第十九話 花と鈴、思案の行方!
駅前。
「…というわけだ。伝えるのが遅くなったが、取り敢えず把握しといてくれ」
写野真士はそう私たちに告げた。レッドチーム、陰山木葉からどうにか連携を取れるようにしてほしいと言う要請についてだった。
「鈴様はどうお考えでしょうか?」
私が問うと、鈴様はうーんと唸り始めてしまった。
「や、わかる。わかるんだけど…それは無理にしなくてもよくない?って話になったじゃん?それでもやっぱり連携を取りたいって言われると…」
悩み続けている。
「嫌だでいいじゃんかよ鈴!」
夜星のヤツはそんな適当なことを言う。
「鈴様の思考を邪魔するな小僧」
「あ?なんだよ國明…やるのか?」
お互いに拳を構える。
「あーもう!喧嘩しないの!」
鈴様が割って入ってきた…。
「申し訳ございません。鈴様の命とあらば」
拳を下ろした。
「…ちぇっ、わかったよ」
夜星も拳を下ろす。結果的に2人して邪魔をしてしまった。
この日は鈴様お気に入りのカフェに行くという約束で集まっていた。カフェに入る。
「4人でーす」
鈴様が店員にそう伝えると、奥のテーブル席に案内される。
今日、鈴様の隣に座るのは夜星だった。癪だがローテーション制なので仕方ない。妙な感じだが、写野さんと隣り合わせで席に着く。
ご注文は?
という店員の問いにみな、素早く答える。
「あたしは季節のケーキセットで!飲み物はミルクティー」
「私は…抹茶ケーキに…ダージリンティー」
「俺はコーヒーだけで」
「おれはモンブラン!…とコーヒーブラックで!」
夜星を除く3人が一気に彼へと目線を向ける。
「え?夜星くんブラック飲むの?大丈夫?」
「よゆー!」
軽く答えているがすぐに後悔するだろう…と私は思った。夜星の返答に
かっこいー!
と言いながらくっつく鈴様を見て平常心を失いそうだが耐える。
注文の品が運ばれてくる。全員分が揃ったところで鈴様は口を開いた。
「じゃ!今日もみんなで仲良くねー。いただきまーす」
そう言う彼女の無垢な表情を見ると心が落ち着く。飾り気など感じられない。他者を慮ることのできる人…。
私の脳裏に1人の人間の顔がよぎった。
宝城玲花。
あの人は…強い人だった。鈴様も強いが明確に違う。人を寄せ付けない強さと寄せられる強さは違う。鈴様に指摘されたが…やはり宝城玲花のことは嫌いだ。
近くの席から聞き覚えのある声がする…。
一体どういうことなのでしょうか…
わっかんねぇよ急にああ言われて…
もしかしてわたしのせいなのかな…
思い当たる顔が浮かんだが無視。今この時間を邪魔されるわけにはいかない。既に邪魔者が2人ほどいるが…これ以上増えなければいい。カップをゆっくりと口に運ぶ。
「あれ!?天晴じゃない!?」
「鈴!?なんでここに!?」
気づいた…。
OP
ふと…昔のことを思いだす。鈴様と会って少し経ったころ…。戦いを終えた夕暮れの街。
「ねぇ執印さん、何か…隠してるんじゃない?」
気づかれた。
こんな少女に…玲花様と同じくらいだろうこの少女に。
「私は…何も隠してないよ天然さん」
淡々と答える。
あの世界で出会った、自分と同じ不思議な絵の具を持つ人間の1人、天然鈴。この子の
力を合わせて攫われた人を助けよう!
