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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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82/121

82.冬の様子見と夜の訪れ

 冬の備えや備蓄を終わらせ、一週間ほど。

 今年もレースピアの街に雪が降り、積もり始めた。


「ふぅっ、さみぃさみぃ! 流石に雪降ってるとさみぃな! ……おっ、代表さんちょうどいいところに!」


 屋敷の玄関ホール。

 ちょうど外から帰ってきたフリストルが俺に声を掛けてくる。


「今連絡員として街を回ってきたが、俺が回ったとこには何も問題なかったぜ。皆平和なもんだったよ」


 そしてそのままそう報告してくれる。


 ふう、良かった。

 あれだけ準備したんだからそうそう問題は起きないだろうと思ってはいるが、想定外が起こる時もあるしな。


 報告ありがとう。

 ゆっくり休んでくれ。


 俺はフリストルにそう声を掛けそのまま横を通り過ぎようとし――。


「ああ……って、ん? 代表さん、どこ行くんだ?」


 フリストルに呼び止められる。


 ん? ああ、雪が積もり始めているとはいえ、まだマシだからな。

 今の内にちょっとあそこの様子を見てこようかと。


 別に隠すことでもないので素直にそう伝える。

 すると……。


「おいおい水くせーじゃねぇか代表さん! そりゃあんたの足の速さも分かっちゃいるが……せっかくなら俺らを頼ってくれよ!」


 そう言って、カカっと足音を立てて詰め寄って来るフリストル。


 え? でも今街を回って帰ってきたばかりで疲れてるだろ? 無理はしなくても――。


「無理ぃ? この程度無理でも何でもねーよ! それにたとえ疲れ果てていようと……代表さんはどこにだろうと送り届けてみせるぜ!」


 いや――


「よし、行くぜ!」


 俺は押し切られた。




「うしっ! 着いたぜ代表さん!」


 そう、俺を背に乗せたフリストルが宣言する。

 ここはレースピア外周部にある見張り塔。

 雪が積もり始めてはいたが、まだまだ浅かったので問題なく馬車を走らせることが出来た。

 だけどこれ以上積もると流石に厳しいだろうな……その時は……


「それで代表さん、何でここに来たんだ?」


 俺がこれ以上の雪が積もった場合のことを考えていると、馬車の固定具を外しながらフリストルがそう聞いてくる。


 ああ、様子を見に来たんだよ。


「様子? 様子も何も冬の間は皆閉じこもるんだから誰もいないんじゃ……?」


 そんな疑問を口にするフリストルと共に見張り塔の中へ。

 すると。


「あれ? 代表様ー? どうしたの?」


 そこにいたのはエンジェルのシエルと……何人かのハイエルフたち。


「ん? 何でいるんだ?」


 フリストルが首を大きく傾げる。


 ああ、ハイエルフたちの中に希望者が出たんだ。

 冬の間も泊まり込みの交代制で見張りを維持したいって。


 そう。

 俺は冬の間、見張り塔は休止させようと思っていたのだが、ハイエルフたちが問題ありません、やらせてくださいとハイラを通じて希望を出して来た。

 見張り塔には十分に生活できる設備があるから大丈夫だと。


 あれは念のためのものであって、別にそんなことをする必要はない、と言ったんだが、ハイエルフたちの決意は硬かった。

 なので、もし問題が起きたら即全員撤退するように言い含め許可を出したのだ。


 フリストルが知らなかったのは見張り塔の連絡担当は空を飛べるエンジェルとデモンズに頼んだからだな。

 もし入口が雪で埋まっても、見張り塔は上から入ることも出来る造りだ。

 だからその二種族に連絡員を頼んだ。

 シエルが居るのはそう言うわけだな。


「はぁーなるほどなあ……! 気合入ってるじゃねぇか……! 負けてられねえ!」


 俺から説明を聞いてなぜか闘争心を燃やすフリストル。

 ハイエルフたちの決意に感銘を受けた……のか?


