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第二十四話 混色パニック!

木葉わたしは公園に来ていた。よく話し合いで訪れていた公園。あまり、良い思い出みたいなものは無いな…思い出そうとすると少し頭が痛くなってきた。取り敢えず、テーブルベンチに掛ける。

それにしても…。陽向くん、宝城さん、紫ちゃん。3人と共に戦い始めた頃を思い出すことにした。


あの頃は、本当に足並みも心も揃っていなかったな。時間はかかったけど、上手く力を合わせられるようになったと思う。宝城さんとは、今みたいに相談し合える仲になれるとは思わなかったし、紫ちゃんも本当はああいう大人しい子だとは思わなかった。

陽向くん…陽向くんは…。


今、彼は自信を失くしている。

前に宝城さんから話を聞いた。


きっかけはわたしだろう。4人でまとまれそうだったのを、まとまろうと積み上げてきた関係をわたしは壊した。


机の上をぼうっと眺める。と、メガネが少し汚れているのに気付いた。メガネ拭きを取り出し綺麗に拭き取る。入念に拭き取った。


「陰山さん」

突然、後ろから声がした。普段なら驚いて声を上げていたところだが、今日はそうはならなかった。メガネを掛け直し、立ち上がり、声の主に身体を向ける。


「陽向くん…」

目の前には陽向天晴ひなたてんせいが立っていた。わたしが呼び出したんだ。


「久しぶりだね…ってそうでもないか」

言葉は詰まることなくすらりと口から出た。自分でも驚いた。

「そうっすね…」

俯きながら彼は答える。


あぁ…宝城さん。あなたの言う通りだね。陽向くんの顔は記憶にあるものと違った。たまにシュンとすることはあったけど…今までの表情とは違う。そんな顔もするんだね。


「今日はさ、陽向くんと話したくて。来てくれてありがとう」

慎重に言葉を紡ぐ。

ごめんね。という言葉が喉から出かかっているが、グッと飲み込む。それは言わない。言うとしても今じゃない。夢奈さんの、ちょっと辞めてみよ?という言葉を反芻する。そう、ちょっと辞めるだけ。禁止じゃない。


「はい…」

彼からは聞いたことのないような暗い声が出てくる。

「…ほら、立ち話じゃ疲れちゃう。座ろう?」

わたしが促すと陽向くんはゆっくりとした足取りでテーブルベンチに座った。


何か視線を感じる…。辺りを見回すが子連れが遊んでいるだけだ。こちらを観察するような人影は見えなかった。


少しの沈黙。陽向くんはテーブルに視線を落としている。わたしの顔を見ようとはしない。いや、見れないのかな。


「ねぇ、陽向くん。わたしを見て?」


OP



わたしの言葉に彼は強く反応したみたいだった。こちらを見る。その目は少し揺れていた。

「そんなにビックリしなくても…。別に、怒ってるわけじゃないんだから」

いつも通り、変わらない声のトーンで話す。だが、あまり意味がなさそうだ。彼が震えているように見える。

「ねぇ…どうしたの?」

「俺ッ!」

陽向くんは不意に大きな声を出した。言葉というよりは叫び。


「俺は…陰山さんのこと…見てませんでした」

えっ。

「それは…どういう意味?」

さっきわたしは、単純に自分のことを、姿を視界に入れて欲しいという意図で『見て』と言った。でも、違う意味で捉えられたみたいだ。

「俺…ずっと盛り上げて、明るくすれば良いと思ってました。そしたら皆も着いてきてくれるし、助かるだろうって…」

机に身を乗り出し、彼は言葉を続ける。

「それで…それが良いと思ってました。でも、それが嫌な人もいるんだとか考えてなかった。自分が暗い空気とか耐えらんないだけなのに…」

「陽向くん…」

なんだか、全く別の人みたいだ。わたしの知る陽向天晴という人物では無かった。


「すみ… ごめんなさい。ごめんなさい陰山さん」

彼はまたテーブルに視線を落とし、ボソボソと謝罪の言葉を口にした。

「ねぇ」

わたしの言葉に陽向くんの肩が揺れた。

「謝らないで」

「で、でも!」

顔を上げた彼の目は少し煌めいていた。

「あのね、わたし達って結構長い付き合いじゃない?」

陽向くんは小さく頷いた。

そう、彼とは一年くらいの付き合いだ。バイト先、スーパー極彩に入って来た彼の教育係はわたしだった。明る過ぎる彼に振り回されて疲れることはあったし、逆に励まされることもあった。