という提案に私は…写野真士と墨名夜星もまんまと乗せられていた。不思議と彼女には惹きつけられるような何かを感じる。他の2人もきっとそうだろう。
「ホントに?なんか…いつもぼーっとしてるような気がするよ?」
「普段からこうですよ」
嘘ではない。最近ずっとこんな感じだ。宝城家に仕えるのを辞めてからずっと。自分でもフラフラしている。こうして戦いというものに巻き込まれていても変わらない。軸が無い…というのだろうか。
「そっか…わたしの勘違いかも。ごめんね執印さん!嫌な感じだったね」
申し訳なさそうに笑う天然鈴。そんなことない。と言いたかったが口にできなかった。
「君は…人に必要とされるんだろうね」
何気なく、そんな言葉が口から出た。
沈黙。なんだ?なぜ黙り込むのだろう?夕焼けが彼女の顔を照りつける。表情は読めない。
「どうかしたのか?」
耐えきれず言葉を口にする。
「えっ?あ、いや別に!ちょっとさ、そういう風に言ってもらえて嬉しくて、感動しちゃった」
笑う少女。笑い声は鈴の音のようだった。心地良い。
「執印さんはわたしのこと必要?」
「どういう意味だい?」
「必要?」
天然鈴の表情は真剣だった。意図はわからない。
「それは…」
「ねぇ、國明くん大丈夫?」
鈴様の声にハッとなる。
「えぇ…ご心配には及びません」
「そっか。よかった」
微笑む鈴様。
さて、何をしていたんだったか。
そうだ、宝城玲花たちと私達が知り合いの雰囲気を醸し出したので、店員が気を利かせて大人数用のテーブルに案内してくれたのだった。鈴様、私、夜星、写野、陽向、十六夜、そして…宝城玲花の7人でテーブルを囲んでいる。嫌な空気だ。鈴様と共に席を外したいがそうもいかないだろう。
「で、陰山さんはどうしたんだ?」
最初に話題を振ったのは写野だった。確かに1人いなかった。
「陰山さんはちょっと…色々あって…」
陽向の言葉は少し思いようだった。何かあったようだが知ったことでは無い。どうせ、くだらない諍いとかだろう。
「陰山さんなにかあったの?」
鈴様が前のめりになって聞く。
「あっ、ごめんね。言いづらいよね」
すぐに発言を取り消した。やはり、鈴様は素晴らしいなと感じる。
「悪い…なんかうまく説明できないっていうか…よくわかんないんだ」
陽向は額に手を当てている。早く解散しないだろうか。
「てかさー、木葉さんいないのは仕方ないとして…十六夜?はどうしたんだよ?随分大人しいなー。やっぱコスプレしてないと気合い入んないのか?」
夜星がニヤニヤしながらそんなことを言った。コスプレ?なんの話だ?
「別に…こういうのも…わたしだし…」
十六夜は静かにそう答えた。あまり記憶にない人間だが雰囲気が変わった気がする。
「なんだそれ」
夜星は適当な反応をした。
「話を戻させてくれ」
写野が話を割る。
「以前、俺は陰山さんと宝城さんの2人からどうにか連携を取れるようにしてほしいと頼まれた。だよな宝城さん」
写野の問いに宝城玲花は静かに頷く。
「言い出しっぺがいないのは困ったが…丁度いい機会だ。ここで話を決めようか」
場を仕切っている。出しゃばるな。
「ありがたい申し出です。そうさせて頂きます」
宝城玲花の声は固い。淡々と…力強い声。聞いていて不快さすらある。
「えっと…具体的にどうしたらいいの結局」
鈴様の疑問は当然だ。コイツらは連携だのなんだの言って具体案を出さない。
「鈴様の言う通りです。あなた方は要望ばかり出して投げっぱなしだ。鈴様を軽んじているのでは?」
私がそう言うと場は静まる。やはりそうだ。指摘は間違いがないようだった。
「確かに…そう取られても仕方ないです。申し訳ありません」
私の指摘に宝城玲花は、やはり淡々と毅然とした態度で返答する。それを見て苛立つ気持ちが沸き立ってくる…ダージリンに口をつけ落ち着こうとするがカップを置くときにソーサーに強く置いてしまった。目線がこちらに集まる。
「謝られても状況は進展しませんよ…。貴方らしくもないですね」
取り敢えずというか、そんなことを口にした。
「國明くん…どうしたの?」
鈴様が怪訝そうな顔をする。マズい。
「率直な意見です。実際、話が前に進んでいません。鈴様も感じられてはいませんか」
「まぁ…そうだね…でも、もうちょっと言い方とか選べないかな?」
「かしこまりました」
そう言うのならそうしよう。鈴様のためだ。
「でさ…どうすんの?」
