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第十八話 木葉、揺蕩う!

わたしは宝城家に来ていた。ここに来るのも…何度目だろう。流石にお邪魔しすぎな気がする。

応接間にはわたしを含め、4人集まっていた。


「じゃあ!改めて自己紹介ってことで!やってきましょうか!」

天晴が仕切っている。そう。以前の戦いを終え、自己紹介が必要な人物がいた。


天晴の発言を受け立ち上がる少女。


「えと…わたし雷電紫らいでんゆかりです!改めてよろしくお願いします!」

紫は深々と頭を下げた。

「そんなかしこまらなくていいよ紫ちゃん」

「はじめましてというわけではないでしょう」

わたしと宝城さんがそう言うと紫ちゃんは頭を上げた。


「いや…はじめましてかなって思って」

そんなことを言う。目線は泳いでいた。

「大丈夫。今までも…これからも変わらないチームでしょ?はじめましてじゃないよ」

「うん…ありがと…えっと…」

紫が何に詰まっているかわからなかった…がすぐに理解した。呼び方に迷っているのだ。

「陰山でも、木葉でもいいよ」

「じゃ…じゃあ…木葉ちゃん…」

ちゃん付け⁉︎と思ったがたまにはいいか。なんだか、少し照れくさい呼ばれ方になってしまった。

「私も…好きに呼んでくれて構いませんよ雷電さん」

宝城さんも同じようなことを言う。

「じゃあ…玲花ちゃん」

「…わかりました。それでいきましょう」

多分、完全に納得している訳ではない…と2人のやりとりを見て思った。


「とにかく、これでチーム結成って感じかな?」

軽く言ってみたが本気でそうだと願いたい。これ以上、問題が増えるのは勘弁だ。

「うん…ごめん!今まで3人にはいっぱい迷惑かけた!」

紫はまた深く頭を下げる。

「気にすんなよ紫!お互い様ってヤツだからさ」

「そうですね。陽向くんの言う通りです」

玲花が天晴に同調する…珍しいなと木葉は思った。最初の頃にあった雰囲気はどこへやらといった感じだ。わたしよりも陽向くんと上手くやれているのではないか。


「じゃ!レッドチーム結成ってことで円陣組もうぜ!」

相変わらず勢い任せなことを言う。

「必要ですか?」

「え、円陣?」

「陽向くんらしいけど急すぎない?」

…誰も乗り気では無い。少し可哀想だ。


「…やめとく?」

陽向くんは珍しくしょげた顔をする。

「はぁ…そんな顔をしないでください。わかりました。組みましょう」

「天晴にそんな顔似合わないからね!」

それを見たのか、宝城さんと紫ちゃんは急に乗り気になった。

「じゃ、みんなで!組もうか」

わたしも参加する。


こうしてみんなを巻き込める陽向くん

冷静な判断と思考で司令塔的な宝城さん

戦いでは頼りになっている紫ちゃん

まぁ、暴走気味だったけど。


…わたしって何が出来てるんだろう。紫ちゃんも一旦落ち着いたみたいだし、わたしたちチームの問題らしい問題は解決した。他のチームとのことが今後課題になるだろうけど…既に失敗してるし…。真士の顔が脳裏によぎる。胸が苦しくなるのを感じた。


「よーし!じゃあレッドチーム!他のチームともうまくやってこうぜ!」

「「「「オー!!!!」」」」


なんだか、混ざれていないような気がした。


OP


あの世界。円陣を組み、今後について話し合い解散した後、木葉は捩れに巻き込まれた。


さて、今回は誰がいるのだろう。写野さん…は居ないといいけど…。以前の戦いで一瞬顔を合わせた時…気まずさから萎縮してしまった。いつか、精算しなければと思うが…心の整理をつけられる自信はない。


