第十四話 アッパレチリン!
「我ら"ニュークリア"の三幹部が1人、クヴァレ様です!!!」
その言葉に振り向く天晴。そして木葉、鈴、國明。
天晴たちの後ろに現れたそのクラゲのような怪物。デカい…2メートルくらいか?全身がかなりドギツイカラーリングをしている。見ていて目が疲れてくる彩色だ。
「目障りだ」
クヴァレが口を開いた。
その時、全身の毛が逆立つのを感じた…コイツは…ヤバい!
「逃げ…」
叫ぼうとしたが…遅かった。クヴァレの触手が素早く俺たちを吹き飛ばしていた。
意識が一瞬飛んだ。気がついた瞬間、地面に打ち付けられていた。
身体が…軋むような音を立てた…今までに受けたことのない威力の攻撃、視界が揺れているが立ち上がり声を上げる。
「みんな…大丈夫か!?」
意外にも声は張れた。しかし、普段よりは弱々しいのが自分でもわかる。
「わたしは大丈夫…。でも、國明くんが…」
そう言った鈴の方を見るとすぐ側で國明がぐったりとしていた。
「なんで庇ったりなんか…」
鈴が泣きそうな声を出す。
「そんな顔をしないでください…私は無事ですよ…」
國明はそう言いながらゆっくりと身体を起こすが激しく咳き込んでいた。身体を強く打ったのか。
「無理しないで!」
鈴が制止する。
自分の視界に2人しかいないことに気づいた。あと1人、無事がわからない!
「陰山さん!」
木葉の姿が見えなかった。何処に…!?
「陽向くん…」
掠れた声がした。
声の方向を見ると…クヴァレがいた。
いくつもの触手をくねらせながらこちらに向かってくる…その触手の一つに木葉が囚われていた…。
OP
先程、凄まじい音と共に天晴たちが吹き飛ばされていくのを目にした玲花たちは呆気に取られているだけだった…十六夜を除いて。
「お嬢!アッパレ達がマズい!」
十六夜の荒々しい叫びにハッとなる。そうだ、彼らを助けに行かないと。
「おおっと、そうは行きませんよ」
走り出そうとするがレルムに行く手を塞がれる。
「退きなさい!」
思った以上に強い声が出た。天晴を木葉を鈴を國明を助けに行かなければならないのだ!
「どきませんよぉ?まぁ、アイツらが死ねばどいてあげてもいいですけどね」
ニヤニヤとレルムが煽る。
「死なせません」
杖を構える…より先に紅い影が横を通り抜けた!
「邪魔だッ!鈴の側に行くんだよッ!」
真士だった。信じられない勢いで斧を敵に向かって振り下ろす!!!僅かにだが斧の一撃が当たる!
「なぁ!?お前…ここまでのスピードが!?」
「クソっ!」
焦ったレルムは素早く上空へ逃げる。このまま上から攻撃されるとマズい!
「お嬢!目の前にバリアを貼ってくれ!」
十六夜の声に素早く目の前にドーム状のバリアを展開する!それを足場に十六夜が跳躍しレルムに突っ込む!
「空中で勝てるとお思いですかぁ!?こっちは自由に動けるんですよ!?」
「どうかな?」
勝ち誇った顔をするレルムに対して十六夜は不敵な笑みを浮かべていた。玲花は十六夜の意図を汲み、杖を構えた!
…十六夜とレルムを金色の球状バリアが包んだ。
「なんですかこれは!?」
「流石だお嬢!」
『十六夜流剣技!雷雲!』
バリア内で十六夜の斬撃がレルムを襲った!
やったか!?
「まだですよォ!!!」
レルムは無茶苦茶に動き回りバリアを破壊した!十六夜がその動きに巻き込まれる!
「十六夜さん!」
…バリアの破壊と共に中の2人は地に落ちていく!
いけない!あのままでは地面に直撃してしまう!
走り出し、落下地点に向かう!
十六夜さん!
なんとか間に合った。抱き抱える形でどうにか受け止める。
「十六夜さん!」
「ふ…前と逆だな…」
「悠長なことを言っている場合ではありません!」
「見てくれ…奴の羽根は切り落とした」
少し離れた場所に落ちたレルムの背には羽根は無かった。
そこに真士が近づいていく。敵しか目に入っていないようだった。斧を両手で構え、振り下ろさんとしている。
「邪魔だ消えろ」
「これで勝ちとお思いで?」
レルムが両手を真士に向けると衝撃波が放たれた。凄まじい威力、吹き飛ばされる!
