98.船作り続きと漁
昨日メンテで上げられなかったので本日2話上げます。
1話目です。
何とか無事に完成した船体に、次は帆をつけていく。
帆はクトネーに頼んで用意してもらったものだ。
海の上で帆が破れて立ち往生なんて最悪のケースなので、そうはならないよう頑丈さ第一で作ってもらった。
ちゃんと予備も含め数枚。
ということで、帆をあいまいな知識で三角形になるように付ける。
小型の船なら確かこういう風に付けていたはずだ。
素材と道具が良いので俺のなんちゃって造船でも結構いい感じの形にはなる。
早速浮かべて風邪を掴んでもらおう……と、思ったのだが。
ぷか……ぷか……。
うん。
風が吹いてない。
帆を付けた船は波に揺られてぷかぷか浮かぶだけ。
……まあ風って自然現象だからな。
無風の時だってあるか。
だけどそれでは困るので、街から解決策を呼び寄せさせてもらう。
「ここらに風を吹かせればいいのかい?」
ああ。頼む、ユウフ。
呼んだのは風の精霊、ユウフ。
ユウフならば海に風を吹かせるくらい出来るだろう。
……それはつまりシルフを乗せれば、船の行き先なんて自由自在ということでは?
……それにウンディーネも水を操れるんだから船くらい簡単に操れる……。
……うん、まあ。
精霊だってそんな多いって訳でもないしな。
これからすべての船に乗せる……なんてことは出来ないだろう。多分。
とにかく今はテストだ。
早速ユウフに風を吹かせてもらう。
方向は自在に決められるとのことだったので、港に沿うように吹かせてもらう。
沖に向かって吹かせると失敗したときに回収が大変だ。
というわけで早速テスト開始。
最初は無人の船でやる。
「分かった、吹かせるよ」
その言葉と共にまずは弱い風が吹く。
そのそよ風を帆はしっかりと受け取り、ゆっくりと進んでいく。
おぉ~……。
自分たちが一から作った船が海を進んでいるのを見て、俺だけではなく周りからも興奮の息が漏れる。
やっぱり自分たちで作ったものが思った通りに動くのを見るのは、何回経験してもいいものだ。
だけどいつまでも興奮してばかりでもいられない。
大海原で常に弱い風が吹き続ける、なんてことはありえないんだし。
ユウフ、このまま風を強くして見てくれ。
「了解、代表さん」
返事と同時。
ビュゥゥッ!
先ほどまで、そよ……そよ……。といった感じだった風がかなり強くなる。
体感、吹き飛ばされはしないが身体を押されるようには感じるだろう、という風だ。
船は……。
しっかり進んでいる。
先ほどよりも強い風を帆に受けスピードを増して進んでいる。
帆が破けたり、マストが折れたりといった問題は発生していない。
だけどまだだ。
海に出る以上嵐に遭遇することもあるだろうからな。
ユウフ。
「了解了解。もっと強くするよ」
ゴォォッ!
ユウフがそう言うや否や風は一気に強くなる。
もし傘を持っていたら、体が浮いたかもしれない。
一瞬そう考えるくらいの風。
そんな風の中、船はさらに大きく帆を膨らませ……転覆した。
あぁ~……。
ユウフに風を止めてもらい、転覆した船を引き上げる。
損傷チェック。
……うん。
問題ない。
ひっくり返っただけで沈んだわけでもないし、船体やマスト、帆が傷ついたりもしていない。
念入りに調べてみるが、帆やマストは全く問題ない。
あれだけの風を受けても問題なく航海できるようだ。
いやまあ、海上でこれほどの風が吹くような嵐に遭ったら停泊してやり過ごすのが基本だけど。
まあともかく。
問題は船体の方だな。
問題点としては、まず船体が軽いこと……。
だけどこれはどうにでもなる。
完成させたら錨や人だって乗るし、漁に出るんなら網や魚の重さだって加わる。
なのであまり改修はする必要なし。
重くなりすぎてもあれだからな。
まあ多少は重くしておく。
一番の問題点はやっぱりバランスだな。
小型の船だと仕方ないところはあるが……どうしても傾いてそのまま転覆してしまいがちだ。
大型になるとデカい分どっしり出来るんだが……。
改良はするが限界があるな、小型だと。
俺がそう考えていると。
「じゃあそもそも波も風を受けすぎないようにすればいいんじゃないか?」
手持ち無沙汰だったのか、改良作業を見学していたユウフが悩んでいる俺を見かねて声を掛けてくる。
受けすぎないようにする? まあ帆を畳んだりしてか? 実際にはそうするつもりだが……。
「違う違う、そういうのじゃなくて。そもそも船に届く波風を穏やかにするってことだよ」
ふむ? だけど嵐がこっちの都合で弱まってくれたりなんて……ああそうか、シルフが乗ってくれるってことか?
