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第四話 十六夜紫電参る!

年が明けた。

陽向天晴は一人で初詣に向かっていた。

新年、清々しい気持ちだ。だが少し違和感はある。あの空間、あの絵の具だ。少し身体が重い感じがした。わからないことだらけだが戦うしかない。新年の決意はそれだった。


向かう途中、見覚えのある顔がいた。

濃い紫の髪。鋭い瞳。小柄な体格。

十六夜紫電だった。

寒さ対策なのかモコモコの服を纏っていたがすぐに気づいた。

こういう時、天晴は平気で声をかけるタイプだった。


おーい、と口にする直前。十六夜の元に二人の女子が近づいていくのが見えた。


「あれ?ゆかりじゃん?何?1人で初詣?」

「一緒に行く人いないの?良かったらどう?」

十六夜は顔を伏せていた。無視とかではなく、なんとなく心ここに在らずというか。

女子二人は顔を見合わせて

やっぱり、といった風に去っていった。


なんで行かないんだろ?せっかく誘ってくれてんのに。まぁ、俺も人のこと言えない。初詣はしっかり自分と向き合って盛り上げたいって決めてるからだけど…。まずは自分だ。



…えっ、ユカリっていうの!?


OP


女子二人が去っていくのを見届け、天晴は十六夜…もとい紫のもとへと歩みを進めた。

まさか、こんなタイミングで名前を知れるとは…

少しテンションは上がっていた。

あと少し、というところで紫はこちらに気づき驚いたような顔をした。


「明けましておめでとう!」

天晴は元気よく言う。通行人の何人かが彼の方に視線をやった。

「…明けましておめでとう」

控えめに紫が返す。

いつもと比べるとだいぶ落ち着いている、というか大人しい感じだ。まるで別人のように思えた。そんなことより。


「いや、ごめん。さっき見てたんだけどさ。ユカリって呼ばれてたじゃん…それが本名?」

悪気無く聞いた。すると紫は拒絶するような表情をした。

「違う…」

そう言って振り返り、どこかへ駆け出していく…というより逃げているように見えた。天晴は慌ててあとを追いかけた。



裏路地のようなところで紫は止まった。それに倣い天晴も足を止める。二人とも息が上がっていた。


「どうしたんだよ?急に走り出して…。それに違うっていうのは」

天晴は問いかける。

先ほどとは打って変わって、強い口調…いつもの口調で紫は答えた。

「何を言っているアッパレ?忘れたのか、私は十六夜紫電。共に戦う戦士だろう。」

いや…さっき友達っぽい子たちにユカリって言われてたろ…。それは偽名じゃないか?

紫の顔を見ると、その目は真剣だった。先ほどの拒絶するような素振りは微塵も感じられなかった。なんだったんだ?

「しかし…アッパレも初詣とはな…。一体、何を祈願するつもりだったのだ?」

強引に話題を変えられている。

「あぁ…まぁ俺は」

そこで止めた。

「いや、そういうことは人に言うことじゃないからな。悪いけど秘密だ。」

これは譲れない。

「そうか」

紫がニヤリとした。

何故、と思ったがすぐに分かった。

やられた…。もう名前については聞けない。


さて、どうしようか。これ以上の詮索は出来ないし、こんなよくわからない裏路地に来てしまった。素直に戻るか…。

「感じないかアッパレ」

急に紫が口を開いた。

何を言って…?

いや、そうか。感じる。うまく説明出来ないが、脳みそがひりつく感覚があった。きっとこれは前兆だ。あの世界に行く前の"捩れ"の前兆。

周りを見渡してみるが、まだ異常は見当たらない。紫に目をやると絵の具を取り出していた。淡く光っている。

「見ろアッパレ!多分これは敵の出現を意味する信号だ!」

なんだかテンションが高く見えた。紫が絵の具をこちらに向ける。紫色の絵の具。下部には6の数字が刻印されている。

光が強まってきた。捩れが来る!


