第三十一話 金銀いるなら銅もいる!
「ねー、才二くん」
わたしは才二くんと一緒に回転寿司に来ていた。時々、こうやってご飯に付き合って貰ってる。
「どうしました?」
彼はお茶を啜りながら聞いてくる。
「見て、金のお皿と銀のお皿」
わたしは食べ終えた皿を手に取って彼に見せつける。このお店ではちょっとお高いネタは他のお皿と見分けが付くようにこんな感じで派手な色合いになってる。
「銅はないよね」
「…そうですね。ちょっと地味だからじゃないですか?」
「そうだねー。でも、メダルとかは銅あるじゃん」
「や、それとこれとは話が別じゃないかと」
「で、思うんだけどさ」
ここからが本題。
「なんです?」
「舞さんは銀色でしょ?で、宝城さんは金色」
「そうですね」
「銅もいるんじゃない?」
わたしがそう言うと才二くんはお茶を吹き出した。
「わっ!ど、どうしたの才二くん!?」
「ゲホッ!ゆ、夢奈さんがそんなこと言うから…びっくりして…」
「えー、ごめんねー。いや、なんかふとそんな事思ってさ」
才二くんは咽せながらおしぼりで机を拭いている。それを見てわたしも手伝う。
「ようやく十二人で戦えるかもしれないってなってきたのに…もう一人増えるかも…ってことですよね」
「や、例えば!例えばの話だから」
「そうですよね…例えば…ですよね…」
才二くんはちょっと納得いかなそうな顔になっていた。
詳しいことはわからないけど、わたし達はみんなで戦うことができた。まとまった!って感じはしないけど、第一歩は踏み出せた気がする。才二くんの理想に。
気を取り直してまたお寿司を食べ始める彼を見て、可愛いなと思う。
ふと、思い出す。マスターの言葉。
才二くんはキミの何なのかな?
才二くんはわたしの…。
「夢奈さん?」
「えっ何?ごめん、ボーッとしてた」
「いや、なんか考え込んでるみたいだったんで」
「そうかな?特には考えてなかったけど…」
「ならいいんですけど…あっ、注文してたやつ来ましたよ」
中トロが流れてきた。上流に座ってる才二くんがお皿をとってくれた。
受け取りながら…思った。
才二くんは…わたしの夢…。叶わなかった夢。
OP
「さーて、腹ごしらえもしたし!会いに行こっか!」
「はい!」
わたしと才二くんは人と会う約束をしていた。淹煎さんと舞さんだ。言い出したのは才二くんと舞さんの二人だった。なんか、今後について話しておこう…みたいなことらしい。
待ち合わせ場所、駅前の時計台の下に着く。
「あ!舞さん早いですねー」
彼女はもうそこに居た。キャップにサングラスをかけて…ちょっと不審者みたいだった。
「変装ですかー?ちょっと怪しい人みたい」
「いつかみたいに騒ぎになったらいけないでしょう。ありもので顔を隠すとなるとこんな風になるのよ」
「夢奈さん…よく舞さんってわかりましたね…」
「雰囲気でわかるもんだよ」
「で、淹煎はまだみたいね。約束の時間にはまだ早いけど…」
舞さんがそう言うと、声がした。
「悪い!待たせたか?」
淹煎さんだった。息が上がってるみたいだった。
「いやー、急いだんだけどな」
「下手な芝居はやめなさい。すぐそこから走り始めたの見えていたわよ」
「やべ、バレてたか」
「遅刻したわけじゃないんだから、そんなことする必要ないでしょう」
「それもそうだな!じゃ、行くか!」
わたし達四人はデパートの屋上にある屋外カフェへと向かった。
テーブル席に座る。わたしと才二くんが隣同士、舞さんと淹煎さんが隣同士だ。
店員さんが注文を聞きにくる。
「俺はコーヒーブラック」
「私はミルクティー」
「わたしジンジャーエール!」
「ボクはサイダーを」
飲み物と合わせてセットのケーキをそれぞれ注文する。
「で、話なんですけど」
才二くんが口を開いた。何の話なのかな。
「ブルーチームの…というか個人の在り方について話しておこうかと思って」
かなり真面目そうな話だ。
「舞さんとは…ある程度話してあって、夢奈さんと淹煎さんにも詳しく話しますね」
「オッケー」
「おう」
わたし達の反応を見て彼は続けた。
「まず、ボクです。これまで…ボクはリーダーとして皆さんを…他のチームの人も全部纏めなきゃと思ってました。でも、それはやめます」
「えっ」
声に出ていた。どういうこと?諦めるってこと?
