73.外壁の完成と視察
「頭ーっ! 出来たっす! 外壁作り終わったすよーっ!」
再びいろいろと建築を進めていたある日。
ラウームが俺のもとに叫びながら走り寄ってきた。
そしてズザザザァッ! と音を立てながら俺の前で停止。
目をらんらんと輝かせ俺の返答を待っている。
……出来たんだな! ありがとうラウーム!
その勢いにやや気圧されながらも礼を言う。
ちょっと面食らったがとてもありがたいのは本当だ。
これで万一の時のための備えが出来た。
ラウームをほめそやす。
「うへへ~~、褒めすぎっすよぉ~~」
褒める度にラウームの頬が緩んでいく。
褒め続けたらどこまで行くのか見てみたい気もするが……、まあやめておく。
他のハイノーム達にも俺が礼を言っていたと伝えて欲しい。
「それはもちろんっす! ふふっ、皆も喜ぶっすよ!」
と、ガッツポーズをとるラウームと共に出来上がったばかりの外壁を見に行く。
ラウームたちを信用しているがそれはそれとして確認しておきたい。
街の中を適当な方角に歩き、外壁に到着。
外壁は、最初に門周辺で試作してもらったものと同じ、武骨な壁。
軽く叩いてみるがやはり試作と同じくかなり硬い。
「へっへー、心配いらないっすよ! 作った外壁全部この硬さにしてるっす!」
ラウームが胸を張ってそう断言する。
流石は進化した精霊だな。
一応話しながらも外壁を叩いて確認しているが、本当に均一に硬い。
そうやって会話と確認をしながら外壁づたいに歩いていると……。
「……おぉ! 奇遇だな代表殿!」
「ん? ああ、代表さん。こんにちは」
イグニータとユウフに出会った。
ああ、二人とも。
こんなところで何してるんだ?
「ハイノーム達が気合を入れて作っていただろう? どんなものか近くで見てみたくなってな!」
「一応作り終わってるのは確認してから来たよ。途中だと迷惑かもしれないしね」
なるほど、興味本位で見に来たって訳か。
「そうそう。いやにしても本当に見事だよ。地魔石を使っていたとはいえ、この硬さの壁をこの規模で……」
「ああ! 見事と言わざるを得ない!」
「ふふぅ~ん! ありがとうっす! まあでも、驚いてもらえるのは嬉しいっすけど……これが最高傑作って訳でもないっすよ」
え? そうなのか?
「はいっす。いやー作る前はこれだけのモノなら全力でやってぎりぎりだろうなあ……って思ってたんっすけど。実際作り続けてると、だんだんもっと行けるって感覚がわいてきたんすよ」
「ふむ?」
「で、壁の最後の方。試しに地魔石無しで作ってみたんっすけど……問題なく作れたんす。ちょうど頭が最初らへんに叩いてたとこっすよ」
……え? あそこ地魔石無しで作った場所だったのか?
今叩いてるこことなんら変わらない強度だったが……。
「っすよね。自分らも驚いたっす」
「ふむ……なるほどね」
興味深そうにユウフがラウームをじろじろと眺めている。
「それが進化した精霊の力って訳か……進化した精霊なんて、存在したのはそれこそお伽噺の時代だ。今の僕たちがその全容を知っているわけもない。……ふふ、俄然楽しみになってきたよ。僕たちにもいずれ来るだろう、進化が」
「ふぅむ……細かいことは知らんが! 進化が楽しみだというのには同意だ! 俺もさらに燃え猛ることが出来るようになるだろう!」
「……前言ちょっと撤回。これが更に暑苦しくなるとか正直考えたくもない」
「ははは! そうつれないことを言うものではないだろう!」
そんなことを言いつつ、ユウフの背中をバンバン叩くイグニータ。
ユウフは嫌そうな顔をしているが、本気で嫌がってはいない……のか?
まあそっちはいい、ともかく……。
それじゃあ、もしこの街をもっと大きくして、もっと大きくて高い壁を作って欲しいって言ったら出来るのか?
俺はそうラウームに聞く。
「もちろん……っ! いや断言はできないっすけど! たぶん出来るっすよ! 作ってる時の感触なら高さ百倍とか言われない限りは!」
この壁の高さ百倍とかもう雲に届くレベルだな。
そこまでは言わない。流石に。
フィーネたちハイウンディーネたちも凄かったが、ラウームたちも凄い。
ユウフも言っていたが進化した精霊種というのはすさまじいんだな。
これから街を広げる時にもその力で頑張ってもらいたい。
……ああ、そうだ、精霊と言えば。
イグニータとユウフ、少し前にイフリータとシルフも増えただろう?
どんな感じだ? 街に馴染めているか?
そう、前に戸籍を作ったあたりで、また精霊たちがわいて増えていた。
ちなみにあれほどの規模じゃないものの、関所を作り住人を受け入れ始めたあたりからまた少しずつ増えてき始めたらしい。
「問題はないぞ! 言われた通り、こちらでしっかりまとめているからな! 代表殿が心配することはない!!!」
「うるっさ……近くで大声出すの止めてよ……まあともかく。筋肉ダルマの言った通りだよ。しっかりこっちで管理……っていうのは言い方悪いけど。まとめてるから問題はない。……何なら見に来るかい?」
見に来るって?