「お互い、なんていうか…慣れちゃってたのかもね」

「慣れる?」

「うん。2人でいるときとか、それ以外でも…いつも通りの雰囲気で、調子でみたいな」

上手く説明できないな。それに、わたしは今、彼をどうしたいんだろう。元に戻したい?いや、それじゃダメだ。何も変わらない。


「わたしはさ、陽向くんは手のかかる後輩だなって、いつも明るい子だって思ってた。そういう人だってイメージがついてた」

陽向くんは黙ってわたしの話を聞いている。こちらを凝視している。

「だから、今の陽向くんは…凄く…変だなって思う」

「えっ、変?」

少し彼の表情が緩んだ。知っている顔に近づいた。

「そう。変。って思うのは陽向くんはそんな人じゃないってわたしが勝手に思ってるからなんだよね。おかしいよね、陽向くんのこと全部知ってるわけでもないのに」

ちょっと笑って言ってみたけど、彼の表情はあまり変わらなかった。


「陽向くんはさ…わたしをどんな人だと思ってる?」

問いかける。もう少し、彼に喋ってもらわないと。

彼は目を瞑り、少し唸っていた。数秒の沈黙の後、何かを捻り出すかのように目と口を開いた。

「俺は…陰山さんのこと良い先輩だって思ってます。大人っぽくって、気遣いができる人で、俺が騒いでても受け止めてくれて…なんか…」

「なんか?」

「お母さんみたいだって」

「えぇ⁉︎お母さん⁉︎そんな風に思ってたの⁉︎」

衝撃。自分でも信じられないくらい大きな声が出た。


「あのねぇ、陽向くん?わたしまだハタチだよ?お母さんって酷くない?」

「ごめんなさい!いや、その…悪口とかじゃなくて…思ったことっていうか…あ、それがダメなのか…」

「もう…失礼しちゃうな」

「ごめんなさい…」

「ふふっ、気にしなくて良いよ。でも…そうかぁ…そういう風に思ってたんだね、わたしのこと」

少し…空気が軽くなったような気がした。

「えっと…なんの話だったっけ…あぁそう!そういうことなんだよ。お互いに思い込みがあったっていう」

「思い込み…」

「そう思い込み」

彼はまだよくわかってないみたいだ。

「先入観っていうのかな…。だから、遠慮しなくなってたんだよねわたしたち。わたしも陽向くんのこと見てなかったって感じかな」

わたしは少し身を乗り出してみた。陽向くんの顔が少し近づく。彼は一瞬、目を見開いたがわたしから距離を取ろうとはしなかった。


「やりなおそう」

これが結論だ。

「やりなおす…ですか」

「うん。完全に一からってのはできないけど、またお互いを知っていかない?今日が新しいはじめまして…ってどう?」

陽向くんは黙ってしまった。無理な提案だったかな。


「いいんですか?」


「いいよ。わたし達…チームでしょ?絵の具を使う前から…バイトのチーム。また、一緒に頑張っていこ?」


「…はい!お願いします陰山さん!」

「あ!一つ約束しない?」

「え、約束ですか?」

「そう、約束」

息を整える。大事なことだ。しっかりと伝えなくては。


「しんどい時はお互いにちゃんと言おう?わたしは陽向くんがしんどいって思わない人だって思ってた。多分、陽向くんも似たようなことをわたしに思ってたんだと思う。だからちゃんと口にすること!まぁ…それ苦手なんだけどねわたし」

「はい!」

彼の表情はいつの間にかよく知るものに戻っていた。


「アッパレだね、陽向くん」

「あっ、それ俺のセリフですよ…」

「ふふっ…ごめんね」

あ、謝っちゃった…。でも、今のはいいよね夢奈さん?


「陰山さん!」「木葉ちゃん!」

突如、知っている二つの声が耳に入った。


「えっ!宝城さんに紫ちゃん⁉︎」

彼女らは公園の茂みの陰から姿を現し、こちらへ駆けてきた。まさか…見てた?


