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第十五話 出ました新色!

数週前。

あの空間。ボク、若月才二ワカツキサイジはこの異様な状態に慣れてしまっていた。何度目か、10には満たないと思うが慣れるには充分な回数。

周りを見渡す。

居た。仲間達だ。

昼飯夢奈ヒルイユメナ淘江淹煎ユルエヨウセン蘭幕舞ランマクマイの3人。皆、既に絵の具を構えている。


「皆、いつも通りやろう」

ボクの声に3人は静かに頷き絵の具の先を捻った。それを追う様に、自分の絵の具も捻った!

青い奔流が手に走り棒が現れる。いわゆる棍というやつだ。その中央部分に絵の具を挿す部分がある。

装填しトリガーを弾く!

青いコスチュームに包まれ、顔には半透明のバイザーが装着される。

夢奈は白、淹煎は茶、舞は銀とそれぞれ姿を変える。

「じゃ、いつも通りな才二」

淹煎が軽く言って走り出す。

「後でね才二くん」

夢奈は手を振りながら駆け出していった。

「手筈通りにね才二」

舞は釘を刺すように言って身を翻した。


「よし…ボクも行かないとな」

棍を握り締め、足を早める。色を奪われた人を探さなくてはいけなかった。


数分後…白い光が見えた。夢奈が色を奪われた人…もしくは敵を見つけたのだ。

全力で走り、ものの1分で辿り着く。

「夢奈さん!」

「おー!才二くん一番乗りだね!」

夢奈は武器である鞭を使い、怪物と戦っていた。金色の…マジシャンの様な見た目だ。

夢奈と合流すると敵はカードの様な物を飛ばしてきた!

マズい!

爆発が起きる!…が無事だった。目の前に大きなシールドが張られていた。

「油断してたね2人とも」

舞の盾から発せられたものだった。

「舞さん!ありがとうございます!」

「よーし、変に動かれるとマズいし止めちゃおっか!」

夢奈が鞭を伸ばし敵を縛る!動きを止めた。

「行きます!」

敵へ突っ込む!一気に必殺技で決める!

「あっ、ダメだー」

敵は鞭の拘束を破った。だが関係ない、止まる理由はない!

敵はまたカードを投げようとする!

「させない!」

素早く棍で手を撃ち攻撃を止める。

今だ!


『蒼穿!』

エネルギーを先端に集中させた突き!


敵の姿はボフッという音と共に消えた。分身か!?


「才二後ろ!」

舞の声が聞こえる、マズい!振り返るが敵の攻撃は眼前に迫っていた。


「悪い、美味しいとこ貰うぜ」

誰かが横を通り過ぎた。


『ダブルインパクト!』

淹煎の素早い2連続のパンチが敵を粉砕した!


「淹煎さん…助かりました」

「おう。ちと危なかったな才二。取り敢えず、色は取り戻せたし…ま、気をつけようぜ」

「淹煎さんてば、やるー。カッコよかったよー」

「完璧なタイミング。見計らってたの?」

皆、思い思いに口を開く。


「とにかく、今回も皆お疲れ様です!」

ボクはそう言って光に包まれた。


OP


そして現在。


「ここが…宝城さんの家…デカいな…」

ボクは数日前に出会った、金色の絵の具の持ち主、宝城玲花さんの家の前まで来ていた。


あの日、陰山木葉さんと宝城玲花さんの2人に絵の具を見せ、色々と話そうとしたが


かなり疲れているので日を改めて欲しい


と断られてしまった。連絡先を交換し、提示された日が今日だったわけだ。


「大丈夫?少し緊張してるんじゃないの?」

舞さんが淡々と聞いてくる。

「し、してませんよ。ちょっとデカい家だなって思っただけです」

「あはは、誤魔化せてないよ才二くーん」

夢奈さんがからかうみたいに肩を掴んで揺すってくる。

「ほら夢奈、あまり才二で遊ばない」

「遊んでないですよー。ねー才二くん?」

「…行きますよ。」

インターフォンを押す直前、勝手に門は開いた。中から宝城玲花が現れた。


「お待ちしておりました…申し訳ございませんが挨拶などは中で致しましょう。こちらです」


玲花に連れられ応接間へ案内される。


中には明るそうな男の人がいた。あんまり自分と歳は離れていなさそうだ。


「どうぞ、おかけになってください」

ボク、夢奈さん、舞さんは言われるがままソファに腰掛ける。


「では、初めての方もいらっしゃるので改めてご挨拶をさせて頂きます。私は宝城玲花。18歳、高校生です。金色の絵の具を持っています」

そう言って絵の具を取りだす玲花。下の番号は…8か。この人は凄く…真面目なのかな?所作は凄く綺麗だし、話し方もなんというか高貴さのような物を感じる。実際、そういう家柄みたいだし。多分、まとめ役なんだろう。


