第十話 4色推参、YMCK!
登場人物
陽向天晴
主人公。男。18歳高校三年生。170cm。所持する絵の具は赤で10の番号が振られている。盛り上げ気質で、そうすれば何事も上手くいくだろう、という考え方。最近、玲花とぶつかりちょっと反省。
陰山木葉
女。20歳大学二年生。172cm。所持する絵の具は緑で2の番号が振られている。
天晴のバイト先の先輩。眼鏡っ子。大人しめな性格。自己主張は不得意で人に合わせたいタイプ。玲花とチームの主導権についての問題で関係が悪化したが、多少マシになった。
宝城玲花
女。18歳高校三年生。166cm。所持する絵の具は金で8の番号が振られている。
天晴のクラスメイト。宝城家という地域では有名な家の一人娘。人の上に立つための意識が凄い。木葉と天晴とぶつかり、少し意識は緩和されたが、難しいなと思っている。
十六夜紫電
女。15歳中学三年生。160cm。所持する絵の具は紫で6の番号が振られている。
本名はユカリというらしいが呼ぶと嫌がる。厨二病?本心が読めず、周りを振り回す。未だに何を考えているのかは謎のまま。
天然鈴
女。18歳高校三年生。155cm。スーパー極彩の新人アルバイト。独特の雰囲気で周りの人を引き寄せる愛されキャラ。実は黄色の絵の具の所持者で戦士の1人だった。絵の具の番号は11。他に仲間が3人いるらしい。
敵
ケムリの人
割と生き残っていたが団結出来るようになってきた天晴たちにやられた。人間の姿に戻ったように見えたが…?
レルム
新たな喋る敵。鈴たちと何度も戦っているらしい。
セルズ
毎回のように湧いてくる影たち。攫われてきた人間に一体寄生すると色が抜かれ始め怪人として姿を現す。
???
2話ラストで「綺麗だ」とか呟いてた人。正体は今のところ不明。
翌日。時刻は13時。
天晴と木葉はカラオケボックスに向かっていた。というのも鈴…そして前回の戦いの終わりに現れた3人と会い、話すためだった。
「陰山さんは疲れてないんですか?」
木葉に問いかける。玲花と十六夜は以前の戦いの疲れが抜けていないという理由で不参加だった。
「わたしは大丈夫だよ。あんまり前に出て戦ってないし。それに…お姉さんだからね、体力はあるんだ」
そう笑って答えた。いつもの笑顔に天晴は少し安心する。
「ならいいんですけど…それにしてもどんな人たちなんですかね、他の3人は」
気になっていた。鈴から皆良い人だと聞かされていたが不安はないでもなかった。
「さぁ…ね。でも色を抜かれた人を助けるために戦ってるんだから…悪い人たちじゃないよ」
「ですよね!」
木葉の考えに賛同した。そうだ、悪い人たちなわけがない。きっと仲間として上手くやっていけるだろう。スマホが鳴る。鈴からだった。
『もう着いてるよ!26号室でまってるからね!』
「あ!陰山さん、鈴たちはもう着いてるみたいです。急ぎましょう!」
「…そういえば、いつの間にか名前で呼び合うようになってたよね」
「え?あぁ、鈴は話しやすかったですし、あっちの方から同世代だし名前で呼び合わない?って言われてそのまま」
「ふーん」
…なんだろう。気に障るようなことを言ってしまっただろうか。
「確かに、天然さんは話しやすいよね。距離もすぐ縮められそうだし。ああいう子は好かれるよね」
「陰山さん?」
何か、少し怖く感じた。
「ん?いや、素直に凄いなあって思っただけだよ」
いつもの優しい表情だった。自分の勘違いだったようだ。
「よし!着いたね」
カラオケボックスに到着した。
「えっと、何号室だっけ?」
「ちょっと待ってくださいね…えーと、26号室です!」
天晴たちは店内に入り、26号室に案内される。扉を開ける。
「あー!待ってましたよ!2人とも!あたし達チームイエローでーす!よろしく!」
鈴の他に座っていた3人は皆、男性だった。
寡黙そうな男性。几帳面そうな男性。
この2人は大人のように見えた。
そしてもう1人。小柄な、一瞬、女の子と見間違えるような可愛げのある少年だった。
「よ、よろしく!チームレッドです!」
鈴の言葉に釣られてそう言ってしまう。
「じゃ、親睦会と行きますか!」
鈴の声が響いた。
OP
親睦会…と言ったもののそんな雰囲気にはならなかった。
簡単にお互いに名乗り、この場にいない玲花や十六夜の紹介も済ませ、情報共有の段階に話は移った。
「天晴たちはレルムみたいな喋る敵を1人倒したんだね」
鈴が凄い!といった顔で言う。
「あぁ…ホントにギリギリの戦いだったんだけどなんとかな」
正直に答えた。
「そっかー、あたし達は何回も戦ってるんだけど、逃げられちゃうんだよね…何がいけないんだろ?」
鈴はわざとらしく腕を組む。
「奴は退き際を弁えています。逃げに徹される以上は仕方ないかと」
丁寧な口調で話す几帳面な男性は
執印國明と言った。執事のような服を纏っており、このカラオケボックスという場においては少し浮いているように感じた。
「そうだけどさー。アイツはやっつけないといけないって思うし…言い訳はしたくないよね」
鈴は深刻そうな顔で言う。
「申し訳ございません鈴様。私の意識が低いあまり、このような戯言を」
「そんな謝らなくてもいいよ國明くん!」
謝罪に対して即座にフォローを入れる鈴。
「なぁ、執印さんって鈴の召使いさんだったりするのか?」
悪気なく天晴は聞いた。鈴を様付けで呼ぶ國明が気になってしょうがなかった。
「そういうわけではありません。ただ、個人的にお慕いしているだけです」
淡々と回答が返ってきた。
そういうもんなのか…?
