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第十一話 依存の行く先、音鳴る方へ!

「どうやら…擦り合わせが必要なようですね」

宝城家の一室で玲花はそう言った。部屋には天晴と木葉がいた。


カラオケボックスの一件から数日。玲花は体力も回復し、動けるようになっていた。


「うん、上手くやっていきたいとは思ってるんだけど今の所はちょっと難しそうなんだよね」

「そうかもしれないですけど、その内うまく行きますって!俺たちだって時間はかかったけどどうにかなってるじゃないですか!」

不安げな言葉を漏らす木葉に対して天晴が楽観的に返す。


「4人一気に増えるとなると中々難しいかと…私も陰山さんと同意見です。それに…十六夜さんのことは未だによくわからないままです」

率直に思っていることを述べる。天晴や木葉のお陰で良い関係にはなったが、十六夜に関してはまだまだだった。というのも、問題だらけで構っていられないというのもあった。自分が原因だということもあったが…。


「十六夜ちゃんは…」

「なんですか?」

「いや、ごめんなんでもない」

「…そうですか」

何か言いかけた天晴に、玲花はなんでもないわけがないと思ったが敢えて追求はしなかった。

「そろそろ時間だよ宝城さん」

木葉の言葉にハッとする。天晴に声をかけてもらい、イエローチームの内2人に来てもらうことになっていた。

「ありがとうございます陰山さん。では、玄関まで行ってきます。陽向くん一緒に来てもらえますか?」

「おう」

天晴と共に部屋を後にする。


さて、誰が来るかは聞かされていないが…上手く擦り合わせなくてはいけない。4人のうち2人と話をつけられれば後の2人もなし崩し的に話がつくだろう。

天晴が口を開いた。

「この前の戦いの時、うまく纏まんなくてさ。あの時、宝城がいたらな〜とか思ったんだ。だから今日は安心してるよ」

「頼りにしてくれてる…ということですか?」

「そりゃな。宝城はアッパレだからさ」

「ふふ、ありがとうございます…私も陽向くんのこと頼りにしてますから」

玄関を開け、門に向かう。外から人の気配を感じる。インターフォンのカメラを確認すると小柄な少女と男性が立っていた。

「おっ、この人たちで合ってるよ宝城」

「わかりました。では門を開けますね」

門が開き始める…。

それにしても…男性のほうはどこかで見たような…。

「はじめまして!天然鈴です!あなたが宝城玲花さん?」

「はじめまして。ええ、私が…」

鈴に挨拶を返そうとしたが言葉に詰まった。彼女の隣にいる男性はよく知る人物だった。

「貴方…」

狼狽える玲花に男性…

執印國明はこう言った。

「お久しぶりです。玲花お嬢様」


OP


宝城家応接室。5人の人間が居合わせている。陽向天晴、陰山木葉、天然鈴、執印國明、そして私、宝城玲花。

テーブルを囲うようにして皆、座っていた。沈黙が流れる。

「んじゃ、話し合いといきますか!なんか…シーンとしちゃってるけど…アッパレにさ!話そうぜ!」

口を開いたのは天晴だった。明らかに暗い雰囲気をどうにかしようとしていた。まぁ、そ

の原因は私と執印國明なのだが…。


「ごめん、陽向くん。その前に宝城さんと…執印さんに聞きたいことがあって…良いかな?」

どうやら陰山さんは私と執印さんの異様な雰囲気を感じ取ったようだ。それもそうか。

「2人ともなんかただならぬ雰囲気がするんだけど…説明してもらっても良い?このまま全体の話し合いってのも中々難しいと思うんだ」

木葉の言うことは最もだった。

こんな雰囲気を醸し出しておいて説明無しなんてことはできない。


「私達は主従関係にありました」

答えたのは國明だった。

「えっ、國明くんって宝城さんに仕えてたの⁉︎」

「シュジュウカンケイ?」

鈴は驚いた声、天晴は困惑した声を出す。木葉は…声こそ上げなかったが驚きの表情を隠せていなかった。

「少し前まで私はこの宝城家に執事として仕えていたんです」

「あっ、主従ってことか!すみません、すぐわかんなくて」


淡々とした國明の言葉にも天晴はいつもの調子で会話していた。彼のその雰囲気に少し助けられる。少しホッとしたのも束の間、鈴が訝しげな目線をこちらに向けていることに気がついた。