「じゃ!次は俺かな」

明るそうな男の人が立ち上がる。

「皆さんはじめまして!俺は陽向天晴!宝城と同じ18で来月から大学生!持ってる絵の具は赤です!気軽に天晴とかアッパレって呼んでください!」

元気な人だな…。こういう人がいると場が盛り上がるから、戦いの時なんかは頼れるかもしれない。

と考えていて気がついた。陰山木葉さんがいない。

「あれ、陰山さんはいないんですか?」

ストレートに聞いてしまった。まぁいいか。

「あぁ、陰山さんは今日バイトあってさ、来れなかったんだ。」

天晴が答える。そういうことだったか。


「才二、次はこちらが自己紹介する番だよ」

舞さんがピシャリと言う。そうだ、ボーッとしてた。

立ち上がり自己紹介を始める。

若月才二ワカツキサイジです。高校一…来月から二年生です。16です。持ってる絵の具は青色です!よろしくお願いします」

最低限の自己紹介。

「やっぱ、才二くん緊張してるでしょー」

夢奈さんが茶々を入れてくる。

「だからしてないですって!ほら、夢奈さんの番ですよ」

強引に促す。


「オッケー、わたしの番ね…昼飯夢奈です!ヒルメシって書いてヒルイでーす。23で社会人やってまーす。持ってる絵の具はコレ!白でーす!よろしくー!」

立ち上がり自己紹介と共に絵の具を見せつける夢奈。

…と彼女の絵の具を見て天晴と玲花が驚いたような表情した気がした…なんだ?

「はい、舞さんの番ですよー」

夢奈が舞に催促する。スッと立ち上がる舞。

「はじめまして。蘭幕舞と言います。32歳です。持っている絵の具は銀です。以後、よろしくおねがいしますね」

ハキハキとした声で自己紹介する舞。やはり、存在感があるなこの人は。


と思っていると舞はこう続けた。

「一つ伝えておくことがあります。もう1人、淘江淹煎ゆるえようせんという者もいるのですが、本日は予定が合わず欠席となっています。申し訳ない」


あっ、そうだ。淹煎さんのこと伝えなきゃいけなかったんだ。忘れてた…。


「…さて、招いたのは私ですが、お話を提案されたのは若月さんでした。どういった内容か今一度聞かせていただいてもいいですか?」

宝城さんが穏やかな声で聞いてくる。

「はい。単刀直入に言います。ボクたちと力を合わせて戦って欲しい…チームになって欲しいんです」

そう、力を持つ者同士、手を取り合うべきだ。

「前言った通りですね。はい、是非そうさせてください。陽向くんも構いませんよね」

「あぁ!助かるよ若月くん!」

話がわかる人たちでよかった。

「陰山さんも異論はないと思います…ただ…」

ただ…なんだろう?

「十六夜さんと…天然さんたちはどうかわかりません」

十六夜?まだいるのか。それに天然さんたちってことは少なくとも3人以上は人がいることになる。

「えっと…宝城さん、陽向さん、陰山さんの他にあと何人いるんですか?」

「5人です」

「ええっ!?」

流石に叫んでしまった。夢奈さんも同じように驚いている。舞さんも表情が少し変わっていた。全部で12人とは…かなり多人数になるな。



宝城さんと陽向さんから大まかな状況を聞いた。宝城さんたちのチームと天然さんという人たちのチームで微妙に噛み合っていないらしい。


「何か理由とかわかりますか?こういうことで纏まらないとか」

解決できるなら、したい。ここで話を聞いておくべきだと思った。


…沈黙が流れる。

聞くのは不味かったか…?


