第二十三話 夜の星、道示すヒカリ!
夜星は大勢の人々と共にパイプ椅子に座っている。体育館。今日は高校の入学式だった。
4月、始まりの季節っていう感じで嫌いじゃない。桜はちょっと散り始めていた。
校長がだらだらと話しているが、全く頭に入ってこなかった。もー、早く終わりにしよーぜ。足と腰が痛くなってきた。あと尻も。制服は中学の学ランからブレザーに変わっていて違和感がある。
途中、意識が飛びそうになりながらも式を終える。新入生のクラス番号が若い順に退場。おれは2組だから少し待たされた。
移動中、特に周りのやつと話したりはしなかった。みんな疲れたんだろーな。
教室にたどり着く。俺の席は窓側から三列目、前から4番目。窓側が男、廊下側が女という並びだった。多分、五十音順なんだろ。
ふぅ、やっと落ち着けるかな…と思ったら担任の話が始まった。
あくびが止まらなくなる頃、自己紹介を始めることになった。
色んなやつがいるな。まあそりゃそうか。中学の時とは全然違う奴らとこれから関わっていかなきゃいけない。いかにもスポーツやってる感じのやつとか、暗そうなやつとか、妙に目が決まってるやつとかがいた。
で、おれの番が来た。
墨名くん
と担任の呼ぶ声に応じて壇上に立つ。
女子側からなんかヒソヒソ話す声が聞こえた。なんとなく内容は察しがつく。てか、コイツらもう話せるのか。
「えーと、はじめまして。墨名夜星です。男です。趣味は音楽聴くことです。ロックとか…。あと、バスケが好きです。これからよろしくお願いします」
男であるということを念押しし、無難な自己紹介を終え、席に戻る。
その後も、自己紹介が続き、女子の方にも進む。
自己紹介をする女子たちを見て、やっぱ鈴って可愛いし、優しくて良いよなぁ…
とか考える。
同年代の女子が子供っぽく見える。木葉さんとか、前に初めて会った舞さんみたいな大人に会ってるからかな。ガキンチョだなと思う。
同世代と言えば…十六夜。あいつ多分同い年だよな。なんとなく雰囲気でそんな気がする。ロクに口聞いてないけど。ま、アイツも同じようなもんだろ。
自己紹介も終盤だった。気がつくとヤ行の人だった。あとはなんだ?わたなべとか?ラ行は思いつかない。
また1人、壇上へと出た。
あれ?
「はじめまして!雷電紫です。趣味は映画鑑賞です。あと、本も読みます。なのでどっちかと言うとインドアよりです」
え?嘘、雷電紫?
十六夜じゃなかったっけ?
でも、あの顔は知ってる、声も知ってる!
俺は立ち上がって叫んでしまっていた。
「お前は!!!」
教室中の目線が一気に集まる。
「あっ、墨名くん。よろしくね」
OP
入学早々、担任に叱られてしまった。ま、急に立ち上がって叫んだらそうなるよな。まったく、何やってんだよおれは。
学校の説明だとか、今後の行事の話、教科書の配布やらなんやらを終えて、今日はおしまい。放課後だ。
あー、部活どうしよっかなー。バスケは…好きだけど身長がな…。おれの身長は158。バスケやるにはちょっと…中学の時も周りは結構、デカいやつばっかりだったし…。
ま、気にしてもしょうがないか!やりたいことやんないとな、身長もまだ…伸びるだろ!
部活の体験入部は明日かららしい。取り敢えず今日は帰るか。
「ねぇねぇ墨名くん。ちょっといい?」
女子が声かけてきた。くそっ、なんだよ。どうせさっきのこと聞いてくんだろうな。
「…なに?」
ぶっきらぼうに返す。
「さっきさ、雷電さんに お前は!とか言ってたよね!」
「どういう関係?」
「もしかしてマンガみたいに朝、曲がり角でぶつかったり!みたいな!?」
とか言って女子数人はキャーとか歓声を上げて寄り集まっている。なんだよ、バカにしてんのかコイツら。
「別に!なんでもないし!」
ふんっ!とそっぽを向く。それを見た女子たちは可愛いー!とか言ってきた!
「やめろ!可愛いって言うな!」
女子たちはおれの言葉を聞いてさらにヒートアップしていく。くそっ!バカにしやがって!
