えないとな…と天晴は思った。
「グリーンツヴァイね…。うんわかった」
木葉も受け入れたようだ。
…玲花は眉間に手を当てている。
「わかりました…。せっかく考えてくださった訳ですし、受け取りましょう。ゴールドアハトですね」
納得はしていないが飲み込んだようだ。
「よし、決まりだな。皆、その名を頭に刻み込んでおくのだ」
十六夜のその言葉で名前決めは幕を閉じた。
「強引に終わったな!」
天晴の言葉に十六夜はキッと睨みつけた。
「私は納得はしてませんからね」
玲花がピシャリと言った。
その後、名乗りがどうのこうのという話に派生していったが、天晴と木葉はバイトのシフトがあるため宝城家を後にしスーパー極彩へと向かい始めた。
「前よりもいい感じになってきたね。みんなでいても苦しくない…っていうか」
道の途中、木葉がそう言った。
「はい!俺的にも結構アッパレな感じになったかなって」
「ふふ…。ありがとう陽向くん」
「何でお礼を?」
天晴の問いに少し俯いてから木葉は答えた。
「わたしじゃ、宝城さんと上手く話し合えなかったから。結局、まとめてくれたのは陽向くんだったわけでしょ。だから…ね」
一瞬、悲しい表情。すぐにいつもみたいに笑ってみせる木葉。
「そんな…陰山さんが先に話してくれてたらしいじゃないすか。そのお陰ですよ」
「あとは十六夜ちゃんかな」
話題が変わった。
「そうですねぇ。よくわかんないけど、割と合わせて戦ってくれるし、場を乱すようなこともしないし大丈夫じゃないですか」
言いながら天晴の頭の中では"ユカリ"という名前が反芻していた。何故、呼ばれることを拒むのか未だにわからない。
「大丈夫…かな。わたしとしてはあの子の本性が見えなくて…少し怖いなって思ってるんだよね。無理矢理、自分を作ってるみたいな。きっと、十六夜紫電っていうのも本名じゃないのかなって」
木葉の言う通りだ。十六夜の本性に関しては自分もわかっていない。おそらく、彼女の素だった瞬間を見たのは初詣の時、クラスメイトに声をかけられていた時、"紫"と呼ばれたあの時。
「あの…!」
木葉がこちらを見る。
「あ、いや、何でもないです。すみません」
「そっか」
紫という名を伝えようとしたが辞めた。本人から口にしてもらうまで待つべきだと思った。
極彩の近くの小さな公園の前を通りかかる。子どもたちの声が響いていた。
「元気あっていいね」
子どもを見ながら木葉が言った。目をやると…何やら喧嘩しているようだった。
1人が仲間外れにされ、他の子たちは何処かへ行ってしまった。その場でしゃがみこむ。泣いているようだった。
「ありゃ…何かあったんですかね」
木葉が近づいていった。それに倣って天晴も近づいていく。
「大丈夫?」
木葉が声をかけると子どもは顔を上げた。男の子だった。小学生くらい。顔はグシャグシャに濡れている。
「おばさんだれ?」
子どもの言葉に天晴は背筋が凍るのを感じた。木葉に目をやると表情は変わっていなかった。大人の余裕というやつか?