「國明さんは実際に執事やってたことがあるんだよ。だから、口調とか身振りもすごく丁寧なんだ。あたし凄く尊敬してるんだ」
微笑みながら國明の方を見る鈴。國明は少し口角が上がっているようだった。
「話が脱線していないか。お互いが持つ情報をもっと共有したほうがいい」
寡黙そうな男性…写野真士が口を開いた。
「ごめんごめん。真士さんの言うとおりだね。話戻そっか」
続けて、ケムリ…ラオホと呼ばれた怪人が人間の姿になったことを伝える天晴と木葉。
鈴たちは驚いているようだった。
「えぇっ!?それってさ…レルムの正体は人間ってことだよな!?」
少年…墨名夜星が声を上げた。
「で、その人は助かったのか?」
当然の疑問だった。天晴は言葉に詰まる。
「ごめんなさい。それはわからないの。怪人から沢山の色が抜けて人に戻ったところまでは見たんだけど、その後すぐに現実に戻されちゃって」
代わりに木葉が答えてくれた。彼女の言うとおり、ラオホの安否は不明だった…。考えないようにしていたがもしかしたら死…。
ポケットの中のスマホが振動した。確認すると玲花からだ。ニュースサイトのURLが送られてきている。続けてメッセージが送られてきた。
『TVニュースを見ていたら、こちらが報道されていました。一応、陰山さんとも目を通しておいてください。』
「ごめん!ちょっと確認することあるからタンマ!」
鈴達に断りを入れ、木葉と共にニュースサイトを開く。
『数ヶ月行方不明 男性発見』
タイトル通りの内容だった。気になったのは見つかった男性…野呂重雄さんは行方不明だった期間の記憶がなかったということ。コメントの内容が『何か無理矢理塗りつぶされたように記憶がない』ということだった。そして、彼の写真が公開されており、その姿は遠目に見たラオホと似た姿、衣服だった。
「陰山さんこれって!」
「うん…助かったんだねあの人!」
2人で盛り上がる。それを見た鈴たちは困惑する。
「いや実はさ」
ラオホの中の人の無事を伝える天晴。
「そっか!じゃあ、きっとレルムをやっつけたら人間に戻るってことだね!」
鈴の声は明るかった。
「ってことはさ、助けるためって言ったらレルムの奴もやられてくれるんじゃないか?」
夜星が言う。
「いや、流石にそう簡単な話ではないだろ」
「なんだよ!もしかしたらそうかもしれないってだけだろ!そんな言い方する必要ないだろ!?」
天晴の突っ込みが気に障ったのか夜星は少し声を荒げた。幾つなんだろうこの子は?と天晴は少し疑問を抱く。
「夜星くんそんなにカッカしないの。もー、可愛いんだから」
ニコニコしながら鈴は夜星を宥め、ギュッと抱きしめた。
「可愛いって言うなよッ!あと…人前でそんなくっつかないでくれよ…恥ずかしい」
と言いつつも夜星は満更でもないようだった。どういう関係なんだこの2人は。ふと、國明の顔が目に入る。修羅の様な表情をしていた。恐ろしさに目を逸らす…とその先には真士がいた。彼は冷めた目で鈴と夜星の姿を見ていた。感情は読めなかった。
「とにかく、死んだとかそういう話にはならなかったわけだ。いい情報を得られた。陽向くん、ありがとう」
真士が話を戻した。
「いえ、宝城から教えてもらっただけなんで…別に俺は何も…」
「先ほどから気になっていたのですが、宝城というのは…あの立派なお屋敷に住む宝城さんですか?」
突然、國明が口を開いた。
「?えぇ…そうですけど。それがどうかしました?」
「…そうですか…いえ、なんでもありません」
そう言う國明の表情はなんでもないわけが無かった。
脳がひりつくあの感覚がきた!
