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第十七話 荒ぶる紫電、危険な妄想!

数ヶ月前…


ゆかりー!帰ろうよー」

クラスメートのあかりちゃんが呼んでる。

「うん…」

控えめな返事。いつもだけど思ったより声が出ない。

「紫ってばなんでいつもそんな元気ないんだよ〜」

香理かおりちゃんだ。

「えっと…元気ないわけじゃないよ」

「ホントか〜。まっ、そういうとこ可愛いんだよなぁ紫って!」

そう言って、香理ちゃんが頬擦りしてくる。

「あはっ、もうやめてよー」

「ほら香理、紫困ってるじゃん。そんくらいにしときな」

「はいはい。んじゃ、帰りましょっか」


帰り道。3人並んで歩く。中2の頃、2人と同じクラスになって仲良くなった。一年の頃、わたしは暗くて全然友達ができなかった。そんなわたしに声をかけてくれたのが2人だった。


「やー、あと半年もせずに卒業かー。短かったなー」

香理ちゃんが伸びをしながら、そんなことを言う。

「そうだね…。2人と会えてからすごく楽しかったよ」

「ちょっ、紫ぃ…もう終わりみたいなこと言うなよ」

「ご、ごめん」

怒られちゃった。

「いいじゃんか香理。わたしらと会えて良かったって言ってるんだからさ。でしょ、紫」

「ふふっ…うん」

肯定すると灯ちゃんはご機嫌になった。


「あ、紫じゃん」

交差する道に差し掛かった頃、聞き覚えのある声が聞こえた。

「あと灯と香理か…そんな陰キャとつるんで楽し?」

莉嘉りかだ。一年の頃同じクラスだった。学校では目立ってて、暗いわたしのことは苦手みたいで口もまともに聞かなかった。

「莉嘉…」

灯ちゃんが鋭い声を出す。

「うぉ、怖。単純に疑問だからさー。2人と紫が一緒にいるの違和感あるなって」

莉嘉は悪びれもなく言う。

…わかってるよそんなこと。

「あのねぇ…誰と一緒にいようが勝手でしょーが。口出しされる覚えとかないわ」

香理ちゃんの語気は強い。

「あー、ごめんごめん」

謝罪。

「でさ、本人はどう思ってるわけ?」

「えっ」

「答えなよ紫」

「それは…」

「おかしいって自覚あるでしょ」

「そんな…そんなこと」

「じゃあはっきり言ったら?そんなモゴモゴしてたら2人に悪いとか思わない?」

声…出ない。

「莉嘉!」

灯ちゃんが叫んでいた。

「な、何よ灯」

「アンタにそんなこと言う権利ない。さっさと消えて」

「…あっそ」

そう言って莉嘉は別の道に姿を消した。

「ごめん灯ちゃん…」

「いいよ紫。あーいうのはガツンと言わないと」

「そーそー。灯の言う通り」


その日以降、灯ちゃんと香理ちゃんに対する周りの対応は冷たくなった。きっと莉嘉が何かしたんだろう。


わたしを庇ったから…わたしが…もっと強かったら…そう、十六夜みたいに…!


OP



3月…現在。学校。みんなもう帰り支度をしている。

昨日は…いや、思い出したくない。アレからずっと身体が重い。なんか、心まで重くなってる気がする。


「ねぇ、紫。一緒に帰ろうよ」

灯ちゃんが声をかけてくる。

やめて違う…わたしは紫じゃないんだってば…。

返事はしなかった。


「ねぇ紫。もう少しでわたしたち卒業なんだよ?前みたいに話してよ。そんなんじゃなかったじゃん」

やめて。紫じゃない。あんな暗くて弱っちいのはわたしじゃない。わたしは強くて…。


違う。十六夜でもない。

わたしって誰なの…。


結局、わたしは1人で帰った。俯いて歩く。

わたしは強くなりたかった。莉嘉の言っていたことは間違ってなかったと思う。わたしは2人のともだちらしくない。あの時、莉嘉の問いに おかしくない と言えなかったのはわたしが弱かったから。そして、灯ちゃんと香理ちゃんは…。