口を開いたのは夜星。大したことは言えないのだから黙っていてほしい。
「えっと…さ!いつも戦いの時って4人呼ばれるじゃん?でも誰か呼ばれるかはランダムぽいじゃんか。だから、誰と誰が組んでも大丈夫なようにしとかないとって…」
陽向がたどたどしく言う。
「わかっています。大丈夫なようにするにはどうするのかを答えてほしいのです」
言葉を選んで言い放つ。と、写野が口を挟んできた。
「落ち着け國明…。悪いな陽向くん。こっちからも提案させてもらう。それぞれの武器の特性を把握するっていうのはどうだろう」
ちっ…。
「と、特性を把握…?」
陽向は困惑している。…私もそうだった。把握してどうなるというのか。
「それぞれの立ち回りを理解することで自然と動きを合わせるようにする…ということでしょうか」
と宝城玲花。
「そういうことだ。飲み込みが早いな宝城さん。例えば、俺たちはハンマー、斧、大剣、鎌。君たちは…槍、杖、刀…弓…」
写野が弓といったあたりで、陽向が
弓…と呟いた。
「それぞれの武器で動き方はある程度決まってきてるだろう。それを共有できていれば自然と足並みは揃えられるんじゃないか?」
そう言った写野の言葉で私は気づいてしまった。大型の武器ばかりの私たちの立ち回りは正直、どれも似たようなものだ。鈴様を導く…という動きはするもののあまり差異はない。動きがほぼ共通のこちらにあちらが合わせるような仕組みで話を進めようとしている。
「…そうですね。それがいいかもしれません」
宝城玲花はあっさりとこちらの要求を呑んだ。気づいていないのか?まさか…。
来た。あの感覚だ。
「私は今回選ばれたようです。他の方は?」
鈴様と宝城玲花が手を挙げる。
1人足りない。
「もう1人いるはずですが?」
炙り出そうとすると宝城玲花が横槍を入れていた。
「ブルーチームの方…かもしれません」
ブルー?なんの話だ聞いていないぞ。
「あー、舞さんのことか。やっぱ他にも人いたんだ」
夜星は知っていたのか?
「あっ…そういえば連絡あるかもってまだ来てなかったな」
鈴様も?
空間が捩れる。
あの世界。いつもの様に絵の具を取り出す。さて、最後の1人は誰なのか。周りを見渡すと目に入ったのは宝城玲花、鈴様…そして飄々とした雰囲気の青年だった。
「うお、初めましての人しかいないじゃん。んじゃ自己紹介。オレはブルーチームの淘江淹煎。絵の具は茶色で数字は4だ」
…軽薄そうなやつだな、と思った。取り敢えずこちらも軽く挨拶をする。
「とにかく動きましょう。他の人たちが来るのを待っているわけにはいきません」
宝城玲花が仕切り出した。
「そうだね。早くしないとね!」
鈴様は乗り気だった。
「あー、動く必要はなさそうだぜ」
淘江はそんなことを言った。
理由はすぐにわかった。敵はそこにいた。
「シアン、ゴールド、イエロー、ブラウン…妙な組み合わせだな」
喋る敵…。トゲトゲとした、閃光を思わせる姿をしている。例に漏れず、こいつもどぎつい色合いをしている。
この前のクヴァレの強さが脳裏をよぎる。人数が揃うまでは耐え凌がなければならないかもしれない。
「とにかく戦闘体制に!」
宝城玲花が叫ぶ。気に食わないが緊急事態のため従っておく。
「「「彩色顕媄‼︎!」」」
「えっ何それ」
淘江は呆気に取られていたようだがすぐに
「まぁいいか!サイショクケンビ!」
姿を変えた。武器は…グローブか?
4人の戦士が並ぶ。自分も含めて、確かに妙な色合いになっていた。
「俺はブリッツ。ニュークリアが1人。クヴァレさんは手こずったらしいが…4人なら俺でもどうにかなりそうだな?」
敵、ブリッツはニヤリとしながら言う。どうやら舐められているようだ。癪に障る。
「私達の戦い方はわかっていますね玲花様。合わせてください」
宝城玲花にそう言い放ち私は前線へ出る。夜星と写野がいない今、鈴様を支えられるのは自分だけだ!
「執印さん!待ってください!」
そんな声が聞こえたが無視。雑音でしかない。
ブリッツに対して大剣を振り下ろす!
「随分と直線的な攻撃だな?」
簡単にかわされてしまった。だが想定内。即座に切り返しもう一撃を叩き込む!
ブリッツの身体を掠める!
「ちっ!やるな!」
「相手は私だけではありませんが?」
ブリッツはハッとした表情になる。後ろから鈴様がハンマーを構え姿を現した!
『イエローホームラン!』
大振りの一撃!
