第二十二話 青い静寂、木陰の喧騒!
あの世界。
ボクは絵の具を握り締め、震えていた。あの…マスターにまた出会うのではないかと恐れていた。
「大丈夫、才二くん?震えてるみたいだけど…」
陰山さんが心配してくれている。
「す、すみません。何でもないんですけどね…」
「何でもないって…そんな」
「あ!若月くんと陰山さんだ!今回はよろしく!」
…!天然さんだ。
「どうしたの?なんかあったの?」
ボクの顔を覗き込んでくる。近い…。少しドギマギした。
「陰山さん…!」
そうだ、もう1人いるんだった。声の主は宝城さんだった。
「宝城さん…」
声をかけられた陰山さんは…気まずそうだった。変な空気だ。戦わなきゃいけないのに。
「と、とにかく戦わなくてはならないんですし!変身しましょう!」
ボクの意見に反論は無かった。
「「「「彩色顕媄‼︎‼︎」」」」
姿が変わる!青、緑、黄、金の戦士が姿を現した。
あれ、男ってボクだけか。なんか、やりづらいな…。
レッドチームの2人1組の索敵を行うことにした。ボクは…敢えて天然さんと行動を共にすることにした。彼女のことを知らなくてはならなかった。
陰山さんには申し訳ないけど…宝城さんと組んでもらった。ごめんなさい陰山さん。
「じゃあ、行きましょう!」
二手に分かれた!
OP
敵はなかなか見つからない。もう、10分ほど探している気がする。木葉と宝城さんの間には沈黙が流れ続けていた。歩く音だけが間を際立たせるように聞こえている。
どうしよう。
ひたすらそんなことを考えている。陽向くんには、離れたいと直接伝えたが、宝城さんと紫ちゃんには一切の連絡をしていない。そもそも、わたしの行動について知っているのだろうか?
話そうとしない辺り、既に知っている気がするけど…。まぁ、わたしのほうから何か言うべきなんだろうな。
でも、何を言えばいいんだろう?
今、どうしてるの?なんて聞けない。
陽向くんから何か聞いた?そんな確認するのもなんかな…。
「陰山さん」
「ひゃい!?」
突然、宝城さんが口を開き、心臓が止まりそうになった。な、何を聞かれるんだろう、と緊張が走る。
「単刀直入に言います。戻って来て欲しいんです」
…想定外の言葉だった。まさか…え?本当に?
「ごめん…宝城さん…それはできないの」
嘘じゃない。正確には、まだ、できない。
「そうですよね…。陰山さんが離れてしまった理由はわかりません…。何か思うところがあったのだと思います。それでも…我儘かもしれませんが…戻って来てほしいのです…!」
わがまま、という言葉が宝城さんから出たことに驚いた。そういうのとは無縁だと思っていた。
違うよ、宝城さん。わがままなのはわたしのほうなんだよ…。
「…どうして?わたしが居なくても、陽向くんや宝城さんが居れば大丈夫だと思うんだけど…紫ちゃんも落ち着いたみたいだしさ」
そう、わたしが必要な理由がわからない。戻って来て欲しい、という言葉は…嬉しい。でも、なぜそんな事を言うのかがわからない。自分の気持ちもそうだけど、必要な理由を知れば…きっと、戻れる。
「それは…!」
宝城さんが口を開いた瞬間、赤い光が見えた。敵を見つけたんだろう。
いや、気にするところはそこじゃない!赤…陽向くんが来ている…!