「墨名くん…一緒に帰ろうよ」
その空気をぶち壊すみたいに誘ってくるヤツがいた。十六夜…じゃなくて雷電紫。
「雷電さん!やっぱり墨名くんとはそういう感じ!?」
空気は壊れずにむしろ盛り上がっていった。あーもう!
「うーんと…ちょっと集まりみたいなのがあって…そこでの顔見知りみたいな感じかな」
雷電紫の回答に熱気は高まっていく!教室がぶっ壊れそうな感じすらした。
「帰ろ!」
「ちょ!引っ張るなよ!」
雷電紫に腕を引かれ、おれは教室を後にした。
帰り道…。他の生徒たちがまばらに歩く駅前に続く道。男女2人で歩いているのはおれ達くらいなもので、悪目立ちするから、と少し外れた道を歩いていた。
「…助かったよ」
癪に障るが、素直に礼を言っておく。
「気にしないで。墨名くん困ってそうだったから」
そういって雷電は軽く笑った。
「てかさ、お前十六夜じゃねーのな。どういうことだよ?やっぱアレ?厨二病的な?」
気になっていたのでツッコむ。助けられたのとこの話は別だ。雷電は少し顔が赤くなった。
「えっと…十六夜でもあるよ。その…いや、十六夜じゃないんだけど、ああいうのもわたしで、今みたいなのもわたしで」
説明がよくわからない。
「何言ってるかわかんねえや。まぁ、取り敢えず雷電でいいんだな」
「…うん」
彼女は軽く頷いた。ったく変なヤツだな。
駅まで辿り着く。なんと、雷電とおれは最寄駅が一緒だった。
「えっ…と…さ。もう別れて帰ってもいいんじゃね」
なんか恥ずかしくなってきた。いや、別に意識してるとかじゃなくて…あんま話したこともない女子と一緒に帰ってるという事実を急に自覚し始めた。
「なんで?最寄同じなんだし、一緒に帰ろうよ。せっかく…仲間なんだし」
その言葉で急に頭が冷めた。
「えぇ?いや、別にお前とは仲間じゃなくね?」
おれがそう言うと雷電の表情が曇った。
「そんなこと…言わないで」
声もさっきと打って変わってトーンが下がっていた。な、なんだよ。
「そんな露骨に落ち込まなくてもいいだろ!実際そうじゃん」
「そうかもしんないけど…けど…」
「悪かったよ…言い方酷かったかも…ごめん」
雷電の顔を見ていたら流石に悪い気がしてきた。
「でもさ、実際仲間って感じではなくね?そんな感じする?」
「しないけど…そんな否定しなくてもって思って。絶対なれないみたいな」
「そ、そこまでは言ってないだろ!」
「えっ?あっそうか。ごめん早とちりしちゃった」
雷電は舌を出して笑う。
うっ…なんだよ…。急にそんな仕草をするコイツを意識する自分がいた。
いや待て!おれが好きなのは鈴だ!こんなガキンチョなんかにドキドキするわけがない!そう!今のはきっと、なんだ…緊張しただけ!みたいな!
