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第二十五話 失くした鈴の音

「おはようございまーす!」

あたしはスーパー極彩に出勤していた。大学入学でバタバタしてたから久しぶりのバイトだ。

「おー、天然さん久しぶりやな。仕事忘れてへんか?」

山海勉さんかいつとむさんはいつもと変わらない調子で話しかけてくる。

「何言ってるんですかー!忘れるわけないじゃないですか!」

「あっはっは!そうやな。んじゃ、今日もよろしく頼むで!」


時刻は18時ちょっと前。仕事の準備をするため事務所へと向かう。


「失礼しまーす」

勢いよく扉を開ける。中には天晴と陰山さんが揃っていた。

「おっ!おはよう鈴」

天晴はいつも通り明るい声だ。

「おはよう天然さん」

陰山さんもいつも通り落ち着いた声。

何も変わらない。


「天晴も大学始まったの?」

「ああ、一昨日から。履修登録やらなんやら…大学生って結構、大変だな」

「わかるー。自分で予定組むの大変だよねー」

共感。天晴はやっぱり鈴も?みたいな顔をした。よし。

「大丈夫だよ。意外になんとかなるから」

陰山さんは微笑みながらそう言った。

「やー、不安ですよー。困ったら助けてくださいねー」

「わかった。でも、全部わたし頼みってのはダメだからね」

柔らかく受け止めてくれる。けど、なんかいつもと違う気がした。全部許容みたいな感じじゃない。

「…陰山さんなんか変わりました?いや、その勘違いだったらごめんなさい」

違和感に耐えられず聞いちゃった。天晴は気づいていないのかな?


あたしが聞くと、天晴と陰山さんは顔を見合わせて吹き出した。

「あ〜、そう思う?」

天晴。

「変わったわけじゃないんだけど…なんだろ、変えてみたって感じかな?」

陰山さん。変えてみたってどういうこと?