予感は当たっていた。気がつくとあの世界に来ていた。4回目だが、まだ慣れない。


後ろからため息が聞こえた。木葉だった。

隣には玲花もいる。

「さて、ここに来た以上、やるべきことは明白です。」

玲花がピシャリと言う。

まぁ…正論だな。

「お嬢の言う通りだ。人か…敵を探さねば」

紫が言った。乗り気だった。

それを見た玲花が少し怪訝そうな顔をする。

「あ、そうそう実は…」

と言いかけて止めた。紫が目線をこちらに向け、絵の具をギュッと握りしめる。

「どうしたの陽向くん」

木葉に問われる。そりゃそうだ。

「えぇと…そう!実はこの世界に来る前の予兆みたいなことがあることに気づいたんですよ。」うまく誤魔化す。後で伝えるつもりだったが。

「な、十六夜ちゃん」

とわざとらしく言ってみる。紫は目線をどこかに向けていた。何故かわからないが、取り敢えず名前の件には触れない方が良さそうだ。今はまだ。


先ほどの予兆の件を伝え、捜索にあたった。今回は天晴と玲花。木葉と紫…十六夜だった。

「陰山さんは予兆に気づかなかったようですね。」玲花が言う。

「ああ。なんでなんだろうな。宝城も気がついたのに」

「わかりませんね。ただ、以前までは私も予兆に気がついていませんでした。もしかしたら個人差があるのかもしれません。単に偶然かもしれませんが。」

「そうねぇ」

と…人影が倒れていることに気が付いた。今度は男性。


近づくと色は無くなっていなかった。呼吸もしており、眠っているだけのようだった。

「…色が抜ける素振りもありませんね。」

玲花が冷静に言う。その通りだった。何も起こらない?しかし、男性は起きる気配が全くない。意識が奪われているような。触れてみると少し冷たい。冬だからだったのか、別の要因があるのか…。一つ言えるのは生気らしいものは全く感じられなかった。

「念の為、変身はしておきましょう。」

そうだな。と言って二人は変身した。


「「彩色顕媄‼︎」」


玲花が合図をするためステッキでビームを上空に放つ。金色の光が空間の中で輝く。

「あの透明な敵が現れるかもしれません。警戒は怠らないようにしましょう。」

「わかった。任せてくれ。」

周りを見渡そうとすると人影が見えた。一人だった。木葉たちが別々に行動している?いや、考えにくい。人影はズンズン近づいてくる。


人ではなかった。煙を形にしたようなオブジェが身体に散りばめられた…怪物だった。

ドギツイカラーリングをしている。色んな色をしているが、鮮やかとは思えなかった。無理矢理彩色したような。汚れのようにも感じられた。


「おいおい、先越されちゃったかァ。」

喋った。天晴と玲花は息を呑む。これまでに倒した怪物とは雰囲気が違った。

「お前らさァ。余計なことすんなよなァ。色、いらないって思うだろォ?疲れるし、たくさんあって邪魔だろ?」

こちらに敵意を向けているのは明白だった。

「消えろよ」

襲いかかって来た。拳を思いっきり振りかぶってくるのを咄嗟に槍で受ける。重い一撃だ!

そのまま後ろに吹き飛ばされてしまった。

「陽向くん!」

玲花が叫ぶ。しかし、慌てず敵の方を向き光弾を放つ。あまり効いていないようだった。

「そこの倒れてるやつ渡せよォ。くっ付き損ねたんだよォ」

「何をする気か分かりませんがお断りします。」

そう言って玲花は連続で光弾を放つ。

「あんま強くねぇな」

怪人は平気そうだ。マズい!早く戦いに戻らないと。

…緑の閃光が敵を撃ち抜いた。敵が吹っ飛び転がっていく。

「陰山さん!」

天晴は叫んだ。

木葉と十六夜がこちらに駆けつけてくる。

「あれが怪物?」

木葉の問い。

「でも…今そこに倒れている人は色が残ってるね」

「そうなんです。なんかよくわかんなくて…」

天晴たちは玲花と倒れている人のところへ向かう。

「初めてのケース…。まぁでも、この人は守らなきゃ」

木葉の言う通りだった

「とにかく、四人で陣形を。宝城さんはバリアを使えるから、倒れてる人と一緒に後ろの方へ。陽向くんと十六夜ちゃんは敵と距離を詰めて戦う…いける?」

「当然」

天晴はすぐに応える。が、十六夜は少し黙っていた。どうした?いつもならすぐ応えるのに。カチャカチャと金属音がする。何かと思えば十六夜の持つ未明刀からだった。弱々しい音だった。