「あ、もしかして陰山さんですか?」

聞き覚えのある声。振り向くとそこには若月才二がいた。

「ご無沙汰してます。初めてお会いした日以来ですよね?」

純粋そうな瞳で彼はそう言った。

「…そうだね。あの日以来だね。ごめんね若月くん、あの日は行けなくて」

「才二でいいですよ。気にしないでください。また機会を作ればいいだけですから」

「そうそう。俺も参加できなかったからさ」

突然現れた男性。年齢は…写野さんくらいだろうか…。


「はじめまして陰山さん。俺は淘江淹煎ユルエヨウセン。気軽に淹煎さんとでも呼んでくれ。持ってる絵の具は茶色だ。よろしくな」

そう言って取り出した絵の具の下部には4の数字が刻印されていた。

「よ、よろしくお願いします…」

「淹煎さん、陰山さん困惑してるじゃないですか。いくらなんでも登場が急すぎますよ」

「そう言うなよ才二。印象残すためにはこういう現れ方の方がいいんだよ」

「…あ、すみません陰山さん。この人いつもこんな感じなんです」

黙っているわたしを気遣うように才二くんは言う。


「今回はこの4人みたいね」

更に現れたのは綺麗な女性だった。

「アナタは…陰山木葉さんね。私は蘭幕舞。才二の仲間。陽向くんたちから話は聞いてるわ」

…この人が、十六夜ちゃ…じゃなくて紫ちゃんに荒療治したっていう人か。

「もう聞いてるかもしれないけど。紫ちゃんの件は申し訳なかったわ。追って、本人にも謝罪しにいくけど。あまりにも強引だった」

この人も、失敗したんだ。

そう思った。なんとなく共感。

「大丈夫です。というかわたしに謝られても…」

「そうね。お門違いよね。失礼したわ」


「ほら、話はここまでにしよう。早いとこ人か敵かを探さなくちゃな」

淹煎さんが会話を終わらせた。

「いつも通り…って言っても、俺らのいつも、陰山さんはわからないよな」

淹煎さんは軽く笑いながら言う。

「才二、説明してやってくれ」

「えっ、その流れでボクですか?」

「ったりめーよ。リーダーはお前、才二だろ」

「…わかりました。まぁ説明するほどのことではありません。個別に別れて、索敵する。それだけのことです」

…確かに単純明快だった。

「個別行動なの?わたし達いつもは2人組で行動してるんだけど…」

マズい。こんなこと言う必要はなかった。余計な口出しをしてしまった。

「2人組ですか…。その方が安全ですけど…」

才二くんは考え込んでいる。

「じゃ、今回は一旦陰山さんのやり方を俺たちでやってみようぜ。才二も舞も構わないだろ?」

淹煎さんがそう提案する。

「そう…ですね。やってみますか」

「淹煎…アナタが仕切ったらダメじゃない」


変身し、わたしは淹煎さんと組むことになった。この人のノリは…苦手なタイプかも、なんて思った。でも悟られてはいけない。

「悪いな陰山さん。俺と組ませちゃって」

「いえ、別に」

本音ではあった。才二くんも初対面のようなものだし、蘭幕さんもそう。つまり、誰と組もうと変わりはしなかった。

「謝った後で自分で言うのもなんだけど、多分俺が一番楽だぜ」

…!心を読まれてる!?

「あ、予想通りのこと考えてたんだな。なんとなーく表情とかでわかったよ」

「…」

ペースを握られてる。

「変に気遣わなくていいからさ。疲れるよ、そういうの」

図星。


「知った風なこと言わないでください」

ダメ。なんでこんなこと言っちゃうんだろう。

「悪い悪い…今、うっかり口から出ちゃったろ」

「なんで…わかるんですか」

「なんかさ、陰山さんってそういう気持ちは普段抑えてるんだろうなって。予想だけど」

なんだこの人…なんでわかるの…。

「いつもだとヤバいけど、たまに思ったことは口に出した方がいいぜ。ケンコーのためにもさ」

「そんなこと…」

出来るわけない。と言いたかったが声にはならなかった。

「…と見えたぞ陰山さん」

淹煎さんの声は急に重くなった。視線の先に目をやると…敵だ、敵が居た。セルズ達の中心に熊のような飴色の怪物がいる。何処かへ向かっている?

「俺の武器見て、わかる?グローブ。近づかないと当てらんないわけよ」

淹煎さんは急に話を始めていた。

「えっ、あ…なんの話ですか?」

「援護よろしく!あと、才二たちに合図!」

淹煎さんは飛び出していった!