が、空振り…。
「バカか?気づかないと思ってたか?」
ブリッツはニタニタしている。さっきの表情は演技だったか。
「國明くん!他の2人とも合わせないと!」
「何を仰いますか。前線に出る武器を持つ私達の動きはわかりきっています。他が合わせるべきですよ」
そう。皆、鈴様に合わせれば良いのだ。
「おいおい、自由すぎないか!?」
淘江が現れた。ポッと出がしゃしゃり出るな!
「おい敵さん!そっちは攻撃しないのか⁉︎」
敵を挑発する淘江。やはり軽薄なヤツだ。
「お望みならやってやるよ!」
ブリッツの身体から閃光と共に無数の針が発射された!
マズい!見えない…鈴様をお守りできない!
攻撃は届かなかった。前を見るとバリアが張られている…。
「淘江さん!無茶をしないでください!」
宝城玲花が叫ぶのが聞こえた。
「悪い!取り敢えず攻撃方法はわかったろ⁉︎よろしく!」
淘江は叫び、ブリッツに突っ込む!
「一気に畳みかけるぜ敵さん!」
「鈴様!我々も行きましょう!」
「う、うん!」
鈴様と共にブリッツへと突っ込む!
「3人がかりか!好都合!」
またしてもブリッツは攻撃を放った!即座に鈴様の前に立つ!
発光!
攻撃は来なかった…。ブリッツの周りをバリアが囲んでいた。
「皆さんお願いします!」
宝城玲花の声。…私を頼っているのか…⁉︎
「國明くんどうしたの!?攻撃!」
鈴様の声で我に帰る。そうだ攻撃を!
『ダブルインパクト!』
『イエローホームラン!』
『ヘヴィスラッシュ!』
三人同時攻撃!
が、ブリッツは再度発光した。
目が眩んだが…攻撃は当たった感触があった。
「ちぃっ!間一髪!やるなお前ら!」
ブリッツは焦った顔になる。演技ではなさそうだ。
「連れて帰れそうだったが仕方ない!行けお前!」
ブリッツが姿を消すと、その奥の方にドス黒い青色をした半獣人のような怪物がいた。
「おっと、助けないとな」
淘江は不意に真面目な声で言った。
「悪い遅れた!」
陽向が現れた!続いて、十六夜とかいう少女、写野、夜星も現れた。
「みんな!よし行こう!」
鈴様の声に皆が結託するのを感じた。
現実。
結局、鈴様を導くような形で敵にトドメを刺し、決着はついた。相変わらずレッドの奴らはうまく合わせることができていなかった。写野の話を理解できていないのだろうか?
「よかったー。今回も勝てたね!」
鈴様が明るく言う。
「…ですが、レッドチームの方々、合わせるということをわかっていなかったのでは?」
思っていたことを言う。奴らは黙った。
「まぁ國明。結局、話を詰められずに戦いになったんだ。仕方ないだろう」
「写野さん。甘やかすべきではないと思いますが?」
「ねぇ國明くん、よしなよ。今後うまくやっていこう?」
「…わかりました」
お互いの武器による立ち回りを伝え、お開きとなった。流石に話し合ったのだから今後は上手くいくだろう。全く手のかかる奴らだ。
宝城家の前に私は立っていた。解散して数時間。どうしても気になることがあった。
門が開き、宝城玲花が顔を出す。
「急に連絡があったので驚きました…。どういったご用件でしょう」
宝城玲花の表情は凛々しいものだったが、目の奥に困惑めいたものがあるのがわかった。
「どうしても聞きたいことがあるのです。申し訳ございませんが、場所を移してもらえますか?」
「わかりました」
私と宝城玲花は少し歩いた先にある小道に入り話を始めた。
「それで…聞きたいこととはなんでしょうか」
宝城玲花は深刻な顔をしている。
「先ほどの戦いでのことです」
そう。どうしても引っかかることがあった。確かめなくてはならない。
「貴方は…皆さんお願いします…と言いました。おかしなものです。私が仕えていた頃、あれ程、人の手は借りないという態度でいた貴方がそんなことを言うなど…どういう心変わりなのでしょうか?」
そう。宝城玲花はそんな人間では無い。
仕えていた頃、私を必要としていなかった。孤独に咲く花のような。何者も寄せ付けないような孤高さがあった。
「大体、妙だと思っていたんです。そんな貴方が他の人間と力を合わせて戦っていること自体がね。なんですか?反省でもしたのですか?信じられませんよ。気味が悪いとすら思います」
思っていたことを全て言葉にする。宝城玲花はゆっくりと口を開いた。
「はい。反省しました。あのままではいけないと。私1人では戦っていけない。誰かが共にいないとやっていけないと知ったからです」
「なっ…」
絶句する。というのはこういうことを言うのだろう。バカな。そんなはずはない。宝城玲花はそんな考えをする人間ではない!