今でこそ学校のみんなは普通に接してるけど、あの一件以来、数週間ほどは扱いがおかしかった。先生たちが動いてくれてどうにか収まったけど、その時もわたしは何もできなかった。


十六夜なら2人を助けられる


そう思った。わたしじゃダメなんだ。十六夜になると…決めた…。

けど、うまく話せなくなった。どっちが自分なんだかわかんなくなって…。


そして…アレだ。少しして…あの絵の具を手に入れたんだ。

誰かを助けるために戦う。謎の戦士。そして刀。十六夜になれた。


初詣の時の記憶が蘇る。

あの時、灯ちゃんと香理ちゃんが声をかけてくれた。でも…。


道の途中、立ち止まる。

唇を噛み締め、拳を握りしめる。涙が出てきた。


わたしは…わたしはなんなの?

弱いままだ。2人を傷つけてることはわかっていたのに、十六夜だって思ってあんな振る舞いばかりしてた。なのに、2人はまだわたしに声をかけてくれてる。


ごめん。灯ちゃん、香理ちゃん。もう紫はいない。十六夜でもない。なんでもないんだ。


本物の十六夜は…もう会いたくない。自分がそうじゃないって理解させられるだけだ。



気がつくと家に帰っていた。いつの間に歩き出していたんだろう。


「ただいま」

「おかえり…」

母が返事をするが、途中から聞こえなかった。

「…あんた大丈夫?すごい顔してるけど」

「大丈夫…」

そんなわけない。

「ごめん、疲れたから寝る」

「具合悪いんならちゃんと言うんだよ。来月から高校生でしょうが」


自室。床に倒れ込む。

部屋は散らかっていた。

なんでだっけ?そうか。昨日帰ってきて十六夜関連とか九十九真以関連のグッズを散らかしたんだ。


寝返りを打ち天井を見上げる。電灯は点けていない。少し薄暗い部屋。

ポケットに入っているものを取り出す。

紫色の絵の具。

「6番…」

もうこれしかなかった。バイオレットゼクス。誰かが考案した名前。そうだ、これになろう。少なくともその戦士は強い。


スマホが鳴った。誰だ?

通知には『ヒナタアッパレ』の文字。


『ちょっと会える?俺もう春休みだし、そっちも授業とか短縮でしょ?いつもの公園でさ』


珍しいな。まぁでも…いいか。


『いいよ』


身体を起こし、制服のまま部屋を出る。


「あれ、…どこ行くの着替えもしないで」

「…公園」

そう一言だけ残して家を出た。




「いいよ…か」

天晴は公園に来ていた。十六夜…ユカリと会うために。

「普段なら、いいだろう、とか返してくるのになぁ」

違和感。多分、勘違いとかではないと思う。舞さんと連絡先を交換していた俺は


『ユカリちゃんと会って。才二や私じゃきっと上手くいかない。アナタから感じた雰囲気に賭けたい』


と連絡を貰った。

「雰囲気って言ったってなぁ…どうすりゃいいんだ。ぶん投げもいいところだよ」

舞さんから指示ももらっていた。


十六夜と呼んではいけない

ユカリと呼んではいけない

他の人を連れて来てはいけない


…いや、なんて呼べばいいんだ。

キミ?お前?お嬢ちゃん?

散々、一緒に戦ってきてそりゃないだろ。

「上手くやるしかないか…」

と言っても流石に不安だ。陰山さんか宝城…あとは鈴に頼りたいけど…ダメなんだもんなぁ。


足音。振り向く。そこにはユカリがいた。

取り敢えず、2人でテーブルに掛ける。

「よっ!…ありがとな来てくれて」

「何の用なの」

おかしい。すぐにわかった。目線もこちらに向かず、机の上をぼうっと見ている。

「いやさ、昨日の戦いの時に舞さんが武器を取り上げたじゃん?あの時のこと聞こうと思って」

マジでこれくらいしか話題が無い。雑談て感じじゃ無いし。てか、触れていいのかこれ?

