第二十一話 過去を見つめて茶をしばけ!
駅前。
写野真士は時計を兼ねたモニュメントの下で待ち合わせをしていた。土曜日、夕方。他にも多くの人が周りに立っている。他の人々も俺と同じだろう。
待ち合わせの相手は鈴…ではない。國明でも夜星でもなければ、陰山さんや宝城さんでもない。
昨日、snsに突然連絡があった。知った人間からだ。もう…何年も会っていなかった相手。友人。今もそうかはわからない。
スマホを開き、昨日来たメッセージを確認する。
『よっ!覚えてるよな?(笑)なんかさ、街で顔見かけたんだよ、声はかけらんなかったんだけど…でさ!久しぶりに会わないか?』
変わらないな。と思った。当時からコイツはこんな感じだ。
「おっ居た居た!久しぶり真士」
記憶にある声。聞いた途端、思い出…が蘇るようだった。声の方に身体を向ける。
「久しぶりだな…淹煎」
OP
駅前の居酒屋に2人で入る。結構混んでいるようだ。まぁ土曜日だし、こんなもんか。
「すみません。あっそうそう、電話で予約した淘江です」
淹煎は予め席を抑えていたようだ。準備がいいな。
奥の小さな2人用テーブル席に案内された。向かい合わせで座る。男2人では、かなり狭いような気がするが仕方ない。お店のキャパシティの都合もある。
お飲み物は?と言う店員からの問いに
俺はハイボール、淹煎はビールの大瓶を注文した。
「…それにしても、本当に突然だったな」
「ん?あー、まぁそう思うよな」
「そりゃあそうだろ。大学の卒業式以来か?」
淹煎とは高校から大学にかけて関係があった。単純計算で7年は付き合いがあったわけだ。今年で29。人生の約4分の1はコイツと結構な関わりがあったということになる。
「そうだなー。卒業してから一回も顔合わせてなかったもんな」
と、注文の品とお通しがやってきた。
お通しは…春雨サラダか…小さな器に入っている。グラスに酒を注いでやろうと、大瓶に手を伸ばしたが
「アホか、会社の飲みじゃねーんだから。気遣うなって」
と淹煎に止められた。グラスにビールが注がれていくのをボーッと眺めた。泡とビールの比率は3:7くらいになって、上手いなと思った。
「じゃ、乾杯」
ハイボールの入ったジョッキを構える。
「おーう!カンパーイ!」
グラスが軽くぶつけられた。お互いほぼ同時に酒を口にした。
「あ〜、やっぱビールだな。真士はなんでハイボールなんだよ?」
「太りにくいからな」
「気にしすぎだろ〜」
「言っておくが、今年で29になるんだからな俺たちは。30と変わらん」
「…ちょっと気にするようにするわ」
軽い会話。正直、うまく話せるか自信がなかったが、杞憂だった。昔もこうやって話していたのを実感として思い出す。
「で、最近どうよ?」
話題を出したのは淹煎の方だった。社交辞令的なシンプルな話題。
「最近って言ったってなぁ…普通に社会人を続けてるよ。あのITで。転職とかもなくな」
「ほーん。ちゃんと食ってる?」
「お前は俺の親か。三十路に片足突っ込んでるんだ、健康面は気を遣うようにしてるさ」
「しっかりしてんなぁ」
「…お前はアレか?学生の時みたいにカフェイン漬けの生活のままか?」
「バレたか!まぁ、エナドリはもう飲まないようになったけど、相変わらずコーヒーはガバガバ飲んじゃってるな」
「程々にな」
「ほら、カフェインあんま効かないからさ俺」
「学生の時と言うこと変わってないぞ⁉︎」
懐かしい。そうだ、こうやって話していたんだ。勘を取り戻すのに大して時間はかからなかった。
「あー、すみません。はい、注文いいすか?えー、フライドポテトと唐揚げと…」
淹煎の注文に大学生か!と突っ込みたくなるが耐える。
「真士はなんかいる?」
「ん?あぁ…そしたら…梅水晶」
「おぉ大人だな」
「…まぁな」
昔からだが、こういう返しにくい事は言わないでほしい。
「そういえば、俺のことを見かけたとか言ってたけど何処で見かけたんだ?」
一応、確認しておきたかった。
「…あぁ」
「いや、あぁ、じゃ何もわかんないだろ」
「それがさ〜街で見かけたってのは嘘なんだわ。悪い」
「どういうことだ?」
この時間を楽しんでいたつもりだったが、そうはいかないようだ。そんな嘘をつく必要はなんだ?何を考えてる?