「どうしました執印さん。やはり…信じられない…とお思いですか?」
図星。くそッ。こんな奴に見透かされていると思うと腹が立つ。
「えぇ!そうです!信じられませんね。貴方はそんな人間ではなかったはずだ!人を必要としない、自分だけを信じているような嫌な人間だ!そんなことを考えられるはずがない!」
「…自分でも信じられません」
「は?」
宝城玲花の目が少し憂いを帯びたように見えた。なんだその表情は!?
「そうだ!前と変わらない!人を必要としない冷たい人間なんだ!」
そう、変わるはずがない。人間はそう簡単には変わらない。自分は…自分は!
「鈴様は貴方とは違う!私を…必要だと…言ってくれた!」
思い出す。
「執印さんはわたしのこと必要?」
「どういう意味だい?」
「必要?」
「それは…」
答えには詰まった。だが、なんだか天然鈴というこの少女といると少し心地が良い。気が休まるような感覚がある。
「必要かな。君といると落ち着く気がする」
そう口にすると少女は弾けるような笑顔になった。
「そっか!ありがとう執印さん!」
その笑顔、声にまた心が落ち着く、安らぐ。
「あのね、わたしも執印さんのこと必要だなって思うよ!凄く頼れるし…なんだか大人っぽいし!お兄さんって感じで!」
ああ。そうだ。私はコレが欲しかったのだ。
必要とされたかったのだ。
この子は宝城玲花とは違う。この子は私を欲してくれている。あの女とは…違う!
その時だった。天然鈴に、鈴様に仕えようと決めたのは。
記憶が蘇り、宝城玲花への怒りが昂る。
「貴方は誰も必要としていない!独りよがりな、酷い人間なんだ!」
「はい…私は…独りよがりでした。自分が全てを背負えばいい。人の上に立てるよう、周りを軽んじていました」
先ほどから彼女の口からは信じられない言葉ばかり出てくる。
「気づかせてもらったんです。陽向くんに、陰山さんに、雷電さんに…」
と言うと宝城玲花は少し微笑んだ。
「陽向くんなんて、分かりあうことの出来ないタイプの人間だと思っていました。でも、分かり合えた。彼の人柄に…救われたと言うべきでしょうか。勿論、彼だけのお陰ではありませんが、人は誰かと支え合えるということ…それを少し教えて貰えたんです」
陽向天晴…。あのバカそうな男が?何故だ?どうして玲花様を変えられた?私にはできなかった…。何故だ!?
もうわけがわからなくなってきた。
怒りが憎しみが、宝城玲花に向けてのものなのか、陽向天晴に向けてのものなのか。
「何故だ!何故…私が居た時に…貴方は…」
全身が強張るのを感じた。何を言おうとしているんだ自分は⁉︎
「執印さん…申し訳ございませんでした…」
「黙れ!」
聞きたくなかった。謝って欲しいわけではない。そう。ただ、私は貴方に…!
それ以上考えるのはやめた。言葉として口に出てしまいそうだった。何より、そういう願望をこの女に対して抱いていたということを自分自身を認めたくなかった。
「失礼しました…。少し…頭を冷やします。勝手ですが…お暇させていただきます」
宝城玲花の返事を待たず、私は帰路に着いた。
自宅につき、私は無意識に電話をかけていた。勿論、相手は鈴様だ。
『どうしたの國明くん?』
鈴様の声。ずっと昂っていた心が落ち着いていくのがわかった。
「鈴様…。貴方は私が必要ですか?」
『何?どうしたの?必要だよー。今日も助けて貰っちゃってたしね。いつもありがと!』
「ありがとうございます。少し…声が聞きたかったのです」
『ふーん。変なの。國明くんてば、そういう所もあるんだね!新しいとこ見えたって感じ!』
「…急なお電話、失礼いたしました。では…」
『うん!またね!』
必要だよー
その言葉が頭を埋め尽くす。
自分にはあの人しかいない。あの人のためならなんだって出来る。
「鈴様…」
1人呟いた。心はひどく落ち着いていた。
次回ッ!
第二十話 透けて見えるぞ首領の姿!