「ま、一人で全部ってのは無茶な話だったよな才二。そうすんのは悪くないと思うぜ」
淹煎さんは冷静だ。
「ありがとうございます。と言っても諦めるとかそういう話ではないんです。ただ、みんなでまとまっていく。そういう風になっていけばいいな…って思ってます。一人でやろうとしても…限界あるなって」
才二くんは笑って話してる。舞さんと淹煎さんは…落ち着いてる。わたしだけ不安になってるのかな。
「…なんつーか、お前に頼りすぎてた感はあったかもしれないわ」
「いえ!そういうことを言いたいんじゃなくて」
「待って才二」
舞さんが割って入った。
「少なくとも私はアナタに頼る…いえ、アナタに背負わせすぎていたわ。それはわかっているわよね」
舞さんの語調は強い。何かあったのかな。
「はい。わかってます」
才二くんは落ち着いた声で答える。
「夢奈、淹煎。アナタ達に話していなかったのだけど、前に私と才二は口論になったの」
…えっ!?そんなことあったの!?全然、気づかなかった。
「それは…初耳だな」
淹煎さんも気づいてなかったみたい。
「舞さん。自分で話します」
「そう。わかったわ」
才二くんは呼吸を整えて話し始めた。
「ボクは自分だけで背負いすぎて…もう無理だってなったんです。それで、舞さんが励ましてくれたんですけど…その時、強く言い返しちゃって。ボクは弱いのに強いって決めつけないでください!みたいな」
少し言い淀んでいる。そんな風に言い返すとは思わなかった。
「それで、どうにもならなくなって…陽向さんが来てくれたんです。そしたら、一人でやりすぎるなって。みんなでやればいいって…教えてくれました。だから、無理にリーダーしなくてもいいのかなって。ボクも戦士の一人としてでいいんだって思ったんです」
そっか…陽向くん結構いいこと言うんだなぁ。と思いつつも才二くんに負担をかけていたのかもしれない、という考えが頭をよぎった。
「私が才二に圧をかけすぎていたのもあるわ。アナタは強い。出来る人間だと、強制していた」
舞さんは難しい顔をしていた。ざっくりと説明してるけど、きっと大変な話し合いだったんだろうな。
「だから、今までみたいなのはやめます。お互いに…フルカラーズのみんなが少しずつ力を合わせていければって…思うんです」
話は終わったみたいだった。
「そっか…。わかった!ごめん。わたしも才二くんに任せすぎてたかも…」
そう…任せすぎていた。わたしは…彼の理想をただ信じていただけだった。
「…悪いな。そこまで気づけてやれなくて」
淹煎さんの声はかなり沈んでいた。居酒屋から出てきたのを見つけた時を思い出す。彼は…何か隠している気がする、けど…聞けないよね。
「いいんですよ二人とも!これからまたやっていきましょう!ボクもまだ何もできてないです。前回、みんなで戦えたのもなんでかよくわかってないですし」
才二くんは笑っている。強くなった…って思う。多分、前だったら泣いてた。
そんな風に話していたら注文していたものが届いた。ケーキはショートケーキだった。
「…なんか深刻な雰囲気ですけど」
才二くんはケーキを前にどうしようか困ってるみたいだった。
「出されたのだから食べましょう。それでいいじゃない」
「おー、舞さんいい事言うー!食べちゃいましょ!」
話は一旦区切り、手をつける。甘い!美味しい!