「理由…ですか…」

玲花が口を開くが言葉に迷っているようだった。

「す、すみません!無理に答えてくれなくて大丈夫ですから!」

「いやさ、なんていうか自由すぎるのかもしれないんだよ俺たちって」

答えたのは天晴だった。


「自由すぎる…ですか」

玲花のほうに目をやると頷くような仕草をしていた。


「なら…少し話し合ってみてはどうですか?きっと、お互いの考え方を共有して理解し合えばうまくいくはずです!」

難しいことなのはわかっているが、これしかない。


…また沈黙が流れる。どうしたらいいんだろう…わからなくなってきた。


「取り敢えず、問題だと思うことを教えてもらえる?このままでは埒があかないわ」

舞さんが沈黙を破った。

「はい…。話し合いでは、どうにもならない状態であるということは最初に言っておきます」

玲花が答え始める。

「陽向くんが自由すぎると言ってくれました…それも合っていますが、構造的に問題があるんです」

皆、黙って聞いている。

「私たち…ひとまずレッドチームとしておきましょうか。私たちは、最近どうにかまとまり始めていました。そこに天然さんたち、イエローチームが現れたんです」

レッドチーム?宝城さんがリーダーじゃなかったのか…?

「そこで、話し合いで纏まろうとしたのですが…チームの在り方が双方で全く違うことが見えてきたんです」

「えっ、そうなの?」

天晴が困惑した声を上げた。本当にこの人はリーダーなのだろうか。

「はい。以前、陰山さんと一緒にイエローチームの写野さんとお話していたんです。その時に見えてきたのが、天然さんを中心にし過ぎた構造をしている…ということです。私たちは…どうにか足並みを揃えて、といったふうに纏まろうとしているつもりです。そこを踏まえると構造が違いすぎる、という解釈になりました」

玲花の話が終わる。天晴は腕を組んで唸っている。


「なるほど…状況はなんとなくわかりました」

かなり、ややこしいことになっているんだなと感じた。

「ボクが…いや、ボクたちが仲介に入りましょう。第三者の意見などがあればお互い受け入れやすいはずです」

とは言ってみたものの自信はない。だが、人は分かり合えるものだ。実際、自分たちは上手くやれている実感がある。他の人たちだって、時間はかかるだろうけどできるはずだ。

「いいの才二くん?そんなこと言っちゃって」

夢奈さんが少し不安そうな声で言う。

「大丈夫です。人は分かり合えます」

言い切った。ボクはそう信じているから。

「そっか」

夢奈さんはそう言って僅かに微笑んだ。

「どうでしょう宝城さん。ボクに少し任せてくれませんか」

玲花は額に手を当てている。

「………わかりました。解決手段は全く見えていません。力をお借りしてもいいでしょうか」

絞り出すような声だった。

「はい。任せてくださいよ。少し時間はかかるかもしれませんけど」



才二たちが去った。応接間には天晴と玲花だけが残った。


「なぁ宝城。俺さあんまり状況よくわかってないんだよ。写野さんと話した時に何があったんだ?」

この話は今日初めて聞いた。いつのまに話していたんだろう。

玲花がゆっくりと口を開く。

「すみません。全ては話せないんです。そうですね…陽向くんは…天然さん達に何か違和感を抱いてはいませんか?」

違和感…鈴達に?違和感か…。

思い当たることはあった。俺自身、なんか鈴に引っ張られ過ぎてる気がする。それと、前に鈴と執印さんを呼んだ時に異様な空気になってしまったのはよく覚えていた。


「あんまこういうことは言わない方がいい気がするんだけどさ、なんか…鈴って引っ張られるっていうか…すごく…惹かれるっていうか…俺もそうなんだけど他の人たちもそんな感じしてるかなって」