「ちょっ、淹煎さん!」

「ダイジョーブ!俺ってば結構強いんだ!今年で29だけどな!」

そう言ってどんどん敵の方に行ってしまう。どうしよう…止めた方がよかったかな。

「とにかく、合図!」

上空に向けて矢を放つ…よし、これでOK。


淹煎さんの方に意識を向ける。セルズを蹴散らしながら、クマの怪物の元へと向かっている。わたしの援護は要らないのでは、と思う。

「うわ、淹煎さん1人で行っちゃってる」

「うひゃ」

後ろから突然声がし、変な声が出る。

「ごめん、驚かせた?…って陰山さんでしょ!わたしわたし!あ、あの時名乗ってなかったか。昼飯夢奈ヒルイユメナでーす!才二くんと一緒にいた人ですよー」

「あ、あの時の…」

「なんて言ってる場合じゃないね!淹煎さん助けに行かないと」

昼飯さんも駆け出していった。…わたしはどうしよう。この場で援護でいいだろうか…。

遠目に淹煎さんが熊と戦い始めるのが見えた。大振りの攻撃に防戦一方のようだ。


「わたしも行こう…」

淹煎さんと夢奈さんの2人であの敵を相手取るのは厳しいと思った。弓を握り締め、彼らの元に急いだ。


わたしが辿り着く頃、すでに2人はセルズを一掃し残すは熊の怪物のみとなっていた。

「加勢します!」

熊の前足を狙撃する!

が、あまり効いていない。熊はこちらに狙いを定め突っ込んできた。

「危ねぇ!夢奈頼む!」

「任せてよ淹煎さん!」

夢奈さんの鞭が熊の足を縛り転倒させた!

「陰山さん、距離をとっ…うわ!」

熊は足を思い切り動かした!縛った鞭を持ったままだった夢奈さんは勢いよく上空に吹っ飛んでいった。鞭は足に巻きついたままだった。また、こちらに突っ込んでくる!

「…やるしかない!」

熊は口を開けている、身体の中に矢を射れば多少は効くはず!


今だ!

同時に熊が叫んだ。わずかに軌道は逸れ、熊の分厚い身体に弾かれた。

「あっ」

熊が前足を振り上げるのが見えた…。


「油断すんなよ!」

淹煎さんが現れ熊の顎に強烈なアッパーを放った!体勢を崩した!


「淹煎さん!?」

「あ、やべ」

熊は体勢を即座に立て直し腕を振り下ろした。


終わった、と思った時目の前に盾型のバリアが展開されていた!


「間一髪ね2人とも!」

舞さんだった。

「一気に畳み掛けましょう2人とも!」

才二くんも合流した。

「よぅし、陰山さん反撃と行こうか!」

「はっ、はい!」

真後ろでズドンと何か落ちた音がした。

「あいたたたた…めっちゃ飛ばされた」

夢奈さんだ…滞空時間どうなってるんだ。


「淹煎さん!足元お願いします!」

「任せとけ」


『インパクトドリップ!』

強烈な一撃が熊のバランスを崩す!

『蒼天!』

才二追撃で熊は倒れた!


「陰山さん!わたし武器ないからトドメお願い!」

夢奈さんはわたしを頼ってきた!

応えなきゃ!


『サイレントアロー!』

大口を開ける熊を狙撃する!


直撃!熊は内部から崩壊し色が解き放たれた!


「おー、やるじゃん陰山さーん。助かったよー」

夢奈さんが笑顔で近づいてくる。よかった、応えられた。

「陰山さん。ありがとうございます。あと一手が足りなかったので…」

才二くんもそう言ってくれた。なんだか…気分が良かった。

「アナタ…」

「えっ…なんですか」

「いえ、なんでもないわ」

舞さんは何か言いかけた…なんだろう。

「とにかく上手くいったんだ。みんなお疲れさん!」

淹煎さんがそう言うとわたし達は光に包まれた。


現実。また戻って来れた。と、スマホが振動したのを感じた。

すぐに取り出すと才二から連絡が来ていた。


『明日、会えませんか?この前、予定が合わなかったのでそのリベンジってことで!』


急な誘い。普通なら断るけど…。

さっきのことを思い出す。


なんか…気分がいいな…。


理由はわからなかったけどそう感じた。才二くんと…ブルーチームの人といるのはそんなに苦じゃないかもしれない。と思う。淹煎さんも思ったほど苦手な感じではなかった。


『いいよ。明日は予定も無いから時間はいつでも』


なんだか、浮かれていた。


翌日。集合場所はとある雑貨屋。こんなところにお店があったんだと思った。

…どこか話すスペースがあるのか?

取り敢えず入るしかない。才二くんたちはもう中にいるらしい。


「ご、ごめんくださーい」

「あらいらっしゃい」

綺麗な女性が出迎えてくれた。多分、店主の方かな?