「わたしは陰山木葉。こっちのお兄さんは陽向天晴っていうんだ」
優しい声の自己紹介。子どもは警戒心を解いたのか、少し表情が和らいだ。
「おれはコウタ…。石塚幸太」
「コウタくん、よろしくね」
ベンチに座り、木葉が相談に乗り始めた。
ふと、公園の時計に目をやると16時過ぎ。シフトは17時からなのでまだ間に合う。
「そっか、何して遊ぶかで揉めちゃって喧嘩になっちゃったんだ」
「うん…」
「難しいよね。やりたい事が違う時ってあるからね」
「おれはドッヂボールやりたかったのにみんなは鬼ごっこがいいって。いつもドッヂボールなんだから変えなくていいのに」
コウタは鼻を啜りながら話してくれる。天晴は記憶を辿ってみる。昔、そういう諍いが自分にもあった…ような気がする。小学生の時なのであまり記憶にない。
「そっかー。たまには違うことやってみたかったのかもね。でも、コウタくんはいつも通りがよかったんだよね」
優しい声。天晴は自分に対しての言葉ではないのになぜか落ち着く感じがした。
ふと、違和感。誰かが見ているような気がした。振り返ってみるが誰もいない。木葉は…真剣にコウタと話し続けている。
「また一緒に遊びたい?」
話は進んでいた。
「うん…」
弱々しい返事。
「じゃあさ、明日は学校で会ったらまた遊ぼう!って言ってみよう。きっと今日は意見が合わなくて喧嘩になっちゃっただけだから、きっと遊べるよ」
「何して遊ぶかな?」
「うーん…いつもと同じことかな?もしかしたら今日みたいに違う事やろうって言うかも」
「おれはいつもと同じことしたい」
「あー…そしたらそれはまた今度やろう…ってことにしてみない?みんながやりたいこと順番にやっていく…みたいな」
木葉がどうにか納得させようとしている。コウタの存在がなんとなく薄くなっていく気がした。赤くなっていた鼻が色を失っているような…。
子どもの内からそういう衝突って起きるよなぁ。大変だけど、そうやって成長してくんだよな、なんて考えた。…最近、自分たちも上手くいかなくて少し揉めたな。人が集まるとどうしてもそうなってしまうか。考え込んだあと、視線をコウタに戻そうとした。
コウタの姿は消えていた。
「陰山さん!コウタくんは!?」
思わず叫ぶ。
「わからない、急に身体が透けるように消えていって…」
と、木葉は何か気づいたような顔になった。
「もしかして…あの世界に!?」
頭がひりつく感覚がした。絵の具を取り出すと淡く光を放っている。
「連れ戻しましょう!」
天晴がそう言うと木葉は力強く頷いた。
風景が捩れる…!
あの世界。目の前にはコウタが倒れていた。木葉が素早く駆け寄る。
「コウタくん!…大丈夫、色は残ってるし気を失ってるだけみたい」
「よかった。とりあえず無事みたいですね」
胸を撫で下ろす天晴。周りを見渡すと敵は見当たらない。
「その子は?」
後ろから玲花と十六夜が姿を現した。
「えっと…さっき会ったばかりなんだけどさ」
経緯を2人に説明する。
「なるほど…人が連れて来られる瞬間を見るのは初めてですね」
玲花の言葉にハッとする。確かにそうだ。
「理由はわからないままですけど」
玲花が続けた。
「理由か…考えたことなかったな」
「教えてやるよ」
天晴の言葉に被せるようにその声は発せられた。覚えがある声。煙のアイツだった。
「みんな!戦闘準備!」
木葉の声に全員が絵の具を起動し武器を手にし、絵の具を装填する!
「せっかくなんだから少し聞け」
武器は構えたまま4人は息を呑んだ。
「ここに来る人間はマスターが選んでんだァ。どういう基準かはわかんねェけど、今回はそのガキだ…」
「マスターとは何者だ?」
十六夜が問いを投げかける。
「さぁな。わかんねェよ。でも言うこと聞かなきゃいけない気がすんだ…」
ケムリの目は何処か遠くを見ていた。
「んで、ここに連れてくる。セルズが寄生できるようにな!」
「そういう手順でしたか…事実とは限りませんが、有益な情報かもしれません」
玲花は冷静に話を聞いていた。
「ま、オレもよくわかってねぇけどな!さてと、決着をつけようぜ…いい加減お前らには飽きちまった!」
ケムリが突っ込んできた!
「やべ!やるぞみんな!」
天晴の掛け声に応じて一斉にトリガーを引く。
「「「「彩色顕媄‼︎‼︎」」」」
各色の奔流に飲まれ、皆、姿を変える。
突っ込んでくるケムリは十六夜の顔を掴みそのまま地面に叩きつけた!
