97.港作成と船
コンコン、ガンガン、ガリガリ、と、工事の音が響く。
そんな活気のある場所から離れた場所。
一人分の通路を作って海と繋げたその場所で、俺は海に向かって釣り糸を垂らしていた。
ふぅ~……落ち着く……。
周りは崖に囲まれ、波の音が聞こえるばかりで他の音は聞こえない。
そんな状況で釣り糸を垂らし、おれはゆったりとした時間を味わっていた。
……いや、サボっているわけじゃない。
これは息抜きだ。
ここまで伐採、整地と動き詰めだったからな。
皆が少しは休んでくださいと言ってきたのでその厚意にあずからせてもらった。
というわけで海が近くにあって息抜きと言えば、ということで釣り。
伐採して大量にある木材からいい感じに竿を削り出し、そこに糸をぐるぐる巻きにして結びつける。
後はその糸の先端に針をつけて完成だ。
ちなみにエサはパンを丸めて硬くしたものとか、兎肉の切れ端とかいろいろ用意した。
虫とかは見当たらなかったしな。
というわけで、釣りを始めたわけだが……。
今更だが異世界の海なんだから、俺の知っている魚いなくないか?
ゆったりとした脳みそにそんな疑問が浮かぶ。
海って時点で思考停止して、美味しい海産物! しか考えられなくなってたからな……。
まあ釣れるかどうか分からないけど、実際に魚が釣れてみればわかるか……。
俺がそんなことを考えた瞬間。
釣り竿が引っ張られる。
うおっ! かかったっ!
浮きとかつけてないからかかっても分からないかと思ったがここまで強く引かれたならわかる。
早速竿を思いっきり引っ張って釣り上げる。
こんな乱暴な使い方してもぜんぜん折れる気配なんてないから、やっぱり果ての森の木材は凄い。
そうしてフィッシュした俺の前に現れたのは……角の生えた魚。
……うん。
まあ異世界なんだし魚に角ぐらい生えてるよな。
……食えるのか? これ……?
釣り上げたその魚に創造神器を向けて確認してみる。
食べられるらしい。
うーん……それなら後で食べてみようか……。
俺はそう決めて一緒に来ていたムイに角魚を取り込んでおいてもらう。
街に戻ったら一緒に食べてみような。
ぽよんっぽよんっ!
「ウオォンッ!」
これまた一緒に来ていたシロが自分も食べると言っている。
うん、美味しかったらリルにも食べさせてやろうな。
「ウォンッ!」
そうしてその後もどんどん魚を釣っていく。
餌が魅力的なのか、糸を垂らしたら魚はすぐに食い付く。
次に釣れたのは身体中が光っている魚。
ぴかぴかして眩しかった。
これがほんとの光り物か?
これも食べられるみたいなので、ムイ行き。
次。
体の真横に足が生えた魚。
うん、キモい。
一体何のためにあるんだ? その足。
気になって地面に下ろしてみたら、その足で走り出して、海にダイブ。
唖然として見送ってしまった。
次。
体の真横に足が生えた魚。
またお前か。
今度は逃がさずにムイ行き。
こいつも食べられるらしい。
次に来たのは……めちゃくちゃデカいアナゴ。
下手したら俺を丸のみに出来るんじゃないかってぐらいデカかった上に鋭い牙がたくさん生えていた。
かかった瞬間海に引きずり込まれそうになるも、シロが竿を咥えて一本釣り。
その後身体をのためかせて襲い掛かってきたデカアナゴを一撃で仕留めて美味しくいただいていた。
俺も釣れた瞬間、咄嗟に創造神器を出したが必要なかったな。
その後もどんどんとフィッシュしていくが……凄い。
俺が知っているような魚、一匹も釣れない。
さすがは異世界だとしみじみする。
一応食べられる魚かどうかは分かる物の……どれがどんな味かまでは食べてみるまで分からないな。
まあ港が出来たら、もしかしたらその内俺が知っているような魚も取れるようになるかもしれない。
その為にもしっかり港を作らなきゃな。
そういうわけで息抜きを終え、港づくりに復帰。
今のところ港工事の進捗は倉庫を作り終えたところだ。
倉庫……というか港の建物は、最悪荒れた海に直撃されることも考慮し、かなり頑丈に作るように指示を出した。
だからこの倉庫もかなりがっしりした造り。
マナコンクリもふんだんに使ったから、たとえ台風が来てもびくともしないだろう。
そのまま俺も加わって、次は桟橋を作っていく。
陸地側から海に向かって突きだした橋。
よく船なんかを停めたりするところだな。
こっちもマナコンクリで作る……が。
無いとは思うが、ずっと水に浸かるような環境でマナコンクリが崩れてしまうことがあるかもしれない。
なので木で作った桟橋も用意しておく。
後はアレだ。
波を抑えるために海際にまいてある大きいまきびしみたいなもの。
テトラポッドだったか?