「どうかした?」
雷電はおれの異変に気がついたみたいだ。
「えっ、いや…」
電車到着のジングルが鳴る。
「あっ、電車来た」
良かった…誤魔化せそうだ。
2人で電車に乗り込む。車内は学生ばかりといった様相だった。
席は埋まっていたので2人で席の前の吊り革に掴まる。
「墨名くんはさ、チームのことどう思ってるの?」
「どうって…めんどくせぇなって思ってるかな。なんかさー、鈴が全部のリーダーでいいじゃんか。足並みがーとか連携がーとか、考えてらんないだろ」
本心だ。そもそも、おれ達はおれ達でうまくやってたのに、雷電達レッドチームが出てきたせいで無茶苦茶だ。そんで、ブルーチームだったか?も出てきたみたいだし…。面倒なことこの上ない。
「ブルーの人たちあんま知らないんだよな。舞さんって人と若月ってヤツには会ったけど…あと2人いるんだっけ?」
「うん…。昼飯って人はほんの少しだけ会ったよ。女の人だった。淘江って人は…あっ、カフェで話した時会ったじゃん?あの時、あの世界の方にいたよ。茶色の人」
「あー、あの軽そうなおっさんか」
「おっさん…なのかな」
「真士さんよりは若そうかな。それでもおっさんだろ」
なんか、フツーに会話できてるな。ヤバそうなヤツだと思ってたけど、別にそんなことなかったのかな?でも、明らかに前と変わってるよな…。
「やっぱ、気になるから聞くんだけどさ。雷電って変わったよな」
「えっ」
「いや、ほら…木葉さんと公園で会った時かな?あん時はヤベェヤツだと思ったんだよ。それこそ十六夜とか言ってたじゃん」
「ちょ、電車でそういう話は…」
「ん?あぁそっか悪い」
「もう…。でも、そうだね。変わったって思うよね」
「おん。思う」
「えっとね、変わったっていうよりも戻ったっていうのかな。自分を型にはめすぎないっていうか」
「どゆこと?」
「なんだろ…無理しないことにしたんだ!自然なわたしで、みたいな」
「ほぉ〜。自然ねぇ。じゃあ、やっぱ前は不自然だったんだな」
「うん…否定はしない…」
「そっか。いやさ、違和感あったからさ。思ったよりフツーに話せるっていうか。取り敢えずちょっと安心したよ」
「そう?ありがと」
雷電が微笑む。
うぅ…まただ。なんかドキドキする。どうしよう。鈴…!
あ、そうだ!まだ時間早いし鈴に会おう。大学始まるのはまだ先って言ってたし、バイト無かったら会えるよな。
スマホを取り出し連絡する。
『鈴!今日会える?高校生になったぜ俺!』
よし、あとは返信を待つだけだ。
「なんか、楽しそうだね墨名くん」
「えっ?いや別に?」
鈴に会えるかもと思って顔が緩んでたみたいだ。
スマホが振動する。鈴か!?
『おー!入学おめでとー夜星くん!高校生でカッコいい夜星くんのこと早く見たいなー♡』
『でも、ごめん!この後、ブルーチームの人と会わなきゃいけないの!その後でもいい?それでいいなら、駅前のカフェで会うからその辺りで時間潰して待ってて欲しいな』
うわマジか…。待てるけど…いや、駅前のカフェだろ?もしかしたら鈴のお気に入りのとこかもしれない。行けば会える!おれも顔合わせってことにすれば無理はないもんな!
「墨名くん?」
「うお!なんだよ」
「いや、深刻そうな顔してたから…どうしたのかなって」
「そんなことないけど?ま、この後予定ができちまったのさ」
「そっか、じゃあ駅でお別れだね」
「そ、そうだな」
なんか、随分あっさりしてるな。
最寄駅に電車が到着する。降りる学生はまあまあ多かった。階段を登り、改札を出たところで雷電と別れの挨拶をする。
「じゃ、これからよろしくね墨名くん。仲間とかは…一旦置いておいて、クラスメートとして!」
そう言って雷電は手を差し伸ばしてきた。えっ、握手すんの?
「お、おう。クラスメートとしてな!よろしく…」
流れで手を握ってしまった。ちっちゃくて少し冷たくて柔らかかった。また、ドキドキしてきた。
「またね」
手を小さく振りながら雷電は去っていった。俺の手にはさっきの彼女の手の感触が残っていた。
手に残る感触を振り払うみたいにおれは鈴のお気に入りのカフェに向かっていた。
鈴!鈴に会おう!
例のカフェにたどり着く。窓から中が見えるタイプの店だから…居るならわかるはず…。
いた!