「行きましょう陰山さん!」
宝城さんの言葉にわたしは反応できなかった。いや…意識的に無視したのかも知れない。
「か、陰山さん!」
「宝城さん…ごめんね…わたし、行けない」
二度目の声掛けに、そう反応した。
「…わかりました」
宝城さんはわかってくれたのか、赤い光の方へと1人で走っていった。
ごめん。まだ会えないの。もう少し待って。
赤い光が上がる少し前。
才二と鈴は索敵を行なっていた。
「若月くんとしっかり話すのは初めてだよね!この前はあまり話せなかったし、改めてよろしくね」
天然さんはニコニコしながら手を差し伸べる。取り敢えず、それに応え握手を交わす。
「はい。よろしくお願いします」
「おっ!結構、手大きいんだね若月くん…ってあたしが小さいだけかな」
そんなことを言う。いい人そうだなと思う。本当に…この人が問題の中心なのだろうか?以前、会った時も想像していた人物像と違っていて面食らった。話していて、心が軽いというか、惹きつけられるというか、そんな感じ。さっきまでマスターの存在に怯えていたが少し気持ちが楽になっているのがわかる。
「そういえばさ、こんなこと聞かない方がいいかもしれないけど…前の戦いの時にいた透明なアイツってなんだったの?」
想定外の質問が来た。まさか聞いてくるとは思わなかった。でも、確かに気になるよな。明らかに異様な敵だったし。
「マスターと名乗ってました。変身したボクらと似たような姿をしていて…それ以上のことはわからないです」
マスターが自分にかけた言葉に関しては言わないでおいた。混乱を招く可能性がある。
「そっか…やっぱアイツがマスターなんだ」
「やっぱ、と言うのは?」
「あー…それはね」
天然さんから、以前クヴァレという強力な敵と戦った時のことを聞かされた。そうか、ボクらブルーチーム以外はマスターの存在を知っていたのか…。
「マスター以外にも強大な敵が居たんですね…知りませんでした」
「そうなんだよー。でもさ、仲間が12人もいる訳でしょ?どうにかなるって!」
「…そうですね。その為にも団結できるようにしないといけないです」
そこまで言って、しまった!と思った。まるで、今は出来ていない、と批判しているみたいじゃないか。
「あ、若月くんもそっちタイプ?」
そっち、というのはどういう意味だろう。
「や、あたしはさ、別に無理して団結しよー!とかはしなくてもいいかなって思ってるんだよね。ダメとは言わないけどさ、無理したら誰かがしんどい思いする気がするんだ」
…確かに。無理に団結する必要はない。けど今、全体を見る限り、この状態のせいで不和が発生している。上手く噛み合っていない人たちがいる。それは良くない。
「天然さんの言うことはわかります。でも、実際に無理して合わせるのは良くないです。それはボクも嫌です。だからそうならないようにお互いを知り、真の意味で団結できるようにしたいんです」
「難しいなぁ…」
マスターの言葉が脳裏をよぎった。
理想だけだよキミは
…そうかもしれない。でも、やってみなきゃわからない。
「難しくても!きっと分かり合えます!それがボクの信条なんです!」
キッパリと言い放った。マスターへの反論という意味を少し含んでいた。
「ふーん。なんか今の若月くんカッコよかったよ!そこまで言うなら…ちょっと協力しよっかな。全面的に!ってのは出来ないかもだけど」
天然さんから出てきた言葉にボクは手応えを感じた。なんだ、わかってくれる人じゃないか!手間取ることは無い。
「そうだ!若月くんのこと名前で呼んでもいい?協力関係ってことでさ!友好の印…みたいな!」
「えっ?はい!いいですよ」
「じゃ、よろしくね才二くん!あたしのことは鈴で…鈴さんのほうが呼びやすいかな」
「は、はい!よろしくお願いします!鈴さん」
これか。わかった気がした。彼女中心構造というものが。今この時間でボクは…彼女のことが好きになっていた。もちろん、恋愛とかそういうのじゃなくて。何か…引力めいたものを感じる。
と、視界の端で赤い光が見えた。
「あれは…陽向さん!」
「おー、天晴ってばいつの間に来てたんだろ?」
「行きましょう鈴さん!」
「りょーかーい才二くん!」
「くそっ!」
天晴は苦戦していた。セルズはもちろん敵ではない。喋る怪人にだ。
「ねぇ赤い方!さっさとその人間渡してくださいな!」
薄い、ヴェールのような物を纏った女性…といった見た目をしている。纏っている物は透けているが、相変わらずドギツイカラーリングをしていた。
「渡せる訳ないだろ!」
俺は連れてこられていた男の人を抱えたまま戦っていた。マジで戦いづらい!槍って武器がこんなに使いづらいと思うのは初めてだった。
誰か…誰か来てくれないか!?
現実で絵の具が光るのに気がついて、あの無色現象に襲われた。ということは俺は後から来たってことだ。先に、先に来た奴らはどこだ!?
「天晴!お待たせっ!」
その声に一気に安心する…鈴だ!
「おう!助かるぜ鈴!」
声の方に顔を向けると、なんと上空からハンマーを振りかぶりながら落下してきていた!
「避けて!」
鈴の言葉に男性を抱えたまま地面を転がった!
『イエローショック!』
思い切り地面にハンマーを振り下ろすと、衝撃波が走り、ヴェールの怪人を吹き飛ばした!