「陰山さん!」
叫ぶ天晴。だが木葉は困惑の表情を浮かべていた。
「ど、どうしたの?陽向くん?」
「どうしたって…決まってるじゃないですか戦いですよ!」
絵の具を取り出す天晴。いつも通り微かに光っている。木葉も続けて取り出す。同じ様に光っていた。
「俺も頭に痛みは来ていない」
真士が絵の具を取り出しながら呟いた。どうやら他の3人は痛みが来ているようだ。
空間が捩れる。
あの空間。立っているのは天晴、鈴、國明、夜星の4人。カラオケボックスにいたはずの木葉と真士、欠席していた玲花と十六夜の姿はなかった。
「4人…か。なんで陰山さんと写野さんは…」
理由がわからない。前回は玲花のみ…正しくは玲花、真士、國明、夜星がいなかった。4人だけみたいなルールがあるのか?考えてみるがわかるわけはなかった。宝城がいれば…と天晴は思った。
「おい、赤色。あそこ人倒れてるぞ」
夜星の声だった。指差す方を見ると男性が倒れていた…カラオケボックスの受付の人だった。すぐに駆け寄る。
「色は抜かれていませんね。レルムが現れるはずです。準備を」
國明が淡々と話す。
「そうですね。今のうちに変身しておきましょう…彩色顕媄!」
姿を変える天晴。その光景を國明と夜星は呆然と見ていた。
「な、何か変か?」
「いや!変だろ!サイショクケンビってなんだよ!?」
夜星がツッコミを入れる。そうだ…知らないんだったこの人たちは…。少し恥ずかしくなった。
「夜星くん!そういうこと言わないの!ごめんね天晴。でもさ、カッコいいと思わない?あたし達もやろうよ、サイショクケンビ!」
鈴が2人を説得する。
「鈴様がそう言うのであれば、私は従います」
「まー、鈴が言うなら」
納得した様だ。
「よーし、じゃあいくよ!」
「「「サイショクケンビ!!!」」」
鈴はハンマー、國明は大型の両刃の剣、夜星は巨大な鎌を用いて変身した!
黄色の戦士、シアンの戦士、黒の戦士が姿を現す。
「妙な掛け声だな」
声の方に一斉に振り向く4人。その先にはレルムがいた。
「あら、先越されちゃったか。ま、別にいいけど」
頭を掻きながらそう言い放つレルム。
「どういうことだ!」
「いや〜、どういうことだろうな?」
天晴は問うが軽く流される。
「取り敢えずさっさと片付けさせて貰うぜ。行くぜ?ラディーア」
レルムがそう言うと、彼の後ろから別の怪人が現れた。丸っぽく、ゴムっぽい質感の、相変わらずドギツイ彩色がされた姿だった。
「消せばいいんだろ?レルム。簡単な作業だ」
そう言い放つラディーア。こちらに突っ込んでくる!
「みんな!迎え打とう!とにかく後ろの人を守ろう!」
天晴の掛け声に皆、武器を構える!
「あまり命令はしないでください。鈴様の命令なら従いますが…貴方は鈴様ではありません」
國明が小声で言ってきた。
調子狂うな…。
「消えろ!」
ラディーアはすかさずパンチを打ち込んできた!槍でガード!即座に反撃、槍を横に振り払った!が、あまり効いていない!
「ちっ!手応えがない!」
天晴の叫びに國明と夜星が反応しラディーアに襲いかかった!
「4人いるんだぜこっちは!」
夜星の鎌がラディーアに直撃する!続けて國明の大剣がラディーアに突き刺さった!
「3人とも離れて!」
鈴の声だった。気がつくと3人は吹き飛ばされていた…。レルムが上空から衝撃波を放ったのだった。
「1人に気を取られて…甘いなお前ら」
レルムの笑い声が響いた。
「大丈夫3人とも!?」
吹き飛ばされた3人に駆け寄る鈴。
「大丈夫だ!これくらいなんともないさ!」
天晴は立ち上がった。國明と夜星も続けて立ち上がる。
「よかった…じゃあさ天晴。ここはあたし達のやり方に合わせてくれない?」
「えっ?」
「まぁ見てたらわかるよ!行こう、國明くん、夜星くん!」
鈴の声に國明と夜星は応え、3人で突っ込んでいった。
「十六夜式か…?」
困惑する…。
「おいレルム!危ねぇだろ!」
「悪い悪い。ま、でもそれくらいだったら平気だろお前は」
敵同士が口論していた。今がチャンスなのか?