「写野さん!」
激しい土煙、何も見えない!
視界が晴れる…そこにはレルムだけが立っていた。
「あれ?1人やってしまいましたか?」
そんな…。写野さんが…死んだ?
目の前で人が…。
「お嬢あれを!」
十六夜の指差す方、レルムの後方を真士は歩いていた…。
まさか…あの衝撃を耐えて、視界が塞がれた隙に乗じて天晴たちの…あの怪物の方へ…!?
レルムも真士に気がつく。
「貴様ッ!行かせるわけがないでしょう!」
「写野さん危ない!!!」
レルムの身体はいつの間にか上下半分になっていた。
「ば、バカな…!」
レルムの体は色が抜け分解され人の形となり、光に包まれた。救えたのか…?
「一体、何が…」
レルムのいた辺りをよく見ると…夜星がいた。
「墨名さん…!いつの間に…」
十六夜に肩を貸しながら彼の元へむかう。
「ずっとタイミングを探してたんだよ。全力の一撃を打ち込むためにさ。カッコよかったろ?」
得意気に言う夜星。少し息は上がっている。
「けど…そんなこと言ってらんないよな…鈴を助けに!」
そう言って駆け出す夜星。
「十六夜さん…私達も…歩けますか?」
「問題ない…急ごうお嬢!」
「國明くん!!!」
鈴の叫び声が聞こえる。アッパレな状況ではなさそうだ。
俺は…何してる?頭が回らない。息も…なんか苦しいな…。
あぁそうだ。寝てるんだ。いや、違う。地面に倒れてる。それも前のめりに。何が起きてる?声の方に顔を向ける。
鈴が倒れた國明の横に座り込んでる。
…どうなってるんだ。くそっ…立てない。
手は動くので動かしてみると何かにぶつかった…槍だ…俺の槍。
槍を掴み、杖代わりに立ち上がる…。
状況が見えてきた。
「厳しいな…」
化物が、圧倒的な力が目の前にいた。
そうだ…コイツ相手に手も足も出ず何度も打ちのめされたんだ。
「目障りだと言ったが?」
化物…クヴァレが短く言い放つ。
視点を触手の方に動かす。気を失った木葉が囚われているのが見える。
「聞こえねぇよ。てか、陰山さん離せよウネウネしやがって」
意識が朦朧としている。投げやりな話し方だなと自分でも変な感じがする。
「バカなのか?」
クヴァレが聞いてくる。
「かもなー。でもさアッパレだろ?」
俺は何を言ってるんだろ?化物も、は?って顔してるよ。
スゥーーっと息を深く吸う。
「鈴!」
「えっ!何!?」
鈴の方は見ていない。涙交じりの声なのはわかった。
「いけるか!?」
「何言ってるの!?國明くんが危ないんだよ!?」
鈴の方を見る。
「…ヤバいな」
流石に危なそうだった…と國明は起き上がった…!
「うそ…」
鈴はその姿に困惑すら覚えているようだった。
一撃。
悠長に話していた。クヴァレの一撃が俺の背中を直撃した。みっともなく地面を転がり、鈴の方にたどり着いた。
「天晴!!!」
鈴が叫んでる。意識が飛びそうだ…。
「聞こえてるよ…」
立ち上がる。痛くない気がしてきた。
「もう…死んじゃうよ…」
鈴の声は震えている…そりゃそうだよな。
「あー、でもさ…陰山さん助けねぇとさ…いけないからさ」
そう言うと…鈴が笑った…。
「…あはっ…凄いね天晴…ホントアッパレだ」
「おー、そう、アッパレテンセイだよ俺は」
クヴァレが近づいて来る…ヤバいなマジ。
「國明くんもいけるよね?」
鈴のその言葉に國明は…立ち上がった!力強く、武器の大剣を握り締めている。
「勿論ですよ鈴様…」
「陰山さんを助けよう!わたし達3人で!」
「鈴が言うなら…なんか行けそうだわ」
理由はない。なんかそんな気がする。鈴の言葉に動かされてる気がする。
「よぉ〜し。行くぞォ!!!」
天晴の言葉に3人は駆け出した!クヴァレの触手が襲いかかって来る!!!
