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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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89.サイコロの流行とTRPG

 第一版TRPGを完成させ勢いよく部屋を飛び出していった結果。


 流行った。屋敷中で。


 ……サイコロが。




「これはなかなか……面白いですね」


「全てが運で決まるというのはなんというかこう……新鮮です」


「いやー体動かさなくていいのがサイコー」


 TRPGの為にまずはサイコロを布教した結果、そのシンプルさに屋敷に居た者皆がハマった。

 それぞれ、より大きい数字を出した者が勝ち、より小さい数字を出した者が勝ち、指定した数字を先に出せた方が勝ち、など、いろいろな方法で遊んでいる。


 ……いや、まあ気持ちは分かる。うん。サイコロって転がしてるだけで楽しいしな。気持ちは……分かるんだが……いやまあ楽しんでくれてるなら良いか。


 ちょっと釈然としなかったものの、俺はそう結論付ける。


 そんな俺にシロとリルが、もっと大きいサイズのサイコロを作ってくれと鼻先を押し付けてくる。

 シロたちのサイズじゃあまりにも振りにくいもんな。

 分かった分かった、作るから。

 俺はシロとリルの頭を落ち着かせるように撫でる。


 ……ん? 今日外吹雪なんだが、いったいどうやって遊びに来て……?

 ま、まあいいか。

 シロとリルなら出来るんだろう。




 そんなわけで、屋敷中にサイコロブームを引き起こし、シロたち用のサイコロも作ったのち、俺は自室に戻って来る。

 TRPGは、まあその内出せばいいかと決めて。


 すると、自室に来客。

 扉を開けるとそこに居たのはシロとリル。

 そしてルシュとハイラ。


 さっきまでサイコロを振って遊んでいたはずだが……。


「入ってもよろしいでしょうか? 主様」


 ああ、もちろん構わない。


 四人……二人と二体? を部屋に招き入れ、訪問の理由を聞く。


 それで……何の用だ? もしかしてこの吹雪でどこかでトラブルがあったとか……?


 吹雪で通常の連絡員は出していないものの、もしかしたらシロとリルが来る途中で見かけたのかもしれない。


「ああ、いえ、そのようなことはございません。主様、どうかご心配なさらず」


 俺の顔に心配の色が出ていたのを察したのか、ルシュが少し慌てて否定する。


「ここに来たのは、先ほど代表様が何やら釈然としないような顔を成されていたからです」


 ルシュに続くようにハイラがそう言ってくる。


 いや、まあ、確かにそんな顔しちゃってただろうけどよく分かったな? 夢中になってサイコロ振ってただろ?


「どんな時でも代表様のお顔は見ていますので」


 一切恥じることなく真っ直ぐ俺の目を見て言ってくるハイラ。


 そ……そうか……。


 こうも率直に言われるとこっちが照れてくる。

 ……気を取り直して。


 実はサイコロ以外にも作ったものがあって、そっちをメインで考えてたんだ。

 だけどサイコロが凄い盛り上がって、ちょっとそっちの方出すタイミングを逸してしまって……。


「なるほど、そうだったのですね……よろしければそちらを見せていただいても?」


 断る理由もないので、書き上げたTRPGのルールブックを見せる。


「ふむ……? 代表様、この文字は……?」


 え? この文字はって、そりゃもちろん日本語だけど……って。

 今気づいた、バカか俺は。


 日本語でルールブック書いても読めるわけないじゃん!


 ……いやまあ、俺が常に進行役やればなんとかなるか?

 ともかくすまないハイラ、読めないなら俺が説明――


「いえ、読めはするのですが」


 読めはするの!?


 どういうこと? と俺の頭が疑問に支配された時、ふと頭をよぎったのが創造神器のペン。


 まさかこのペンで書いたから……?


 俺はその考えに行きつく。

 結局書き損じも多くて最終的に全部創造神器ペンで書いたからな。


 瓢箪から駒ともいうべきか?

