第三話 木葉、舞い上がる!
スーパー極彩の休憩室。時刻は20時を少し回ったところ。年の瀬だった。木葉は椅子に座り考え込んでいた。
「じゃ、お先に失礼しますわ。お疲れさんでーす。」
従業員の声で我に帰る。
「あっ、お疲れ様です。」
「陰山さん疲れてんの?空気読めるとこ好きだけど読みすぎはしんどくなるよ」
「あはは、そうかな?ありがとう心配してくれて」
部屋から出ていくのを見届けて、木葉はポケットに入れたままの"絵の具"を取り出した。
変身する力を持った絵の具。木葉のは緑色だった。下部には2の数字が刻印されている。
この前、集まったけど結局これの話はできなかったんだよなぁ…。
宝城家にて"あの空間"から帰ってきた後はすぐに解散になってしまった。というのも、皆疲れ果てていたからだ。
あの後、年末なのもあって予定合わなくて中々話せないし…snsでグループ作って話すのもごちゃごちゃしそうだし…
あれから天晴にも会っていない。シフトは被っていないし、個人でわざわざ会うような仲でもなかった。バイト以外の日であのテンションと2人きりは…と少し気が滅入るというのもあった。残りの2人はそもそも関係が浅すぎる。
それにしても
絵の具のことより気になることがある。4人のまとまりについてだった。
天晴も玲花もあの紫の子…十六夜も主張が強すぎる。玲花は割と落ち着いた考えができそうだったが、譲らない強さのようなものを感じられた。
戦いに関してもそうだった。
皆バラバラに飛び出していって、止めなかった。武器が弓だからここにいて良いって。結局、まとめられないせいでわたしは…。
十六夜を誤射した記憶が蘇る。
手が震えた。あの空間から戻って傷は大したことはなくなっていたが、同じ過ちは繰り返したく無い。
「わたしがまとめなきゃだよね…一番上だし」
絵の具を見ながら呟いた。正直、人に合わせるほうが楽だ。でも、次の戦いの時には的確に指示を出そう。安全に戦えるように…絶対…。自己暗示をかけるように口にした。
背後の壁が捩れる。
OP
"その時"は驚くほどすぐに来た。
気がつくと木葉はあの空間に立っていた。
来た…!
そう思った。
振り返ると天晴、玲花、十六夜の3人がいた。
「どうやら…また、のようですね。」
いつもの冷静な玲花の声。
「ふっ…いつ戦いの時が来ようと構わん」
相変わらず十六夜は独特な喋り方をする。
「多分、皆バラバラなとこにいたと思うんだけど…今回は揃ってここに来れたんだな!」
天晴の元気な声も変わらない。
「そうみたいだね…」
木葉は違った。やらなければいけないことがあった。変えなくてはいけないことが。
「皆聞いて。この前、宝城さんも言っていたけど、足並みを揃えるべきなの」
出来るだけ落ち着いた声で話した。だが少し震えていた。勇気が必要だった。
それを聞いた玲花の目が少し輝いたように見えた。
「陰山さん…貴方もそう思っていてくださったんですね。」
信頼のような目。よし…宝城さんは大丈夫。
「陰山さんもそっち派かぁ…。でもまぁそうだよな!せっかく4人で居るんだしな!」
うん…陽向くんはそう言うよね。
問題は…十六夜だった。彼女の我が道をいく性格でこの話に乗ってくれるかどうか…。
十六夜のほうに目をやると少し考えているようだった。
「十六夜ちゃんは…どう思う?」
しまった。強制しているみたいだ。いや、ほぼ強制と言える。心臓の鼓動が早まる。
「よかろう。個の力には限界がある。」
意外な返答だった。
だが、流れを掴んだ感じがした。
「皆ありがとう。正直、会って日も浅いし難しいかもしれないけど、色が無くなっちゃう人を助けなきゃいけないから…それにわたし達自身が危なくならない…そのためにも足並みを揃えよう!」
良い感じ。上手く行ってる。
「ええ…とにかく、まずは被害者を…もしくは怪人を見つけなくてはいけませんね。」
玲花の提案。
「そうだね。まずはそこからだよね」
無意識の肯定。
違う、そうじゃない。わたしが先頭に立たないと。
「人命の救出は最も優先すべきだ。行動に移そう」
十六夜が言う。
「そうだな!取り敢えず探さないと!」
天晴が肯定する。
足並みは揃っているが纏められていない。
多分、また戦いが始まったら自由に動き出す予感がある。
ダメ、皆待って…。
「2人1組で動こう。バラバラだと危ないし、合流するのも大変」
すっと口から言葉が出た。多分…焦っている。
「見つけたら合図を出そう…。そう…上に何か飛ばす…ってなると」
自分でも驚くほど言葉が出る頭が回る。
「わたしと宝城さんだね。だから…」
組み合わせか…
正直、天晴とも十六夜とも2人きりはしんどい。玲花が楽だが発言と矛盾するというのが木葉の本心だった。
「いやー、陰山さんってああいう感じのところもあるんですね!」
結局、天晴と一緒に行動していた。わかりやすい性格をしているので合わせやすかったからだ。
「ふふ、意外だった?」
笑ってみたが乾いていた。喉も乾いていた。緊張のせいだろう。
「はい!なんかいつもの陰山さんと違って見えました!なんていうか…」
何?