どうにか言葉にする。それを聞くと玲花はため息をついた。

「それなんです。私の言った構造の違いというのは」

玲花の表情は重いものだった。


「さっき言ってた鈴が中心過ぎるってやつか」

まぁ…わからなくはない。鈴を中心に世界が回ってるみたいな…感じのことだと思う。

「リーダー、中心人物は必要です。が、その在り方によって、周りの人間の在り方に歪みが生じる場合があります…以前の私たちのように」

「宝城…」

玲花の顔は沈んだ表情になっていた。


「あのさ、気にすんなよ。それはもう終わったことじゃん。ゆ…十六夜ちゃんはまだよくわかんないけどさ、俺達は上手く行ってると思うよ。それもさ、宝城のお陰だよ」

天晴がそう言うと、玲花はゆっくりと目線をこちらに向けた。

「陽向くんは…いつもそうですね」

「えっ」

「褒めているんですよ。貴方の在り方には救われています」

少し玲花の顔に笑顔が戻った。

「とにかく、私達で出来ることはしましょう。若月さん達がどう行動を起こすかも注意しておかないといけません」

「マジ?若月くん結構頼れそうじゃね?」

「はい。ですが、場合によっては私達が彼らに組み込まれる可能性はあります。それで上手く行くのなら良いのですが、そうとも限りませんから」

「やっぱ頼れるな宝城は」

「買い被りすぎです」

「じゃ、やれることを探すか!って言ってもなんもわかんないけど」

ソファから立ち上がり、ふと思い出す。

「そういえば白い絵の具の数字見たよな?」

「えぇ、やはり陽向くんも気になりましたか」

そう、昼飯夢奈の白い絵の具。刻印されていた数字は12だった。

「これで抜けてる数字はなくなったってことでいいのかな?」

「そうですね。以前見せてもらった若月くんの数字は1。残る2人はおそらく4と9。これ以上は増えないといいですが…」

「そうだな…」

12人か…上手くやってかないとな。


それにしても…あの蘭幕舞って人、どこかで見たことあるような…。



宝城家からの帰り道。才二、夢奈、舞は駅へと向かっていた。


「才二、簡単に任せろと言っていたけど勝算はあるの?」

舞が問いかけてきた。

「すみません舞さん…正直ありません」

「だと思った」

舞の言葉からは冷たさは感じなかった。

「きっとアナタならできると信じてる。若月才二はやる男だと思っているから」

そう続ける舞さんの瞳は力強かった。やりきってみせろ、と言っているようだった。

「まずはそのイエローチームに会ってみないといけませんからね…戦いの時に出会えるのか…それとも…」

スマホを開く。玲花との別れ際、鈴の連絡先を貰っていた。…もちろん本人の許可は得ている。


「才二くんさー、強行はよくないからね」

夢奈が釘を刺すように言う。

「わかってますよ。時間をかけていいと思ってますから。必ず分かり合える…それが信条です」

「うん…だよね。その考え方好きだよ、ホント」

夢奈の表情が少し影を帯びたように感じた…がすぐに戻った。


「さて、今日はここで解散ね」

駅にたどり着いた。ボクと夢奈さんは電車。舞さんは車だ。

「頑張りましょう才二。アナタの理想のために」

「わかってますよ」

「わたし支えるからさー。安心してなよ」

「ありがとうございます」

それぞれ帰路に着こうとした時、ドタドタと誰かが走る音がした。3人まとめて音の方を見る。


紫の髪の小柄な少女だった。舞さんの方に突っ込むように走ってきた!

「うわ!なんだ君!?」

才二が驚きの声をあげるが少女は気にも留めなかった。


「あ、あの!十六夜ですよね!?九十九真以さんですよね!?美ノ剣客 十六夜の!」

少女は息を荒くして叫ぶ。と、周りがざわつき始めた。


えっ、九十九真以ってあの?

 引退してたよね?

  有名人?

   そうそう俳優のさ

    でもなんか違くない?


喧騒が強まっていく。


「舞さん…ちょっとマズいんじゃ…」

「そうね…お嬢ちゃん。少し場所を変えましょうか」

「はい!どこへなりとも!」


駅を離れ、路地裏に逃げる。

…なんか連れ込んだみたいになったけど仕方ない。


「危なかったー。やっぱ舞さんてばオーラ消してるとはいえ素顔で歩くのはヤバいんじゃないですかー?」

夢奈さんが突っ込む。

「…そうね。今回はかなりヤバかった」

舞さんは反省したような顔になる。

「…で、お嬢ちゃんは何?私のファン?」

舞さんは少女に問いかける。

「はい!凄く憧れてるんです!大好きで!十六夜の映画何回も何回も見てて、最近も見てます!」

「そう…ありがとう。あの映画は初主演だったから結構、思い入れがあるの。…それにしてもあの映画ってわたしがデビューして数年くらいのよ?お嬢ちゃんくらいの子が見てるなんて珍しい」

「大好きですから!!!」

熱量が凄い。見ていて圧倒されるほどだ。

「しかも!最近、十六夜になれるようになったんです!あたしも…あたしは十六夜なんです!」


えっ?


この場にいる3人が同じことを思ったその時


少女がポケットから取り出したものに釘付けになった。


紫の絵の具


「あたし、十六夜紫電って言うんです!」



次回ッ!

第十六話 銀幕スターの白銀騎士!

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