「あ、そうだ」
淹煎さんがコーヒーに口をつけてから何か思い出したように言った。
「みんなでまとまる…みたいな話だけど。俺、さっきまで執印と会ってたんだ」
「えぇ!?」
才二くんはかなり驚いていた。わたしも驚いた。
「それで、どういう経緯なの淹煎?」
舞さんは冷静に問う。
「いやさ、この前みんなで戦った時さ、イエローチームの写野真士と一緒に執印と話したわけよ。んで、戦いが終わった後は普通に別れたんだ。で…何日かあとに会えるかって連絡が来て…」
意外な関係ができていた。執印國明さん。天然さんのこと大好きな人って印象だったけど、今はちょっと変わったみたい。
「何を話したんですか?」
才二くんの疑問はもっともだ。
「まぁ今日、ウチに来るように言って…身の上話したな。何が好きとかそんな話。でさ、俺がコーヒー淹れようとしたら、アイツがやるって言い出したんだよ。お願いしたら、メチャクチャ美味いんだわ。これから毎朝、俺にコーヒーを淹れてくれって頼んだけど振られたわ」
淹煎さんらしいな…。軽そうに見えて、ちゃんと人を見て話すから執印さんも会おうって思ったのかな。
「こういう感じだろ?才二が今、目指してるのって」
不意に淹煎さんは真面目な声でそう言った。
「はい。そんな…感じです」
「いや、フワッとしすぎだろ!」
少し笑いが生まれた。
思い出す。陰山さんとご飯行ったりするのが今でも続いてる。こういうのでいいって事だよね。才二くんの助けに…なれてるのかな?
ジンジャーエールを一口飲む。ちょっとだけ気分がスッキリした。
今日は解散になった。駅に向かい、才二くんと別れ、電車に乗って自宅へと向かう。
才二くんを助けたいな…。
そう思う。あの子の夢が、理想が叶えばいいと思う。そうすれば…わたしの夢も…。
嫌な記憶が浮かんできたので別のことを考える。あの頃のことは思い出すとしんどくなる。出来るだけ思い出したくない。でも、彼の理想を信じるほど記憶は鮮明になる。
と、最寄り駅に着いた。電車から降りる。降車する人はそれほど多くなかった。改札へと向かう途中、わたしは自動販売機でキツめの炭酸を買った。開けるとプシュッと音がする。
空気が抜けるみたいに…あのことも忘れられたらな…。
「昼飯さん」
後ろからわたしを呼ぶ声。懐かしい声。記憶が蘇る。あの頃の…。恐る恐る振り返る。
「合羽くん?」
「あぁ、やっぱり昼飯さんだ。久しぶりだね」
そこに居たのは、高校時代のクラスメート、合羽透だった。
「さて、どうしたものですかね」
私は自室で床の上で仰向けになっていた。天井に向けてシアンの絵の具を掲げて見つめている。
あれから、天然さんに会っていない。もちろん、写野や墨名とも。何故か、淘江とは会っていた。理由はわからない。
わからないことはそれ以外にもあった。あれほど、心が乱れていたのに落ち着いていること。陽向に抱いていた感情。そして、これからのこと。
取り敢えず、戦い続けようとは決めた。やはり、することがそれ以外に見つからなかったからだ。だが、戦いだけというのも…。
先ほど、淘江と会った時、毎朝コーヒーを淹れてくれと頼まれたが断ってしまった。特に考えずに拒否していた。本心はどうあれ、私を必要とする言葉だったはずなのだが…。天然さんや玲花さんに同じようなことを言われたらどうだろうか?やはり、受け入れてしまうのだろうか。
少し、想像してみたが答えが出なかった。自分がよくわからない。私は今、何を求めているのだろうか。
「いずれ、わかりますかね」
そう呟いて起き上がる。さて、そろそろ夕食の準備でもするか。仕事の無い日は適当なもので自炊すると決めていた。冷蔵庫を開ける。
…何も無い。キャベツくらいか。仕方がないので、スーパーに行くことにした。
気がつくと、スーパー極彩に来ていた。無意識だった。天然さんに会いたい…そう思っていたのだろうか。いや、今は会うべきでは無い。が、買い物はしたいので入店する。会ったとしても、軽く挨拶をするだけで済ませよう。そう、自分に言い聞かせた。
適当に生鮮コーナーをうろつく。肉か魚か。まぁ、肉だな。鶏肉。ソテーでも作るか。
「あれ?執印さん?」
天然さんではない女性の声。陰山さんだった。
「あぁ、お仕事中ですか?お疲れ様です。なに、ただ買い物しに来ただけですよ」
適当にそんなことを言う。
