94.新形態と球技
翌日。
目覚めた俺の頭に恒例のアナウンス。
”累計十五種族、結集確認。新たな形態、「魔晶球」解放”
もう慣れっこだな。それにしても魔晶球ってなんだ?
気になったのでいつもの空き地……に、雪の中行くのはちょっと憚られたので中庭に来た。
もし危険そうだったり規模が大きそうだったらすぐにやめて、試用は春になってからにしよう。
そう決めた俺は早速創造神器をその魔晶球とやらにしてみる。
それの外観は……占いに使う水晶玉? って感じだ。
表面のつるつるした水晶の球体。
少し違うところがあるとすれば……占いに使う物はかなり大きいもの、というイメージがあるが、この水晶玉は結構小さい。
片手に収まるサイズだ。
にしても……出してみたは良いがどうやって使うんだ? これ?
そう俺が悩みながら、ぽんぽんとお手玉したり、上にかざしてみたりと試行錯誤していると。
ぽよっぽよっ!
これまた恒例。
新形態のテストに付き合ってくれていたムイが俺に体当たりして何かを伝えてくる。
うん? ムイ、何だ? ……雪? 雪がどうした?
ムイは雪の中で暴れて雪をまき散らしている。
俺がその光景を見ながら考えていると。
ヴン……。
魔晶球の中に突然「雪」と文字が浮き出る。
そして……。
パラ……パラ……。
雪が降ってきた。
俺は驚いて上を見上げる。
今日は冬晴れの良い日で雲はほとんどない。
俺の頭上にももちろん雲はない。
なのに雪が降っている。
どういうことだこれは?
雪が降ってはしゃいでいるムイを尻目に俺は実験を続ける。
その結果分かったことは……。
一つ。
俺が明確に意識すると、魔晶球に文字が浮き出る。
ムイが雪をまき散らしているのを見て雪を意識したから雪の文字が浮き出たわけだな。
一つ。
雪が降る範囲は俺を中心としたごく一部の範囲だった。
俺は常に中心に居る関係上、分かりづらかったが、ムイに手伝ってもらって判明した。
一つ。
雪が降る範囲や降雪量は調整することが出来る。
ちらつく程度のパラパラ雪から、これ風があったら吹雪になるだろってドカ雪まで自在に降らせられた。
分かったことはだいたいこんな所だ。
もし夏にも雪を降らせられるんなら結構便利じゃないか? これ。
一通り使い終わった俺はそんな感想を抱く。
ちなみに雪以外に他の文字も浮かぶんじゃないか? と試してはみたものの、俺が試した限りでは浮かばなかった。
街に居るのが雪妖精のフィノウだけなことが関係しているのか?
もしそうなら他の妖精族を受け入れれば、また他にも分かることがあるかもしれない。
そう結論付けて一旦魔晶球のテストは終了した。
そして、屋敷に戻ってきた俺は次の行動に移る。
次の行動は……当然娯楽を増やすことだ。
どんどん増えてきたとはいえまだまだ足りない。
俺はそう思っている。
さて、カラオケ……TRPGと来て……何か体を動かす娯楽も欲しいな……。
俺の屋敷にはかなり大きい玄関ホールがあるからここを活かしたもの……となると、卓球、バレー、バスケあたり?
大きいホールを見て体育館を連想し、体育館でやる屋内球技が俺の頭の中に真っ先に浮かんだ。
だが……。
あーでも駄目だな、球技は。ボールが無い。
俺はすぐにそのことに思い至った。
木のボールなら作れると思うけど……硬くて危険だし何より弾力が無い。
球技のボールはやっぱり弾力がないと……ゴムが欲しいな。
どこかにゴムの木とか生えてないかな……?
無い物ねだりするも、今この場にゴムがないという事実は変わらない。どうしたものか……。
……ん? いや代用は出来るか?
本気でやる訳じゃなくあくまで遊びなんだからそんなきっちりしたボールを作る必要はない。
それなら……。
俺は適当に倉庫から布を取り出して塊にして圧縮。
そしてそれを糸でグルグル巻きにして、解けないようにしっかり絡ませた。
出来た、布糸ボール!