「一番強いのはお前だよな紫色?」
十六夜は呻き声をあげる。
「十六夜ちゃん!」
叫ぶ木葉はそのまま弓を構える…が透明な影が現れ阻まれる。
「射てないッ…!」
木葉は敵に囲まれ、身動きが取れない!
「陽向くん、貴方は十六夜さんを!陰山さんは私が!」
「わかった!」
即座にケムリに突っ込む天晴。槍を突き出すと、敵は十六夜を盾にした!
「同じ手は喰らわねえよ!」
槍を持ち変え、敵の横に飛び素早く貫く!
「ぐおおおおお!」
わざとらしいくらいの叫びだった。十六夜が解放される。
「すまん…アッパレ!」
呼吸を整えて素早く攻撃を放つ!
『十六夜流剣技 稲妻!』
素早い三連撃!
敵の姿はなかった。煙になって逃走したのだ。
「くそッ逃げられたか!?」
天晴が叫ぶと
「陽向くん!後ろ!」
玲花に救われた木葉が叫んだ。
振り返る!
「バーカ。逃げてねぇよマヌケ」
ケムリは立っていた、コウタの側だった。透明な影が彼の中から少しずつ姿を現す。
「しまった…」
急襲に気を取られコウタまで気が回らなかった…マズい。
影は少しずつ色付いていく。目が痛くなるような黄色。ハリネズミ人間といった姿をしていた。
「どーだ?こうやってセルズは色付いて、人から色を奪う。綺麗だろ?」
ケムリはニタニタしている。
「陽向くん早くアイツを倒してコウタくんを!」
木葉が怒気を含んだ声で叫ぶ。
「わかってます!」
応える天晴。
「行くぜ?カラフル雑魚共。手が一つ増えればテメェらなんざ一捻りなんだよ!」
ケムリとハリネズミが突っ込んできた!
「陽向くん、陰山さん落ち着きましょう!感情的になっては勝ち筋は見えません!」
玲花の言葉に2人は冷静になった。
「通じるかは分かりませんが…前と同じ方法でいきます」
「バリアか!」
玲花は頷き、他の3人は戦闘体制に入った。
玲花がステッキを構えるとケムリはバリアに包まれる。
「またかよ!?邪魔しやがって!」
バリアに攻撃するケムリ!
「黄色の方を!あまり長くは持ちません」
玲花の声に3人はハリネズミを目指して突っ込む。しかし、ハリネズミはケムリに向かい始めた。
何を?と思った時には遅かった。ハリネズミはバリアを攻撃し、破壊した。ケムリは解き放たれてしまった。
「宝城!もう一回だ!」
天晴の叫びに素早くバリアが貼られる!先ほどよりも分厚く感じられる。
「またぶち破ってやるさ!」
ケムリは息巻く!ハリネズミもバリアを攻撃しようとする!
そこに木葉の矢が直撃!ハリネズミの意識はこっちに向いた!
「上手いぞ静寂の戦士!」
十六夜が動いた、天晴も合わせて動き始める!
「一気にしとめよう!」
天晴の言葉に十六夜は頷く!
瞬間、ハリネズミは無数の針を放ってきた!
防御体制に入る2人…!
無事だった。なんとバリアが2人を守っていた。
「もう…持たない!早く!」
玲花の叫びに合わせ、天晴と十六夜、そして後方からの木葉の連携攻撃!
『アッパレストライク!』
『十六夜流剣技 電光石火!』
『サイレントアロー!』
3人の攻撃がハリネズミをぶち抜き敵は爆散し色がコウタに戻る!木葉は彼の元に駆け寄った。
「陽向くん!このままアイツも!」
木葉の言葉に天晴、十六夜も反応した。ケムリに向かって走る!
「来やがれ!」
ケムリは叫んだと同時にバリアが消え去った…まさか!玲花に目をやると倒れていた、彼女の金色が薄まって見えた。
「お嬢!?」
十六夜の叫びに玲花はなんと立ち上がった!