「こちらに人質がいるのを忘れたか?」
木葉をちらつかせるクヴァレ。
「よぉーく覚えてるよ!だからダラダラ話してたんだ!」
後ろから紫色の斬撃が飛んできた!
木葉を掴むクヴァレの触手を破壊する!
「なにっ!?」
俺は拘束から解き放たれる木葉を素早く助ける!
「待たせたなアッパレ!」
「陽向くん無事ですか!?」
「鈴!」
「一気に決めるぜ!」
続々と集まる仲間たち。行ける!
「目障りなのが増えたな」
木葉を奪還されたことなど気にせず、新手の処理に動くクヴァレ!
「させません!」
バリアを展開する玲花!
だが…
玲花の叫びが響いた。バリアは簡単に破られ、クヴァレの攻撃が一帯を襲う…。
「宝城…!?」
マジかよ…。全員揃っても…これなのか…?
「あとはお前らだけか?」
玲花たちと離れていた俺、陰山さん、鈴、執印さんと順番に視線を送る。
…やばい、陰山さん抱えたままじゃ戦えるわけない…。
「鈴!」
叫んだのは天晴では無かった…真士だった。
『ディープブレイク!』
まさかの反撃に驚いたのがクヴァレはそのまま攻撃を受けてしまった!
明確に傷を与えた!
「真士さん!」
「…余計な真似を」
歓喜の声を上げる鈴を横目に國明はクヴァレに突っ込む!
『スレイブスラッシュ!』
またしても斬撃をくらうクヴァレ!流れが出来た!
「アンタら目立ってんじゃねぇよ!」
続けて夜星が飛び出して来る!
『刈月光狩!』
三撃目!
「鈴!頼む!」
木葉を抱えている天晴は頼るしか無かった。
「任せて!」
『イエローホームラン!!!』
鈴の大振りのハンマーの一撃がクヴァレを吹っ飛ばした!
地面を転がっていく!
「やったねみんな!…ってそうじゃない、宝城さんは!?」
鈴の言う通りだった。バリアを破られ叫んでいた玲花の身が心配だった。
「私は…無事です…」
玲花はふらつきながらこちらに合流した。
「意識が飛びそうでしたが…どうにか耐えました…」
「宝城…無理すんなよな…」
「陽向くん…ごめんなさい…強がってしまうのは悪い癖ですね…正直、かなり辛かったです」
「とにかく無事で良かった…」
「気分は晴れたか?」
背筋が凍った。味方の声では無かった。アイツだ。
振り向くとクヴァレが立っていた…あまり消耗はしていない…。
「少し油断した。もう終わりだ」
「陽向くん…」
宝城が腕を握ってきた。ダメだ宝城…弱気になったら…。
『サイレントアロー!』
緑の閃光がクヴァレの頭部を撃ち抜く!
まさか!
「陰山さん!目が覚めたのか!?」
「ごめん、迷惑かけた」
が、喜んでいる場合ではない。アイツをどうにかしない限り、現実には帰れない!
「不意打ちか…だが無意味!」
「まだ終わってはおらん」
『真十六夜流剣技 雷撃閃!』
十六夜が突如姿を現し、クヴァレを斬り伏せた!!!
「十六夜ちゃん!」
「タイミングを見計らうと言っていたな黒き戦士。参考になったぞ」
得意気な顔をする十六夜。
「あのチンチクリン…!」
夜星は癪に触ったのか地団駄を踏んでいた。
触手が十六夜を縛った!