鈴の他には2人いる。構うもんか!おれは行くぞ。
店内に勢いよく入る。店員さんには待ち合わせしてると伝え、鈴の元へと向かった。
「鈴!」
おれが名前を呼ぶと驚いたみたいだった。
「えっ?夜星くん?ここにいるって言ったっけ⁉︎」
「いや、なんとなーく、ここかなって思ったんだ」
そう言って、鈴の向かいに座ってる2人に視線を向ける。前にあの世界であった若月ってやつと…知らない女の人だった。舞さんじゃないから…雷電の言ってた昼飯って人か。
「あ、墨名さん。せっかくだし一緒に話しましょう」
若月がそんなことを言う。取り敢えず鈴に会いたかったので、彼女の隣に座った。
「わたしとは初めましてだよね。まずは挨拶!ってことで昼飯夢奈です!絵の具は白の12番!社会人です。よろしくね墨名くん!」
ニコニコしながら自己紹介してきた。なんか、鈴みたいな人だな。
「えっと…墨名夜星です。絵の具は黒の5番。高校生で…高校生になりました。よろしくお願いします…」
なんか緊張してうまく話せなかった。
「お!制服変わってる!雰囲気変わったね夜星くーん」
鈴がさっそく制服について触れてきた。
「あ、ああ!どう?カッコいい…?」
「うん!カッコいい!初々しくて…それに可愛いかもー!」
「だから可愛いはやめてくれって…ありがと」
ドギマギしてる。カッコいいって言われて嬉しかった。
「墨名さんは高一なんですね!ボクは高二なんで一個違いですし、仲良くしましょう」
…けっ、なんだよ年上ヅラかよ。でも、前に鈴に仲良くみたいなこと言われた手前、突っぱねるのもな…。
「おう…」
ぎこちねぇ、と自分でも思った。まぁ反発するよりかマシだろ。
店員さんがきて注文を聞かれたのでブラックコーヒーを頼む。鈴がカッコいーと言ってくれた。正直、苦くてキツイけど…カッコいいからな。
「で、話の本題に入りましょうか」
若月が話を始めた。
「前に少し話しましたけど、全体の団結の話です」
げっ、と思った。またこういう話かよ。
「うん!才二くんがカッコよく言ってくれたアレだよね。全面的には難しいけど、わかった!少し協力する…って話したか…てへへ」
可愛い…やっぱ鈴は可愛い。
…じゃない!なんだ!?若月のことカッコいいって言ったか!?なんだよそれ!?
「鈴…ソイツと仲良いのか?」
問いただしていた。
「え?やー、まだ会ったばっかりくらいだけど…仲良くできるって思うよ」
くそっ。若月、お前は敵だ!
「あはは、墨名くんってばジェラシー?男の子の嫉妬はカッコ悪いよー」
昼飯さんが笑いながら言ってきた。
か、カッコ悪い!?それはダメだ!でも、むかつく!
「夢奈さん…からかわないであげてくださいよ」
「えー、こういうのはちゃんと言ってあげないと。カッコ悪いのは嫌なんでしょ?墨名くんは」
「…はい」
なんかペースを握られてる。大人の余裕ってやつかな。
「は、話を戻しますからね!」
若月が話題を戻した。気に入らないけど少し助かった。
「鈴さん…イエローチームの人たちとは話をつけられそうですか?」
「そうだなぁ。多分、大丈夫だと思うよ。真士さんは勿論、國明くんもきっとわかってくれると思うし…夜星くんはどう?」
こっちに振ってきた。
「別に…鈴がいいならそれでいいよ…それより」
目線がおれに集中する。
「誰がリーダーになるんだよ?アンタか?」
若月が驚いた顔をした。
「えっ…いや…誰がリーダーとかはあんまり考えてなくて。みんなで協力できる体制になれればいいかなって」
「はぁ?リーダーはいるだろ。だったらさ、鈴でいいじゃん。なぁ鈴、そのほうがいいよ。やりやすいしさ」
「えぇ〜…わたしがみんなのリーダーか…」
困った顔をする鈴。困らせる気はなかったのに…どうしよう。でも、鈴以外に仕切られるのも嫌だし。
「墨名くんは?リーダーやりたいとか思わない?」
いきなり昼飯さんが訳のわからないことを言い出した。は?おれが?