「なんで変えたんです?」

素直に疑問。べつに、陰山さんは変わる必要なんてなかったと思う。

「うーん、陽向くんや…チームのみんなの…まぁでも自分のためかな1番は」

「自分の…ため…」

なんだろう。胸が苦しい。キュッてする。


「人に合わせすぎないことにしたんだ。わたし…それに陽向くんもね」

「そうっす…ね」

二人は目を合わせて軽く笑う。変わらず、あたしは胸が苦しいままだ。


「へぇ〜。良いですね!」

笑顔で言った。言えたと思う。

「変わるか〜。変わるって怖くないですか?なんか…別人になるみたい」

無意識に言葉にしていた。そんなつもりなかったのに。


「考えすぎじゃね?大体、変わったとしてソイツはソイツだろ。別人ってことはないだろ」

天晴はそう言った。


そう、そうだよね。別にそこまで深刻なことじゃないよね。


「っと、そろそろ仕事始めないと、行こうか」

陰山さんの言葉にあたし達は事務所を後にした。



退勤。時刻は22時。天晴と陰山さんは23時までのシフトだったから、あたしは一足先に上がりとなった。


「お疲れ様でーす」

みんなに声をかけ、家路に着く。

出勤前の会話が頭の中で反芻する。それと…昼飯ひるいさんの自然体っていう言葉。


自然…か。

スマホが鳴った。國明くんから電話。この前、かけてきてから頻繁にかかってくるようになった。電話に出る。



「ふぅ…」

また、私は必要か?と言った内容だった。


必要だよ。いつも助かってる。


返す言葉はいつも同じだ。それでも、彼は満足そうに電話を切る。何か…あったのかな?この前の戦いの時、宝城さんと揉めてたみたいだし…それが原因なのかな。

またスマホが鳴る。

夜星くんからメッセージが来ていた。


『鈴〜!バスケ部の女子の先輩が可愛い可愛いってめっちゃ言ってくるんだよ!ひどくねーか!?』


相変わらず、夜星くんは可愛いな…。


『ひどいね!夜星くんはカッコいいのにね!』


即座に


『だろ!?』


と返ってくる。


可愛いっていうと嫌がるのはわかってるけど、やっぱり可愛い。カッコいいって言うと喜ぶところなんか、特に可愛い。簡単に喜んでくれる。


「あーあ」

空を見上げながら声を出してみた。

「なにしてんだろ、あたし」

呟く。

最近、真士さんは会うたびに過保護になってる気がする。あたしが安心したみたいな感じのこと言うとホッとした表情するし…よくわからないな。


みんな、あたしのこと好きになってくれてる。天晴も…あと才二くんもだよね。あたしは好かれてる。


…人に合わせすぎない。

…自然体。


「なんか…疲れちゃった…な…」


OP


「あのさ、鈴から連絡返ってこないんだけど…なんか知ってるか?」

学校の教室。昼休み。夜星おれ雷電らいでんに問いかけていた。知ってるわけないけど…とにかく聞きたい気分だった。


「えっ、天然さん?うーん、ごめん。わかんない。そもそもあんまりあの人と話したことない…」

雷電は眉を下げてそう言った。

「そう…だよな…。悪い」

おれは焦りすぎてるのかもしれない。昨日の夜


『アイツらおれのカッコよさ伝わんないんだなあ』


って送ってから返信が今まで無いだけだ。いつもならすぐ返ってくるし、最低限スタンプとか送ってきてた。多分、寝ちゃったんだ。既読もついてないけど…寝てるだけ。平日だけど…寝てる…だけだよな。


「他のイエローの人たちに聞いてみたの?」

雷電の言うことは最もだった。

「いや、まだ聞いてない。学校終わったら…聞いてみる」

「そうしてみて。わたしは…天晴と木葉ちゃんに聞いてみるね。確か、同じところでバイトしてるって言ってたから」

「なんか…ありがとな雷電」

「気にしなくていいよ。クラスメートでしょ?」

そう言って雷電は柔らかく笑った。いつかみたいにおれの胸はドキドキと音を立てる。

バカかおれは!?鈴を心配してるのに…。何考えてるんだ!?


「ねぇ…せっかくだからお昼一緒に食べない?」

え。マジで言ってんのか?ただでさえクラスの女子どもに冷やかされてんのに…火に油って言うのかこういう時は。

「ま…まぁ…別にいいけど」

断ろう。という気持ちとは裏腹に口からは了承の言葉が飛び出していた。ホント何やってんだよおれは…。


屋上。学校の屋上って大体、封鎖されてるみたいなことを聞いてたけど、ウチは解放されてた。横に長い、フェンスに囲まれた空間。今日は天気が良くて目が眩んだ。


まばらに並んでるベンチに腰掛け、おれは母親が作ってくれた弁当を広げる。白米に…唐揚げ、卵焼き、ほうれん草…冷食が殆どだけど結構美味い。雷電も弁当を広げていた。おれの弁当箱より少し小さめ。サンドイッチとウィンナー、ミニトマトなんかが入っていた。なんか…可愛い弁当だな。


「墨名くんのお弁当…男の子って感じだね」

雷電がそんなこと言ってきた。

「まぁな、おれは可愛さとは無縁の男だからさっ!」

「あは、そうだね。墨名くんは可愛いって感じしないもん」

「えっマジ?」

適当に言ってる?と思ったけど雷電の目は真っ直ぐだった。

「なんていうか…一所懸命でカッコいいと思う」

心臓が跳ねた。え?今、おれのことカッコいいって言ったよな…。えっ?

「えっと…今カッコいいっておれのこと…」

「あ、天晴から返信きた」

ガックシ…。話題が変わった。


「んー…天晴も天然さんのことわかんないって。けど、昨日はバイト一緒で変わりはなかったってさ」

「そっか…。じゃあ、たまたま返信が無いだけなのかな」

「そうだといいよね…。あ、天晴にありがとって言っとかないと…」

返信しようとする雷電の顔はなんか楽しそうに見えた。なんだよ…お前もあの、陽向天晴ひなたてんせいとかいう男がいいのか。木葉さんと一緒じゃん。って、雷電はどうでもいいんだって…鈴だよ鈴。


雷電への気持ちを誤魔化すみたいに弁当をかき込む。

それを見た雷電が

いい食べっぷりだね!

とかニコニコしながら言ってくるからあまり誤魔化せなかった。



夕方。駅前の広場。

國明わたしはある男と出会っていた。人の良さそうな、いかにも善人ですといった顔をしたガキと。

「で、何用でしょうか」

出来るだけ威圧的に言った。こうして会っている時間が無駄だからだ。相手は…若月才二は目をやや逸らし、少ししてからこちらを見て口を開いた。


「連携のための話をしに来ました」

出たな。くだらない話だ。

「もうその話題は飽きました」

何度目だろうか。本当にしつこい。鈴様に全てを委ねれば…それで解決だというのに。

「そう言うと思いました。でも、鈴さんはこの話を了承してくれています。彼女の意思に反するということ…ですか?」

なんだコイツ。頭に来るな。鈴様を引き合いに出せば私が言うことを聞くと思っているのか?舐められたものだ。

「いい度胸をしてますね。鈴様の名を出せば私が従うとでも?」

意識するまでも無く、自分の声は圧のあるものになっていた。若月は萎縮したのか、真後ろにいる女に小声で何か言う。


「舞さん!ダメじゃないですか!かなり怒ってますよ!?」


なるほど、あの女の入れ知恵か。


「何してるの。気圧されたら話にならないでしょう」

女は淡々と返す。コイツも頭に来るな。私のことを丸めこめると踏んでいるのか?