「無論だ」

一呼吸置いてから答えた。音は止まった。

「アイツは今までのと比べたら結構強そうだ…しかも喋るし。気をつけた方がいいかもしれない」

天晴はできるだけ落ち着いて情報を伝える。

怪物は体勢を立て直しこちらに向かって来ていた。後ろにはあの透明な影がついて来ている。いつの間に…。


「強そう…というのを聞くと距離を詰めるのは得策じゃなさそうだね」

実際、天晴は簡単に吹き飛ばされてしまった。玲花の攻撃もあれだけやってもあまり効いていなかった。木葉の矢も不意打ちだった以上、再現性はない。

「私が行こう。」

少しの間。

「この十六夜紫電が、ヤツを屠る。」

決意表明のようだ。十六夜が前に出る。

「わかった。十六夜ちゃんはスピードで撹乱、影達は私と宝城さんで蹴散らす…陽向くんは十六夜ちゃんの援護を」

木葉が眉間に手をあてながら指示を出す。

「アッパレ!着いてこい!」

十六夜が駆け出す。

「よっしゃ任せろ!」

天晴も続く。

「そうやって合わせなきゃいけねぇのがダリぃだろォ!?」

敵が叫ぶ。

影達もこちらへ向かって来た。

玲花の光線、木葉の矢が何度も飛来し敵を消し飛ばす。残ったものを十六夜が斬り伏せ、天晴もそれに倣う。

「なんかいつもより動きのキレがいいな!十六夜ちゃん!」

「当たり前だ。十六夜紫電だぞ私は」

「アッパレだな!」

いつものヤツ。十六夜はそれを聞いて微笑み

更に素早く動く。天晴はその姿を見て"あの映画の十六夜"を重ねていた。

敵に近づいていく、距離は確かに縮まっていく。

「来るな!」

叫ぶ敵を尻目に十六夜と天晴は目の前まで辿り着いた。

大きく拳を振りかざす敵!当たるとマズい!咄嗟に十六夜を庇おうとするが必要無かった。


『十六夜流剣技 電光石火』


敵は倒れていた。納刀する十六夜。一瞬で敵を斬り伏せたのだった。まるで斬っていないようだった。


すごい…。

「アッパレだな紫ちゃん。」

駆け寄る天晴。

無意識に紫と言ってしまう。

言うつもりはなかった。

刀を向けられた。えっ?

「やめて…」

目は伏せていた。初詣に誘われた時、名前を確認した時みたいだった。距離をとるようなあの雰囲気。


何か動くのが視界の端に入った。

敵が起き上がる…!

「倒せてなかったのか!?」

「しぶといな…トドメを!」

緑の閃光。

しかし、敵はそれをかわした。

「思ったよりやるなァ…。一旦、退かせてもらうぜ…次は覚悟しとけ」

敵は色を失い消えていった…。


光に包まれる。


裏路地に戻っていた。

十六夜の方に目をやると、彼女は絵の具を手に見つめていた。

距離を詰める。

「なぁ、さっきの近づくなって一体…」

聞かずにはいられなかった。

「十六夜紫電は孤高の戦士だ」

絵の具を見つめながら答え、来た道とは逆の方向へ去っていく。

「なんだよ…」

全く理解ができない。一緒に戦ってたじゃんか。

ふと思い出す。

「あっ、そうだ初詣に来たんだった!」

天晴は来た道を戻り出した。十六夜から距離をとるように…。目を背けるように。祈れば忘れられるような気がした。



次回ッ! 

第五話 咲き誇れ、気高き花!

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