「ちぃっ!やりますわね!こちらも助っ人を呼びましょう!」
クヴァレか!?それとも…。
「来なさい、エキストラ!」
ヴェールの怪人の声と共に突如、空間を裂くように現れたのは、スポイトを模したような怪人だった。
「デュン…手こずってるのか」
「そうよ。見たらわかるでしょうが。手伝いなさい!」
「こちらはもう1人いますよ…」
後ろから若月くんが現れた。少し、怯えてるように見えた。
「若月くん!」
「遅くなりました陽向さん」
「いや…助かる!頼りにしてるぜ!」
本心だった。怯えていても声を出せるその姿が眩しく見えた。
「まずはどんなもんか…」
エキストラが手をこちらに向けた。スポイトそのものな形をしている。
「発射!」
絵の具のような弾丸が放たれた!
前方にいた鈴に直撃する!
「鈴!」
こちらに吹き飛んでくる鈴。
「いったーい。油断してたぁ」
よかった大丈夫そうだ。
「鈴さん!あれ、打ち返せますか!?」
若月くんが鈴に問う。確かに…できれば心強いな…。
「任せてよ!」
鈴がハンマーを構えた。
「そうそう!ワタシ、こんなことができたりして〜」
デュンと呼ばれた怪人がヴェールをエキストラに纏わせた…なんのつもりだ!?
「発射」
俺たちは吹き飛んでいた…。
弾丸は見えなかった…いや見えはしたが、かなり存在が薄くなっていたと言うか…。
地面に叩きつけられる!
「くそ…。なんだ…全然見えなかったぞ」
槍を杖代わりに立ち上がる…。そうだ、抱えて男性は!?見渡すと更に後方で倒れていた…。自分の力不足に申し訳なくなった。
「さーて、もう1発行こうかエキストラ」
「いいぞデュン」
やばい…2発目がくる…。
「2人とも!立て!攻撃がくる!」
「行きまーす!」
「発射!」
2発目が来た…!俺は目を瞑った!
爆発音!…体は無事だった…。どうして?
目を開くと目の前には金色のバリアが張られていた!
「宝城!」
「すみません陽向くん、遅くなりました!」
合流する。これで取り敢えず4人揃った!
いや…俺は後から来た。ということはあともう1人いるはず…。まさか最低4人説って間違ってたのか?
「鬱陶しいバリアね!エキストラ!連発!」
「おっけえ」
敵は両手を構え弾丸を連射し始めた!
「防ぎます!」
宝城は再度バリアを張る!
目の前で何度も爆発が起きる!
「陽向くん、天然さん、若月さん!爆煙の影響で敵もこちらが見えていません!今のうちに脇から攻撃を!」
宝城の指示に俺たちは従った。
「わかりました!行きましょう2人とも!」
「よーし、やっちゃおう!」
若月くんと鈴の声に導かれながら動き始めた!
一気に駆け出し、敵が居た方へと迂回しながら近づく!
もう少し!
そこに敵はいなかった。
「えっ!?ここら辺だったろ!」
攻撃はまだ続いている。
「見えづらく出来るのは弾丸だけじゃないのよねぇ」
声がした、デュンの声。
気がつくと、また爆発に呑まれていた。あぁ…マジか…コイツら強いな。
皆さん!
という宝城の叫びが遠くに聞こえた。
地面に伏しながら敵を睨む。
「うぅむ。殺すなと言われてるがどうするか」
「何言ってんの、アンタの能力で色取っちゃえはいいじゃないの」
「試してるんだが上手くいかない。普通の人間でないと」
色を抜けるのかこのスポイトみたいなヤツ…でも、変身してる俺たちからは抜けないみたいだな。
青い影と黄色い影が敵に突っ込むのが見えた。
「げっ!お前らまだ動けたか!?」
「ちょっとエキストラ!どーなってんの!?」
敵は動揺している。今だ、俺も動かないと!
「あ、そうだ!」
そう言ったのはエキストラだった。鈴を拘束した!
「うっ!離してよ!」
鈴の頭に、スポイト状の手が突きつけられる。
「わかるよな?下手なマネしたらコイツの頭ドカンだぞ!?」
「…殺さないんじゃないのか?」
若月くんが冷静に言葉を紡ぐ。
「殺さない程度に!痛めつけちゃっていいってことか?」
「そ、そんなわけ!」
若月くんは動揺している。
ど、どうしたらいい?宝城のほうに目線を向けたが、こちらの状態を察したのか動けないようだった。
「エキストラが色抜けないみたいだからさ、変身やめてもらえる?」
デュンの言葉に従うしかないのか?若月くんがどうするか…。
目をやると、絵の具を武器から抜こうとしていた。
「おい!ゆっくり動けよ!」
エキストラは焦ったのかこちらに手を向けた!その瞬間…!