「まぁ、良いでしょう。了承は得た…と言いましたね。鈴様に直接、確認を取れば済む話です」

スマホを取り出し電話をかける。今日は確かバイトも無く、この時間は連絡が取れるはずだ。若月才二わかつきさいじはわかりやすく狼狽えていた。




…おかしい。出ない。何故だ?もう10回ほど呼び出しが鳴っているというのに出る気配は無い。出られないのだとしたら電話を切り、今は出られないと連絡してくるはずだ…経験上、鈴様はそうする方だ。


もしや…何かあったのか?

鳴り続ける呼び出し音を聞きながら私はそう考える。心臓がそれよりも激しい鼓動を奏でている。


「若月才二…貴様、鈴様に何かしたか?」

自分でも声が震えているのがわかった。クソ、落ち着け。

「い、いえ、何も…してないです。な、何かあったんですか?」

嘘はついてはいなさそうだ。どうする…後ろの女にも聞くか。

「あなたは何か?」

「いえ、私も何もしていないわ…チームの人に聞いてみればいいんじゃないかしら」

「チッ、言われなくてもそうするさ」

荒い指遣いでSNSを開く。と、墨名夜星となひかりから連絡が来ていた。コイツのことはミュートにしていたので気がつかなかった…。


『すんません、急に連絡して。昨日の夜から鈴と連絡が取れないんだけど…何か知ってます?』


…!アイツも連絡が取れないのか…しかも昨日の夜?やはり、何かあったに違いない!


「若月!悪いがお前と話している暇は無くなった!」

私はヤツに背を向け駆け出した!


「ちょっ…執印さん!」

後ろから声がしたが無視した。今、気にすることではない。足を早めた!



写野真士まのしんじの自宅。

俺は仕事を終え、スーツを脱ぎ、床に座り込む…とスマホが鳴る。画面を見ると國明だった。しかも電話。なんだ、珍しいな。


「はい、写野です。どうかしたか?」

仕事の癖が混じった変な応答。

「写野⁉︎鈴様に会ったか⁉︎」

國明の声は激しかった。何か、追い込まれているような感じがする。

「どうした?随分と必死そうだが」

「連絡が取れない!墨名も…昨日から連絡が取れないと言っていた!」


血の気が引くのを感じた。

頭の奥底に封じられていた記憶が一気に解放される。



紗姫と連絡が取れない…


やっぱ…あの子きつかったんだよ…


俺は…俺は側にいたのに…何もッ!


自分を責めるなよ真士…俺も…居たのにな…



息が…荒くなっている…。落ち着け、落ち着け!

「何があったんだ…⁉︎」

出来るだけ声を落ち着ける…があまり意味をなさなかった。

「わからない…早とちりかもしれない!だが、もしものことが…」

「わかった。俺からも連絡を取る」

そう伝え、一方的に電話を切る。


「クソォッ!」

俺は思い切り部屋のゴミ箱を蹴り飛ばしていた。中身が一気に散乱する。ダメだ、抑えが効かない。ちょっと連絡がつかないだけだ、焦ることはない…はずなのに!


「深呼吸だ…深呼吸…」

…少し…落ち着く。そうだ、鈴に連絡しないと…!


「頼む…頼む出てくれ!」

呼び出し音は無常にも何度も繰り返される。俺の願いを嘲笑うみたいに。


「出ないッ!」

あぁ!俺はまた後手に回った!クソ!クソ!クソがっ!俺はなんでこうなんだ⁉︎


どうする?何をしたらいい?スマホが鳴る。確認すると國明だった。


『鈴様のバイト先に来たが門前払いされた』


そうか…!バイト先!陽向天晴ひなたてんせい陰山木葉かげやまこのはは鈴と同じ場所で働いている!

陰山さんに連絡…!と思ったところで指が止まった。以前、鈴の件で話して以降、彼女は俺を避けているようだった。


…陽向くんを頼るか。カラオケBOXで半ば強引に連絡先を交換していたのがこんな所で役に立つとはな。


問いを送るとすぐに返信があった。


『墨名くんからも聞かれたんすけど、昨日の夜は普通でしたよ。何かあったんですか?』


普通だった…。外面は…そうか…。どうする…陰山さんにも聞いてみるか⁉︎だが…いや、背に腹は代えられない!