「えっ?いや、ないないないない!」
「あはははは!」
「夢奈さん…」
「ごめんごめん、面白くて…ふふっ」
バカにされてる…けど、なんか悪い気がしない。変な感じだ。
「昼飯さんっていつもそんな感じなんですか?」
鈴が急にそんなことを聞き出した。
「んー?そうだなぁ…割とそうだね。でしょ、才二くん?」
「ノーコメントでお願いします」
「あらー、振られちゃった」
「仲良いですねお二人!」
鈴は若月と昼飯さんを見てニコニコしていた。
「そう?まぁ才二くんは可愛い弟って感じかな」
昼飯さんのその言葉に若月は何も言わなかった。
「ふーん。やっぱり、結構、計算とか要りますか?その感じ。なかなか狙って作れる関係とか雰囲気じゃないっていうか」
「えー?あんま考えるのは得意じゃないんだよねー。自然体だよ自然体。そんなこと考えてたら疲れちゃうもん」
「そう…ですか」
鈴は珍しく低い声だった。どうしたんだろ。
「と、とにかく、リーダーは保留で!これから良い関係を作っていきましょう!鈴さん!」
「…そうだね!よろしく才二くん!」
「あっ!」
急に若月が声を上げた。なんだコイツ。
「もしかして、皆さんは来てないんですかね予兆…」
その言葉に、おれと鈴、昼飯さんは絵の具を取り出した。淡く光っている。
「取り敢えず、ボクは先に行きます。また後で!」
光…。若月の姿は消えていた。周りの風景は無色無音になり、色があるのはおれ達3人だけだった。
「…これ周りの人にばれませんか?」
鈴はいつもの声に戻ってた。
「と思うじゃん?意外とバレないんだよね。わたし、前とか仕事中に予兆きたけど全然バレてなかったもん」
夢奈さんの答えに少しホッとした。バレると…めんどくさそうだからな。
「で、2人はさ、どう思う?ウチのリーダーさん」
いきなりの質問に困惑した。そんなこと聞いてどうするんだ。
「え…なんか…マジメそうだなとか思います」
おれ的にはああいうタイプは、気取ってるみたいで気に入らない。しかも、鈴と仲良くなりそうだしな。
「あたしは…頼れる子だなって思いますよ。自分のやりたいことハッキリしてるとことか!」
鈴のその言葉に胸の奥がチクリとした。頼れる子…。
「2人とも答えてくれてありがとう!そっか、そういう感じか…」
夢奈さんはわざとらしく顎に手を当てている。
「ま、無理しない程度に才二くんに付き合ってくれると嬉しいな。悪い子じゃないから!」
悪い子じゃないか。おれからしたら悪いヤツなんだよなぁ。
「さて!雑談はこんな所にして、行きますか!戦いに!」
夢奈さんは絵の具を構え、捻った。おれと鈴もそれに倣った。
光に包まれる…。
あの世界。目の前の光景は予想外なものだった。
「うわ…やりすぎちゃったかも…。デュン〜、どうしよーか」
マスターがいた。そして、ヴェールを纏ったみたいな怪人。その足元には若月と國明が倒れていた。まさか、負けたのか?変身は解けていない…。
「國明くん!」
鈴が叫ぶ。それに反応して國明が少し動いたように見えた。
「あ、増えた。黄、黒、白かー。いいねぇ」
マスターがこちらに気付いた…!
「青とシアンは倒しちゃったからなぁ…。あと来てるのは赤と銀か…」
陽向と舞さんが来てるのか。
「遅くなったわ才二…!?」
舞さんと陽向がどこからか駆けつけた。
「おっ!取り敢えず、今回の参加者はこれで全員かな」
「そのようですわねマスター」
「動けるっぽいのは5人…ま、どうにかなるでしょ。頑張ろうねデュン」
「はい…」
会話をしながらマスターは若月の奴を見せつけるみたいに踏みつけた。
「彩色顕媄!」
誰かが走り出した…夢奈さんだ!
「才二くんから離れろ!」
なんだ…あの人あんな感じに…?
「夜星くん!あたし達は國明くん助けないと!」
「あ、あぁ!」
「「彩色顕媄!!」」
おれは鎌に、鈴はハンマーに絵の具を装填、トリガーを引き、姿を変えた!
「足をどけなさい!」
わたしはマスター達に突っ込んで行った。そう、才二くんを助けないと!
『ドリームスイング!』
鞭を横一文字に払い、マスターとデュンを攻撃する!
「ふん!大した攻撃ではないね!」
デュンは軽やかな動きでこちらと距離を詰めてきた!
「近づくなんて迂闊だね!」
『白の束縛!』
鞭でデュンを絡め取ろうとした…!が敵の姿は消えていた…何処に!?
「ワタシの能力知らないんだねアンタぁ」
デュンは後ろに立っていた、拳による2連撃がわたしを襲った!
「痛いっ!けど負けないから!」
吹っ飛ばされそうだったけど、全身に力を込めて踏ん張った…今だ!
鞭を使い、デュンを絡め取った!