「まあそんな感じだよ」
ユウフからの提案は、いざという時の為に自分たち風の精霊を乗せていけばいいというもの。
けれどさっきも考えたが、いずれシルフたちの数が船に対して足りなくなるだろうと……。
「乗るのは僕たちじゃなくたっていいだろう?」
? それはどういう?
「目的は風を操る事じゃなくて嵐を無事にやり過ごすことだ。なら……天使族の結界が使える」
なるほど……そうか!
ユウフの提案は、数の少ない精霊ではそのうち足りなくなるが、それなら天使族も乗せるようにすればいいというもの。
確かに天使族の結界を船に備え付ければ嵐にも耐えられるだろうし、小型の船なら天使族一人で十分覆える。
さらには天使族もこれから増えるだろうし、船が増えてもまかないきれるかもしれない。
それに結界ならあらかじめ船に刻んでおくとかもできるかもだしな。
その辺どうなんだ?
「んー……まあ、出来なくもない……かな?」
俺の問いに答えてくれたのはシエル。
結界を船に刻むことが出来るかどうか、知りたかったので来てもらった。
「可能だとは思うけど、結構難しいよ? 代表様が思うほどぽんぽんとは刻めないかもねー」
……なるほど。
シエルは結構軽めだが嘘は言わない。
……いや言う時は言うが、こういう真面目な時には言わない。
なので結構難しいというのは真実だろう。
まあだが、この問題の解決法は見えている。
シエル、もしかしたらその内頼むことになるかもしれないからその時は頼む。
「え゛ ……やだなー……仕事増えるのやだなー……」
俺がシエルに頼むと、シエルはぼやきながら肩を落とす。
まあこんなこと言いながらもシエルは任された仕事はきっちりこなすからな。
心配はしていない。
さて、おもむろに創造神器を出して、そんなシエルに向けて……と。
うん。
こっちも心配いらないな。
というわけでとりあえず、嵐の備えは後にまわして実際に漁に出てみることにする。
普通に海を進む分には問題ないし、万一の時の備えにユウフに乗ってもらえば今は良いだろう。
そう言うわけで、網、錨、獲れた魚を入れる水槽用の大きな器などなど……いろいろ積み込んで早速出発……。
「主様はダメです」
「我々が行って参ります」
出来なかった。
……どうやら、こんな小さい船で海に出ていくなど危険すぎるので、お止めください、とのことだ。
いや、確かに小さいが皆で頑張って作って、問題なく海を進める立派な船……
「お止めください」
いや、だから――
「お止めください」
……はい。
俺は押し負けた。
いやしょうがない。
皆はこっちを心配して言ってくれてるんだからな。
無下には出来ない。
俺はいそいそと乗っていた船から降り、代わりに乗り込んでいく皆を見守る。
乗り込むのはルシュ、ハイラ、ユウフ……
……ん? シエルも乗り込むのか?
「そりゃねー。何かが起きた時、飛べるあたしが居た方がいいでしょ」
なるほど。
万一の時のための備えか。
大事なことだ。
……それなら俺が乗っても……
「(主/代表)様?」
はい、陸地に残ります。
……残念ながら希望は絶たれたので、俺は大人しく皆を見送ることにする。
あくまで漁の試しなんだから、港から見えない位置まで行く必要はない。
別に何も獲れなくてもいいから気軽に行ってきてくれ。
「「「はい!」」」
俺はそう言って、皆を送り出す。
ボウズでも全然かまわないと。
そう考えて送り出したんだが。
結果。
ぴちぴちっ……ぴちぴちぴちぴちっ……!
水揚げされた魚の量はボウズどころか軽く数百匹。
何で?