「俺も行くぜ!」
3人を追いかける天晴!
「敵は2人ですが、手強い相手のはずです。最新の注意を鈴様」
「わかってる!いつも通りフォローしてね!」
「任せろ鈴!」
ラディーアの元へ辿り着き戦闘が始まる。そこへレルムも参戦する!
「2人とは限らねーだろ?今までの戦い忘れたのか?」
透明な影たちが現れた!一気に囲まれる鈴たち!
「今更、手こずらないぜ!」
『アッパレストライク!』
槍による一閃!影たちを十数体吹き飛ばす!
「おい!あんまり目立つなよ!鈴はおれ達が守るんだ!」
夜星の声は荒かった。戦闘スタイルが違いすぎる。
『【月狩】ムーンハント!』
夜星の鎌から斬撃が放たれ影たちを大多数を吹き飛ばした!
「そのとおり。私達の邪魔はしないで頂きたい」
『スレイブスラッシュ!』
國明の大剣による攻撃で影達は殲滅された。
凄まじいパワータイプの戦いだ…、
「消えろよお前ら!」
ラディーアと格闘する鈴!天晴はそこへ乱入した!
「鈴!助けるぜ!」
「ありがとう天晴!」
気がつくとレルムは國明と夜星を相手取っていた。
「邪魔とか気にしないから俺。だって仲間だろ?」
「うん!」
「話してる暇はあるのか?」
ラディーアのキツイパンチが2人を直撃した。吹き飛ばされる2人。
「鈴!」「鈴様!」
「お前らもさ、よそ見していいのか?」
レルムの放つ衝撃波に國明と夜星も吹き飛ばされる。4人は一ヶ所に集められてしまった。
「さてと…今、8人いてこれで半分仕留められるわけか…割とあっさりしてたな」
「消す」
レルムとラディーアはにじり寄ってくる。
「どうしよう…」
夜星が弱々しい声を出した。
「弱気になるなよ!まだ負けたわけじゃない!」
「消えるのは確定事項だ。往生際が悪いな」
天晴の言葉を打ち砕くようなラディーアの言葉。
「…!いや、確定ってことはない!」
ラディーアの胸を緑の閃光が貫いた!
「陰山さん!」
天晴の視線の先には木葉と…マゼンタカラーの戦士がいた。真士さんか?こちらに走ってくる!
「真士さん!」
鈴が明るい声を上げた。
「ちっ!途中参加かよッ!前はもっと遅かったろ!?」
レルムは姿を消した!
『ディープブレイク!』
真士の武器は斧だった。重い一振りがラディーアを粉砕した!
「ガッ…!消えるのは…オレだった…か…」
一気にラディーアの体から色が吹き出す。
「すまんな鈴。遅くなった」
「ううん。最っ高にカッコいいタイミングだったよ真士さん!」
鈴は顔を煌めかせている。國明と夜星は…少し複雑そうな顔をしていた。
「コイツも…人の姿に戻ってる…」
ラディーアが人になるのを見ながら天晴は呟いた。きっと、この人も元の世界に帰るのだろう。
光に包まれる。
透明な空間。レルムはここに戻ってきていた。
「クソ…まさか、ラディーアがやられちまうとは…」
「おかえり」
レルムはその声に身震いした。
「無事でよかったよレルム。ラディーアは残念だったね」
「申し訳ございません…。まさか…遅れてくるやつらがあんなに早く来るとは思わず」
「仕方ないよ。君にはわからなかったんだから」
透き通る様なその声にレルムは震えが止まらなかった。
「…少し変わろうか。色を間違えたのかもしれない」
「まっ、待ってください!つ、次は必ず…!」
レルムは何も見えなくなった。
「なんか…2人怒ってましたね…」
「そうだね…理由はわからないけど」
天晴と木葉は帰路についていた。
カラオケボックスでの親睦会はお開きとなってしまった。戻った直後、國明と夜星の機嫌がすこぶる悪く、続けられる雰囲気では無くなってしまった。
「心当たりある?」
「いや…それが…無くはないんですけど」
「何?」
「多分、俺や陰山さんが鈴を助けたのが気に食わなかったのかなって」
「…?よくわからないけど…なんか」
「なんか?」
「あまり…上手くやって行けそうには無いね」
木葉の言葉に天晴は何も言えなかった。
カラオケボックスに来るまでの楽観的な考えはさっぱり消え去ってしまっていた。
「でも、どうにかしますよ」
「どうやって?」
「そりゃ、俺はアッパレテンセイですから!アッパレに盛り上げていきます!」
空元気だった。だがその言葉に木葉は少し安心したようだった。
次回ッ!
第十一話 依存の行く先、音鳴る方へ!