「しまった!」
「十六夜ちゃん!」
「遊びすぎたな…もう終わりにしよう」
「そう、もう終わりだ」
聞いたことのない声だった…上の方から聞こえる。突如、クヴァレが十六夜の拘束を解き震え始めた。
「な、何故ですかマスター…」
「ダメだろう殺したら」
「し、しかし…!」
「少し頭を冷やすといい…今日は戻りな」
クヴァレの姿が消えていく…。
「お、おい!待て!」
天晴が叫ぶが答えは帰ってこない…光に包まれた。
気がつくとスーパー極彩の倉庫だった。天晴はただ突っ立っていた。
「何しとんの陽向くん」
山海勉の声にハッとする。
「あっ…いや…すんません、ちょっとボーッとしてました…」
慌てて取り繕う…体がだるい。かなり激しい戦いだったからな…。
「なんか疲れとる?テンション高くて元気なんはええことやけど、程々にな。疲れてもうたらただの阿呆やで」
勉は笑いながらそんなことを言ってくる。相変わらずこの人は、人の疲れとかそういうことにすぐ気がつく。
「そうっすよね。気をつけます!」
「…と、そろそろ休憩やんな。天然さん連れて行ってき」
勉の勧めに従い鈴を探す。
さっきの戦いであまり傷を負っているようには見えなかったが大丈夫だろうか。
見つけた。誰かを探しているようだった。
「鈴!休憩入ろうぜ」
「天晴!探してたんだよ」
「えっ?なんか用だったか?」
「さぁなんでしょー?」
「…なんかやらかしたか俺?」
「ブー!正解は一緒に休憩入るのに探してた。でしたー」
「なんだよ!もったいぶった言い方すんなよなー」
「へへへ、ごめんごめん。じゃ、行こっか」
休憩室。部屋には俺と鈴だけだ。
「なぁ、さっきの戦いだけどさ」
何気なく話を始める。
「うん。どした?」
「結構…ヤバかったよな」
「そだね…みんな揃ってたけど全然勝てそうになかったっていうか勝てなかったし」
鈴の声色が珍しく暗い。まぁ、そうなるよな。
「でもさ!鈴の声聞いてたらなんか力が湧いてきたんだよ。なんかいける気がするっていうかさ。執印さんもそうっぽかったし」
俺がそう言うと鈴の表情は少し明るくなった…気がした。
「まぁね〜。あたしってばそういうところあるからさ!」
鈴は得意気だ。
「アッパレだよ鈴!」
…何か違和感。悪いわけじゃないけど…鈴に引っ張られすぎな気がする。なんか、ペースを握られてるっていうか…。
ヤバい。頭がクラクラしてきた。さっきので結構ボコボコにされてたからだな、きっと。
「天晴?もしかして…しんどい?」
鈴が心配そうに覗き込んでくる。
「ん…ちょっとな」
「帰る?」
「いや、そこまでじゃないから。休んだら大丈夫だよ」
笑って見せたが少しぎこちないのが自分でもわかった。
「悪い、休憩終わるまで寝ててもいい?」
「やっぱしんどいんじゃん。いいよ。あたしが起こしたげるから」
「ありがとう」
「おやすみ天晴」
鈴のその言葉を聞くと驚く程早く意識は沈んでいった。
机に突っ伏していた…。顔をあげると…さっきまでいた公園だった。木葉が横を見ると玲花も机に突っ伏していた。
「宝城さん?」
軽くゆすってみる。
「ん…」
目を覚ましたようだ。額に手を当てながら上体を起こした。
「…陰山さん。どうやら戻ってきたようですね」
「うん。宝城さんは身体大丈夫?」
「えぇご心配には及びません。陰山さんこそお身体は?」
「大丈夫。ありがとう心配してくれて」
わたしがそう返すと玲花は優しい微笑みをみせた。ギクシャクした関係の頃は遠い昔のことのように感じる。
「陰山さんが写野さんに問いかけていたことの意味。わかった気がします」
玲花は机に視線を落としながらそう言った。
「天然さんは人を惹きつける力がかなり強いのでしょうね。彼女の周りの3人は明らかに彼女を中心として行動しているように見受けられました」
「うん。凄いよね」
「…単純な好意では無い。というのは理解しました。以前、我が家の応接間で集まった時に片鱗を感じていましたが…まさか執印さん以外までそうだったとは」
玲花の言う通りだった。國明、夜星、真士。理由はそれぞれ違うだろうが、鈴に何かしら思い入れがあるのは間違い無かった。天晴に抱えられている時、わずかに戻っていた意識でもわかるくらいに…。
「上手くやっていかないとね。あの関係性にどう対応していけばいいのか全然わからないけど」
「そう…ですね。私も皆目見当も付きません」
「陽向くんは上手くやれてるっぽいから、どうしてるか聞いてみる?」
「それが最善かもしれませんね」
