96.畑づくりと出発
その後。
リルの出産を見届けた翌日から、俺は早速今年一番の畑づくりを開始。
これをすぐに終わらせる。
すぐに終わったのは、皆に頑張ってもらった、というのもあるが、それ以上に俺のテンションが高まっていたためだ。
なぜかというと……この後、お楽しみが待っていたからだな。
お楽しみ……そう、海だ!!
コーンっ……コーンっ……コーンっ……!
というわけで。
爆速で畑づくりを終えた俺は、早速行動を開始した。
即座に海に向けて出発……するわけではなく。
調査団に方角を聞き、その方向へ向けて道路を作り始める。
今はそのために木を伐採しているところだな。
なぜいきなり道路を作ろうとしているのか。
それは海産物を安定して街に運ぶためだ。
道路の無い今の状態で行っても、海産物を安定して街まで運んでくることは不可能。
いや、飛べる種族もいるし、なんならフィノウなんかに凍らせてもらえば運ぶの自体は出来ると思う。
だけど飛べる種族も数少ないし、運んでこられる量も少ないだろう。
だからレースピアの街の輸送と言えばでおなじみのケンタウロスたちに、大量に、安定して、海産物を運んでもらいたい。
そのためには海まで続く道路を作らなければならない。
そして効率を考えるなら最初から作りながら行くのが一番いい。
そう考えて海に向かって道路を作り始めているわけだな。
そういうわけで、俺はまずはガンガン斧を振って、進路上の木をなぎ倒していく。
なぎ倒した木は作業を手伝ってくれている皆がどんどん運んで行ってくれる。
俺は木を切ることに集中すればいい。
そしてそんな俺の後方ではルシュ率いるハイコボルト建築チームが、マナコンクリを固め道路を作り上げていく。
冬も挟んでしばらく実働してなかったから、最初は多少もたつくかとも思ったけど全然そんなことは無い。
綺麗に素早く道路が敷設されていく。
俺も気合い入れて伐採して行かないとすぐに追いつかれるな。
そう気合を入れて、皆で道路を作っていく。
道中ちょこちょこと空を飛べるものに方向を確認してもらいつつ……およそ一週間ほどか?
俺の視界が開けた。
ザザーン……! ザザーン……!
森を抜けた俺の耳に届くのは、波が陸に当たって跳ね返るあの音。
はやる気持ちを抑えそのまま進んでいくと……見えた。
崖になって切り立っている陸地と、その崖下に広がっている海。
調査団からの報告通りの光景だ。
おお……海だ……!
俺のテンションが否応なく上がる。
実際に海を目の当たりにしたんだ。しょうがない。
「主様。ここまでの道路、問題なく開通しました。穴や凹凸もありません。森を抜けたところで道路は止めていますが、この先はどうしますか?」
感動して海面を眺めていた俺に、ルシュがそう声を掛けてくる。
ハッ……そうだな。
俺は何とか落ち着きを取り戻し、続ける。
とりあえずそこで止めておいてくれ、この先道路をどうつなぐかは、周辺を調べたうえで決める。
「かしこまりました」
さて、そんなわけで建築チームには休憩してもら……。
「ではそれぞれ分かれて周辺の哨戒。何か気になるものを見つけた場合は迅速に報告を。では散開!」
「「「はい!」」」
おうと思ったんだが。
言葉を挟む暇もなく皆散開してしまった。
本当に皆働き者で頭が下がる。
「……一番の働き者は主様だと思いますが……」
その働きに報いるためにも俺も頑張っていかないとな!
というわけで周辺調査。
とはいっても調査自体は調査団が行って報告もしてくれている。
俺がやることは実際に見て、報告通りか再確認すること。
そういうわけで周辺を見て回ったが……。
うん。
報告通り。
完っ璧に報告通りの断崖絶壁。
もしここに犯人が居たら、迷わず身を投げるくらいの断崖だ。
この周辺は完全に絶壁が続いていて、見渡す限りどこにも海に降りられるルートは存在していない。
実はどこかに裂け目があって、洞窟みたいな感じで海に行けるルートがあるんじゃないか、と思って空を飛べるものに確認してもらったが、まあそんなものは存在しなかった。
どころか見た限り、この崖は果ての森を囲む山々までつながっているようで、こちら側から海は降りることは難しいだろう、とのことだ。
難しい、なのは降りることが出来る者もいるからだな。
例えば……。
「ふむ、この程度ならそう苦労もしませんね」
「……いいですね。訓練に使えそうです」
まずルシュ。
当然のように崖を降りて登ってを繰り返してる。
俺の希望で一応命綱は付けてもらっているが、全く世話になる様子を見せない。
そして、ハイラ。……と、幾人かのハイエルフたち。
俺の切った木材を運ぶ仕事を終えた後、護衛についてくれていたんだが、ルシュがするすると上り下りしているのを見て、自分達もと挑んでいた。
ルシュほどスムーズではないものの問題なく崖下り&崖登りが出来ている。
さらに、身軽さを追求するための訓練に使えるかもしれないと向上心を見せているほどだ。
さて、そんな感じで崖を降りられるものはいるが。
当然のごとく俺は降りられないので降りられる道が必要だ。
だがそんなものは見つからない。
ならば答えは一つ。
道が無いなら作ればいい。
ザックザックザックザックザック……!
というわけで。
森を抜け、道路をいったん作り止めした場所。
俺はそこから斜め下方向に向かって地面を掘っていた。
もちろん、道を作るためだ。
幸い、森を抜けた場所から海まではかなりの距離があった。
真っ直ぐ斜め下に掘り進めていっても相当の余裕がある。
なので作るのは道だけではない。港もだ。
だがまずは道。
運搬用の馬車が通ることも考慮して、かなりなだらかないい感じの坂道をまずは掘っていく。
創造神器なら簡単なことだ。
もちろん、崩れないように周りをハンマーで固めるのも忘れない。
それなりに幅は取ったが、所詮一本坂道なのですぐに掘り終わった。
海面の少し上くらいの高さまでかなり緩やかに掘り下げて、そこからは横に真っ直ぐ。
海まで繋げて開通させた。
道は簡単に作り終わったな。
だが大変なのはここからだ。
開通させた海に降りる道を中心として、周囲を掘っていく。
超巨大な丸い穴を道を中心にして開けるみたいなイメージか。
こっちは道とは違いかなりの面積を掘る。
なんせ港にするんだからな。
例えば、居住区画、船を置いておく桟橋、倉庫など……必要なものを考えたらそれなりの広さがいる。
船もその内大型のものとかも停められるようにしたいしな。
だけど何事もまずは基本から。
まずは普通の小さい船がいくつか停まっている港をイメージして掘っていく。
ザックザックザックザックザック……!
一心不乱に掘りまくる。
俺ほどの速度ではないとはいえ、他の者も手伝ってくれてるからすぐに終わる……なんてことは無かったな。
掘る範囲が範囲だから。
いやぁ……にしてもハイノーム達連れてくればよかったな。
今は街で作物の世話をしてもらっているが、連れてきていればもうとっくに整地できていたかもしれない。
思いつきノープランで港とか作り出すとこれだから。
だけどまあこれくらいなら今から呼んでくるまでもないだろう。
ハイノーム達の力はもっと大きな港を作ることになった時に発揮してもらうことにする。
というわけでザクザクと掘り進んでいき……整地完了。
何ということでしょう。
切り立った崖がなだらかに海につながる海岸に早変わり。
これで第一段階は終了。
次はここに港を作っていく。
というわけで……建築チーム、頼む。
「はっ! お任せください!」
頼もしい。




