77.発表会の最後
メンテしてたので遅れてしまいました
すっごく居心地が悪い。
クトネーがステージから降り、一人となったステージ上。
皆の視線がすべて俺に突き刺さっている。
いやまあ……祭の開始宣言とかそういうので、少しは人の前に立つっていうことにも慣れたけど……大勢の前で発表を行うっていうのはまた話が違うっていうか……。
そんな弱音を心の中で吐くも、状況は変わらない。
皆は期待した目でこちらを見ている。
……仕方ない。腹をくくろう……。
こういうのは時間をかけても苦しくなるだけだ。
大スベリするとしてもさっさとやった方が傷は小さい。
俺はそう考え、早速発表を行うことにする。
クトネーがステージから降りると同時、ステージの上に持ってきてもらった細い箱。
その中からモノを取り出し……一気に広げる!
『今、代表殿の作品が取り出され……大きく広げられました! 代表様の作品は……旗です!』
そう。
俺が作ったのは旗だ。
白い布に赤で刺繍を施した大きな旗。
刺繍のモチーフは……
『これは……旗に描かれているのはレースピアの街に住んでいる種族たちでしょうか!? コボルト、エルフ、ドワーフ……、全て描かれています! ということは……!』
その通り。
この旗は、少し前に作った門から着想を得て作ったレースピアの街の旗だ。
『なんと――ファンタスティック!!!』
――――わああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!!!
フォイルの解説……いや実況? と同時。
ステージ下からも歓声が爆発する。
とんでもない音圧に一歩後ろに下がりかけた。
『本当に……なんとファンタスティック! レースピアの……街旗! アイデアもさることながらデザインがファンタスティック! とても鮮やかです! 代表様は裁縫も達者でいられるとは! 本当に――ファンタス美しい!』
ファンタス美しい?
フォイル解説の興奮が止まらない。
止まらないのはフォイルだけではないようで、観客の皆もまだ叫んでいる。
そこまで興奮されると……逆に冷静になって来るな。
いや凄く嬉しくて、胸をなでおろしているんだが。
『本当に――本当にファンタスティック! ……おおっと、私としたことが……少し興奮しすぎてしまいました』
ほんとに少しか?
『それでは代表様、まず一つお聞きしたいのですが……』
なんだ?
『この旗、とても素晴らしいデザインですが……明らかに空きがあります。これはやはり……』
ああ、想像通りだ。
レースピアの街にはこれからも色んな種族が増えていく。
そのためのスペースだ。
『やはり! レースピアの街に種族が増える度、旗の刺繍も増えていく! 街とともに発展していく旗だということですね!?』
その通りだ。
『ああ――ファンタスティック!』
――わぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!
フォイルが感極まったかのように叫ぶと同時、再びの歓声。
さっきよりは圧は少なかったがそれでも大きい。
ちょっとびっくりした。
『代表様! これから増える種族は代表様手ずからこの旗に刻むということでしょうか!?』
……? まあ、そうなるだろうけど。
『なんと――羨ましい!』
羨ましい? 何で?
『これから代表様自らの手で、種族のモチーフを旗に刻んでいただける……とてつもない光栄でしょう!』
いや、そんな大げさな……。
それに皆の分もこうしてもう刺繍してあるし。
『それはそれとして……この美しい旗に代表殿の手で、これから刻んでいただけるということが羨ましいのです! 皆様もそうでしょう!』
――わぁぁぁーーーーっ!!
――そうでーーーすっ!
――私のことも刻んでくださーいっ!
――代表様こっち見てーーっ!
……うん。
フォイルも観客の皆もなんかテンションおかしくなってるな。
とりあえず鷹揚に手を振っておく。
――わあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!
……手を振っただけで歓声が起こった。
『ふふ……本当に本当にファンタスティック! これももう決まり切っているようなものですが! 発表会の手順には則ります! さあ皆さん……代表様への作品の評価をお願いします!』
フォイルがそう観客を煽ると。
――ぱちぱちぱちぱちばちばちばちばちばちばちばちっっっ!!!!!
万雷という言葉でも足りないくらいの拍手が俺に降りかかった。
……いや音凄いな!?
皆、手は大丈夫か……?
『分かり切っていましたが……まさに満場一致! 発表会随一の拍手をもって決まりました! 今回の発表会の最優秀作品は……代表、キズキ様のレースピア街旗です!』
――わああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっっ!!!!
再びの大歓声。
しばらく待っても声が止まないほどだ。
いや……正直こっちもテンションが上がっている。
頑張って作った作品でこうも皆が喜んでくれて……何というか報われたみたいな気分になるな。
そして。
『代表殿の街旗は実にファンタスティックでした! しかしそれ以外にも実にファンタスティックな作品は数多くありました!』
フォイルが発表会の総括に入る。
確かにな。
発表された作品はどれも素晴らしい作品だった。
『例えば、代表様の銅像や代表様のミスリル像!』
真っ先に出るのそれなの?
……いや、まあインパクトはあったし素晴らしい作品であったことに異論はないが……。
うん。
『他にも、模型、剣、絵画、オブジェ、服や鎧! さらにはゴーレムまで! どれもファンタスティックな発想! ファンタスティックな逸品でした!』
ああ、どれも素晴らしい作品だったな。
皆、本気で臨んでくれたのがよく分かった。
『皆さんはどの作品が一番心に残ったでしょう? ふふ、とても心に深く残る作品と出会えたのであれば、発表会の企画者としてこのフォイル望外の喜びです!』
深く心に残った作品か……。
俺が一番心に残ったのは……、いやインパクトって意味なら俺の像だけど。
一番最初に発表されたレースピアの街の模型かな。
やっぱり皆で作った街が目に見える形になっているっていうのはとてもいい。
どうしても街全部を肉眼に収めるのは出来ないからな。
……いや、翼が生えている種族に頼めば……?
ま、まあそれはおいておいてとにかく。
あれも俺の旗と同じで、これから街が発展する度にどんどん拡張していくことが出来るからな。
もしかしたらめちゃくちゃデカくなって……専用の建物が必要になるほどになるかもしれない。
模型がそこまで大きくなるほどに街を発展させられたら……。
夢が広がるな。
『ふふ……それでは! 第一回レースピア発表会! これにて終幕とさせていただきます! 皆様――本当に、ありがとうございました!』
――わああぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!
そんなフォイルの最後の挨拶と共に再び観客からは歓声が上がり。
第一回レースピア発表会は大盛況のまま幕を閉じた。
……ん? 第一回?
しれっとまた開催する宣言したか? フォイル。
……まあいいか、皆の良い楽しみになるだろうしな。
そして。
言っていた通り、発表会で多くの拍手をもらった作品は美術館に飾られることになる。
フォイルとしては発表された作品すべてを飾りたかったようだが、さすがにスペースが足りなかった。
発表会の作品だけじゃなく、フォイルが持ち込んだ芸術品もあるからな。
「代表様! 街にもっと多くの美術館を立てましょう!」
そう、フォイルが俺に直談判してきたが……他にも建てたいものとかあるし、今回は見送らせてもらった。
何とか限られたスペースを上手く使ってもらうことにする。
そうして、発表会が終わって少しした頃。
「代表様! 美術館の展示配置が完了しました。ぜひ一番に代表様にご覧いただきたく」
そう、フォイルから誘いを受けた。