「ああ、僕たちも増えて施設も動かし始めただろ? それだよ」
「それはいい! しっかり街に貢献し馴染もうとしているのだ、というところを見てもらおう!」
「だからうるさいってば……!」
はは……まあ、こっちとしてはありがたいが、いいのか?
「構わないよ。というかむしろこっちが頼む側だからね? 視察して欲しいのでお時間いただけないでしょうか? って」
「はははは! これが代表殿の美徳であろう!」
まあ、そっちが構わないなら行かせてもらうか。
正直様子は見たかったしな。
というわけで。
ラウームを最後に思い切り褒め称えた後。
やってきたのは前にイフリータとシルフの為に立てた施設……焼却場と風車。
あらかじめ作っておいたが、作っておいた時点ではイグニータとユウフの二人しかいなかったため、しばらくほこりをかぶっていた施設。
今そこは……増えた精霊たちによってしっかり稼働していた。
おぉ……焼却場の煙突から煙が上がって、風車がしっかり回転している……。
実際動いているところ見るとちょっと感動するな。
……作った時にも確認したけど、あの煙大丈夫なんだよな?
「問題ないよ。僕含むシルフが毎日確認してるしそれに……」
「火を司る我らなら何かあったら気付けるからな!」
うん。
二人がここまで言うなら大丈夫だろう。
それじゃあ早速焼却場の方から見せてもらう。
とはいっても中はシンプルなものだ。
焼却するものを置いておくスペースに、大きな密閉性の高い窯。
そこは現在も使用中で……入り口から入ったばかりの俺のところにまで熱気が届く。
ここまでの熱量出せるのか……鍛冶手伝いの時も見ていたがやはり凄いな火の精霊は。
「なんのなんの! これしきは当然のことだ!」
そう言って胸を張るイグニータ。
焼却場の様子を見ながら俺は聞きたいことを聞く。
何か問題点とか……言っておきたいこととかはないか?
これは聞いておきたい。
やはり住人には快適に過ごして欲しいしな。
「ふぅむ……特にはないが……強いて言うなら……」
言うなら?
「たまに火魔石を使わせて欲しい! たまには派手に行きたいのだ!」
そんなことを言ってくるイグニータ。
う、うぅ~ん……これ以上派手にか……。
俺はかなりの熱気を感じながら思案する。
まあ、もしもの時の為にここの周囲は開けてあるし、万が一のことがあっても火の精霊は火でダメージを受けないが……どうするか。
「頼む! 代表殿! たまにで構わぬ!」
うぅん……そこまで言うなら……。
「本当か!?」
……ただし、しっかり報告することと、念のためハイウンディーネを待機させた状態で行うこと。
「ああ! もちろんそうさせてもらう! 感謝するぞ代表殿!」
そう言って燃えるような笑顔を向けてくるイフリータ。
……まあ、万一があっても進化したハイウンディーネなら何とかしてくれるだろう。
俺はそう信じる。
そして次。
焼却場を後にしてやってきたのは風車。
シルフの管轄だ。
遠くからも回っている姿は見えていたが実際来てみるとさらに見事に見えるな。
風車の横で他のシルフたちがおそらくは風魔法を使っているのも見える。
「……見えた? みんなしっかりやってるでしょ?」
ああ、そうだな。
ありがたい。
そう返答しながら風車小屋の中へ。
中に備え付けてある風車の動きと連動する粉挽機も問題なく回っている。
しっかり小麦が挽かれているな。
こっちも順調みたいだな。
それじゃイフリータの方にも聞いたが……何か言っておきたいことは?
「問題とかは特にないよ。問題なく回ってるしね……二つの意味で。……まあ、筋肉ダルマの後追いするのは嫌だけどこっちも風魔石かな。アレ使って風車を思いきり回したいって精霊がそこそこいるんだよね」
なるほど……精霊はやっぱり自分の力を思いっきり使ってみたいって思う者が多いのか?
いや、まあ、俺も気持ちはわかるけど。
創造神器使い倒させてもらってるしな。
まあ、火と比べればあまり影響はない……か?
まあでもやる時はしっかり連絡して欲しい。
強風対策とかするから。
「分かってるよ。そんな周りに強風をぶちまけるようなミス僕たちはしないけどね」
俺もそう願ってるよ。
そんな感じで、イフリータ、シルフたちの様子を視察させてもらったが……。
うん。
全く問題なかったな。
皆しっかりとまじめにやっていたし、街に敵対的とかそんな様子はなかった。
この様子なら大丈夫だろう。
というわけで……イグニータ、ユウフ、これからもこの調子でよろしく。
「ああ! 任せておくがいい代表殿!」
「ま、こっちもしっかりやることはやるよ。代表さんが心配するようなことは絶対起こさせないって約束する」
頼もしいな。
よろしく頼む。