「…わからない。なんか、刀を持ったらあの人の銀の衣装に紫色のラインが走ってた。それだけ」

「へぇ、なんか力が移ったみたいだな。2人分のパワーとか?」

なんの話してるんだ。

「知らない」

ダメだ。悪い舞さん無理かも。


と、ユカリが手に何か握っているのに気づいた。絵の具だ。

「あれ…もしかしてあの感覚来てる?」

そんな素振りは見えなかった。

「待ってるんだ」

なんだ来てないのか…。え?待ってる?いや、確かに戦いに乗り気だなとかは思ってたけど…待ってる?人が攫われてるのに?

「え、どういうつもりで言ってんのそれ?」

柄になく強い言い方になった。宝城に声を荒げた時を思い出す。落ち着け俺。

「ごめん、ちょっと言い方強かった…。待ってるっていうのはどういうこと?」

ユカリは相変わらず目線を下に向けたままだ。頼む、答えてくれ。マジでどうしたらいいんだ。


「ねぇ、わたしって誰?」

ユカリは口を開いた。

「えぇ?誰ってそりゃ…」

どっと汗が噴き出る。やばかった。舞さんの指示を思い出す。危うくユカリって言うとこだった。けど、沈黙を続けるわけにはいかない。何か、何か言え俺!

「まぁ…自分は自分だろ。それは間違いないんじゃないか?」

ユカリの身体が軽く跳ねた。

「自分って…何?」

弱々しい声だった。本当にか細い。今までのユカリからは考えられないような声。

「む、難しい質問ですね」

なんで敬語なんだ俺。思ったことを言ったら凄まじいカウンターが来た。自分?自分ってなんだ?


「今、ここにいる俺…みたいな」


「いや、なんていうか…存在!」


「違うな…こう…なんだろ」


もう何言ってるかわからなくなってきた。

「レッドツェーンは何言ってるかわからない」

え?なんだ急に…俺のことか?

…思い出した、いつだったか宝城の家で決めた変身した姿の名前だ。ユカリはなんだった…紫色…パープル。いやこんな響きじゃなかった、そうだ、バイオレット!で数字だ。6…ドイツ語で6…。思い出したゼクス!バイオレットゼクスだ!


…って呼べばいいのか?本当に?ユカリや十六夜呼びはするなって言われた。じゃあ変身した後の名前はOK?ってわけじゃ無いよな多分。

なんの話だっけ…あぁ、何言ってるかわからないって言われたんだ。


「悪い。上手く説明できないわ。ムズイよ、正直、俺も自分って誰って言われてもちゃんと答えられないし」

ユカリが顔を上げた。何か食いついたような…そんな気がした。

「レッドツェーンもわからないの?自分」

「まぁ…そうだな。完全にはわかってないと思う」

嘘じゃ無い。さっき声を荒げた理由。それも何故かと聞かれたら答えられない。例えば、戦う理由は?とか聞かれても、誰かが大変そうだから、となんとなくだからちゃんとした答えではない。


「なんかさ、気にしすぎじゃね?自分なんて分かってるやつあんまいないと思うし。なんていうか、誰かと一緒にいる時、楽しい、しんどいとか思うのが自分なんじゃないの」

かなり雑。疲れて来たのかこんなことを言ってしまう。

「気にしすぎ?」

「うん。俺さ陽向天晴じゃん?でも、アッパレだったり、そのレッドツェーンだったりするわけじゃん。その時その時で名前が…まぁあだ名みたいなもんか…それが違ってても俺っていうのは変わらないわけよ。どう?今まで一緒に戦ってきてさ、俺は俺だったろ?」

「…そうだね。レッドツェーンはレッドツェーンだった。いつも変わらなかった」

「だろ!変わらないのが自分なんだよ!」

どうにか結論が出た気が…


「でも!わたしは変わりたい!」


ユカリは叫んだ。公園の静けさは別のものに変わってしまった。

「わたしは…変わりたい!やだ!迷惑かけたくない!灯ちゃんも香理ちゃんも好き!弱いから2人に迷惑かけた!強く変わりたいの!」

感情が爆発しているようだった。どうしたらいい?わからない…けどユカリから逃げちゃダメだ。受け止めないと…仲間だし…放っておけない!


