100.進化と宴会
さて、フリストルによって超特急で運んでもらった魚を早速キッチンに持って行く。
とうとう、海があると聞いてからずっとずっと楽しみにしていた海産物を味わう時だ!
屋敷のキッチン。
そこには今凍った魚が大量に並んでいる。
超特急で運んでもらったその魚たちは今だ溶ける気配を見せない。
……いやさすがにいまだに溶ける様子みせないのはおかしくないか?
かなりの速さで輸送されたとはいえそれなりに時間は経ってるが……。
フィノウが魔法で凍らせたからか? さすがフィノウ。
まあともかく、それなら急ぐ必要もない。
ゆっくり構えることが出来る。
さて、まずは……念のためもう一回、創造神器チェック。
毒の類は……うん、鰻っぽいのからしか反応はない。
それじゃあ早速鰻をさば……くのは後にして。
毒が前世と同じで血にあるんなら飛び散っちゃうかもだし。
そういうわけでまずは適当に魚を取り出して、捌いていく。
ちなみに鮭と鯛に似た魚も後にまわす。
俺は美味しいものは最後に食べるタイプだ。
取り出した魚をどんどん捌いていく。
魚を捌くのなんて前世で数回あるかないかくらいの貧弱な経験だが、包丁がとてもいいものだからな。
思ったよりもすいすい捌ける。
良い調理道具を作ってくれたドワーフに感謝。
そうして捌いた魚を切ったり焼いたり、ゆでたりといろいろと調理法を試しながら、味をメモしていく。
う~ん、この魚は味が淡白……フライとかに向いてそうだけどまだソースがないしな……こっちは刺身で食べると美味しい。……この魚はゆでると……なんで今光り出した? ……これは……う、浮いてる……凄い……!
とまあ、光ったり浮いたりと調理中ちょこちょこ様子がおかしくなるところはあったが、調理自体は問題なくできた。
まあ鍋に入れた蟹が暴れ出すのと同じようなものだろう。
……蟹もその内見つかったらいいな……。
そういうわけであらかたの魚を捌き、味見し終えた。
結果としては……うん、普通に美味しい。
異世界の魚でちょっと心配していたが、全く心配いらなかった。
さて、後はこの鮭と鯛に似た魚が俺の想像通りかどうかだな。
別に同じじゃなくてもいいと言えばいいんだが……もし同じだったら俺が嬉しい。
というわけで捌いていく。
鯛もどきの方の角は良いが、鮭もどきの方に生えてる足はちょっと捌くのに勇気がいるな……。
……ええい、ままよ!
両方を捌き終え、まずは刺身にして食べてみる。
……美味い!
俺の口内に広がるのは前世で慣れ親しんだあの味。
いやそれよりも美味い。
鮭もどきは脂がのっていて、鯛もどきは噛み応えがある。さらにどちらも噛めば噛むほどに旨味が溢れてきて……食べる手が止まらない!
気付いたときには試食用にと切り出した刺身は全部俺の腹の中に消えていた。
恐るべし……異世界鮭と異世界鯛。
異世界の鯛と鮭はとんでもなく美味いのは確認できた。
あと最後に確認するのは鰻だ。
一応他の魚を置いてある場所とはそれなりに距離を取って、鰻を捌いていく。
血に毒があるならそれを取り除いてしまえば何とかなるはず……。
そう思って、捌いて身に残った血も水でしっかり洗い流し、創造神器を向けてみれば、毒の反応はなくなっていた。
よし、予想通り。
これで食べられる。
と、一応すべての魚を捌き終わったとき、屋敷の中がにわかに騒がしくなる。
どうしたのかと思えば……。
「ハハハハハ! とうとう! 進化したぞ!!」
「……うるさい……。僕も進化したのに感想飛んでったじゃないか」
「それはすまん! ハハハハハハ!!」
イグニータとユウフが。
「これは……これが進化……?」
「あははーやったじゃーんリネイアー……ま、私や他の皆もだけど。嬉しいもんだねー」
リネイアとシエル、およびデモンズとエンジェルが進化していた。
えー……それでは皆の進化を祝って……乾杯!