俺の手の中には布と糸で出来たボールが存在していた。
外側は糸でグルグル巻きにされているため柔らかく、中心に固めた布を配置しているためそれなりに重さもある。
少なくとも投げてすぐ空気抵抗で止まったりはしない、それなりに使えると思われるボールだ。
さて、本当に使えるかどうか実際に試してみる。
とりあえずホールに来て……ボールを思い切り投げる!
ひゅんっ! ……ぽんっ……ぽんっぽんっ……。
ふむ。
やはりあまり跳ねないな。二、三回跳ねるだけでもう止まった。
だけど思惑通り重さはしっかりある。しっかり飛んだし、手ごたえもばっちりだ。
うん。使える。
俺はそう判断した。
遊びに使うならこれで十分だ。
そう考えている俺の足元にムイが跳ねながら寄って来る。
どうやらムイも投げて欲しいらしい。
ムイを全力投球するのはさすがに……、と俺が断っても投げろ投げろと俺にしつこく体当たりしてくる。
しょうがないので、一回だけだぞ、と言ってムイを投げる。
すると……。
びゅんっ! ……ぽよんっぽよんっぽよんっ……。
勢いよく飛んで地面にぶつかりそのまま何度も跳ねていく。
その挙動は俺が想像していた球技用のボールのものとそっくりで……。
うん。
見なかったことにしよう。
華麗にスルーして、俺は球技に付き合ってくれる者たちを集めに行った。
「なるほど……これをぶつければいいんですね」
「ぶつけられても地面に落ちる前にキャッチできればセーフ?」
「ぶつけられたものは外野に行って、内野が一人もいなくなったチームの負け……分かりました」
というわけでまずやってみたのはドッジボール。
二チームに分かれてボールをぶつけあうアレ。
俺が作った布糸ボールはかなり柔らかいし最適だろうと思ったのでまずこれを選んだ。
俺の思惑通り、平和に……。
ゴウッッッ!!!
やれていると思ったんだが。
何アレ?
俺の目の前では、とんでもない速度で布糸ボールがやりとりされている光景が広がっていた。
何あの速度? 俺が投げてもあんな速度出な……しかも当然のようにキャッチ? 柔らかいとはいえあの速度を? んんっ!? 何で今ボール曲がった!?
俺の想像していた物とは違うトンデモドッジボールに俺は驚かされっぱなしだ。
いや、まあ、楽しそうだしこれはこれでいいのか?
俺は絶対参加したくないが。
とりあえず、空を飛んで相手の頭上からボールを投げ落とすのはルール違反だ、とだけ声を掛けて、白熱しているドッジボールからは目を逸らして次。
「主様、ゴール……の大きさはこの程度でよろしいでしょうか?」
「こちらも出来ましたわ。ネットとはこの高さでよろしくて?」
すると、ボール以外の備品の作成を頼んでいたルシュとクトネーが俺にそう声を掛けてくれる。
ルシュとクトネーにはそれぞれバスケットゴールとバレーネットの作成を頼んでいた。
体育館を連想していたらやっぱり真っ先に思いつくのはこの辺だ。
ルシュ、クトネー。
ありがとう。
「いえ、主様のお頼みであれば」
「ええ、それに主様考案の遊戯が楽しみですし」
二人はそう言ってくれる。
であればさっそくと言うことで、バレーとバスケも試しにやっていく。
「作ったあそこにボールを入れるのですね」
「このネットを挟み合ってボールを落とさぬように打ち合っていく……なるほどですわ」
それぞれルシュとクトネーにやってもらっているが……いやこっちも凄い。
クトネー。
とんでもなくダイナミックなジャンプからのスパイク。
打ち付けられたボールがパンッ! と音を立てている。
凄く見ごたえがあるな。
「ふふ、楽しいですわ! もっと美しくスパイクしてみせましょう!」
そしてルシュ。
こっちもすさまじい。
どこからでもボールをゴールに入れてくる。
ゴール裏や反対側のゴールからも入れてくるのはもう器用ってレベルではなくないか?
「主様が見ている前で醜態は晒せませんので」
そんな感じでドッジボール、バスケ、バレーと三種の球技を同時にやっているホールはとても活気に満ちている。
何かところどころからドンッ! とか、バンッ! とかって音が聞こえてくるけど。
まあ皆に新たな楽しみを提供できたなら何よりだろう。
……ん? あ! ドッジのボール! いつの間にかムイになってる!!