緑の閃光がヤツを貫いた…!
「ぐぉ」
「まだ仲間がいたの!?」
動揺する敵たち!鈴の拘束も解かれた!
「反撃開始!」
「はい!」「おう!」
鈴の叫びで3人で一斉に攻撃を放つ!
『イエローホームラン!』
『蒼穿!』
『アッパレストライク!』
決まった!と思ったが手応えはなかった。二体の敵は光の柱に包まれていた。
上空から声がする。
「2人一気に持ってかれるのは…困っちゃうな。ってことで回収させてもらうね」
アイツだ…マスターの声だ。あっという間にデュンとエキストラは姿を消した。
「ま、マスター…」
小さく呟きながら若月くんは震えていた。…それより!
緑の閃光が飛んできた方を見やる。
遠かったがいた!あの姿は…!
陰山さん!
声にはならなかった。
俺たちは光に包まれていた。
「おかえり天晴くん」
舞さんの声だ。現実に戻ってきた。
ここは舞さんの自室。昨日、声をかけられお邪魔していた。
「で、どうだった?陰山さんには会えたの?」
「…ホント遠巻きになんですけど、一応。なんか避けられてる気がするっていうか」
「そう。アナタのその感覚は間違いではないわ」
舞さんの返答に心臓がキュっとなる。
「そうっすよね…やっぱ避けられてますよね…」
自分で口にして余計に気分が沈む。
「天晴くん。戦いのせいで話が途切れてしまったからもう一度聞くわね。陰山さんが離れていった理由、なんだと思う?」
落ち込む俺を無視するように舞さんは問いかけてくる。
正直、あまりよくわかっていない。必死に考えてみたけどなんかした、とかはなかったとと思う。
でも、もし、一つ理由があるとしたら…。
「俺、陰山さんのことを見てなかったんだと思います。っていうか周りのこと全然」
なんか…前に宝城に対して言ったことが自分に返ってきてる…感じがする。俺こそ独りよがりじゃん。
「どうしてそう思うのかしら」
どうして?か。なんでだろう。やっぱり、影山さんがいなくなったからか。
「陰山さんとはバ先が一緒で、結構、面倒見てもらってたんです。最初に仲良くなれたのも陰山さんだった。で、結構テンション高いんですよ俺。陰山さんはどっちかって言うと…大人しいタイプで。それで…その…なんか…合わせて貰ってたのかなって。一緒に居て楽だなとか、テンション高くていいんだとか思ってたんすけど…人に無理矢理押し付けてたんじゃないかって」
言葉がとめどなく出てくる。少し辛くなってきた。
「わかってるのね自分のこと」
舞さんはそう言った。やっぱ、そうだよな。俯く。
「勘違いしないでね。否定しているわけじゃないの」
えっ?
「アナタのその盛り上げ気質みたいなもとは良いところだと思う。やめろなんて言わない。良くも悪くも雑…と言ってしまうと失礼かもしれない。でもね、それで救われてる人もいると思うの」
…いるのかそんな人。
「少なくとも紫ちゃんはそうなんじゃない?私では救うことはできなかった。もちろん、陰山さんと宝城さんの助けもあっただろうけど、引っ張り上げたのは天晴くん。アナタ」
「いや…たまたまですよ」
「だとしても、救えたという事実は変わらないわ」
舞さんのその言葉にゆっくり顔を上げる。彼女はじっと俺の目を見つめてくる。
「アナタはそのままでいい。やめなくていい。一つ覚えることがあるだけ」
「なん…ですか?」
舞さんは微笑むとこう続けた。
「使い所よ」
宝城家の前。木葉は才二くんと一緒に来ていた。
「ごめんね才二くん。付き合って貰って」
「気にしないでください。陰山さんの気持ち…ちょっとわかります」
わたしは宝城さんに呼ばれていた。あの世界で会話を中途半端に終えてしまったので私のほうから声をかけた。わたしの家から近いところって提案されたけどお邪魔することにした。そのほうが話しやすいかと思った。
「お待ちしていました。ご足労いただきありがとうございます」
宝城さんが門を開け現れた。
「ううん。こっちこそ…押しかけるような感じでごめんね」
「いえ、若月さんもありがとうございます」
「そ、そんな気にしないでください」
応接間に向かうまでの間、誰も口を聞かなかった。凄く、静かだった。
部屋に通され、わたしと才二くんは2人掛けのソファ、宝城さんはテーブルを挟んだ対面のソファに座った。
「…では続きを話しましょうか」
宝城さんはゆっくりと口を開いた。
続きか…最後に何を話していたっけ。
「もう一度言います。陰山さん、貴方に戻ってきてほしいんです」
そうだ、そう言われたんだ。あの世界でその話をされたけど、陽向くんが来てるってわかって考えられなくなったんだった。
「うん…。そういう話だったね。多分、さっきも言ったと思うんだけど、そう言ってくれる理由がわからないの。凄く嬉しいんだけど」
嘘偽りの無い言葉を伝える。前だったら、きっと
ごめん、わたしが勝手すぎた
って言ってすぐに戻っていたと思う。でも、今はそうじゃない。ちゃんと、自分の気持ちを大事にしたい。
「宝城さん。やっぱり理由を言わないと陰山さんも戻りづらいと思います」
才二くんがフォローしてくれる。
「理由はあります。お伝えしましょう」
宝城さんの返答は力強いものだった。理由…なんだろう?全く想像がつかない。
…
あれ?どうしたんだろう?
