99.魚の分類と輸送
本日2話目です。
びちびちびちびちっ!
俺の目の前で大量の魚が元気よく跳ねている。
記念すべきレースピア港、第一回目の漁。
結果はかなりの豊漁に終わった。
いやホント凄いな……。
その光景を見て俺はあっけにとられる。
なんせまぁ漁果ゼロでも何ら不思議はないと思っていたからな。
実際に船が港から見えない場所まで行かなかったのは俺も確認しているし……息抜きで釣りしてた時の食いつきから考えても、もしかしてこの辺って相当の豊漁スポットなのか?
そんなことを頭の片隅で考えながらも、まずは帰ってきた皆を褒める。
えー……皆、お疲れ。
無事に帰ってきただけでなく、これほどの成果を上げるなんて素晴らしいの一言に尽きる。
流石だ。
「もったいないお言葉です。これもすべてハイラ殿が船の上からでも的確に魚を見つけてくださったお陰です」
「いえ、私が見つけたそのポイントに、風で即座に船を向かわせてくれたユウフ殿がいてこその成果かと」
「まあ僕も最悪シエルさんに何とかしてもらえればいいかと気軽に風を吹かせられたしね」
「いやまあなんだかんだ言うけど結局ルシュでしょ。あの見事な網捌き、魚が自分から入って来るみたいな錯覚起こすほどだったしね」
インスタント漁師になっていた皆はそう言ってお互いを褒め合っている。
海上というのはチームワーク……というか信頼関係がとても大事だと聞いたことがあるような気がする。
だからこそこれほどの成果を上げられたのか……。
などと考えつつも。
このまま褒め続けて魚の鮮度を落とすわけにはいかない。
とりあえず倉庫に運ぶ。
どれが食べられてどれが食べられないのか分からないので全部だ。
というわけで倉庫。
港の倉庫は二種類に分けて作ってある。
一つは水槽倉庫。
中にはいろんな大きさの水槽がいくつも備え付けられている。
水槽の中には海水。
ハイウンディーネの水魔法で入れてもらった。
空気はユウフに……なんか、こう良い感じに入れてもらいたい。
「どんな感じ? それ? ……まあやってはみるけど……」
我ながらかなりの無茶ぶりだったが、快く? 引き受けてくれた。
まあ最悪上手くいかなくても、一時的に獲れた魚を置いておくだけなら普通に出来るだろう。
そしてもう一種類、冷凍倉庫。
こっちは港の倉庫って言われて真っ先に思いつくタイプの倉庫だな。
きっちり密閉されていて、中はヒンヤリしている。
そこにいくつもの箱が積まれている感じだ。
こっちはしばらくはフィノウに協力してもらおうと思っている。
魚の瞬間冷凍が出来るって言っていたしな。
というわけで……。
とりあえずは魚を全部水槽倉庫にぶち込む。
そして創造神器を用いて食べられるかどうかチェック。
……この魚は食べられる……こっちは、この反応的に毒があるのか? もしかしたら毒抜きできるかもしれないし、記録だけしておこう。……こっちの魚こんなビビッドな色してるのに食えるのか? 異世界は前世の常識無用だな……。
毒の有無や見た目、大きさ等を書きつつ調べていく。
かなり大変な作業だった。
創造神器は俺しか使えないしな。
まあでも美味しい魚を食べるためだと思えば全然苦じゃなかった。
そういうわけで、俺は大漁の魚を全て調べた。
その中で食べられると判明した魚は八割ほど。
さらに……水揚げされた時は大量に重なってたからわからなかったが、個別に見てみると俺の知っているものと似たような姿をした魚も結構いた。
今回見つけたのはまず、なんだか鮭に似た魚。
やけにデカいし、足が生えている。
……もしかして、泳ぐだけでは登れない川を迂回するための足か? これ?
どれだけ水中から飛んでも登れない川からおもむろに陸地に上陸して、歩いて迂回していく鮭……。
夜中見たら悲鳴上げちゃうかも。
次に、なんだか鯛に似た魚。
これは分かりやすかった。
こっちでも体が真っ赤だったからな。
……まあ、頭に体よりも長い角が生えてたんだけど。
角があるのは良い……いやよくはないが、それバランス悪くない?