「これ」
そう言って淹煎は懐から何か取り出した。
「お前…絵の具を…」
淹煎の手には茶色の絵の具が握られていた。下部に刻印されている数字は…4。
「そ。見かけた場所は街じゃなくてあの変な世界だったんだ。嘘ついてすまん」
「嘘つく意味はあったのか?」
「いきなりコレの話したらお前、気張るだろ?まずはフツーに話したかったんだよ」
「別に…気なんて張らないさ」
「そうか?じゃー、俺の考えすぎか。ごめんな、さっさと話せばよかったな」
淹煎の表情は変わらずだった。どういう心境なんだコイツは。
「ちなみに、お前の絵の具は?」
取り敢えず、ポケットから絵の具を取り出す。
「ん?ピンクか?」
「いや、一応マゼンタって色らしい」
「へぇ、数字は3か。俺と連番じゃん」
「確かに…」
絵の具の数字か。特に意味とかを考えた事はなかったが、淹煎と連番となると何か意味を見出したくなる。知り合い…友人だった2人が連なっているとなると何かあるのでは。
「もしかして数字の意味考えてんのか?」
バレていた。
「ん?まぁそうだな。何か意味があるような気がしていて」
「や、考えても仕方ないと思うぜ。俺たち…ブルーチームってしとくか…ブルーチームでも結構考えたんだが、法則性だとかは何もわかんなかったよ」
そう言う淹煎の目は真面目だった。ふざけてない時のコイツはわかりやすい。取り敢えず、数字については考えないでおこう。
お通しの春雨をつまみ、酒を飲みながら、敵の目的はなんだろうみたいな話をしていたら、唐揚げやらなんやらが届いた。テーブルの上は隙間がないくらいになった。
「ちなみに淹煎はその…ブルーチームとはどういう出逢い方したんだ?」
こちらからも質問を投げておく。聞かれっぱなしというのもな。
「ん?あんま、話すような感じでもないかな。あの世界で会って…どうしたんだったか。確か舞が集まろうとか言い出したんだよな」
唐揚げを頬張りながら淹煎は言う。舞…まだ会ったことのない絵の具の戦士か。
「んでさ、ウチのリーダー様。才二って言うんだけど、ソイツがまぁ真っ直ぐでいい奴なんだ。ソイツ中心に分担して戦ってんな俺たちは」
言い切った淹煎はグラスに残っていたビールを一気に飲み干した。いつの間にか大瓶は空になっていた。
「すみませーん!えっと…んー…生一つ!」
「あ、俺はメガハイボールを」
ついでに自分も注文しておく。ジョッキに残っていたハイボールをグッと飲み干した。
「またビールか」
「ビールが全ての答えだ」
「酔ってるだろ」
「ちょっと…あと、久しぶりにお前に会ってテンション上がってるんだと思う」
なるほどな。しかし…こんな勢いよく酒を飲むようなヤツではなかった気がする。と言っても何年も会っていなかったのだから、多少の変化は当たり前か…。
「聞かれたから聞き返すけどさ…なんだっけ真士のとこは…チーム名」
「一応、イエローチームということになってるな」
「そうイエローチーム!どう出会ったん?」
どう…か。
「あの世界で初対面だな。顔見知りは居なかった。俺の他には3人…鈴っていう女の子、夜星っていう男の子…あと國明っていう男。で、2回目の時に鈴が現実で会おうって言い出したんだ」
そう。鈴が言い出した。あの子は皆の中心になれる。実際、俺と他の2人は鈴の言葉に従い集まれた。
「そうかー。あんまウチと変わり映えはしない感じだな」
確かに。と思っていたら飲み物が運ばれてきた。淹煎は即座にジョッキを口に運ぶ。
「かー、瓶もいいけど生もたまらんなー!」
わざとらしくそんなことを言う。
「随分楽しそうだな」
「そら、お前と会えたからな。誘いに乗ってくれて感謝してるよマジ」
「それが理由の全部か?」
少し気になっていた。絵の具を使う戦士であることを知った上で呼んだのであれば、何か他に意図がある。そう思った。それに、わざとらしさが見え隠れする時のコイツは何か別のことを考えていることが多い。経験でなんとなくそう考える。
「…悪い、ここ一応、喫煙OKなんだわ。失礼」
