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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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72.病院の内見とエルフの畑

 幻覚じゃなかった。


 今、俺の目の前にはナース服をまとったハイエルフたちが勢ぞろいしている。

 そして……代表のハイラ。

 ハイラだけはナース服じゃない。

 タイトな服に白衣……言ってしまえば女医風の服になっている。


 俺は困惑しつつも、とりあえず理由を聞いてみる。


 えぇと、ハイラ……皆のその姿は?


「はい。代表様はこの施設……病院を我らにお任せするつもりだとお聞きしました」


 まあそうだな。


「そして病院なる施設は何よりも清潔であることが大事だと」


 その通りだ。


「その結果こうなりました」


 いやなんで?


 その後、新しい服を着て少しテンションが上がっているハイラに詳しく話を聞いてみると。


 まず、先に言った通り病院には清潔が必要だと聞き及んだハイラは、それならば森に分け入ることもある今の衣装では不適だと判断。

 清潔な服をアラクネに用立ててもらいに行ったらしい。


 そこでアラクネは今ハイラとエルフたちが着ている白衣とナース服を提供。


 うん……なぜそんな服が?


 その俺の疑問に対する答えは、代表様から聞いた、だった。

 俺が?


 どうやら……仕立て屋でアラクネたちに前世の服のことを教えた際、ナース服や白衣のこともちょろっと言っていたらしい。

 あの時は思いついたことを片っ端から言っていたから、自分でもどんな服を伝えたのか正直全部覚えきれていなかった。


 ……この調子なら他にもいろいろ伝えてそうだな。


 まあ今は良い。

 ともかくそういうわけで、インスピレーションにあふれていたアラクネたちは、白衣とナース服を縫製しており。

 ちょうどいいから、という理由で渡されたらしい。


 うん。

 完全に我が身から出た錆だったな。


「それで……代表様。どうでしょうか……?」


 何かを期待するような目でハイラがこっちを見てくる。

 ……あんまりどころか全然こういうのは得意じゃない俺でも何となくわかる。

 ここは……。


 ああ、とても似合ってる、ハイラもハイエルフの皆も。


「……ありがとうございます!」


 いつもクールなハイラの顔が目に見えて喜色に歪む。

 ハイエルフたちもとても嬉しそうに耳をぴくぴく動かしている。

 ふぅ……よかった。

 何とか正解を引けたみたいだ。




 さて、いつまでも外でわいわいしてはいられない。

 早速病院の中へ。


 言った通り、三階建ての一階は待合室や診察室等。

 待合室には多くの椅子、気分が悪くなったものを運ぶための担架なんかを備えている。

 そこから続く扉で隔てられた診察室。

 ベッドが置いてあり、ハイラたちにはここで診察をしてもらう。


 俺がそう言うと、ハイラたちは真剣な表情で部屋の中を見分しだす。

 このベッドはもう少しこっちに寄せた方がいい、清潔さを維持するならここの掃除もしっかりした方がいいと思う、と、いろいろ話し合いながら見て回っている。


 そうやって診察室を確認してもらって次へ。


 次は中庭。

 病院はロの字型の建物なので中心には中庭があり、薬草畑や木も植えている。

 セラピー効果も期待してのものだ。


 空いているスペースは個人的に好きなものを埋めて良い、と言ったら軽く歓声が上がった。


 そして最後に二、三階の入院部屋。

 ここは特段何も言うことがないな。

 それぞれ一室にベッドと棚が四つ備え付けられているだけのシンプルな部屋。

 ……まあ、あまり使わないことを願っているし、その場合掃除が手間、くらいか。


「問題ありません。例え使われぬままだとしても、清掃はしっかり行き渡らせます」


 ハイラが胸を張ってそう豪語してくれる。

 頼もしい。




 さて、病院内の案内も終わった。

 やっていけそうか?


「はい、問題ありません、代表殿。代表殿の期待には応えてみせます」


 ありがとう。

 ……まあ正直、使われない方が良いな、とは思っているんだが。


「確かにそれが理想でしょうが、人が増える以上そうはならないでしょう」


 まあそうだよな……。


「ですが、先に言った通りご安心ください。我らが代表殿のその心配を払拭してみせますので」


 こちらを真っ直ぐ見つめそう断言してくるハイラ。

 本当に表情を変えずに断言してくるから心強い。


 俺は安心して病院のこともエルフに頼んだ。




 そして、その後。

 俺はハイラを引き連れ、畑に向かっていた。


 病院のことをエルフに頼んだのち、俺はラウームの様子を見に行ったんだが……レースピアの街の外壁はまだ半分ほどしかできてなかった。

 まあ、魔法で作ってるとはいえこの街もう結構広くしてるからな。


 そういうわけで少し時間が空いたので、しばらくハイラたち任せにしてしまっていた薬草なんかを植えている畑の様子を見に行くことにした。

 一応報告は受けているが、自分でも見ておきたいと思ったからだ。


 そういうわけでハイラを伴い畑に着いたんだが……。

 何だろう……種類多くないか?