 まあとにかく創造神器のおかげで、日本語でもしっかり読めるみたいなのでそのまま読み進めてもらう。


「ふむ……なるほど……架空の種族を演じ、サイコロを使って冒険していく遊びですか……」


「種族や魔法……武器や防具……全て主様が考えられたのですか? 素晴らしいです」


「ウォウッ」


「ウォフッウォフッ」


 皆……シロとリルも一緒になって興味深そうにルールブックを読み込んでいる。

 そして一通り見終わったかと思うと……。


「素晴らしいです、代表様。早速やってみたいのですが、構いませんか?」


 ハイラが俺にそう言ってきた。




 えーそれではそれぞれキャラを作ってもらったところで自己紹介をお願いします。


 その後。

 せっかくそう言ってくれたのだから、と俺は早速TRPG遊ぶことにした。


 進行役は俺。

 プレイヤーはハイラ、ルシュ、シロ、リル。


 うん。

 ハイラとルシュが参加してくれるのかな? と思ったらシロとリルも参加してくれた。

 出来るのか? と思ったものの、当然みたいな顔で参加してるシロとリルには何も言えなかった。

 皆がプレイヤー作っている間に急いでシロとリル用の十面サイコロ作った。


 そしてキャラクターの紹介。


「いきなり名前まで変えると混乱するかもと思ったので、名前はそのままハイラです。種族はデモンズになります」


「私も名前はそのままルシュです。種族は……その……フェンリルに」


「ウォウッ」


「ウォフッ」


 皆がそれぞれ自分のキャラクターの紹介? を終える。


 ハイラは何も言うことないな。

 デモンズは結構探索に向いてる感じの種族にしたから、The・堅実って感じ。


 ルシュ。

 こっちも特には……強いて言うならフェンリル選んだことか? 強い代わりに「意思疎通」に成功しなければ情報伝えられない結構な玄人向けの種族なんだが。

 やっぱり架空の遊びと言えどフェンリルになってみたかったのかな。


 次、シロとリル。

 当然ウォウッとウォフッだけじゃ分からないので、こっちに押し付けて来たキャラクターシートを見る。

 ……なんか当然のように記入されてるんだが、どうやったんだ?


「あ、それは私が代筆しました」


 ルシュが代筆したらしい。


 とにかく、二体のシートを見る。

 シロの方は名前はシロで、種族はコボルト。

 リルの方も名前はリル、種族はウンディーネ。


 シロの方はルシュに代筆してもらったのもあって、コボルトを選んだのか? だとしたらそんなの関係なくウンディーネを選んだっぽいリルがフリーダムだな。


 まあ二体も特に問題ない。


 この調子でルシュフォローがあれば問題なくTRPG出来るだろう。


 と言うわけで早速開始。




 えーあなた方は目覚めると知らない部屋に居た。

 持ち物は何もない。


「何も持たず知らない部屋に? もしかしてフォイル殿でしょうか……?」


「私は今フェンリル様なのですが部屋に入って……いる? 広い部屋なのですね」


「ウォフッ」


「出口は? とシロ殿が仰せです」




 えーこの部屋はキッチン。

 奥にある鍋から嫌なにおいがしているのがわかる。


「ふむ? とりあえず開けてみましょうか」


 中には鼻につんと突くとても臭いの強いスープがあります。

 嗅覚の鋭いフェンリルのルシュはダメージです。


「えっ!?」


「……す、すみません、ルシュ殿……」


「うぉふぅ……」ふるふる……。


 ……こういう時はあらかじめ嗅がないで済むように身構えておかないと、って言ってるのかな?