そう言って淹煎はタバコを取り出した。紙タバコ。学生の時に吸っていたのと同じ銘柄だ。フィルムはまだ取っていないようで、今剥がしている。一本取り出し、ライターで火をつけようとするが手こずっているようだった。
「お前、酔いすぎなんだよ。貸せ、点けてやるから」
淹煎の手からライターをやや強引に奪い取り、火をつけてやる。
「ふぅ………。悪いな手間かけて」
テーブルの端に重ねて用意されていた灰皿を取り、灰を落とす。
「お前…やめてなかったのかタバコ」
俺の問いに淹煎はすぐ答えない。ビールを少し飲み、また一服。…口を開く。
「また始めたってのが正しいかもな。お前は学生の内にキッチリやめてたよな」
彼のその言葉に俺の心臓の鼓動は早まった。
「あぁ…そうだったな」
「そうだよ。だって」
紗姫ちゃんに言われたもんな
思わず、テーブルを拳で叩いていた。近くの他の客や店員の目線が集まった。
マズい。
すみません、力加減間違えました
などと言って誤魔化す。
淹煎はタバコを吸いながら静かにこちらを見ている。
「どうした真士?」
コイツ…。
「お前…わかってて聞いてるだろ?たまにそういう所があるよな。どういうつもりなんだ?」
睨みつけると、ヤツは2本目のタバコに火をつける。煙を吐くとおもむろに語り始めた。
「完全に問題を把握してるワケじゃないが…絵の具の使い手たちで、微妙に纏まってないんだってな」
…そうか、聞いていたのか。
「あぁ。だがブルーチームには関係ないだろう」
「悪いけど関係あるんだ。ウチのリーダー様は人が手を取り合えると信じてる。その理想を助けるためにもまとまるようにしたいんだよ」
なんだそれは。そんな理想など知ったことではない。鈴を巻き込むな。
「ソイツに出来るのか?」
「さぁな。でも、出来るだけ助けてやりたいと思ってるよ」
気がつくと、淹煎はビールのジョッキを空にしていた。早すぎる…。
「てか、才二のことは今はどうでもいいんだ…。あ、すみません、生一つ」
「…でさ、気になるのは天然鈴って子なんだよ」
やはり、淹煎もそこに触れてきた。
「少し…話は聞いてる。そんでさ、この前あの世界行った時に見かけたわけよ。いやぁ…ありゃ多分いい子だよ。見ててわかる。だってさ…」
「それ以上言うな淹煎」
俺の声はそれほど大きくなかったが、自分でもよくわかるくらい敵意に満ちていた。
「悪い言うわ」
似てるもん紗姫ちゃんに
拳を振り抜く!
耐えた。ダメだそんなことをしては…。くそ、アルコールのせいか自制が効きにくい。
「あのさ、真士。別に俺はお前を怒らせたいとか、嫌な気分にしたいとかは思ってないんだわ」
淹煎がそんなことを言う。
そんなことはわかってる!
「…紗姫ちゃんをさ…重ねてるだろ、あの子に」
淹煎の目はまたしても真剣だった。
紗姫…。大学時代に付き合っていた女性。
いい人…だった。落ち着いていて、人の声を聞く…周りは皆、彼女に、程度は違えど惹かれていたと思う。
「完全に一致とかじゃないけどさ。周りの人を惹きつけるような雰囲気は紗姫ちゃんぽいよな」
「…そう…かもな」
返答するも、曖昧な答えしか出ない。
「まぁさ、そこが似てるだけなら別にいいんだよ。けどさ…」
淹煎は話を続ける。
けどさ…
その後にどんな言葉が来るか、なんとなく察しはついていた。
「最終的に自分がしんどくなるとこも…似てる気がするんだ」
「うぃ〜…飲み過ぎちゃったかな〜」
職場の飲み会を終えた夢奈は家路についていた。電車に乗ろうと、ゆっくりと駅へと歩み続ける。
「ん…ちょっと休憩…」
居酒屋だらけの通り、電柱に身体を預け寄りかかる。座りはしない。多分、座ったらそのまま眠って、気がついたら朝コースだ。
道ゆく人々を眺めてみる。皆楽しそうだ。
向かいにある居酒屋の戸が開いた。2人組の男性が出てくる。…なんか沈んだ表情に見える。軽く言葉を交わして、渋そうな方は足早にその場から離れて行った。
…あれ?残った人って淹煎さん?