意を決して陰山さんに連絡する。


!?


頭がヒリつく!予兆か…こんな時に!

いや、待て。もしかしたら鈴が現れるかもしれない。そうだ、それに賭けよう。


空間が捩れる。



あの世界。俺以外の3人は誰だ⁉︎素早く周りを見渡す。


…鈴は居なかった。居たのは陽向くん、陰山さん、そして…淹煎ようせん


「あ、写野さん。鈴ってばどうかしたんすか?」

「…いや、少し連絡が取れなくてな」

「少しなら、そんな慌てなくてもいいんじゃ?」

「…そう、かもな」

他人事みたいに言うな!怒鳴り散らしそうだったが必死に飲み込んだ。それよりも、陰山さん!彼女が居たのは好都合だった。


「陰山さん!」

「ひゃい⁉︎」

勢いよく彼女の肩を掴む。

「教えて欲しい。鈴のことだ。君は人のことをよく見ている子だと思う。昨日の鈴におかしな所は無かったか?」

頼む。なんでもいい、なんでもいいから教えてくれ。

「おい真士、そんな勢いよく聞くから陰山さんビックリしてんじゃんよ」

淹煎が割って入る。

「うるさい…お前は入ってくるな」

「…悪かったな」

淹煎は目を細め俺を一瞥し離れた。


「ま、写野さん…痛いです」

陰山さんの言葉に俺はハッとした。

「す、すまない。急に掴んで悪かった。申し訳ない」

「…はい。っと、天然さんの話ですよね?昨日は普通そうに見えました。でも…」

でも⁉︎なんだ、何かあったのかやはり。

「何か引っかかってるような雰囲気はありました。変わるのは怖いみたいなことを言ってたので、何か悩みでもあるのかな…という気が」

「なんで⁉︎聞かなかった⁉︎間に合ったかもしれないだろ⁉︎」

ダメだ、止まらない。

「真士!」

気がつくと淹煎に胸ぐらを掴まれていた。

「お前なぁ…気持ちはわかるけど、言い方があるだろ?陰山さんにそこまで言う必要あんのか?」

「…」

何も言い返せない。

「写野さん…悪いですけど…今みたいのはやめてください」

陽向くんが見たことのない歪んだ表情で俺を見ていた。


「悪かった。本当に申し訳ない」


「おーっと!仲間割れかァ⁉︎」

声がした、後方からだ!身体を向けると、スポイトの怪人、エキストラが居た。


「丁度いいな、色ももうちょいで抜けるし…今回こそ回収成功?」


「させるわけないだろ!」

陽向くんが叫んだ。

「行きましょう!」

絵の具を構え、それぞれの武器が手に握られる。


「「「「彩色顕媄‼︎‼︎」」」」


赤、緑、マゼンタ、茶の戦士が姿を現した!


「今回は俺一人じゃないんだぜ!」

そう叫ぶエキストラの背後には大きな影があった。


クヴァレ…!


「謹慎は終わった。潰す。死なない程度にな」

淡々と言い放つ。


「おいおい、あのデケェくらげみたいなヤツはなんなんだよ」

淹煎が妙に早口で聞いてくる。そうだ、コイツは戦ったことがないんだ。

「敵の幹部みたいです。前に8人がかりで戦ったんですけど勝てなくて…」

陰山さんが答えた。

「なるほど。じゃあ、今回は結構ヤバいかもしれないってことか」


「油断してんなよ!!!」

エキストラの連射攻撃が襲いかかってきた!どうやら悠長に作戦なんかを考えさせてはくれないらしい。皆、バラバラに散開する。


とにかく、早く現実に戻らないと…。鈴を探さなくてはならない。

そのためにもエキストラを潰す!


「消えろ」

斧を振りかざし突っ込む!

「待て真士!」

淹煎の声がしたが関係ない!


「自分から突っ込んでくるとは間抜けだな!」

連射攻撃は俺に狙いをつけた!斧を壁代わりにそのまま突っ込み続ける!

その時、緑の閃光が敵の方へ伸びるのが見えた。陰山さんか!


しかし、弾かれた。クヴァレの触手が攻撃を防いだのだった。やはり、あの敵は強い!


距離は詰めた!全力の一撃を叩き込む!後ろのクヴァレごと叩き切る!


『ディープブレイク!』


大振りの一撃!


手応えはあった!だが…斧を振り切れていなかった。クヴァレの触手だ!


「クヴァレ!」

「弱いな、私には勝てない」

「隙だらけだぜ!」

エキストラの連射が俺を襲う!