「変わるのはいいことだと思う」

「なに?さっきと言ってること違くない?」

「…いや、変わるのがダメとは言って…ない…よな?変わらないのが自分って話で…」

「だから!それでもわたしは変わりたいの!」

「変わるって言ったってさ…それは自分のままではあるだろ?完全に別人になるみたいなのはできないわけで」

「じゃあ!わたしは何してたの?全部無駄だった?弱いままでいるしかなかった!?」

ユカリがどうしてこうなったのか俺には全然わからない。理由を聞ける感じでもない。どう話せばいいんだ。苦しめてるだけなんじゃないのか俺は。


「弱くても…そのまま強くなれるんじゃね?」

「は?」

訳がわからない。言ってることが無茶苦茶だ。

「何言ってるの?ふざけてる?」

そうなるよな。

「ふざけてない。強くなりたいって思った時点で、もう強くなってるんだよ」

話の筋が通ってない気がする。

「その、なんていうか、弱かったんだろ?で、強くなりたいって思ったんだろ?このままじゃ良くないって。それってさ、もう変わってたってことじゃねえの?」


少し溜めてユカリは口を開いた。


「…ダメ。それじゃ強くなってない。変わってなんかない」

否定の言葉だ。


「じゃあさ、強いってなんなの」

ユカリは黙りこくった。

「…意地悪な質問かもしんないけどさ。教えてよ」

沈黙。ユカリの言う強いとは、一体なんなのか。

「守れる人…。誰かを、大事な人を守れる…人」

ユカリは答えてくれた。

そうか…守れる人…か!