「うぅ……フェンリルとして経験が浅かったです……」


 まあクイーンコボルトだしな……。





 この部屋には……大量の本がある。

 探せば大抵のものは見つかるのではないか? あなた達はそう思う。


「おや、では私に任せてください。こんなときの為に調査技能を……カラカラッ……すみません、失敗しました」


「えっ!? 私初期値なんですが……! 仕方ありません、何とか……カラカラッ……やったっ! 成功しましたっ! ……カラカラッ……あ、でも意思の疎通に失敗……」


 えーではハイラたちはいきなり吠え始めてどうしたんだろうこの狼は……お腹空いたのかな? と思います。


「ルシュ殿。空腹なのはわかりますが静かにしてくださいね」


「いやっ……違っ……! うぅ……私がフェンリルとしての経験が薄いばかりに……」


「ウォフッ!」


 お、リルがスープのレシピを見つけたな。

 その情報があなた達に共有された。


「ありがとうございます、リル殿。私も負けないよう頑張らなければ」


「素晴らしいです……! リル殿……! 私のような新米フェンリルとは格が違う……!」


 フェンリルに新米とかあるのか?




 えー扉についている小窓から中を見ると、中にはとてもおぞましい姿をした魔物が居る。

 それを見た者はそのあまりの恐ろしさに恐怖するだろう。ダイスを振って判定。


「はい。……カラカラッ……ノーダメージです」


 ハイラはさっきから全く動揺しないな。

 凄まじい平常心だ。


「恐縮です」


「ふむ、なるほど、おぞましい魔物ですか……ですがフェンリル様ならばどんな魔物だろうと恐るるに足りません! 突入します!」


 え? 突入? ……あーじゃあ戦闘開始だ。


「華麗に倒してみせましょう!」




 えー……ルシュ、気絶。


「そっ……そんなっ……フェンリル様がっ……くぅっ、私が未熟なばっかりに……!」


「気絶したルシュ殿は吹き飛ばされて扉近くに来てますよね? こちら側に引き込んで扉を閉めることは出来ますか?」


 まあ、ルシュはフェンリルだが三人がかりなら出来るだろう。


「ではそのように」


「「うぉふぅ……」」ふるふる……。


 シロとリルがやれやれと呆れている。

 自然界の獣が勝てないかもしれない相手に喧嘩売るわけないだろうって言ってるな。


「うぅ……未熟で申し訳ありません……」




 それじゃあ無事スープは完成した。

 毒が入っていることは確信できる。

 ウンディーネのリルの身体がどす黒く変色しているからだ。


「まさか己の身体をもって毒性の証明をするとは……」


「耐久の判定に成功して死なずに耐えている……リル殿、流石です」


 まあ早く何とかしないと命を落とすけどな。


「では早速」


「はい」


「「スープを飲みます」」


「「ウォンッ!」」




 あなた達の頭に厳かな声が響き……おめでとう! あなたたちの意識は現実の街に帰ってきた!

 シナリオクリアだ!


「やりましたっ……! クリアですっ……!」


「ええ、ルシュ殿。お互い頑張りましたね」


「ウォンウォンッ」


「ウォフッ」


 TRPGを始めて数時間後。

 ハイラたちは全員生存してクリアの時を迎えた。

 ルシュだけ瀕死だけど。


 シナリオが終わり、ルシュたちはお互いに健闘をたたえ合っている。

 楽しんでくれたようだな。


「はい! とても楽しかったです!」


 真っ先にそう言ってくるのはルシュ。

 架空と言えどフェンリルとして動くのが相当に楽しかったらしい。


「ルシュ殿のおっしゃる通り、とても楽しかったです。皆一度でも遊べばこの楽しさに気付くと思います」


 次にそう言ってくれたのはハイラ。

 頬が赤みを帯びている。

 ゲーム中も表情には出ていなかったが相当楽しんでくれたようだ。


「ウォンッ」


「グルルンッ」


 シロとリルもご満悦だ。


 そこまで喜んでくれるならこっちも作った甲斐がある。

 このまま他にもいろいろなTRPGを作ってみるのもいいかもしれない。


 感想を語り合っているハイラたちを見ながら俺はそう思った。


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