「どうかしましたか天然さん?」

「えっ⁉︎あぁ…っと別になんでもないよ!」

そんなわけはなかった。明らかに何かしらの感情がある目線だった。だが、一旦は擦り合わせだ。このままでは自分と國明の関係の話が主題になってしまう。それは避けたい。

「まぁ…とにかく本題に入りましょう。現在、変身して戦える人は少なくとも8人。どう力を合わせていくべきかは明確にすべきだと思います」

「少なくとも…ってどういうこと?」

鈴が疑問を呈する。

「絵の具見てみろよ鈴。下に数字が書いてあるだろ?今揃ってる数字が…えぇと」

「陽向くんから聞いた話をまとめると2.3.5.6.7.8.10.11の8種の数字が揃っています。完全な推測ですが11までの数字、残る1.4.9の絵の具を持つ者が現れるかもしれないということです」

「説明サンキュー宝城」

説明すると鈴はなるほどと納得した様子だった。


「あ、でもさ。天晴はあたしの数字が11って言った時に増えちゃった…って言ってたじゃん?12とかもっと大きな数字の人も出てくるかもしれないよね。もしかしたら100くらい出ちゃったりして!」

「…有り得なくは無いですね」

鈴の考察は飛躍しすぎだが否定はできなかった。正直なところ100人もいたら纏まるなんてことは限りなく不可能に近いだろう。

「100人か…あんまり考えたくないな…」

木葉がボソッと呟いたのを玲花は聞き逃さなかった。

「大丈夫ですよ…なんて無責任ですけど、その可能性はかなり低いと思います」

「あっ…聞こえてた?ごめんねネガティブなこと言っちゃって」

そう言って木葉はぎこちなく笑う。

「それはそれで面白そうですけどね!まぁ確かに多すぎるかもしれませんけど」

天晴は変わらず明るい。

「話を戻します。今後、戦うにあたっての連携についてです。天然さん達は今までどのように戦っていましたか?」

話が脱線したので戻す。最近は雑談の楽しさを感じてきたが、あまりダラダラしていられない。

「うーん…と…そうだなぁ。あたし達って大きい武器ばっかりだからさ、とにかく行け行けー!って感じ?ねっ!國明くん」

「そうですね。特に鈴様のハンマーの破壊力は凄まじいものですので…私と写野さん、墨名さんは透明な影…セルズを散らして、鈴様が全力の一撃を叩き込めるように援護をするような戦い方を続けていました」

「そうそう!やっぱ國明くん頼れるね、わかりやすい説明ありがと!」

鈴の感謝に國明は優しく微笑んだ。

「執印さん…そんな風に笑うんですね」

心の声のはずが口に出ていた。しまった。

國明がゆっくりとこちらに目線を向ける。

「…はい。そう仰られるのも当然でしょう。私は玲花様の前で笑ったことはありませんから」

國明の言葉で場に緊張が走った。まずい。話し合いといった雰囲気ではなさそうだ。

「そう…ですね。貴方が笑ったところを見たことがありません」

ダメだ。こんな返しでは雰囲気は悪化する一方だ。

「変わっていませんね玲花様…やはり私は…貴方が嫌いだ」

その言葉に息が詰まる。仕えていてもらった頃から薄々勘付いてはいた。だが、明確に言葉にされると苦しいものがあった。

「おい!なんだよその言い方!アンタ…宝城に仕えてたかなんだか知らないけど、そんな言い方はないんじゃないか!」

声を荒げたのは天晴だった。しかし、國明は涼しげな顔をしている。


「いいんです。陽向くん」

「いいわけないだろ!宝城は悔しくないのかよ、こんなこと言われて!」

悔しい…か。実際のところ、そういう感情はなかった。ただ、予想が事実だったという哀しみの感情があった。


「ちょっと!みんな落ち着こう?わたし達仲間じゃない?」

木葉が憔悴しきった顔で場を収めようとする。相変わらず國明の表情は変わらない。どうする?このままでは力を合わせるなんてことは出来そうにない…。


「ダメだよ!國明くん!嫌いなんて言ったら!」

突如、声を上げたのは鈴だった。自分は勿論、國明も他の皆も驚きの表情を浮かべていた。


「鈴様?」

「ねぇ國明くん。嫌いって言われたらどんな気持ちになるかわかる?すごく…辛いんだよ。すごく…辛いの。だからそんなこと言っちゃダメ。宝城さんに…謝って!」

沈黙が流れる。國明は先程の涼しげな表情は嘘のように取り乱していた。

「天然さん…私は…」

「いいの宝城さん。だって、國明くんは酷いこと言ったんだもん」

鈴の目は強かった。これ以上、言い返す気力を削がれるほどに。

静かに國明は立ち上がった。

「申し訳ございません。玲花様。貴方の気持ちも考えず、このような発言…失礼いたしました」

深々と頭を下げる國明。

「いえ…大丈夫です執印さん。気にしてはいませんから」

國明は頭を上げなかった。どうしたものか…鈴に頼んでみるか。

「天然さんからも、もういいと言って頂けますか?」

「うん…國明くん。もういいってさ。そのままだと宝城さん困っちゃうよ」

鈴の言葉でようやく國明は頭を上げた。鈴と國明の関係性はどのようなものなのか…謎が深まる。本当に仕事として仕えているのか?