「そう!アッパレだな!なんちゃって」
手応えを感じた。大丈夫、出来てる。
「にしても…何もいないですね…。透明な影もいない。」
「そうだね。もしかしたら、そういう場合もあるのかも…」
しんどくなってきた。このまま何もない方が楽だ。
後ろの方で何か光った気がした。
振り返ると金色の光が上空に向かって伸びている。
「あれは!」
天晴が叫ぶ。
ああ、やっぱりそうか。
「やらなきゃ…」
「えっ?何か言いました?」
無意識だった。
「ううん。行こう!2人を助けに行かないと!」
「わかってますよ!」
「「彩色顕媄!!」」
玲花達の元へと急ぐ。
変身して身体能力が上がっているのか数分で2人の元へ辿り着いた。
「ごめん、遅くなった!」
木葉が声をかけると2人がこちらを見た。
「いえ、こんなに早いとは思いませんでした!」
「迅速な行動。賞賛に値する。」
良かった、大丈夫みたいだ。
合流し、敵の方を見る。
赤い…なんだろう…電波塔?
例えるなら東京タワーみたいな着ぐるみという感じだった。
「うお、色被ったな…」
どういう感情なのか天晴が言う。
そういえばこの前の敵はわたしと同じ緑だった…。意味はあるのか…。
「奴に近づく事が出来ない。」
十六夜が口を開いた。
「どういうこと?」
「あの赤い電波のようなものがバリアのようになっている。私の未明刀もお嬢の光線も奴には届かなかった。」
お嬢…?あぁ、宝城さんのことか…。
「静寂の戦士よ…どうする?」
…あぁ、わたしに言っているのか。
「何か他にわかったことは?」
「ビームのような攻撃をしてくるのですが…それくらいですかね…」
玲花が答えた。
どうする…攻撃が通じない相手…。
「全員で一斉に叩けばいけるんじゃないか⁉︎」
「ダメだった時が危険すぎ…様子を見よう」
天晴の意見に一理あったが安全に行きたい。
考えようとする前にあの透明な影が怪人の周りから湧き出てきた!
「ヤバい!陰山さん急がないと!」
天晴が慌てたように言う。
わかってる…少し待って…
「宝城さん!ビームを撃って!敵の目の前あたりの地面を狙って!」
わかりました!と素早く玲花が行動に移す。地面に直撃し煙が出る。目眩しを狙ったのだった。次は…!
と煙の中から影達が出てきた。視界の悪さなどお構いなしといった風に。
「…っ、陽向くん、十六夜ちゃん、迎えうって!」
ダメだそんな人頼りの指示。
だが2人は飛び出していった。
「任せてください!」「参る!」
影達をあっという間に制圧していく。行ける…!?
煙が晴れてきた、怪人の姿が見える。赤い光が強く灯っていた。
「あれは攻撃の前兆です!」
玲花が叫ぶ。
向き的に天晴を狙っている。マズイ!
「宝城さん!陽向くんにバリア!」
またも行動は迅速だった。ビームが放たれバリアが防いだ。間一髪だった。
「危ねぇ!」
叫ぶ天晴を尻目に十六夜は走り出した。
ダメだ繰り返しになってしまう。
「陰山さん!」
玲花の声。
考えてる。考えてる!
「十六夜ちゃん伏せて!」
矢を放つ、十六夜は伏せてくれた。怪人のバリアに矢は弾かれる。効かない!
ッ…
どうしたら勝てる?どうしたら…
ふと思った。ビームは何故こちらに来る?
そういうもの?いや…きっと…。
「陽向くん!十六夜ちゃん!激しく動いて敵を撹乱して!」気づけば叫んでいた。
2人は了承し狙いが定まらないように動き回る。
「宝城さんはここに」
「わ…わかりました」
賭けではあるが一つ考えがあった。
敵がビームを撃つ瞬間、バリアが消えている。もしくはビームが通るだけの隙間が発生しているというのが木葉の推察だった。
そして…
敵は天晴と十六夜を狙うのを諦めこちらに照準を定めた。
これを待っていた!
「陰山さん!」「お嬢!」
2人がわたし達の心配をする。
「大丈夫!そのまま動いて!」
「宝城さん。敵をよく見て。ビームが来る瞬間バリアを」
静かに玲花は頷いた。
敵の光が強まった!
今だ!
矢を放つ!
ビームが放たれる瞬間、緑の閃光が敵を射抜いた。
静寂…
そして敵は爆ぜちった。
爆発の中から赤い光が飛んでいく。
その光は木葉の斜め後方の辺りに落ちていった。そこに人がいた。色が戻りつつある。自分と天晴が通った場所だった。
…気づかなかった。
「やりますね…陰山さん。」
玲花からの称賛。だが、玲花の目は少し悩んでいるようだった。
天晴と十六夜がこちらに戻ってくる。
「アッパレだよ!陰山さんすげぇ!」
「見事な采配であった」
「ありがとう皆」
そう言うと光に包まれた。
スーパー極彩の休憩室。木葉は椅子に座っている。
…夢?
というのも一人で戻ってきたため、現実感が全くなかった。
時計に目をやると20時過ぎ。やはり時間は経っていなかった。
と、携帯から通知音がする。
天晴からだった。snsを開く。
『陰山さんアッパレでした!マジで尊敬します!』
現実だった。
「できるんだわたし」
確かな手応えを得た。
席を立ち、部屋の中にある鏡の前に立つ。
「これからも…」
慣れない…高い場所に来た感覚があった。
次回ッ!
第4話 十六夜紫電参る!