「あぁ、舞のお客さんね。みんな揃ってるみたいだから、奥に行っていいよ」

優しい声。なんだか聞いていて落ち着く。

「ありがとうございます。お邪魔します」

「丁寧なお嬢さんね。あまりお構いできないけどごゆっくり」


店内の奥に続く廊下に差し掛かると舞さんがいた。

「来たわね陰山さん。こっちよ着いてきて」

その言葉に従う。

「ここって舞さんのご自宅なんですか?」

「そう。と言っても親の家よ。時々、店番をするのを条件に居させて貰ってるの」

…何か混みいった理由があるのだろうか。聞かない方がよかったかもしれない。


「ここよ」

通された部屋は普通の部屋だった。真ん中に中くらいのテーブルが置かれ囲うようにブルーチームのメンバーが床に座っていた。

「あ、お邪魔します」

ちょっと緊張しているのか、またお邪魔しますなんて言ってしまった。

「待ってましたー」

「そんなかしこまらなくていいんだぜ」

夢奈さんと淹煎さんはこんな調子だ。

「どうぞ、ボクの隣でよければ…」

座っている才二くんの隣には1人分の座布団があった。

「うん。じゃ、横失礼するね」

才二の横に座る…。正座になってしまった。

「じゃ、改めて顔合わせの会ということで始めましょうか」

舞さんも座り会が始まった。


「そういえば、陽向くんとか…他の人は声をかけてないんですか?」

単純な疑問だった。わたしだけ?

「…実はね、私たちアナタと話したいと思って今日は集まったの」

舞さんの言葉に驚いた。え?わたしと?なんで?

「な、なんでわたしなんですか?宝城さんとか、写野さんみたいなしっかりしてる人と話した方がいいんじゃ」

「いやさ、昨日戦った時に君のことが気になって」

淹煎さんが答えた。何?何か変なことあった?


あっ。思い当たることがあった。わたしが熊を恐れて矢を外したことだ。


「ご、ごめんなさい。どうしても…焦ると照準がブレてしまって…前に紫ちゃんに当てたこともあって…」

心臓が痛いくらい鳴っている。

「陰山さん、違います。その話ではないんです」

才二くんが心配するようにそう言った。じゃあ何?わからない。自分でも気づかないミスがあったのだろうか。心臓は相変わらず激しく鼓動している。


「はい陰山さん。一回、深呼吸。吸ってー吐いてー…どう?」

夢奈さんがそう言うのに合わせて深く息を吸い、吐く。ほんの少しだけ落ち着く。

「ちょっと、ちょっとだけ楽になりました」

「良かったー。ごめんね、ちょっと圧みたいなのあったよね」

「そんなことないです…わたしが勝手にドキドキしてるだけですから…」

いらぬ心配をかけてしまった。ダメだ落ち着かないと。


「悪い、ストレートに言うからな。陰山さん、君のそういうところについて話があるんだ」

えっ。

淹煎さんの言葉をすぐには理解できなかった。そういうところ?

驚きのあまり、少し心が落ち着いた。

「舞、悪いけど続き頼む」

「わかってるわ」

舞さんがこちらに向き直り話を始めた。


「少し感じるものがあったの。アナタは…少し周りに気を使いすぎるタイプなんじゃないかって」


何も言えなかった。


「淹煎がね、私に言ってきたの。あの子は抱え込みそうだから少しガス抜きできるように促したほうがいいって」

淹煎さんの方を見る。おちゃらけていない真剣な表情だった。

「ごめんな陰山さん。俺の勘違いかもしれない。けど、もしそうだったらって考えると、一応話しておきたいと思ったんだ」


…。


「ボクも…淹煎さんからその話を聞いて陰山さんに連絡しました。どうしても放っておけなくて」

才二くんの声は暖かく感じられた。今まで感じられなかったような抱擁感のようなものを覚えた。


「なんで…皆さんはそんなに…寄り添ってくれるんですか?」

単純に疑問だった。なんで、ほぼ初対面のようなわたしに対してこんな親身に接してくれるのだろう。


「ボクは人は分かり合えるものだと思ってます」

才二くんが口を開いた。

「そして力を合わせれば凄い力を発揮できるんだって思ってます。学校とかの話になっちゃいますけど、実際体育祭とかそれで優勝出来たりしたんですよね」

わたしは黙って聞き続けた。

「チームワークの生む力は凄いです!でも、そのために誰かが苦しくなったりとかは嫌なんです。手を取り合っていけるようにしたいんです」

才二の目は真剣だった。それっぽい言葉を並べてるだけ、そんな感触は無かった。

「それが理由?」

納得は出来ずに聞いてしまう。

「はい。力を持つ人は12人もいます。多いかもしれませんけど、わかりあうのが不可能な人数じゃないです。だから、陰山さんのこともわかりたくて…一緒に並べる仲間になりたいと思ったんです」


ふと思った。わたしたち…陽向くん、宝城さん、紫ちゃんで足並みを揃えようとしていた。それは間違い無いと思う。才二くんたちも同じスタンスだろう。けど、何かが決定的に違う。そう感じた。


「他の皆さんはなんで…?」

これも疑問。才二くん1人の考えに賛同しているのだろうか?