「申し訳ないです。その…陽向くんから

陰山さんと話すけど2人だけがいい

と言われていたのですが…どうしても気になって」

「ねぇ木葉ちゃん!戻って…くるの…?」


一気に騒がしくなった。あぁ、レッドチームだ。なんだか懐かしい。そんなに時間は経ってないはずなのに。


「うん…でもいいの?わたしから離れたいって言ったのに」

「わたしは!木葉ちゃんに居てほしい!だってチームだったって言ってくれたじゃん!」

「私もです。貴方の存在はチームに必要です。私には出来ないことが出来る人ですから」

「俺も…」

陽向くんが口を開いた。


「陰山さんと一緒がいいです。居なくなってから気付いた…って言うと酷いですけど、陰山さんがいないと…俺自身盛り上がらないっていうか」

なんだかみんなの顔が見れなくなってきた。顔が熱くなる。


「わたしは…そんな風に言ってもらえるような人じゃないよ」

自分で思ってるより小さな声でそう言った。

「そんなことないです!陰山さんは…俺たちのチームの…大事なメンバーなんですから」


陽向くんの言葉に胸がスッと軽くなった。

ありがとう。チームの1人だって思ってくれて。


「これからまたよろしくね。わたし、心の底から…戻りたいって思う。そう言って貰えたからとかじゃなくて、わたしが戻りたいって思えるから…。"みんな"でチームとして、支え合って…戦おう!」

また、上手くいかないこともあるかもしれない。でも、きっとどうにかなる。わたし達なら。そう信じよう。




来た!頭がひりつく感覚…。予兆だ。


「皆!予兆来てる?」

わたしの問いかけに答えたのは紫ちゃんだった。

「うん!来てるよ!」

紫ちゃんは溌剌とした表情だった。

「俺と宝城は合流組になりそうっすね」

「陰山さん。初動はよろしくお願いします。必ず助けに行きますから」

2人が取り出した絵の具は僅かに光っていた。

「行こう木葉ちゃん!」

「うん!」


空間が捩れる…!




あの世界。変わらず、空は絵の具が混じり合ったみたいな不思議な色で捩れるみたいに流動している。隣には紫ちゃんが立っている。あと2人は…!


「あっ、陰山さーん!」

「鈴様はまた…いないのか」


夢奈さんと執印さんだ。


「おいおい…せっかく、色抜いたセルズの回収出来そうだったのに…」

声の方に私たちは注意を向けた!スポイトの手をした怪人!確か…エキストラって才二くんが言っていた。崖みたいな地形の上に立っている。

「デュンもやられて残りも少ねえからさ邪魔すんなよなぁ!」

敵はこちらに手を向け射撃の体勢をとった。


「木葉ちゃん!」

「うん!夢奈さんと執印さんも戦闘体勢を!」

「おっけー!」

「チッ…仕方ないか」


『『『『彩色顕媄‼︎‼︎』』』』


緑、紫、白、シアンの戦士が姿を現した!


「消し飛べ絵具戦士ども!」

エキストラは両手から弾丸を連射する!防げる宝城さんや舞さんはいない…。避けるしかないっ。


指示をするまでもなく皆、上からの攻撃をしのぐためバラバラに散る。1番近くにいるのは…執印さんか。


「ちっ、面倒だな…。でもここまで登ってこれなきゃ俺の負けはない!」

エキストラは執印さんに狙いをつけた!

「まずはお前からだ!」

させないっ!


『サイレントアロー!』

緑の閃光が敵へと真っ直ぐ伸びる!いける!


が、バシュゥという音と共に攻撃は弾かれた。まさか…敵もバリアを張れるのか?


「悪りぃなぁ。今回のヤツはサポートできるみてぇだ」

そう言うエキストラの背後から、若草色の亀のような怪物が現れた。何やらバリアを張れるようだ…。


「こっちから狙い放題だぜ!」

エキストラは執印さんに集中砲火を浴びせる!

「執印さん!」

わたしの声など聞こえていないようだった。彼は攻撃を避けようとはせず、武器である大剣を盾に攻撃を防ぎ始めた。


どうする…?攻撃は効かない。敵は崖の上…。合流組が来るのを待った方がいいかもしれない。


「木葉ちゃん!」

紫ちゃんがわたしのほうへやってきた。夢奈さんも一緒だ。


「おーい!油断してていいのか!?」

エキストラの声が響く。なんと、わたし達の周りから大量のセルズが湧き出ていた。囲まれた!

執印さんの方にも多くはないが出現している。マズい。今、彼は防戦一方だ…。セルズがあまり強くはないとはいえ囲まれたら…。


「囲まれた時は任せて!2人はしゃがんでてね!」

夢奈さんが声を上げた。紫ちゃんとほぼ同時に身を屈める!


『ドリーミングロンド!』

夢奈さんは鞭を回転しながら振り回し、周りのセルズを一気に蹴散らす!近くにいたのは一掃できたみたいだ。でも、セルズは沸き続け、執印さんへの銃撃は続いている!