目を凝らして見ると、やっぱり淹煎さんだ。どうしよ、声かけちゃおうかな。
「お姉さんってばいま1人?」
知らない声がした。声の主に顔を向けると知らない顔の男性。…あっ、ナンパか。
「えーっとですねー」
さて、なんて答えようか。1人ではあるけど…。
「おっ、探したよ。ここにいたんだ」
今度は知ってる声だった。
「淹煎さん!」
「ごめんな、お兄さん。約束しててさ」
「あらら、それはお邪魔しました」
わたしに声をかけてきた男性はそそくさと人混みに姿を消していった。
「助かりましたよー。ありがとうございます」
「視界に入ったからさ。困ってるようには見えなかったけど…余計なお世話だったか?」
「そんなことないですよー。助かりました」
わたしがそう言うと、淹煎さんはいつもの調子で笑った。
「そういえば…そこの居酒屋さんから出てきましたよね?チラッと見たんですけど、一緒にいた人はお友達ですか?もし、そうだったらわたしのせいで離れちゃったんじゃ」
「ん?あー、見られてたか。そう…友達。けど、話はもう終わったからさ、別に気にしなくていいぜ」
また彼は笑ってみせる。お店から出てきた時、少し沈んでいるように見えたけど…勘違いだったのかな?
「って…淹煎さんタバコ臭い!えっ?お友達が吸ったんですよね?淹煎さん吸う人でしたっけ!?」
彼からしないはずの匂いがしたことに気がついた。吸ったところを見たことはないし、吸っているという話も聞いたことがなかった。
「あぁ…。なんていうか、今日は吸わなきゃいけなくてさ」
…?どういうことだろう。吸いたい気分とかならわかるけど、吸わなきゃいけない?よくわからない。
「また声かけられてもアレだしさ…。駅まで送るよ」
淹煎さんは歩き始めた。
「淹煎さん!」
わたしが呼ぶと彼は足を止めて振り返った。
「あの…良かったら付き合って貰えます?さっきまでわたしも飲んでて…〆のラーメンってやつです!」
少し、さっきの彼の表情が気になったから、タバコの件も気になるし…誘ってみることにした。
「おっ!いいねぇ〜。急ぐ理由もないし、ご一緒させて貰うかな」
居酒屋の通りから少し歩いた先にある小さなラーメン屋。豚骨が美味しい。店の前に立つと特有の匂いがした。
「ここ美味しいんですよー」
そう言って引き戸を開け、暖簾をくぐる。匂いは一層、強くなった。
テーブル席は空いておらずカウンターに2人でかけることになった。2人ともラーメンを一杯ずつ頼む。
「こういうとこ淹煎さんと来るの初めてですね!普段はカフェとか付き合って貰ってますから」
「そーだなぁ。確かに初めてか」
顔の赤い淹煎さんは上機嫌そうに見えた。
「淹煎さんは普段はラーメンとか食べにくるんですか?」
沈んだ雰囲気の彼…気になるがいきなり踏み込むのは危ない。
「んー、あんまりかなぁ。家で済ませるようにしてるからな」
「ちゃんと自炊してるんですね!何作るんです?」
「…パスタ」
「あー、一人暮らし一般男性って感じですね」
「ちょっと小馬鹿にしてるだろ!?」
「あはは!そんなことないですよー」
なんて話していたらラーメンがやって来た。髪の毛が邪魔なので後ろで結える。
卓上に置いてある無料の紅生姜をトングで2つまみほどトッピングする。
「紅生姜乗っけるんだ」
それを見て淹煎さんが驚いた顔をする。
「えっ!豚骨には結構スタンダードだと思ってましたけど…珍しいんですかね」
「いや…あんま豚骨食わないからさ…ふーん、俺も試してみようかな」
そう言って彼も紅生姜を乗っけた。
…ラーメンを食べている間、会話らしい会話はなかった。店選びを間違えてしまった。
お互い食べ終わり、店を出る。外の空気は少しスッキリしているように感じた。
「ありがとな夢奈。紅生姜入れんの結構美味しかったよ。アクセントになる?っていうか」
「でしょー!オススメなんで今後もぜひ試してくださいね」
駅にたどり着いた。改札前。
「じゃ、またな」
淹煎さんは軽く手を挙げて去ろうとした。
「待ってください」
彼は不思議そうな顔をして、その場で立ち止まる。どうしよう…居酒屋から出て来た時のこと…聞くべきか…。
「どうした?」
「ううん…なんでもないです!ごめんなさい、止めちゃって。じゃあ、また!」
「おう、またな」
別れた。無理矢理…聞き出すべきではないな…そう思った。話してくれる時を待とう。
一方、その頃…あの世界。
「こんな時間に戦いか…」
天晴はジャージ姿でこの世界に来ていた。完全に寝る体勢に入っていたが仕方ない…陰山さんの顔が頭の中に浮かぶ。
「天晴くん…寝ていたのかしら」
振り向くと舞さんがいた。そう言う舞さんはパジャマ姿だった。
「いや、寝ようかなーってくらいでまだ」
「天晴!」
違う声…紫だった。この子もパジャマか。
「あっ…」
紫は舞さんを見て声を詰まらせた。そうだ…無理矢理、十六夜を辞めさせようとしたんだもんな。
舞さんは紫の前に歩みを進めると、深く頭を下げた。
「えっ、えっ?な、なんですか?」
紫は困惑している。
「ごめんなさい。私はアナタを救おうと思ったけど、あまりにも強引な手段をとった。自分がそう助けられたから、他の人もそれで助けられると…。あまりにも迂闊だった。それでアナタを傷つけてしまった。本当にごめんなさい」
舞さんの声は申し訳なさで一杯、というふうに聞こえた。紫は…どう受け取ったのだろうか、と彼女に目線を向ける。
「…いいです。結局、わたし助かったと思います。舞さんのおかげで…。だから気にしないでください」
「…そう。わかったわ」
頭を上げた舞さんの返答はシンプルだった。
「何やってんだよ、戦わないとマズいんじゃねーの?」
声の主は夜星だった…最近よく会う気がするな…。彼の言葉の通り、怪人が彼の目線の先にいた。焦茶色の…枯れた樹木のような怪人。
「よし…みん…」
声が出なかった。俺…俺はこんな前に出ていいのか?