 前にこの畑見た時には量はともかく種類は四種類くらいだったはずだが……。


「ええ、進化した者が増え、周囲をより効率よく調査できるようになったことで発見したモノと、調査団が持ち帰ってきてくれたモノを植えているのです」


 ……ああ、報告があったな。

 作物ではないのでハイエルフたちが栽培するって。

 住人受け入れの方に頭を割いてたから抜けてた。

 なるほど、それらも栽培した結果がこの光景か。


「はい。……せっかく見に来てくださったのですからいくつかご紹介しましょう。あちらをご覧ください」


 そう言いハイラが俺から見て左側の畑を指し示す。

 俺は素直にそちらに目を向ける。


 そこにあったのは……デカい蕾?

 恐らく直径一メートルくらいある、緑色の真ん丸な球体の形をした蕾だ。

 周りを仰々しい柵で囲ってある。


 うん、何だアレ?


「あれはマンイーターです」


 マン、イーター? 凄くヤな予感がする名前だが……それはもしかして人を……


「はい、食べます」


 今すぐ根絶しよう。


「お待ちください」


 創造神器を出して、マンイーターを狩り取ろうとした俺をハイラが止める。


「確かに危険な植物ではありますが、取り扱いを間違えなければ危険はありません。それにマンイーターの花は希少な薬の材料になりますので」


 そう言ってハイラはマンイーターに近づいて素手でその蕾を上下に開ける。

 内部は棘が生えており、まるで肉食獣の口の中のような印象を受ける。

 創造神器を構え、いざとなったら助けられるようにしていた。

 だが、俺の心配もよそにハイラはマンイーターの中から小さい花を摘み取り戻ってきた。


 ……ていうか蕾の中に花が咲くんだ……。


「このように扱い方を間違えなければ危険はありません」


 そ、そうか、確かにそうみたいだな……。

 だけど重々気を付けてくれよ?


「分かっております」


 まあ、ハイラたちなら扱いを間違えるなんてこともないだろうし大丈夫……だろう。


「そして次はあちらをご覧ください」


 ふむ、俺は再びハイラの指し示す方向を見る。

 そこにあったのは、デカい蕾。

 直径一メートルほどで、形は真ん丸。


 うん。既視感。

 色だけは違ってこっちは黄色だが……これはマンイーターでは?


「いいえ、これはエルフイーターです」


 エルフイーター。


「はい」


 それは……その……エルフを……?


「はい。食べます」


 根絶しよう。


「お待ちください」


 再び創造神器を構えた俺を止めるハイラ。

 いや、でも流石にこれは……。


「ご安心ください。こちらも取り扱いを間違えなければ危険はございません。それに……あちらをご覧ください」


 あちら?

 ハイラの指す方向を見ると……。


 赤、茶、青、黒……様々な色の球体の蕾がそこにはあった。


 えぇと……あれはまさか……。


「はい、すべてイーター種です」


 やはりすべて根絶しよう。


「お待ちください。ご心配はいりません。すべて適切に管理できております」


 いや、まあ……確かに植物に食べられたって話は聞かないが……。

 うん、ハイラがそう言うなら信じるか……。

 にしても、イーター種? こういう植物ってそんなに種類が居るのか?


「ありがとうございます。……はい、イーター種はこの世界に存在する種族と同じ数だけ種が存在するとされておりますね。この世のあらゆる種族を食べるために進化した……という話が伝わっております」


 それが本当ならとんでもなく食い意地が張っている植物だな……。

 にしても新しく増えた植物ってイーター種だけなのか?

 結構な偏りだな……。


「ふふ……いいえ、他にも色々増えております。イーター種だけを紹介したのは……代表様に楽しんでいただこうと思いまして」


 そう言って……珍しく口角を上げ明確な笑顔を見せるハイラ。

 その顔を見てネガティブなことを言えるはずもなく。


 ああ、正直少し楽しかったよ。

 他もいろいろ紹介してくれるか?


「はい。もちろん喜んで」


 そうやって、俺は笑顔を浮かべたハイラと共に、エルフの畑巡りを楽しんだ。

 たまにはこういうのもいいものだな。


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― 新着の感想 ―
読みやすくて面白かったです。 料理のシーンがいいですね! ★★★★★
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