わたしの弓では一掃はできない。


「ねぇ木葉ちゃん!思いついたんだけど!」

紫ちゃんの声は弾んでいた。一体、何をするつもりなんだろう。


「わたしを昼飯さんの鞭で敵の方に吹っ飛ばすのはどう!?」

「えーッ⁉︎本気で言ってる?」

紫ちゃんの提案に夢奈さんは流石に叫んでいた。確かに、一気に距離を詰められる。だけど攻撃が紫ちゃんの方に向けられたら?空中で身動きが取れない以上、紫ちゃんの身の保証は出来ない。


「紫ちゃん、いい作戦だよ。でも…飛んでいく方向は執印さんの方にしよう」

まずはセルズに囲まれつつある彼を助けるべきだ。そう思った。

「そっか…そうだよね!わかったよ木葉ちゃん!昼飯さん…お願いしてもいい?」

「迷ってる暇はなさそーだね。いいよ!覚悟はしてよね!」

夢奈さんはそう言って、鞭を紫ちゃんに巻きつけた。


「いっくよー!!!」

大股を開き、思いっきり腰を入れ、両手で鞭を振り抜いた!


「飛んでけー!!!」

紫ちゃんは執印さんの方に吹っ飛んで行く。


紫ちゃんが少し情けない叫びを上げているのが少しずつ遠のく…。


「…大丈夫かなあの子」

「紫ちゃんを信じましょう」


さて、周りはセルズ達がまだまだ残っている。こちらもどうにかしなくては!


と、新たに人影が現れたのに気がついた。


「陽向くん!宝城さん!」

「陰山さん遅くなりました!」

「お待たせしました、申し訳ございません」

即座に変身する二人。赤と金の戦士が姿を現した。


「来てもらって早速なんだけどお願いがあるの!」

わたしは急ぎ気味に話を続ける。

「宝城さん…あっちの方でなんだけど、今、執印さんが敵に狙われて身動きが取れないの…。バリアで助けてもらえる?」

わたしの要望に一瞬、宝城さんは狼狽えたように見えた…が。

「わかりました。任せてください」

気のせいだったのか、即座にバリアを展開し執印さんを守った!彼の横で紫ちゃんはセルズを蹴散らしている。大丈夫そうだ。


「このあとはどうする?陰山さん」

夢奈さんの問い。どうしよう…。


「陰山さん、わたしと昼飯さんで執印さんと雷電さんの元へ向かいます。その間に、陽向くんと一緒に崖の上の敵に攻撃を仕掛けてください」

宝城さんはそう言い残し、執印さんたちの元に向かった。

「えっ、ちょっと待ってよー!」

夢奈さんもそれに続く。


よし…もう一度、やってみよう。

崖上のエキストラに狙いを定め矢を射る!


…!やはり弾かれた。隣の亀の怪物のバリアは強固だった。


「俺の槍だったら破壊できないかな…」

陽向くんが呟く。多分だけどわたしの矢よりは決定打になりそうだが、あそこまで辿り着くのは容易ではない。


考えていると、また周りはセルズだらけになっていた!


「まずい!」

「陰山さん、ここは任せてください!」

陽向くんが掃討を始める!だが、敵の数は多い。


「あー!こんなとこに居たんだ、めっちゃ探したよ!」

遠くの方から誰かの声がした。天然さんだ!それと…隣にいるのは才二くんと…写野さん…!みな、既に変身している。


3人は敵を蹴散らしながらわたし達の元へ合流した。

…なんだろう、今日はやけにセルズの湧きが多い!


「陰山さん!あの崖上の敵…どうしますか!?」

才二くんは少し震えた声で聞いてくる。息が上がっている。かなり急いでこちらまで来たようだ。


「待って…今、考えてるの…」

「おい、なんかあっちで揉めてるみたいだぞ」

写野さんの声。少しドキッとしたがそんな暇はない。執印さん達の方を見る。


宝城さんが大きめのバリアを貼り、攻撃を防いでいる。バリアの内側で皆、セルズと戦っているが…執印さんと宝城さんが揉めているように見える。その周りで紫ちゃんと夢奈さんが必死に敵と戦っていた。


「… 天然さん、写野さんであちらに行って貰えますか?」

「おっけー陰山さん!」

「行こう鈴」

二人は駆け出して行く!

「才二くんは周りの敵をお願い!」

「承知しました!」


残ったわたし、陽向くん、才二くんで敵を倒す。その中で考える。どうにか、あの敵のバリアをどうにかしないと。…槍をあそこまで…。


そうだ。閃いた。でも、賭けになる。


「陽向くん!お願いがあるの!」

「なんすか陰山さん!?」

「君の槍を貸して欲しい。一か八か、弓で飛ばしてみる。バリアを…貫けるかもしれない!」

「わかりました!」

「ごめん才二くん!セルズは任せてもいい!?」

「やってみます!」

写野さんには残って貰えば良かった…でも今更そう考えても遅い!今できることをやろう!