「「「「「乾杯!」」」」」
その後。
進化が判明したのちしばらくして、俺たちは宴会にもつれ込んだ。
主役は一応進化したイグニータ、ユウフ、リネイア含むデモンズ、シエル含むエンジェル。
後は俺が作った大量の魚料理たちだな。
進化する度に宴会していたらそのうちかなりの頻度でやることになるから、あまりやらないようにはしようと言っていたが、今回は港完成&海産物ゲット記念も兼ねてるからセーフという考えだ。
というわけで早速魚料理を食べる。
皆で。
「っ!? これは……なんという……!」
「いっや、すっごく美味しい! なにこれ!?」
「美味い! 美味いぞ!」
「これ僕らが獲った魚だよね? 魚ってこんな美味しいんだ……」
大好評だ。
まあ分かる。
自分で言うのもなんだがかなり美味しい。
今回作った料理は、シンプルなものだ。
焼き魚、煮魚、フライ、そして刺身。
だがシンプルだからこそというべきか、素材の味がとてもよく分かる。
とても美味しい。
「私は魚は他の場所でも食べたことがありますが。正直同じ魚とは思えないほどです」
「ねー。分かる。作物も調味料も……しかも近くで獲れる魚までこんな美味しいとか……世界の楽園に改名したら? ここ」
よほど信じられないのかシエルがそんなことを言っている。
うすうす察してはいたが、やはり世界の果て周辺で取れた魚だからこんなに美味しいのか。
ほんと、ここに送ってくれた神様に感謝だな。
俺はそんなことを考えながら二人に声を掛ける。
美味しく食べているみたいだな。
その調子で遠慮なく食べてくれ、進化祝いだ。
「ありがとうございます、代表様。とても美味しくいただいております」
「うんうん。これからはいつでもこれが食べられるんでしょー? さいこー!」
そう言って刺身をもぐもぐするシエル。
刺身は一応用意したものの、生で食べるからあまり手を伸ばすものは居ないかもと思っていたんだが。
前世でも魚の生食文化日本以外は少ないって聞いたしな。
シエルは全然気にせずに食べている。
リネイアは煮魚に手を付けているし、他のエンジェルは焼き魚を食べているところを見ると、シエルが特殊なのか?
「我々も進化することが出来、さらに代表様のお役に立つことが出来ます。これまで以上に何なりとご用命ください」
食べる手を止め、綺麗に一礼してくるリネイア。
それに引き換え……。
「えーほどほどでいいじゃんほどほどでー……」
シエルは食べる手を止めずにそう言ってくる。
「はぁ……シエ──」
いい、リネイア。
シエル。これからはいつでもこれが食べられるってさっき言ったよな?
リネイアがシエルを叱ろうとしていたのを止め、俺はそう言う。
「え? うん。だってそうでしょ? 港も船も出来てたし」
だけど漁に出るならまだ欲しいものがあってな、結界なんだが。
「え? あー……でも前も言ったけど難し……」
くはないよな? 進化したんだから。
「……。」
美味しい魚食べたいよな? 俺も食べたい。
「……あーっ! 分かったよーっ! ……うぅっ……さらに仕事が増えたぁ……進化して楽になると思ったのにー……」
頑張ってくれ。
そうしたら美味しいものが食べられるから。
「うぅー……頑張るぅー……」
そう言ってやけ食いに走るシエル。
それを俺とリネイアは苦笑しながら見守……ってたら。
「代表様。シエルだけでなく私にも頼ってくださいね? 私も、代表様のお役に立ちたいですから」
俺の服の裾を引っ張りながら、リネイアがそう言ってくる。
上目遣いにドキッとした。
もちろんだ! と断言して約束した。
その後、リネイアたちと別れた俺は、次の主役に声を掛けに行く。
「美味い! 美味いぞ!」
「さっきからそれしか言えないわけ? まあ同意はするけどさ」
先ほどからずっと料理を次から次に運びつつ、美味いとしか言っていないイグニータとそれを見ながら自分のペースで料理を口に運ぶユウフ。
二人とも食べてるか?
「代表さん、見ての通りだよ」
「美味いぞ!」
「……筋肉ダルマの語彙が美味いだけになるくらいには頂いてる」
そうか、それならよかった。
イグニータもだが、そう言うユウフも言うほどとげとげしい気配は発してない。
なんだかんだ楽しんでくれてるようだ。
さて……こっちもだな。
イグニータ、ユウフ。
フィーネとラウームもそうだったし、進化したことでさらに力が強くなったんだろう?
「まあ……そうだね。どこまで強くなったかはまだ把握しきれてないけど」
「美味い!!!」
「……強くなったってさ」
うん? ……うん。
……何で分かるんだ?
こほんっ! とにかく……その力でレースピアの街をもっと助けて欲しい。
ユウフはもっと大きな帆船作ったら世話になるかもしれないし……それにイグニータはこれから人口が増えたら焼却場ももっと稼働することになるだろうしな。
「美味いぞ!!!!」
「……任せておけ、代表! だって。ま、僕も同じ気持ちだよ。ここは居心地がいいからね」
そう頼もしいことを言ってくれる二人。
いやまあ片方はユウフからの翻訳だけど。
でも、表情的には合ってるっぽいしいいか。
そうしてそのまま、皆で魚料理の美味しさを堪能しながら宴の夜が過ぎた。
自画自賛にはなるけど本当に美味しかった。