「ここで決めましょう!」
杖を持つ手は震え、弱々しい声。だが力強さを感じた。そうだ、ここで決める!
『ゴールドショット!』
金色の光弾がケムリにぶつかる!
「これで終わりだ!」
再び天晴、十六夜、木葉の同時攻撃!
『アッパレフェスティバル!』
『十六夜流剣技 雷光! 』
『サイレントアロー!』
ケムリを貫く三連撃!
雄叫びを上げ、ケムリは爆発した…。
「勝ったよな?」
「ああ…」
天晴の疑問に十六夜は素早く応えた…。いや、それどころじゃない!
「宝城!」
天晴と十六夜は玲花の元に駆けつけた。倒れる彼女を天晴は抱き起こした。
「ごめん!無理させすぎた…大丈夫か…?」
玲花は目を閉じたままだ。
「お嬢…まさか…?」
十六夜の声は震えている。
嘘だろ?
「宝城!!?」
「聞こえてます…。そんなに叫…ばないでください」
「良かった!宝城…」
「少し…張り切りすぎました…ご心配をおかけして申し訳ないです…」
うっすらと目を開ける玲花。一応、無事なようだ。
「宝城さん…無事だったんだね…ごめんね」
コウタを抱きかかえた木葉がこちらに合流した。
「大丈夫です。皆さんがいますから…」
そう言って玲花は少し微笑んだ。
…にしても今日は元の世界に戻るのが遅い気がする。もしかして…!
ケムリのいた場所を見る…。
なんと…形が残っている、まだ生きていた!
「嘘だろ…」
天晴の言葉に皆が目をやり、その光景を見て震えた。
ぐおおおお!とケムリは叫んでいる。
「ごめんなさい…私はもう…動けそうにありません…」
震える声で玲花はそう言う。天晴もそうだ。技を連続で放ち、倦怠感に襲われていた。自分の色が薄まっているのに気づく。横にいる十六夜もそうだった。
「わたしがやるよ」
木葉はそう言ってコウタを地面に降ろし立ち上がった。
「わたしは3人ほど消耗してない」
「1人じゃ無茶ですよ!」
天晴は叫ぶ!が木葉は聞いていないようだった。弓を構え矢を引き絞る…!
必要はなかった。ケムリから沢山の色が抜け出ていくのが見えた。人の姿に戻っている?
「どういうこと?」
木葉は唖然として弓を降ろす。コウタとは違い、人間自身が怪人になっていたのだろうか。
「まさか…アイツも人間?」
「すぐに戻れなかった理由は…そういうことかもしれません。しかし…人間そのものが怪人だと…話が違ってくる気が…」
天晴の言葉に対して、相変わらず玲花は冷静だった。
ケムリ…だった人間が口を動かした。
「なんか言ってるぞアイツ!」
叫ぶ天晴。
「この距離では聞こえません…」
玲花。
遠目だったが笑っているように見えた。
光に包まれる。
「おばさん、話聞いてる?」
コウタの声がした。気がつくと公園だった。
戻って来れたのか…。天晴は身体が重いことに気づく。
「無事に帰って来れたんだね…」
木葉が呟く。
「何言ってんの?」
「あっ、ごめんね。ちょっとボーッとしてたかも」
慌てて取り繕う木葉。
「変なの…。なんか話してたらスッキリした!明日、また遊ぼうって言ってみる!」
コウタはベンチから立ち上がり、駆け出して行った…。
「子どもって…自由ですね…」
困惑した声を出す天晴。
「そうだね…。助けられてよかった」
木葉は微笑んでいた。それを見て少し体が軽くなった気がした。
「なんか助けられたって実感があっていい感じです!」
少し満足感があった。
「さて!バイト行こっか陽向くん!」
笑顔で木葉はそう言った。
「あっ…完全に忘れてた…」
「何言ってるの!さあ行こう!」
「いや、陰山さん!身体重くて俺!あーもう、気合いだっ!」
2人は駆け出した!
次回ッ!
第九話 チリンと登場わたしがヒロイン!