天晴のバイトが終わるのは16時だった…。今は13時過ぎ、まだまだ時間は余っていた。
公園近くのカフェで時間を潰すことにした。せっかくこの組み合わせなので情報整理を行うことになった。
「あのクヴァレという存在とマスターと呼ばれていた存在。どちらも今まで戦っていた喋る敵以上であることは確かです」
玲花は紅茶を、わたしはカフェラテをそれぞれ頼んでいた。
クヴァレか…奴の触手にいとも簡単に囚われてしまった記憶が蘇る。情けない。
「うん。アイツはかなり強かったよ。最後もあれだけ攻撃したのに倒しきれなかったし」
不意打の頭部への射撃すら大して効いていなかったのは想定外だった。
「…やはり8人で協力できる体制を可及的速やかに整える必要がありますね」
玲花は深刻そうな顔をしながらカップに口をつける。
「そうだね。それとあの『マスター』っていうのはなんなんだろう」
わたしの問いに玲花は少し考えた後こう答えた。
「敵の首領。と考えていいかもしれません。呼び名からしてそういった立場である可能性はかなり高いかと」
「だよね」
「何が目的かもわかればいいのですが」
「あっ、それなんだけどさ」
引っかかっていたことがある。
「クヴァレが動きを止めたときにマスターがこんなこと言ってたでしょ。『殺したらダメ』って」
「確かにそんなことを言っていましたね」
「そもそも人間の色を盗る理由がわからないけど、一応それが目的なわけでしょ?その邪魔をするわたし達が邪魔なはずなのに殺したらダメって言うのには何か理由があると思うんだ」
玲花は考え込んでいる…わたしも疑問ばっかり挙げてないで考えないと。色を奪う敵…殺さない理由…色…絵の具?
「もしかしてわたし達の絵の具が必要とか?」
「色を奪うという行為をしている以上、あり得なくはないです。ただ、直接こちらが狙われるということや、そういった目的を感じたことはありませんね」
「うーん、なんだろう」
考えてもわからない気がしてきた。情報は多いわけではない。無理に答えを出してあらぬことになってしまってはマズい。
「宝城さん、やめとこっか。無理に答え出さなくても大丈夫だよ」
「そう、ですね。少しずつ情報を集めていきましょう」
カフェラテに口をつける。あぁ、身体に染み渡る。それにしても疲れた。クヴァレに攻撃され囚われていたのもそうだが、真士との話し合い、僅かながら見た鈴を取り巻く人々の感情。気が滅入ってくる。
ふと、天晴に抱えられていたことを思い出す。恥ずかしくなってきた。二つ下の子にあんな風に助けられてしまうとは…。
気を紛らわせるためにポケットから絵の具を取り出す。緑色の絵の具。下部には2の数字が刻印されている。この絵の具についても未だによくわからない。そもそも人を助けるための力なのだろうか。実は悪いことに使うためのものなのではないか?
「あの、すみません」
知らない声。
ドキッとして絵の具を慌ててしまう。玲花の方を見ると彼女も今の声に驚いているようだった。恐る恐る、声の主の方に目線をやる。
「ごめんなさい、驚かせてしまって」
落ち着いた、優しい声だった。聞いていてなんだか心が安らぐ気がした。声の主は少年だった。と言っても高校…1年生か?
「少しお話がしたくて…良ければ場所を変えても?」
誠実そうな瞳、身長は天晴より少し低いくらいだろうか…怪しい感じはしないが、何が目的なのだろう。
「こらこらナンパしたらダメだよ〜」
少年の後ろに女性が姿を現した。社会人だろうか。といっても自分よりも少し年上といった感じだった。茶髪のミディアムボブが揺れていた。
「違いますよ!真面目な話があるんです!」
少年が反論し、女性はクスクス笑っている。2人はどういう関係なのだろうか。姉弟…にしては似ていないな。
「どうします陰山さん」
玲花が問いかけてきた。珍しいな、と木葉は思った。
「少しだけ聞いてあげようか」
そう言ってわたしと宝城さんは席を立った。
会計を済ませ、また公園へ移動する。人はほとんどいない。天晴のバイト上がり時間にはまだ早い。
「それで、どういったご用件ですか?」
玲花が少し警戒した口調で問いかける。そうだ、一体なにが目的なのだろう。
少年は少し照れたような笑いを浮かべてポケットに手を突っ込んだ。
何を…。
ポケットから出てきた彼の手には見慣れた…知らない色が握られていた。
「これを見せればわかりますよね。ボク達きっとチームになれると思うんです!」
青色の絵の具…1の数字が刻印されていた。
次回ッ 第十五話 出ました新色!