「くっ…!離しなさいよ!」
「なわけ!これなら見えなくなっても関係ないね!」
「ヤバいじゃんデュン」
マスターの声に反応したわたしはヤツの方を見る…。倒れる才二くんに座っていた。
「おまえ!」
「おー、怖い。この才二くんは君のなんなのかな?」
その問いに頭が真っ白になった。何?才二くんはわたしの…何?
「昼飯さんボーッとしてるなよ!」
意識が戻される。墨名くんが叫んでいた。
『三日月!』
墨名くんの鎌の一振りで、わたしに拘束されていたデュンは爆散した。人の姿に戻っていく。
「うお、デュンがやられちゃったよ」
軽い声でそんなことを言うマスターに向き直り、才二くんと執印さんを助けるためわたし達は走り出した。
「実は、もう一体いたりして」
マスターの背後からヤモリみたいな見た目の怪物が飛び出してきた!ライムイエローって感じの体色だ!
わたしと墨名くん、追いついてきた天然さん陽向くん、舞さんで迎え撃つ!
「ちょっと!ボクのこと忘れてるのかい?」
そこにマスターも乱入してきた。
「忘れてるわけないだろ!」
そう言ってマスターにぶつかっていったのは陽向くんだった。
「あたしも行くよ天晴!」
天然さんも続く!
「アイツ!抜け駆けすんなよ!」
墨名くんは声を荒げていた。多分、陽向くんに対してだろう。
「墨名くん、とにかくこのヤモリみたいな敵やっつけよ!?そのほうがカッコいいって!」
「え?そうか…?」
扱いやすいなこの子。
「2人とも油断しない!」
前を向くとヤモリが吐いた体液を舞さんが盾型のバリアで防いでくれていた。
「ごめん舞さん!よし!墨名くん反撃するよ!」
「わ、わかった!」
ヤモリの体液を鞭で弾きながら墨名くんと共に距離を詰める。
「一気に決めて!」
「よし!」
『刈月光狩!』
鎌の一振りがヤモリを爆散させた。色が戻っていく。
才二くん!
その方を見ると…なんと、才二くんと執印さんがマスターを追い詰めていた。陽向くんと天然さんもそれに続いている。気絶したフリだったのか?
「あら、ヤモリくんやられちゃったか。じゃあ、今日はこれまでだね!」
マスターがそう言うとわたし達は光に包まれた。
現実。先程のカフェ。
「ふぅ…で、若月さ、だいぶやられてたみたいだけど?」
おれは早速聞いてみた。情けない姿のコイツは少し面白かった。
「…はい。執印さんと一緒にマスターとデュンと戦ったんですけど上手く連携できなくて…」
まぁ、そうだろうな。國明のヤツが言うこと聞くとは思えんし。
「団結とか言ってるのに、情けないですよね!ホント…口ばっかりで…」
若月の顔がみるみるうちにしょぼくれていく。用紙が濡れてクチャクチャになるみたいだ。
「才二くん!」
昼飯さんが焦ったみたいな顔で若月の手を握る。
「才二くん…ちょっと凹みすぎじゃない?」
鈴も焦ったみたいな声だった。確かに、いくらなんでも凹み過ぎだろコイツ、と思った。
「あのさ、そんなんで凹んでたらなんもできなくね?カッコ悪いぞアンタ」
おれはなんだか、見ていて引っかかったのでそんなことを言っていた。
「墨名さん…」
「おれだって鈴にカッコいいとこ見せようとして失敗することあるし…普通じゃん上手くいかないの」
そこまで言って体温が上がっていくのを感じた。横に鈴がいるのに、何言ってんだおれ⁉︎
「あはは、赤くならなくていいよ。だって、今の夜星くんカッコよかったもん」
え?なんで?カッコいい?どこが?
「そう…ですよね。墨名さんありがとうございます」
若月が礼を言ってきた。何に対してかわからない。
「墨名くーん。いいこと言うじゃん」
昼飯さんも。なんだ!よくわかんないけど恥ずかしくなってきた!
「お、おれは帰る!代金はここ置いとくからな!」
逃げるみたいにおれは店から飛び出した。
あー、恥ずかしかった。ほんと、急に褒められるとムズムズするっていうか。
でも、鈴にカッコいいって言われたから…今日は良かったかな。
次回ッ!
第二十四話 混色パニック!