「天晴と陰山さんにも謝った方がいいよ」

すぐさま國明は2人に謝罪した。あまりにも従順。仕えているというよりは…最早、依存しているとさえ感じる。

「…いや俺も悪かったよあんな大声出してさ。すみません執印さん!」

天晴も頭を下げた…取り敢えず場は収まったようだ、鈴のお陰で。

「一度…時間を空けましょうか。少し外の空気を吸ってから…」


言葉の途中だったが異変を感じた。自分以外の4人が何かに気づいたような素振りを見せる。まさか…。

「宝城!もしかして…予兆感じないのか?」

「はい…あの感覚は来ていないです」

以前、天晴と木葉から話に聞いた 一度にあの世界に行くのは4人まで という説はどうやら真実のようだった。木葉、鈴、國明は予兆を感じているようだった。

空間が捩れるのが見えた。


「これは…」

世界が一瞬で無色に、無音になった。なんだこの現象は…。天晴、木葉、鈴、國明の姿は消えていた。自分からは色は消えていない。音も発せられている。ポケットに入っている絵の具を取り出す…淡く光っている。

「反応はありますね…」

上部を捻ると金色の突起が生えてくる。視界が捩れた。



あの世界。ここに来るのは久しぶりだった。手にはステッキを握っていた。現実で絵の具を捻ったからだろうか。

疲れ果て眠り込んでいた時、一度も来ることはなかった。最低4人説は正しいかもしれない。逆に最大人数は決まっているのだろうか。同じ場にいなかった十六夜と写野、墨名という人たち。3人がこの空間に現れることもあるだろう。

考えていると闘いの音が聞こえた。5時の方向。早く向かわなければ。


「お嬢!」

久しぶりに聞く声だった。その方を向くと十六夜がいた。手には刀を…未明刀を握っている。

「どうやら身体は回復したようだな」

「はい…ご心配をおかけしました。おかげさまで体調は万全です」

十六夜紫電…未だに彼女が何を考えているのかはわからない。チームのことを居場所と言った理由も。

「お嬢。私は…十六夜紫電は強い。これ以上、お嬢に負担がかかるような戦闘はしないと誓おう」

力強い声だった。そして目も力強かった。何が彼女をそうさせているのかは見当もつかない。

「ありがとうございます。ですが、私たちはチームで戦うんです。1人で背負うなんてことは考えないでください」

少し前の自分では考えられない言葉だった。よくもまぁ平気でこんなことを言えるものだ。少し笑えてしまう。

私の言葉に十六夜は黙ってしまった。どうしてしまったのか。

「行こうお嬢。戦いの時だ」

十六夜は駆け出していってしまった。

「彩色顕媄!」

十六夜の姿は紫色のコスチュームに包まれる。

「ま、待ってください十六夜さん…彩色顕媄!」

慌てて後を追いかける。私は金色のコスチュームに身を包んだ。


辿り着いた戦場だ。戦っているのは天晴と木葉と鈴、そして國明だ。写野と墨名の姿は無い。相手は…紫色の蝶のような怪人だった。


「遅くなりました!」

「おっ、宝城!待ってたぜ!」

明るい声で天晴が反応する。こんな時でも変わらない彼には安心する。

…と横を紫色の残像が通り過ぎていくのが目に入った。敵では無い、十六夜だった。

「十六夜さん⁉︎」

慌てて追いかける。

「十六夜ちゃんも来たか…っておい!」

天晴のことなど気に求めず敵に突っ込んでいく十六夜。止まりそうには無い。

「國明くん!この前、言ったあの子!」

走り抜ける十六夜を見て鈴が叫んだ。

「あの子、カバーできる!?」

「鈴様のご命令とあらば」

鈴の言葉に國明も飛び出していく!

「えっ、天然さん!執印さん大丈夫なの!?」

木葉の問いに鈴はニヤリとした。

「大丈夫!國明くんのこと信じてるから!」

言葉の通り信頼を感じさせる声だった。だが、本当に大丈夫なのか?

「私もカバーに回ります!陽向くん、陰山さん、天然さん、他の敵をお願いします!」

三人に声をかけ十六夜を追う國明を追う。透明な影…セルズ達を蹴散らし、偶に木葉の援護射撃に助けられながら突き進む!