「わたし才二くんの理想好きなんだ」

夢奈さん。

「俺も似たような感じだな。コイツの…才二の理想を叶えたいと思う」

淹煎さん。

「真っ直ぐな願いを持ってる才二の強さを見届けたいの」

舞さん。


「ちょっ…みんな、恥ずかしいですよ…」

才二くんはすこしてれている。

違う。わたし達とは。天然さん達とも違う。才二くんが中心だろうけど、あくまで支えてるだけというか。


「あー、勿論、単純に陰山さんが心配だったからさ。本当だぜ?」

淹煎さんが笑って言う。


「それで…どうなの?アナタは人に合わせてないの?」 

舞さんは問いかけてきた。


わたしは…


「それが楽だと思ってました。陽向くん達は年下なので…年長のわたしが合わせていかないとと思って…」

本音が出てしまう。

「正直、天然さんたちが出てきてからしんどくて…自分が悪いこともあるんですけど…なんか最近は自分が必要かどうかもわからなくて」

どんどん言葉が出てくる。不思議とこの人たちの前では隠すことなく出てきてしまう。


「なんか疲れちゃって…でも」

「でも?」

才二くんは言葉の続きを待っているようだった。

「昨日、皆さんと一緒に戦ってる時…楽だなって思ったんです。気張らなくていいっていうか」

本心だった。みんな、対等な感じがした。頼るし、頼られる。レッドチームがそうでは無い、というわけではないが、明らかに気持ちの軽さが違った。


「そうですか…」

才二くんはわたしの話を受け止めてくれているようだった。

「…今、思ってることは全部話せた…と思います」

嘘じゃない。

「そう。ありがとうね話してくれて」

舞さんの声は優しかった。

「で、どうするかって話だけど…」

淹煎さんが話を進めた。

「どう?今の話、みんなにできるか?」

みんな、というのは陽向くん達のことだろう。話すこと…できない。

「どうするかは陰山さんが決めな。こっちで無理やり決めちゃったら良くないし…少し考えてみて?こまったら相談乗るからさー」

夢奈さんは微笑みながらそう言った。


雑貨屋を後にする。

「駅までは送るわ。乗っていきなさい」

舞さんが車を出してくれることになった。

「おっ、じゃあ俺も甘えるかな」

「アナタは自転車があるでしょう」

「ちぇっ、冷たいなぁ舞は」

そんな軽口が飛び交う。見ていて少し気が楽になる。


10分もしないうちに駅に着いた。わたし、才二くん、夢奈さんは車から降りた。


「ちょっと遠いかもしれないけど、いつでも来なさい。話くらいは聞いてあげられるから」

「ありがとうございます…」

別れ際、舞さんは少し微笑んで車を走らせていった。


「じゃ、ボクと夢奈さんは電車で帰るのでここでお別れですね」

「そうだね。今日はありがとう」

「気にしなーい陰山さーん。またね」

才二くんと夢奈さんを見送る。


…どうしよう。楽になりたい。という気持ちがあった。でも…。


夜、わたしは珍しく電話をかけた。

「もしもし?陽向くん?今、大丈夫?」

「あ、陰山さん!どうしたんすか電話なんて珍しい」

彼の声を聞いて落ち着く自分がいた。だが、少し気を使おうとする自分がいることにも気がつく。

「あのね…わたし…」

言葉に詰まる。

「なんですか?何かあったんですか?」

慌てたような声がきこえる。言わなきゃ。


「少し…3人から離れたいの」

言った。言ってしまった。

「えぇっ!?それってどういうことですか!?俺、何か陰山さんに…」

「ごめん陽向くん…必ず戻るから…!」

そう言って一方的に電話を切ってしまった。


気が晴れているのがわかった。何してるんだろ…ホント。


ちょっと、ちょっとだけワガママさせて。ほんのちょっぴりでいいから。


誰に聞かれているわけでもなくわたしはそんな言葉を口にしていた。


心が揺れている。そんな感覚があった。



次回ッ!

第十九話 花と鈴、思案の行方!

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