「はい、バイト中です…お料理されるんですか?」
「まぁ、それなりに」
「そうなんですね!わたしは不器用であんまり得意じゃないんですよね料理」
陰山さんはそんなことを言った。不器用か、意外だ。
「…一つお聞きしてもいいですか?」
「なんですか?」
「天然さんは今日、いらっしゃるのでしょうか」
「あー、今日はシフト入ってないんですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
天然さんはいない。そのことに少し安心していた。陰山さんは私と天然さんの間に何があったかは知らない。多分、この前ここに天然さんを探しに押しかけたことも知らないだろう。
「あ、そろそろ仕事に戻らないと…じゃあ、また執印さん」
「えぇ、また」
去って行く陰山さんを見ながら、私は違和感を覚えていた。普通に会話できていた。攻撃的な考えも浮かばなかった。一体、私はどうしてしまったのだろうか。
買い物を終え、店を後にする。鶏肉くらいしか買わなかった。エコバッグを手に家路に着く。
「あぁ、そこの人すみません」
誰かに呼び止められた。
「なんでしょうか」
振り向くと、そこには男性が立っていた。歳は…私よりは上だろう。温厚そうな雰囲気を漂わせている。背丈は同じくらいだ。
「それが、道に迷ってしまって。ここら辺に住んでる人ですよね。スーパーから徒歩で帰ってますし」
妙に人を観察しているヤツだな。少し、警戒する。
「…目的地はどちらなのでしょうか」
「駅を目指してました。スマホの充電も切れちゃって」
不用心なヤツだ。まぁ…仕方ない。
「急ぐ用事もないので、案内しましょう。大して距離もありません」
本当に今の自分はどうかしている。こんなこと断るはずだ。
「ありがとうございます!」
私は男と共に駅を目指した。
「随分と親切な方ですねあなた」
歩きながら男はそんなことを言う。
「ただの気まぐれですよ。親切な人間ではありません」
「そうなんですか?そんな風には見えませんけど」
あまり勝手な印象で人を決めつけるな、と言ってやりたい。が、耐える。
駅に着いた。この妙な男ともここでお別れだ。
「いやー、ありがとうございます。助かりました。よければお名前教えてもらっても?」
このご時世に、名乗るヤツがいるだろうか。
「名乗るほどの者ではありません」
…臭いセリフみたいになってしまった。
「素敵ですね。ちなみにボクは蔵居悠斗と言います。では、さよなら執印國明さん!」
そう言って去っていった。
は?何故、私の名前を知っているんだ?
背筋が凍るのを感じた。昔の知り合いか?いや、あんな名前のヤツは記憶にない。最近、出会った人間も限られているし、それはほぼ絵の具の戦士たちだ。何か、嫌な予感がした。
「高校の卒業式以来かな」
わたしは合羽透くんと共に駅前の公園で話していた。
「そうだね。あれから…5年くらいか」
「昼飯さんは変わってなさそうだね」
「えー?そうかな。大人っぽくなってない?」
「少しなってるかも。でも、雰囲気とかはあの頃のまんまだよ」
あの頃。記憶に蓋が出来ない。どんどん溢れてくる。
「あだ名覚えてる?昼飯さんとボクは苗字が別の読み方出来るから変な呼ばれ方してたの」
「う、うん。覚えてるよ」
ダメだ止まらない。
「ボクは合羽だからレインコートって言われて、昼飯さんはランチとか言われてたよね」
他愛のない会話。なのに苦しい。思い出したくない。
「いや懐かしいな。クラスの中は派閥とか出来て大変だったけど、昼飯さんはどことも上手くやれてて凄かったよ」
頭が痛い。そうだ。わたしはみんなと上手くやれた。わたしだけ、みんなと上手くやれた。
昼飯さんは、夢奈ちゃんは、ランチは裏表なくて信用できる。他の奴らと違う。
橋渡しがしたかった。でも、無理だった。わたしへの信頼だけが高まっていった。亀裂は深まっていった。形だけの集団。息苦しい。みんなが仲良くなれたらいいのに、どんどんその理想は遠のいていく…。わたしがいなきゃまとまらない。いや、まとまってたのかな。
「昼飯さん?」
「ごめん合羽くん。ちょっと気分悪くて…。帰ってもいい?せっかく会えたのにごめんね」
立ち上がり、その場を後にしようとした。
「…辛そうな色だもんね」
合羽くんがそんなことを言った。
色?