俺は吹き出してしまった。

「なんで!?おかしい!?わたしは!本当に!」

「ゴメンゴメン!いや、そのさ…」

「なに?」

「もうなれてるよそれ」

「え」

嘘じゃない。さっきまで並べてた勢いだけの言葉じゃない。確信を持って言えた。


「今まで一緒に戦ってきたろ?色を取られてる人、助けた、守ってたじゃん。俺たちのことだって…まぁ俺とかが助けることもあったけど、守ってくれてたと思うよ」


「違う…あたしじゃない…あれは…」

「ホントに違うか?」

ユカリは黙る。

「ああするって決めてたのは自分じゃないのか?他の誰でもないだろ?変わってた強くなれてたって俺は思う」

「でも…いつもじゃない…灯ちゃんや香理ちゃんの前だと、自分だとうまくできない」

「…なんで自分だと上手くできない?」

「だって…わたしは弱いから…」

「なぁ…なんで決めつけるんだ?」

「だって!弱かったんだもん!ずっと…嫌だったんだもん!わかってる!わたしがよくわかってる!」

「それは昔の話なんだろ!」

声が大きかった。ユカリは目を見開き驚いている。

「なぁ、今はどうなんだよ?今まで、どうだったんだよ?俺たちと戦い始めてからもずっと、いつも弱かったのか?強いときなんて全然なかったのか?」

「だから…あれは…わたしじゃ」

「いや違う!十六夜もユカリも自分なんだよ!」


「あっ」

やった。呼んでしまった。呼ぶなと言われていたのに。


「何?何が自分って言ったの?」

聞こえてない?な訳ないよな。聞こえてないフリだよな。けど…

「全部、自分って言ったんだ」

「全部…」

「良いことも悪いことも、全部やったのは自分だよ」

宝城とぶつかった時を思い出す。怒鳴った、その後わかりあえた。全部やったのは自分だ。らしくなかったとか関係ない。



来た…あの感覚。どうやらユカリも感じているらしい。

「待ってたんだろ?」

意地の悪い質問。

「…」

黙っている。見た感じ、喜んでいるようには見えない。

「戦えんのか?」

「戦う。だってそれしかないから」

空間が捩れた。





あの空間。わたしはレッドツェーンと来ていた。あと2人いるはず。

「あっ、陽向くん」

「この4人ですか…正直なところありがたいですね」


グリーンツヴァイと…ゴールドアハト。


「陰山さん、宝城!少し話が」

レッドツェーンが2人に何か話してる。

なんでもいい早く変身しないと。


「彩色顕媄」

わたしはバイオレットゼクス。戦わなくては、守らなくては。


…1人で移動した先に人が倒れていた。女性…歳は同じくらいか?


…莉嘉。


なんで?攫われてきたの?わたし…莉嘉を守らなきゃいけないの?

顔を見ていると心が騒つくのがわかる。


違う!わたしは紫じゃない!十六夜でも…そう!バイオレットゼクスなんだ!それしかないんだ!


「助けなきゃ…」

周りに集まり始めたセルズを倒すため、刀を構える。


「わたしの名はバイオレットゼクス!お前ら…覚悟しろ!」

素早い動きで敵を切り伏せていく。他愛もない。この程度、バイオレットゼクスの敵ではない。…だが心にしこりがあった。敵を倒しながら、ふと、倒れる莉嘉に目をやる。


アイツのせいで灯ちゃんが…香理ちゃんが…


動きは止まっていた。セルズ達はユカリのことなど気にせず莉嘉の元へと進む。


そうだ。いなくなっちゃえばいいんだあんなヤツ。いい気味だ。わたしが助ける必要なんてない。


今度は身体が動き出していた。セルズ達を斬り捨てていく!


「1人で行くなって言ってるじゃんよ!」

そこにレッドツェーンたちが駆けつけ、戦い始める。…やめて来ないで。


「あぁああああ!もう!わかんない!どうすればいいの!?」

わたしは叫んでいた。何をしているかもわからない。莉嘉を助けたいのかそれとも見捨てたいのか。

「お、落ち着いてください」

ゴールドアハトだ。何?落ち着けなんて…無理。

「こっちを見て!」

手を握られた…!グリーンツヴァイだった。何、なんなの…。


「ねぇ、これまでわたし達一緒に戦って来たでしょ?」

グリーンツヴァイは真っ直ぐわたしの目を見ている。

「あなたは…1人で戦ってた?違うよね。確かに突っ込んで行ったりしてたけど…力を合わせてたよね?」

違う。それはわたしじゃない。違うの…。

「わたしたち…友だちとかでは無いと思う。でも、チームにはなれてたよね?」


「また出遅れちまったか!まぁいいや、お前らを軽く捻ってセルズを取り憑かせるか!」

昨日の…ドゥンケルが現れた!


「こんな時に…!」

グリーンツヴァイは焦ったような顔になる。

「陰山さん!俺が行く!」

レッドツェーンは飛び出していった。セルズたちは一掃されていた。


何?何をする時間なの?