クソ…このままやられるのか?いや、ダメだ鈴を見つけないといけないんだ!


「攻撃を止めやがれ!!!」

「写野さん!」

そこに淹煎と陽向くんが現れた!


『インパクトドリップ!』

『アッパレストライク!』

二人の同時攻撃!

エキストラは吹き飛んでいったが、クヴァレは多少のけ反っただけだった。


「おい真士!大丈夫か!?」

「大したことない…これくらい」

「二人とも!やばいですよ!」

陽向くんの荒っぽい声にクヴァレがピンピンしていることを思い出す。


「三人で勝て…」

クヴァレが言いかけた、瞬間、陰山さんの射撃がコイツの頭に命中した。…があまり効いてない。


「四人か…だが結果は変わらん」


「もっといるかもよ!」

突然、乱入してきた声…それと共にクヴァレは鞭で拘束された!


「何っ!?」

「最高のタイミングだ夢奈!」

困惑するクヴァレ、一気に盛り上がる淹煎!

「ボクたちも居ますよ淹煎さん!」

そこに青色の少年と銀色の女性も現れる。


「写野ッ!鈴様は!?」

國明も現れた。コイツも…こっちに来れば会えるかもって算段だったんだろう。


「いない」

「…!」

最低限、事実を伝える。


「ちょっとー!今のうちに皆さんお願いします〜!そんなに耐えらんないですから!」

夢奈とかいう女が叫んだ。そうだ、一気に片付けよう!赤、緑、茶、青、銀、シアン、マゼンタ…7人同時攻撃なら行けるかもしれない!


「一気にいきましょう!」

陽向くんの声を合図に攻撃を放った!


『アッパレストライク!』

『サイレントアロー!』

『ダブルインパクト!』

『蒼天乱打!』

『シルバースロー!』

『ディープクラッシュ!』


同時攻撃がクヴァレを襲った!これは…やったか⁉︎


夢奈という女性が鞭を手放した…まさか…。


「…舐めるな」

クヴァレがそう言うと鞭の拘束は解かれ、触手がそれぞれ個別の意思を持つように俺たちを襲った!


まただ…勝てないのかコイツには?


「やるな…だが一手足りなかったな」

クヴァレは息が上がっているようだった。効いてはいるのだろうが…。

は?一手足りない?あと一人いればってこと…


いや違う。夢奈はとにかく、一人攻撃していないヤツがいた。


國明!


アイツの居た所を見る。武器を落とし、立ち尽くしていた。何やってんだアイツ!?


「さて、エキストラ、色は抜けたか?」

「はい!クヴァレ様、綺麗に抜けてます!器の人間も回収済みです!」


光の柱が敵たちを包んだ。な、なんだ⁉︎


「やるねぇ二人とも。久しぶりに仲間を増やせるよ」

これは…マスターの声か?

光に包まれ、クヴァレとエキストラは姿を消していく…後方には怪物と色の抜けた人間がいた。まさか…助けられなかったのか?


「連れてかれた…」

陽向くんがポツリと言った。そうか…完全に負けたのか俺たちは…。それよりも!


「國明!お前何してる⁉︎あのクヴァレとかいうヤツを倒せるチャンスだったんだぞ⁉︎」

國明の元へ走り思い切り肩を掴む。本当に何やってるんだコイツは⁉︎

…何かボソボソと喋っている。なんだ?


「鈴様…鈴様…どこへ…」


目は虚、何処を見ているかもわからない。顔面蒼白といった様子だった。


「國明…お前」


光に包まれた。




現実。

戦いに負けた、人を連れて行かれたという実感よりも考えることがあった。

鈴の行方…。


「どうする…どうすれば…!」

何処かに探しに行きたいが当てはない。八方塞がりだ。

そうだ、戦いだ!何度も戦いがあれば、鈴が最初の四人に選ばれて会えるかもしれない。


予兆…来い…来い!


来るわけが無い。戦いを終えたばかりだ。そんなことはわかっているのに祈っていた。


スマホが鳴る。まさか、鈴か⁉︎


画面を見ると淹煎だった。なんだ、なんの用だ⁉︎


『俺と会え真士

誘いとかじゃない

絶対に来い、俺ん家だ

位置情報は送っとく』


なんのつもりだ?

だが、少し気分を落ち着けたかった。居酒屋の時みたいに頭に来る話をされるかもしれないが、別のことを考えられるかもしれない。


『わかった』

とシンプルな返信だけをして、俺は淹煎の家へと向かった。



次回ッ!

第二十六話 過去は振り切れ、斧は振れ!

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