宝城さんは話そうとするが詰まっているようだった。考えているのかな?無理に戻って欲しいなんて言ってくれなくていいのに。
「どうしたんですか宝城さん?」
才二くんは沈黙に耐えられず聞いてしまっていた。本当、どうしたんだろう。
その問いに、ようやく彼女は話し出した。
「貴方がいなくなって…私たち4人を繋げていたのは陰山さんだったと…思うようなったんです。空気を柔らかくするような貴方の存在が繋げてくれていたんだと」
胸の奥が少し暖かくなるような感じがした。
「それと」
それと?宝城さんは続ける。しかし、少し間があった。何を言うつもりなのか。
「私では…陽向くんを支えられない…」
え?どういうこと?陽向くんを支えられないって…意味がわからない。支えが必要な子だとは思えない。
「ごめん、宝城さん。言ってることが全然わからないの。支えられないって…陽向くんに何かあったの?」
理解できない。何があったんだろう。
「陽向くんは…その…自信を失くしているんです。自己中心的だったと…明るくしていたのは自分のためでしかなかったと…陰山さんが離れていって…自分は間違っていたんじゃないかと」
そんな。陽向くんが?あの?いつも明るくて、周りを引っ張る彼が?想像もつかない。
「ご、ごめん宝城さん。その、疑っているわけじゃないんだけど、それは本当なの?」
「本当です…」
宝城さんは肩を小刻みに揺らしながら俯く。彼女が今までにないくらい弱っているように見えた。
「陰山さん、ちょっといいですか」
突如、才二くんが割って入ってきた。
「…先程の戦いで陽向さんに会いました。あまり関わりがあるわけではないですが、少し違和感というか。彼に初めて会った時の印象とは離れているような感じがしました」
「えっ、どういうこと?」
「あまり、話さないというか…。もっと前に出るような人だと思っていたんですけど、今回はボクとか天然さんに着いてくるような感じがしたんです」
才二くんの言葉に嘘はないだろう。でも、それが事実なら…!
「宝城さん…陽向くんは本当に…」
「本当です。私は彼に支えられても…支えることはできないんだと知りました。落ち込む彼を励ますことすらできない。だから…陰山さんに…支えられる貴方に戻ってきてほしいんです」
宝城さんは必死だった。語気が強いのは珍しくないが、今までとは違う。震えているような涙混じりというか。
でも、わたしにできるの?陽向くんを支えることなんてできるだろうか。今まで、そんなことをしていたつもりはなかった。無意識だったとしても実感は無い。
「陰山さん?」
才二くんはわたしの顔を覗き込む。
「なに?」
「どうするんですか?」
「どうする…か」
戻る。という答えを出すには早い気がする。その前にやることができた。
「一度、陽向くんに会わないとね」
わたしがそう言うと宝城さんの顔が明るくなったように見えた。
「お願いします!」
彼女は立ち上がり深々と頭を下げた。
好かれてるな陽向くんは…。
戻る戻らないと言う話は一旦保留にして、わたしと才二くんは宝城家を後にした。
「陰山さん、これからどうするんですか?」
「そうだね。少し考えを纏めてから陽向くんに会おうと思う」
わたしが必要だという理由はわかった。あとは…実感が欲しい。陽向くんや宝城さん、紫ちゃんを利用してるみたいだけど…きっと、必要なことなんだ。
次回ッ!
第二十三話 夜の星、道示すヒカリ!