あれも作って桟橋近くの海に積んでおく。
備えはしておくに越したことはない。
これで倉庫と桟橋が完成した。
最低限の体裁は整ったとみていいだろう。
しかし一番大事な物が足りていない。
そう。船だ。
と、いうわけで船を作っていくことにする。
しかし……
「ふむ……さすがに船は作ったことがありません」
「こちらもです。見たことや操ったことはあるのですが……」
残念ながら、うちの街に造船経験者は居なかった。
まあしょうがない。
あまり経験することでもないしな。
しかし問題はないだろう。
そりゃあ何十、何百人とか乗るような巨大船なら相当困難だろうが、今から作ろうとしているのはせいぜい定員数人から十人の小さい漁船だ。
まあ試行錯誤しながらでも何とか作れるだろう。
そう言うわけでまずは一人用の小さいボートを作っていく。
千里の道も一歩からだ。
というわけでまずは船体を……えぇと……どう作るんだ?
船って曲線を描いた木材で構築されてるよな……。どうやるんだ?
木材をいい感じに曲げないと出来るのは船じゃなくていかだだぞ……?
うーん、鉄なんかと同じように熱を加えて変形させればいいのか?
でも当然火なんて使ったら木材燃えるよな……? どうすれば……。
そう俺は頭を悩ませる。
だが、俺が悩んでいるとき、いつも助けてくれたのは創造神器。
というわけで創造神器で何とかならないかと試してみる。
ゴンッゴンッゴンッ!
……何とかなった。
創造神器で木材をゴンゴン叩いていく。
するとみるみるうちに木材が曲がっていくのだ。
しかも叩くのをやめても戻る様子はないし、木に亀裂が入ったりもしない。
まるで木の姿をした鉄なんじゃないか? ってくらいスムーズに曲がっていく。
さすがは創造神器だ。
そうして曲げていった木材を竜骨……船の背骨とフレーム……船の肋骨にして、板をはり船の形に組み上げていく。
この辺の構造は漫画で読んだことがあるからまあそれっぽくは作れる。
ということで船体が出来上がり。
まだ完全に完成した訳じゃないが、一旦しっかり浮くかどうか試してみる。
すると。
ゴボゴボゴボゴボ……!
うん。
沈んだ。
見事に。
一旦船を引きあげて原因を考察する。
……にしても試しておいてよかったな。
完成してからこの結果だったら丸一日くらい落ち込んでたかもしれない。
さて、沈んだ原因だが……隙間だな。
組んだ木の隙間から少しずつ水が入ってきて、結果沈没。
防水加工が甘すぎたということか。
水というのは肉眼では見えないような小さな隙間からでも入ってこれるからな。
ふむ、そうなると……船体の隙間に何か固まる物を塗り込みたい。
マナコンクリみたいに塗ったらいい感じにカチコチになって隙間なんて無くなるようなものを。
だけどマナコンクリ塗ったら重さで転覆しかねないな……どうしたものか。
そう俺がうーんと悩んでいると。
「代表様、これをどうぞ」
ハイラが器に入った何かを渡して来た。
中を見てみるとねばねばしている。
これは?
「はい、薬草畑で栽培していた植物の一種です。今でこそ液体状ですが、一度乾くと決して水を通さない塊になります」
そんなものが?
さすがは異世界だな……。
話を聞くにどうやら、これは出血部位に塗って、出血を止めたり、傷口に水が入らないようにするための植物なのだそうだ。
ハイラの進言に従い、早速これを船の外面と……あと一応内面にも塗り、再び海に浮かべてみる。
すると……。
今度は浮いた。
見事に。
しばらく見ているが……沈む気配は全くない。
内部も見てみるが、水が入ってきている様子はない。
成功だ。
よし。
ありがとうハイラ、助かった。
「いえ、代表様のためであればこの程度」
これで船体は完成した。
次は動力……帆だな。




