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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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90.様子見とフロストフラワー

 ある冬の朝。

 ルシュたちが感想を語ってくれたことで、こっちもかなり流行ったTRPGの新作でも作ろうかとベッドから起き上がった俺はそこで気付いた。


 外から……吹雪の音がしない? もしかして止んだのか?


 もし吹雪が止んだんだったら、住民の確認に行けるかもしれない。

 と言うわけで俺は早速外の様子を見に行く。




 いやー……凄いな……。


 外に出た俺はその光景を見て、白い息を吐きながらそんなことを思う。

 玄関から出た先、そこはまさに銀世界といった様相で……見た感じ俺の腰ほど、大体一メートルくらいの雪が積もっているようだ。

 ここまで積もった雪はテレビでしか見たことが無い。

 正直俺はかなりテンションが上がった。

 雨も雪もめちゃくちゃ激しくなればテンションが上がってくるタイプだ、俺は。


 そしてテンションが上がっているのは俺だけじゃないな。


 ぽよんっ!……ぼすんっ!……ぽよんっ!……ぼすんっ!


 俺と一緒に屋敷から出てきたムイ。

 積もったまっさらな雪にボディプレス? をかまして足跡……いや体跡? をつけている。


 この前ルシュたちとTRPGやった時、何で自分も誘ってくれなかったのかと拗ねていたことはその姿からは感じられない。


 うん。

 機嫌直ってくれてるみたいで良かった。

 今度は一緒にやろうな。


 にしてもよく見たらとんでもないジャンプしてるなムイ。


 アレ軽く二メートルくらい飛んでないか? そんな飛べたの? いつも俺の肩に乗って移動してるのに?


 疑問が頭を埋め尽くすが、まあ乗るのはムイなりの愛情表現なんだろう、と俺は自分を納得させる。

 するとそこで。


「……ふぅー、ただいま代表様ー。とりあえず近くだけ確認してきたよー」


「入口が埋もれてしまってはいましたが、壊れている住居などはありませんでした」


 情報からシエルとリネイアが舞い降りそう報告してくれる。

 吹雪が止んだこともあり、飛べる二人に周囲の確認に行ってもらっていたのだ。


 そうか、それなら良かった……住民は?


「そっちも問題ないよ。入口だけでも使えるようにしておこうと雪かき始めてたしね」


「むしろ……代表様に問題は無いかとこちらを心配するくらいでしたね」


 そうか、重ねて良かった。

 目立ったトラブルは発生していないようで。


「まあそだねー。ここまでの吹雪、体験したことない住民もいるんじゃないかと思ってたけど、意外とみんな冷静だったし」


「代表様がこういう時の備えを数々用意していたからでしょう」


 そう言ってくれる二人。


 備えが役に立つ状況なんて来ない方がいいと思っていたものの、実際に役に立ったと聞くと少しほっとしてしまう。


 ありがとう。それじゃあ悪いんだがそのまま街全体も見て回ってもらえるか?

 その際もし天候に異変を感じたらすぐに戻ってくれ。


「はい、かしこまりました。他の者にも声を掛け行って参ります」


「うえーこの寒い中? ……他も来るんならあたしはいらなくない?」


「シエル」


「うぐっ……はーい……」


 シエルが渋るも、即座にリネイアに封殺される。

 いつもの光景。

 まあシエルも本気で言っているわけじゃなく、通ったらいいな、くらいの気持ちで言っているだけっぽいしな。

 だけど確かに寒いのは事実なので、申し訳ないとは思う。


 すまないなシエル。

 けれどどうしても心配なんだ、どうか頼む。

 それにクトネーたちに防寒着も作ってもらっただろ?


 俺はそう声を掛ける。


「着てても寒いものは寒いんだけど……まあ代表様にここまで言われたらしょうがないかー……」


「腹は決まりましたか? では行きますよ」


「あー……」


 俺の言葉にしぶしぶとやる気を出したシエルはリネイアに首根っこを掴まれ飛んで行った。

 まずはデモンズとエンジェルに号令を掛けに行ったんだろう。

 にしてもシエル……リネイアに首根っこひっつかまれたあんな体勢でよく飛べるな……。

 曲芸飛行の域だろうあれはもう。


 と、俺はリネイアたちを見送り一息つく。


 さて……さすがに飛べるとはいえ街を全部見て回るとなるとそれなりに時間はかかるだろう、それまで何を……。


 と、俺がそう考えていると。


 クイックイッ……!


 袖を引っ張られる感触。

 見ると、雪に体跡をつけて遊んでいたムイがいつの間にか俺を引っ張っていた。

 どうやら、一緒に来てほしいみたいだ。


 別に急ぎでやることもないし俺はムイに着いていくことにする。

 その旨を伝えるとムイはジャンプして俺の肩に乗ってきた。


 いや、うん。

 さっきも言ったがムイなりの愛情表現なんだろう。

 便利な乗り物扱いしているわけじゃ……ない、はず。きっと。うん。


 そんなことを考えながら、俺はムイが指し示す方向に向かって歩いていく。

 腰まで雪が積もっているから進むのは大変だろうと思ったがそうでもなかった。


 創造神器の蹄鉄。

 これを着けることでなんと雪の上であろうと問題なく歩くことが出来た。


 使用感としては……かんじき?