「どうしたの天晴⁉︎」
紫の声は焦っているみたいに聞こえた。
「行くわよ3人とも!」
俺の不調を察したのか舞さんが声を上げた。
「「「「彩色顕媄‼︎‼︎」」」」
夜星が飛び出した!続けて紫も飛び出す。
「2人とも!」
舞さんが呆れたような声を出した。俺は…どうしよう。
「仕方ないわ…陽向くん!私たちも行くわよ!」
「えっ?あっ、はい!」
舞さんと共に2人を追いかける!
樹木の敵は根っこのようなものを地面から生やして、夜星と紫を攻撃していた。2人は際限なく生えてくる根っこを鎌と刀で刈り続けている。
敵は俺と舞さんが追いついたのに気がついたのか根っこの量を増やした!俺の背丈くらいの長さのそれが足元から一気に生えて来た!
「邪魔ね…一掃するわ!みんな伏せなさい!」
その声に俺たちは伏せた!
『シルバースロー!』
舞さんは思いっきり盾を投げた!彼女の手から離れたそれは根っこを伐採するみたいに、回転しながら縦横無尽に動いた。
「刈り尽くしたわ!一気に決めて!」
伏せていた夜星と紫が体勢を戻し的に突っ込む!
「陽向くん!アナタも!」
舞さんに言われてハッとする。そうだ!俺も行かないと!
『紫電ノ剣技 演舞!』
『三日月!』
『アッパレストライク!』
敵に3連撃を喰らわせる!敵は爆散し、色が抜けていった。色の持ち主に戻っていったのだろう。
…思い切り声を出したからか、前から続いていたモヤモヤが少し晴れていた。ほんの少しだけ…。
「ねぇ、天晴くん」
舞さんが声をかけて来た。
「な、なんですか?」
「明日は時間ある?」
「…ありますけど」
「少し話しましょう」
舞さんの言葉を聞き、紫が割って入って来た。
「天晴になにするんですか!?」
「大丈夫。無茶なことはしないわ。ごめんなさいね…信用できないでしょうね」
「ん…と、そういうわけじゃ」
「大丈夫だよ紫。ありがとな」
俺がそういうと、紫は少し心配そうな目をしていた。大丈夫だってば。
「あんたら大変そうだな。鈴に頼ってりゃいいのに」
俺たちを見て夜星はそんなことを言った。
光に包まれる…。
現実。天晴の部屋。ベッドに横になっている状態だ。
舞さんの呼び出しより、頭に残っていることがあった。
鈴に頼ってりゃいいのに
夜星が最後に言ったこと。
確かに…若月くんじゃなくて…鈴に頼ればいいのかな。きっと、楽だろうな…。
鈴の顔が声が浮かぶ。
天晴は木葉のことを少し…忘れかけていた。
次回ッ!
第二十二話 青い静寂、木陰の喧騒!
ストックが切れたのと自分が信じられない程の遅筆なため、本当に不定期更新になります。大した文量ではないのですが、1話書くのに下手すると1週間くらいかかってしまうのです。今回、二十一話も4日くらいかかってしまっています。連載の見切り発車は良くないです。反省します。
どれほどの方が追ってくれているかはわかりませんが、投げずに続けます。
一応、更新する際は16時台にさせていただきます。更新頻度は少なくとも週一…でやっていこうと思います。