十六夜が蝶の怪人と戦い始めるのが見えた。國明はまだ追いついていない。


「私と同色か!すぐにケリをつけてやろう!」

勇んだ十六夜の声が響き渡る。敵を斬り伏せようと十六夜が構えをとると同時に怪人は鱗粉のようなものを撒き散らした!


「十六夜さん!」

咄嗟にバリアを貼る!間に合った…

鱗粉はバリアに当たると激しい火花を散らす!爆発しているのか?


「持たない!」

激しい火花にバリアは破壊された、もう一度バリアを貼ろうとしたその時


國明が十六夜の前に入った。鱗粉を全身に受けている!しかし、國明は叫び声も上げない。


「執印さん!」

「貴様ッ⁉︎」

私と十六夜の声が響く。すぐさまバリアを貼り、國明を護る!鱗粉が一時的に止まる。


「宝城さん伏せて!」

後方からの木葉の声に伏せる。

二つの緑の閃光が敵に向かって走る!

即座にバリアを解き、矢の軌道を確保すると、怪人の羽根は射抜かれた。


「今だ!」

十六夜は叫び刀を振り抜いた!合わせるように國明も大剣を振り下ろした!


「十六夜流剣技 電光石火!」

「ヘヴィスラッシュ!」

二つの斬撃が敵を葬った。色が解き放たれる!


「國明くーん大丈夫!?」

後方から鈴の声、振り返る。

「貴方…執印さんを信じてると言いましたが…利用しているのではないですか?」

あまりにも危ない戦いだった。信頼、という言葉で済ませていい事ではない…そう思った。私の発言に鈴はムッとした表情になった。

「そんな言い方しなくてもいいじゃん。あたしと國明くんは信頼し合った上でああいう風にできるんだよ…。こんなこと言いたくないけど、宝城さんて國明くんの言う通りの人なのかもしれないね」

どういうことだ?國明は一体、何を言ったのだろうか…。いや、そんなことより。

「執印さん無事ですか!?」

國明の方に声をかける。と、國明と十六夜がこちらに向かって来ていた。十六夜は…複雑そうな顔をしている。

「無論です。私は鈴様の命令ならどんな事ことであろうと遂行できますから」

國明のその言葉にゾッとした。さっき感じた事は間違いではなかった。主従関係などではない。依存だった。

「やっぱり!大剣で攻撃を防いでたんだね!前もそれを盾代わりにしてたし…頼れるね國明くんは!」

鈴の明るい声に國明は微笑んだ。確かに、國明に傷ついている様子はなかった。本当に私が何もわかっていないだけなのだろうか…?

光に包まれる。


宝城家応接室。玲花、天晴、木葉、鈴、國明は戻って来ていた。沈黙が流れる。


「…で、戦い方は…どうすんだっけ?」

天晴が恐る恐る声を出した。戦い方…。

一つわかったことがある。私たちと鈴たちの戦い方は全く違うということ。

「宝城さん。あのね、あたしこんな事は言いたくないんだけど…無理に合わせる必要ないと思うんだ!それぞれの戦い方があっていいと思う」

鈴が悪びれなく言う。


…そうかもしれない。無理に管理しようとするのが私の悪い癖だった。解消したつもりだったが、簡単に治るものではないらしい。


「鈴様、今日はお暇しましょう。これ以上の話し合いは難しいかと思われます」

國明の冷たい声が響く。

「…そうだね。ごめん、みんなで話そうってなったのに。また、日を改めて話そうね」

鈴がそう言うと、國明と共に去っていった。


「宝城さん…無理してない?」

木葉の言葉が身に染みる。いや、無理はしていない。ただ、どうすべきなのかがわからなくなっていた。

「大丈夫です陰山さん。お気遣いありがとうございます」

「ホントかよ宝城?ちょっと疲れたって顔してるぞ」

気丈に振る舞おうとするが、天晴にはバレていた。もちろん、木葉にも…。


「まぁさ!時間かけてもいいから上手い事やってこうぜ!」

「ごめん陽向くん」

天晴の前向きな言葉に木葉が言葉を被せた。

「どうしたんすか?陰山さん」

「あのね…わたしは…天然さんが少し苦手かも」

…そう言うのも仕方ないかもしれない。合う合わないはどうしても生じてしまう。

「そうですか…ムズイっすね」

少し…天晴の顔が曇って見えた。

私は…彼のあの表情を照らせるだろうか。


國明にもそう思えていれば


皆が解散し夜になる頃、玲花はふと、そう考えた。


次回ッ!

第十二話 漆黒の夜、揺らめく星!

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