次、なんだか鯖に似た魚。
……いやこれは「なんだか」をつけなくていいかもしれない。
なんせ俺が知っている鯖の姿とほぼ同じだ。
そんな鯖をまじまじと観察したことはないが……ほぼ同じ気がする。
ちょっとほっとした。
そして次、なんだかウナギに似た鰻。
……いやなんかおかしいこと言ってるが、俺の中では鰻と魚は別カテゴリなので。
一応鰻も魚類ではあるけどな。
こいつは創造神器が毒があると判断した二割の方に居た。
まあ鰻って血に毒があるって聞いたことあるしな、こっちの鰻も同じなんだろう。
違いとしては……うん、デカい。
シンプルにデカい。
アナコンダかよってくらいデカい。
しかも動きもめちゃくちゃ機敏だ。
一回水槽から飛び出して、その体のぬめりを活かして大地を滑走、海に戻ろうとしたもんな。
ユウフが風で押し戻して事なきを得たけど。
血を抜けば食べられるはずなので、こいつも食べられる側に分類した。
食べられなかったら分類し直せばいいしな。
そして最後。
こいつも毒があると判断された方に居たが……なんだかフグに似た魚。
うん。
フグだ。
こいつを見つけた時は一瞬でテンションが上がって……一瞬で下がった。
なぜなら俺はフグの毒抜きの方法なんて知らないから。
確か卵巣? に毒があるのは知ってるが、どうすれば除去できるのかは知らない。
こっちのは知らないが、前世ではフグの毒は猛毒だ。
素人が手を出すのは危険すぎる。
そういうわけでこいつは泣く泣く食べられない側に分類しておく。
いつか食べられるようになると良いな。
そんなわけで、知らない魚ばかりの中にもいくらか知っている魚は居た。
いや知っている姿とは結構違ったけど。
まあ、味が同じなら俺としては大きな問題はない。
というわけで……味を知るためにも早速港から街に魚を輸送する。
別にここで食べても良いんだが、倉庫も道路もこのために作ったんだしな。
ちゃんと輸送できるか確かめる。
そう言うわけで、頼む、フィノウ。
「ああ! 任せておいてくれ!」
魚を調べている間に呼び寄せておいたフィノウが胸をどんと叩き……魚を片っ端から凍らせていく。
瞬間冷凍できると豪語していた通り、凍り付かせるのに数秒かかってない。
適当に大きめの魚を選び割ってみたが……綺麗に中心部まで凍っていた。
これなら生食も可能だろう!
ありがとうフィノウ! 助かった! さすがだ!
俺のテンションは否応なく上がり、フィノウを褒めちぎる。
すると。
「ふふ……」ドロォ……。
溶けた。フィノウが。
嬉しそうに笑いながら。
……フィノウ!? 大丈夫か!?
「ああ……大丈夫。ちょっと春が来て暖かくなったから溶けやすくなっちゃって……」
そうだったのか……それは気が付かないこっちが悪かったな、すまなかった。
これからは軽率に褒めることが無いように注意――
「いやそれは大丈夫。気を遣わないでガンガン褒めて欲しい」
……え? でも褒めたら溶けるんじゃ……。
「大丈夫大丈夫全然気にしなくていいから! そんなことで代表の褒めを邪魔したくない! だからもっと褒めて! 情熱的に! もっと熱くなってっ――!」
フィノウ!? 体溶けてる! ちょっと落ち着いて! フィノーウ!
その後。
何とか落ち着いたフィノウに冷凍作業を任せ、俺は外へ。
あれ以上溶かすのはさすがにまずかった。
「おっ……代表さん、ちょうどよかった。今しがた計測が終わったとこだぜ」
と、外に出た俺のもとに走り込んできて話しかけてきたのはフリストル。
フリストルたちケンタウロスには、魚をどれだけの時間で運べるか、レースピアの街―港間を実際に荷馬車を引いてもらって確かめてもらっていた。
計測が終わったというのはちょうど往復し終わったということだろう。
早速結果を聞く。
「ああ。結果としちゃあ……どんなに遅くても半日かからなかったな。相当慎重に運んでもそれだ。もし大急ぎで輸送して欲しいんなら、代表さんが飯食い始めて、食い終わる頃には届けられると思うぜ」
そう豪語してくるフリストル。
どうやらギリギリまで重くした荷馬車をかなり慎重に引いた場合でも、輸送に半日かからなかったらしい。
それにしても、大急ぎなら俺が食事を食べ終わるまで……まあ大体長めに見積もっても三十分くらいか? ……その時間で輸送できるとは流石に豪語しすぎじゃないか?
「はっはっ! 俺なら出来るさ!」
俺の言葉にそう返してくるフリストル。
まあ、それだけの気概でやってくれるってことか?
「おっ……信じてねぇな~? 代表さん。んじゃ試してみるか?」
試す?
「ああ、ちょうど荷物も出来たとこだろ? 代表さんは一足先に街に帰って飯食っててくれ。代表さんが着いたのを見計らってこっちも出発する」
……なるほど。
それで俺が食べ終わる前に到着すると?
「ああ! その通り!」
ふむ……まあ別に断る理由もないしやってみるか。
フリストルなら俺が出発したすぐ後に出発する……なんてこともしないだろうし。
分かった。
それじゃあ俺は一足先に街に戻らせてもらう。
「了解だ! 荷物が届くのも楽しみにしててくれ!」
そう言い残してフリストルは荷物を馬車に積むために倉庫の中へ向かった。
俺も創造神器の蹄鉄を使って街に戻る。
そして街に戻った俺は、流石にそれほど早くは来ないだろう、と高をくくってゆっくり食事していた……ら。
「しゃあっ! お届けに上がったぜ!!」
ほんとに来た。
全然食べ終わる前に。
しかも荷物を改めたら、大急ぎと言っていたのに全然傷がついてもいない。
いや……凄くないか? フリストル。
「ははっ! これが俺たちの力だぜ!」
そう言って大笑いするフリストル。
いや本当にすごい。
これなら魚の鮮度を落とすことなく、街に輸送してきてくれるだろう。
助かる。とても。
食べ終わってなかった食事を口の中に詰め込みながら俺はそう思った。