「…貴方が誰なのか…それはわからないです。でも、誰であろうと私達のチームの一員であるということは変わりません。今までがあります」

ゴールドアハトが話に入ってくる。


「わっ、今どういう状況?」

「陽向くんが1人で戦ってるが」

黄色とマゼンタが現れた…。


「写野さん…っ」

グリーンツヴァイは怯えているような表情。

「写野さん!説明はできませんが、すぐに陽向くんをカバーしてください!天然さんも…お願いできますか!?」

ゴールドアハトが激しい声で2人に指示を出す。

「緊急のようだな。行くぞ鈴」

「おっけぃ!任せてよ宝城さん!」

「「彩色顕媄‼︎」」

2人は姿を変え、レッドツェーンの元へ向かっていった。


お嬢がこちらに向き直る。

「もう一度言います。今までがあるんです。捨てることはできません。確かにあったことで、自分でやってきたことなんです」

静寂の戦士もこちらに向き直る。

「宝城さんの言う通り。わたし、自分って嫌だなって思うことあるんだ。最近もあったし。でもね、それもわたしだから。全部まとめてわたしなんだって…あなたも…きっと」



わからない。2人が言ってること…。

十六夜は…強い。

バイオレットゼクスは…強い。

紫は…弱い。

全然、別だよ。まとまってない。


「ユカリちゃん!」

アッパレの叫びが聞こえた。

「えっ…」

「十六夜ちゃん!どっちも自分なんだって!十六夜も!ユカリも!名前は…どっちでもいい!」


「えっ陽向くん?」

「何を言い出してるんですか」


何を言って…。


「全部!一直線で!自分なんだよ!守ろうって戦ったのは、十六夜でユカリだったんだ!」



…わたしは陽向天晴の方に歩みを進めた。

陰山木葉と宝城玲花は黙ってわたしが歩くのを見ている。


「わたしは十六夜」

口にすると、後ろから

そんな…

とかみたいなことが聞こえた。

「わたしはバイオレットゼクス」

「わたしは紫!」

振り返る。

「ごめん。結局、わたしはなんなのかわかんない…でも…」

陰山木葉と宝城玲花は目を見開いてこちらを見ている。

「今から探してみる。わたしって誰なのか」


「だから見てて!」

「うん!」

「わかりました!」

2人の返事を背にわたしは走り出した!陽向天晴の元へ走る!

「アッパレ!」

この呼び方が慣れてる。

「わたしも戦う!」

「待ってたぜ!」

刀と槍が同時に突き出され、ドゥンケルを吹き飛ばす!


「おっ!じゃああたしも…」

「待て鈴…」

「えっ⁉︎でも…まぁ真士さんがそう言うなら仕方ないかー」


敵をわたしとアッパレの連携で追い詰める!視界を奪う暇は与えない!

「くそっ!コイツら速い!」

気圧されるドゥンケル。

「ここらで1発デカいのいっとくか!」

アッパレが槍を振り回す!

「前みたいにぶつけないでね!」

「大丈夫だよ!」


『アッパレストライク!』

強烈な槍の一突き!ドゥンケルは体勢を崩す!

「次頼む!」

「もちろん!」

迷うことはない。十六夜だってわたしなんだから!


『十六夜流剣技 紫電一閃!』

居合斬りが炸裂する!


「よっしゃ決めるぞ!」

「合体技だね!」


紫電天晴しでんてんせい!!』』

槍が剣がドゥンケルの身体を吹っ飛ばした!


「…バカな!こんなやつらにっ!?」


爆発…ドゥンケルの体から色が抜け始める。

あの人も、莉嘉も助けられた。少し引っかかるけど、嫌と思ったのも助けなきゃと思ったのも自分だ。こっち!と思った気持ちを優先しよう。


ドゥンケルの身体が人の形になっていくのを見ながら、わたしは口を開いた。

「雷電…紫…」

「えっ、何?」

聞こえていなかったのかアッパレは聞き返して来た。

久しぶりに口にする言葉だった。もう一度言うのは…なんだか勇気が必要だった。ライデンユカリという…名。

息を深く吸い、アッパレの顔を、目を見る。


「わたしの…名前…。雷電紫らいでんゆかり…覚えて?」


ちょっとドキドキした。アッパレはそれを聞くと笑顔になった。すごく優しい笑顔。


「そっか!よろしくな!紫!」

手を差し伸べて来た。

「うん。よろしく…天晴!」

その手を握る。繋がった。

わたしたちは初めてお互いを名前で呼び合った。



次回ッ!

第十八話 木葉、揺蕩う!

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