「お願いします陰山さん!」

陽向くんから槍を受け取る。



…!?


身体に衝撃が走った。何…これ?力が湧いてくるようだけど…耐えられない。

わたしは、槍を杖代わりに辛うじて立っている。


「か、陰山さん!?」

陽向くんの声が聞こえる。

「ご、ごめん。ちょっと急にキツくて…」

「これ…"あの時"と同じだ!」

あの時?あの時って?

ふと自分の身体に目をやると、わたしの緑のコスチュームに赤いラインが走っていた。何これ?

「前にもあったんです!舞さんが紫から刀を取り上げた時、こんな風に別の色が線みたいに出てきて!」

…他の人の武器を持つとこうなるってこと?でも今は原因とかはいい。この槍を敵に!

槍を弓にあてがおうとするが、立っていられない…。意識も飛びそうだ。


「陰山さん…!?」

「陽向くん…もう一つお願いがあるの」

「なんですか!?」

「わたしの身体を支えて」

「えっ…えと…わ、わかりました!」

陽向くんが恐る恐る、わたしを背中から支えてくれる。よし、あとは狙いを定めるだけだ。


弓を構える。狙いは…亀だ。槍でバリアを貫き、アイツを倒せれば、以降はバリアは貼れない!


…!ダメだ。手が震える。チャンスは一回。外せないのに!才二くんも一人でセルズを倒してくれてるのに!


「陰山さん」

背後から陽向くんの声。凄く…落ち着いてる声。

「俺、一緒に居ますから。陰山さんのこと後ろから支えてます。だから安心して…構えてください」

その言葉に、少し心は落ち着いた。陽向くん、そんなこと言ってくれるんだ。ありがとう。

集中…。


弓を引き絞る…。狙いをつける…。


今だ!


『陰陽閃!』


陽向くんの槍を放った!真っ直ぐ!亀の方へととんでいく!


「なっ、なんだぁ!?」

エキストラが気づいた!でも、遅い!



槍はバリアを貫き、そのまま亀の怪物をも貫いた!敵は爆散し、色が解放されて行くのが見えた。爆風でエキストラが崖下へと落ちてくる!それを見逃さない、というように執印さんや紫ちゃん達が向かっていった。それを見届けるとわたしは倒れ込んだ。陽向くんが慌ててわたしを抱き抱える。


「陰山さん大丈夫ですか!?」

陽向くんの声が聞こえる。

「ん…ちょっと疲れちゃったかも」

「頑張りすぎですね。ありがとうございます」

「ふふ…ううん。わたしの方こそ、ありがとう」


「良かったです。陰山さん」

才二くんの声が聞こえた。とても、優しい声だった。


光に…包まれた。



公園。現実に戻ってきていた。


「あー、あのスポイトに逃げられたー」

紫ちゃんが悔しそうに言う。

「仕方ありません。今回も色を取り戻して人を助けられましたし、良しとしましょう」

宝城さんがなだめた。


「陰山さん、大丈夫ですか?」

陽向くんがわたしを心配して聞いてきた。


「うん、だいじ…ちょっと疲れちゃったかな。あの、色のラインが増える現象…よくわかんないね」

大丈夫…という言葉を飲み込み、素直に疲れたと伝えてみる。

「そうっすね…。無理しないでくださいよ」

「ありがとう陽向くん」


「あのさ!改めて円陣やらない?今度こそちゃんとチーム結成でしょ!?」

紫ちゃんがそう提案してきた。

「おっ、いいね紫!」

「私も賛成です」

もちろん。断る理由なんてない。

「やろっか!」


四人で円陣を組む。

「陰山さん、なんかお願いします」

「えぇ、わたし?そうだなぁ…」

陽向くんてば無茶振り…って思ったけど…ここはわたしが言わないとだよね。


「よし!レッドチーム!これからも一緒に力を合わせよう!よろしく!」


「「「「おー!!!!」」」」


今度はちゃんと混ざれてる。赤、緑、金、紫。わたしたちは…四つの色は綺麗に混ざっていた。



次回ッ!

第二十五話 失くした鈴の音

読んでくださっている方々。ありがとうございます。

次回、第二十五話にて超彩色フルカラーズは折り返し地点となります。

まだ半分行ってなかったのかよ!って感じですがまだまだ続きます。お付き合い頂ければ幸いです。


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