 あの……あれ……地上でやる水蜘蛛の術っていうか、テニスのラケット部分のみを靴裏に着ける感じのものというか……。

 実際に着けたことはないが、そんな感じで雪に足が全く埋まることなく、雪の上を歩くことが出来た。


 さすがは創造神器。

 新感覚でとても楽しい。

 感謝を込めながら歩き続け……到着。




 到着したのはこれまた一面雪に染まった場所。

 派手に雪が積もっているから場所の見分けがつきづらいな。

 まあでも歩いてきた方角と時間からして……いつも創造神器のテストなんかに使ってる空き地あたりだと思う。多分。


 たどり着くとムイが俺の肩から降り……。


 ずぼっ!


 思い切り雪に埋まる。


 うん。

 まあ俺の肩から飛び降りたらそうなるよな。


 埋まったムイを掘り出して再び抱え直すと、ムイが少し離れた場所を指す。

 のでその位置に行ってみるも……特に何もない。


 はて?


 そう俺が首をひねっていると抱えられたムイが新たなジェスチャー。

 内容は……ここを掘れ?


 ふむ……お宝でも埋まってるのか?

 わんわんならぬここ掘れぷよぷよか?


 そんなことを思いながらも示された通りに掘る。

 例え雪であろうと創造神器にかかれば簡単に掘れる。


 ザックザックザックザック……。


 と、掘り進めていっていると、ある程度まで掘ったところでムイが体当たりして止めてくる。


 ん? どうしたムイ? ムイが掘れって言ったんだろ?


 その俺の言葉に答えずにムイは俺が途中まで掘った雪穴の中心辺りに降りる。

 そして……少しずつムイの身体が沈んでいった。


 ずぶずぶずぶずぶ……。


 え? ムイがどんどん沈んでいくが? どうなってるんだ?

 ……ああ! 体の下側の雪飲み込んでるのか!


 ムイは触れている物を飲み込むことが出来る。

 しかも普通に自分の体積以上の量軽く飲み込めるからな。

 それで自分の下の雪飲み込んで沈んでいるわけか……。

 人間で言うなら頭を下にして雪を食い進んでいるみたいなものだな。


 そのまま見ていると、ムイは完全に雪の下にもぐってしまった。

 穴こそ空いているものの、もうその姿は見えない。


 そのまままた少し経ち。

 俺が心配になって掘り起こそうか、と考えた時。


 ズザッ! ぎゅるるるっ! とすっ!


 穴からムイが回転しながら勢いよく飛び出し、見事に俺の肩に飛び乗る。

 凄まじく芸術的な挙動だった。


 穴の中からじゃ俺の姿は見えないはずなのに、どうやってこんな完璧な着地決めたんだ?

 十点……いや百点。


 そして、着地したムイはいそいそと俺の肩から降りた。

 降りるならどうして飛び乗ってきたんだ?

 ……やりたかったから? ……それならしょうがないな。


 降りたムイは体の中から何かを取り出して俺に渡してくる。

 どうやら雪の下にあった何かを飲み込んで持ってきたらしい。


 ムイが渡して来たそれは一見凍り付いている花に見えた。

 だが、よく見たらすぐに違うと気づく。

 その花は綺麗に透き通っていた。

 凍り付いている花ではなく……氷で出来た花だったのだ。




「これは……フロストフラワーですね」


「えっ嘘っ!? うわっ、ホントにフロストフラワーだ! 珍しー!」


 ムイに氷で出来た花を渡された後。

 溶ける様子を見せないそれをもって屋敷まで戻ってきたところ、ちょうど街の見回りから帰ってきたリネイアとシエルと鉢合わせ、この花の名を教えてもらった。


 この花の名はフロストフラワー。

 シエルがかなり驚いていたことからも分かるように相当に珍しい花らしい。

 というのも……このフロストフラワー、咲く場所が全く分からないのだとか。

 前回咲いていた場所に咲くこともないし、完全に運でしか見つからない上、今回の様に普通に雪の中に咲いたりもしているから、全然見つからない、と、そういうことらしい。


「その希少性からかなりの高値での取引も行われている花です」


「すっごい値がつくよー、どこに生えてたの?」


 ああ、向こうの雪の中に生えていた……のか? ムイが取ってきたから生えているところは見てないけど。


「ほえー、やっぱ雪の中に。運いいねー代表さん」


 そう言って俺の肩をポンポンと叩いてくるシエル。

 その目はきらきらと輝いている。

 珍しいものを見ることが出来て普段よりテンションが上がっているみたいだ。


 フロストフラワーのことを教えてもらったついでに二人に街の様子も聞く。


「まだ帰ってきてない者もおりますが、今のところ問題はありません」


「そうそう、どこもバッチリだったよ。心配なし!」


 そうか、ふぅ……良かった。


 俺は胸をなでおろす。

 と、そこでシエルがぶるぶると体を震わせた。


「うぅ、報告も終わったし帰らない? 防寒具着ていても寒いものは寒かったしさー」


 それもそうだな。


 同意した俺は二人と一緒に帰路に着く。

 体動かしたとはいえ、外を歩いて俺もそれなりに冷えたしな。


 そしてそのまま屋敷へと帰り、フロストフラワーは中庭に植えておく。

 かなり希少なものだって聞いたし出来れば長く見ていたいからな。



「……フロストフラワーって一度摘んだら三日ぐらいで溶けて消えるし、植え直しとかも出来ないんじゃなかったっけ? ……なんか根付いてない?」


「さすがは代表様ですね」




 そして、翌日。


「あーっ! そう! いいよ! キミならもっと美しく咲ける! そう! その角度! いいよ! 花弁に虹を宿らせてるのかい!」


 フロストフラワーの前に変なのがいた。


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