「えっと…どういう意味?」
「そのままの意味だよ。ボクは昼飯さんが辛そうな色をしているってことが見えるんだ」
何を言ってるんだろう。高校時代、彼はこんなじゃなかった。あまり目立たない感じで、所属してた派閥も大人しめの所だった。
「キミを助けたい」
合羽くんは突然、わたしの両腕を掴んできた。痛い!
「痛い!やめてよ合羽くん!」
「わかってくれ!昔のクラスメートのキミくらいは救いたいんだよ!」
何言ってるの!?意味がわからない!
「やめて!」
彼を振り払い、わたしは逃げるようにその場を後にした。
自宅まで辿り着いた。息は凄く上がっていた。少し、落ち着こう。洗面所に向かい、顔を洗う。
「わかんないよ…」
合羽くんは異様だった。言っていることは何も理解できなかった。救いたい?どういうこと?
それに何より気になったのは、色、という言葉だった。マスターの存在が頭をよぎった。
まさか…合羽くんがマスター?でも、声は違ったよね。そもそも、マスターは人間かどうかもわからないし…。
ポケットの絵の具を取り出すと…淡く光っていた。周りはモノクロの無音の世界となる。
…ってことは先に四人あっちに行ってるのか。
「少し疲れてるけど…行くしかないか!」
絵の具を捻った!
天晴はあの世界に来ていた。目の前には…マスターがいた。
「やあやあフルカラーズ!今日は…赤、銀、マゼンタ、黒か」
振り向くと舞さん、写野さん、墨名くんの三人がいた。
「さて、前に言ったとおりやり方を変えるよ。セルズをこうやって…」
マスターの後ろには人がいた。大人…男性か?きっと攫われて来た人だ。その人にセルズが無理矢理押し込まれる。
「やめろ!」
俺は突っ込んでいた。
「彩色顕媄!」
赤の戦士が姿を現す!
後ろから銀、マゼンタ、黒の戦士も現れた!
「ありゃ、邪魔されちゃうな。彼に来てもらおうかな…」
マスターは指を鳴らした。
「さ、初陣だよ」
マスターの言葉と同時に俺の前に突如、人影が現れた…その姿は…銅色の戦士だった。両手に剣が握られている…二刀流か!?
「なっ…!」
不意を突かれた。敵の持つ双剣の剣戟が俺を襲っていた。かろうじて槍で防ぎ、距離を取る。
「天晴くん無事!?」
舞さんが叫んだ。
「えぇ!なんとか!」
ギリギリだった。敵はこちらを睨んでいるようだが、バイザーは濁っており顔は見えない。
「…絵の具の戦士か?」
写野さんが呟く。
「おい!お前も絵の具で変身してるのか!?」
墨名くんは大声で銅の戦士を問いただす。
「そうだったとして、キミたちに何か関係があるのか?」
酷く冷たい声だった。
「んだよアイツ…」
墨名くんは困惑している。俺たちと似た姿の敵がマスターに加えてもう一人現れたんだ、当然だ。
「…鮮やかで醜いな。消してやる!」
銅の戦士はこちらに突っ込んでくる!
「やるしかないわ!」
舞さんの声に俺は槍を構えた。墨名くんと写野さんも武器を構える!
『錆朽斬!』
銅の戦士が二本の剣を振ると、斬撃が飛んできた!そんなのありかよ!?
『ナイトシールド!』
舞さんが盾型のバリアを展開し、攻撃を防ぐ!…が斬撃を受けたバリアはあっという間に朽ちるように消滅した。
「なんだこの攻撃!?」
写野さんは焦った声を上げる。
「やられる前にやりゃいいんだよ!」
墨名くんが走り出した。俺もそれに倣う。
「二人とも!敵の攻撃に当たらない方がいいわ!」
舞さんの注意を聞きながら攻撃を放つ!