 まあいい、とにかく……問題は無いか? シエル。


「うん、帰ってから報告しようと思ってたけど問題ないよー。街に近づくものは無いし、見張り塔での生活にも特に問題は無い。食糧なんてひと冬の間じゃ到底食べきれない量運び込んであるからねー。毎日パーティしても持つよ」


 いや、だが万が一があるといけないから……。


「だからって過剰だと思うけど……ま、いっか。別に食糧が足りてないって訳でもないしねー」


 そう言って詳しく見張り塔での生活の様子などを報告してくれるシエル。

 俺が心配していたことを気遣ってくれたのか、俺を安心させるように語ってくれる。


 ふぅ……ありがとう。


 一通り報告を聞き終えシエルに礼を言う。


「いいよーこれがお仕事だしねー。代表様はこの後……」


 ああ、他の見張り塔も回ってくる。


「いやーさすがだねー代表様ー」


 しっかり把握しておきたいからな。


「さっすがー、それじゃあ頑張ってー」


 ああ、そっちもリネイアに怒られない程度にはまじめにな。


「分かってるー」




「おっ、代表さん、終わったのか?」


 俺が報告を聞き終えるとフリストルがそう声を掛けてくる。


 ああ、終わった。

 それでこの後他の見張り塔も回りたいんだが大丈夫か?


「ああ! もちろんだぜ! ここの奴らの気合入ってる姿見せられたしな! こっちも気合い入れねぇと! 最速で送り届けてやるぜ!」


 いや、そんなに速度はいらないんだが……。


 と、俺がそう言っても気合いが燃えているフリストルには聞こえていないようだ。

 ま、まあ? 流石にフリストルも雪道でそんなにスピードを出す真似はしないだろう。

 そう思いながら俺は馬車に乗り込む。




 死ぬかと思った。


 夕刻、全ての見張り塔を回り屋敷に帰ってきた俺の素直な感想だ。

 あの後。

 フリストルは当然のようにスピードを出す真似をした。

 馬車の車輪が滑ってドリフトし始めた時はどうしようかと思ったな。

 だけどフリストルの運転……運転? 技術はとても巧みで、そんな挙動をしていたのに馬車内にはほとんど衝撃が来なかった。

 一体どう走ればそうなるんだ?


「いやあ、走った走った! ここまで気合い入れて走ったのは久しぶりかもな……! それじゃあ代表さん、またな! 何か出かける用事があったらいつでも呼んでくれ! すぐに駆け付けるからよ!」


 俺と一緒に屋敷に帰ってきたフリストルは最後にそう言って自分の部屋に戻っていった。


 ……ああ、そうそう。

 フリストルだけじゃなく、冬の間はそれぞれの種族の代表たちは俺の屋敷に滞在するそうだ。

 その方がいざという時に対応しやすい~とかなんとか。

 全員がかりで説得された。


 俺は種族によっては部屋や扉が窮屈だろうと一応反論したんだが……。

 すでに改装済みです、とルシュに言われた。

 いやあ、二の句も継げないとはあのことだったな。


 そんなわけで代表たちが全員集合しているわけだが、この屋敷は広い。

 ゆえに全然手狭には感じない。

 むしろちょっとにぎやかになって楽しいくらいだ。


 さて、それじゃあフリストルも戻っていったし俺も部屋に戻るか。


 そうして、何でもない冬の日が過ぎていった……。




 と、過ぎてくれると良かったんだがそうはならなかった。


 その日の夜。

 俺の部屋からムイが居なくなっていた。


 ああ……もしかしてルシュかハイラが来るのか、とそう思っていた俺の部屋に来たのはその二人ではなかった。


「お昼ぶり―代表様ー」


「シエル。……こんばんわ、代表様。良い夜ですね」


 俺の部屋を訪れたのはリネイアとシエル。

 俺があっけに取られていると、二人ともするりと部屋の中に入ってきた。


 えっ……えぇっと……リネイア? シエル? 二人で一体これは……?


「見たら分かるでしょー? お情け貰いに来たの」


「シエルとどちらが先かでもめまして。二人同時に来ることになりました」


 いや二人で来た理由を聞いたんじゃなくて。

 お情けを貰いに来たってそういうことか?


「そうそう、もういいでしょー? 恥をかかせるものじゃないってこんな時は」


 いやっ……それはそうだけどっ……! 流石にっ……!


「代表様。……どうしても、ダメでしょうか……?」


 そう、潤んだ瞳を近付け至近距離でこちらの目を見つめてくるリネイア。

 その姿を見せられると……嫌とは言えず……。




 俺は流された。

 ……一年ぶりだなあ、この感覚も。


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