『ムーンハント!』
『アッパレストライク!』
俺と墨名くんの同時攻撃!敵は避けずに双剣で攻撃を受け後ろに飛んだ。
「もう一撃だ!」
敵が着地するタイミングを見計らって写野さんが素早く攻撃を放った。
『フルブレイク!』
斧の一撃が敵に命中する!
が、やはり剣で攻撃を受けていた。
「随分、器用だな」
写野さんは落ち着いてそう言った。
「やはり…醜い…」
敵がそう呟いた。
「おーい!出来たよー!」
マスターの声がした。隣にはドギツイ配色をしたバッタの怪人がいた。
「えーと、キミの名前はシュプリンゲン。さ、行きな!」
バッタは跳躍するように写野さんに飛びかかった。凄いスピードだ!
「写野さん!」
彼は敵に掴み掛かられ体勢を崩した。俺はそれを見て助けに走る!
『アッパレストライク!』
槍の一閃!が、避けられた。すばしっこい!
「二人とも危ない!」
舞さんの叫び。気がつくと銅の戦士が俺たちの目前に迫っていた。
『デュアルスラッシュ!』
怪しい銅色のオーラを纏った剣の乱撃が俺たちを襲った。地面を転がる。
「陽向くん…無事…か?」
俺を心配する写野さんの声は弱々しかった。そんなに強い攻撃じゃなかった気が…。いや、俺もやけに身体がだるい。なんだ?
「おい!二人とも色薄いぞ!」
俺たちの元に駆けつけた墨名くんがそう叫んだ。自分の身体を見ると赤色がかなり薄くなっている。隣の写野さんのマゼンタもそうなっていた。
『錆朽斬!』
『ナイトシールド!』
また、斬撃が飛んでくる!舞さんのバリアは攻撃を防ぐがすぐに朽ち果てた。
「甘い!」
銅の戦士が言った。斬撃はもう一発残っていた!時間差攻撃か!?
「させるか!」
なんと、墨名くんが攻撃を鎌で受けた。…彼の色も薄くなり始めた。
「夜星!」
写野さんが墨名くんを心配するけど、彼自身もキツそうだ。
「おぉ!これは行けそうだね。シュプリンゲン!」
バッタがこちらに突っ込んできた!ダメだ…身体が動かない!
『シルバースロー!』
舞さんが後方から盾を投げたが、銅戦士が防いだ!やばい…ここまでか!?
「させないよ!」
突然聞こえた声と共にバッタは動きを止めた。声の主は…。
「昼飯さん!」
写野さんが叫んだ。バッタは昼飯さんの鞭で動きを止められていた。
「…!」
何故か銅戦士も動きを止めていた。とにかく、今しかない!
「二人とも!一か八かで!」
力が出ない今、同時攻撃でもしないと敵を倒せないと思った。とにかく、狙うのはバッタだ!
『アッパレストライク!』
『フルブレイク!』
『ムーンハント!』
三人同時攻撃!敵は吹き飛ぶが…爆散はしない…俺たち、かなり消耗してるみたいだ。
「わたしもやるよ!」
昼飯さんが鞭を構え、バッタに狙いを定めた!が、その瞬間、バッタは爆散していた。俺たちの攻撃が効いてたのか?いや、違う!
「あれ…何してるのかな?」
マスターがやけに落ち着いた声で言うのが聞こえた。爆散し、人の姿に戻るバッタの横には銅の戦士がいた。アイツがやったのか?
マスターの問いに銅の戦士は答えなかった。な、なんのつもりだ?
光に包まれる…。
透明な世界。
「なんで、あんなことしたの?まだ、どうしたいか決まってなかったのかい?」
銅の戦士に問いかけるマスター。
「…」
返事はない。
「まぁええやないですかマスター。この子、戦い始めなんやし、あんまキツく言わんでもええと思うで」
「フェアヴィシェンは優しいなぁ…そうだね一理あるよ」
マスターは戦士に近づいた。
「次は頼むよ?色を早く失くしたいって言ってたのはキミなんだから」
肩を掴み、そう告げた。
「わかっています」
戦士の声は震えていた。
次回ッ
第三十二話 手を取り合う白昼夢!




