70.駅舎と浴場
現在、レースピアの街の住人はどんどん増えている。
噂を聞いてやって来たというものが後を絶たないからだ。
もちろんとてもありがたい。
人口はどんどん増やしていきたいからな、街の発展のためにも。
そして人口が増えるということは、今までは住居や生活必需施設ばかりで作るのを後回しにしていたあれやこれやを作れるようになるということだ。
というわけで早速……。
「お待たせいたしました、主様」
レースピアの街で建築と言えばもちろんハイコボルト。
ルシュたちに来てもらった。
ありがとう。皆、頼む。
それで……
「問題ございません。全員は集めておりません。新たにやって来る住人たちの住居等を作る者たちは除外しております。主様がご懸念されることはございません」
流石はルシュだ。
その辺りしっかり気が利く。
それじゃあ早速始めていこうか。
まず作るのは駅舎。
いやまあ駅舎と言っていいのかはわからないが、とにかく馬車が停車する場所だ。
タクシー馬車の方はまあ、個人用として好き放題に走ってもらうにしても。
バス馬車のような大型馬車は特定の場所で乗降できるようにしたい。
というわけで作る。
作る場所は多くの者が利用しやすい場所、それぞれの区画の中心辺りや、仕立て屋や工房などの傍。
なのでまずはコボルト区画の中心辺りに作ろうと思ったのだが……。
「いえ、まずは主様の屋敷前に作るべきです」
……え? 俺の屋敷?
いやそりゃあ玄関ホールで集まりとか開くこともあるだろうけど、使用頻度的に別に必要は……
「いえ、主様が乗られるために必要です」
いや、別に乗る時はタクシー馬車、もしくはあの専用馬車に……
「必要です」
……押し切られた。
毎度のごとくルシュたち……というか街の皆はたまに圧が強いな。
……まあいい。
かなり大型のバス馬車、屋敷を出てすぐにそれに乗れるのは正直嬉しい。
前世でもたまに妄想していたことだ。
自宅の玄関の扉を開けたら自分専用の電車にすぐ乗れる……。
かなりワクワクする。
さて、じゃあ実際に妄想を現実にさせてもらうか。
ルシュたちの厚意に預からせてもらう。
駅舎と言ってもそんな大層なモノじゃない。
今は。
バス停に毛が生えたような感じだ。
いずれは駅ターミナルみたいな立派なものが作れるといいな、とは思っている。
そんなことを考えながらルシュたちと一緒に建築に励んでいると、記念すべき駅舎一号が出来上がった。
名付けるなら「レースピア代表屋敷前駅」か?
外観はマナコンクリ製の長方形の建物。
屋敷の玄関側に入口があり、入ると広々とした待合室がある。
あまり使う人間がいないのにこんなに広く作る必要があるか? と聞いたものの、再び必要です、で押し切られた。
そしてあるのは待合室だけではない。
なんとキッチン、寝室、トイレ、さらには浴場まである。
……その気になればここで暮らしていけるな。
そして乗降スペース。
待合室から入口とは反対方向の扉を開けるとそこが乗降スペースだ。
車庫のような感じで、待合室からは入ってくると数段の階段がある。
その階段の上、少し高くなっている場所で馬車に乗るイメージだな。
出庫する側と反対方向のスペースには前に作られた俺専用の馬車が停めてある。
うん、ここまで見てきたが……本当に個人専用に建てられた駅って感じだ。
正直少年心がうずうずしている。
この駅を使えるのか……これから。
ルシュたちはいい仕事をした、とばかりに誇らしげに額を腕で拭っている。
その姿を見ながら、胸から湧き上がる感動のままに、感謝を伝える。
ありがとう、皆。
素晴らしい駅舎だ。とても気に入った。
「ッ! もったいないお言葉です……!」
ルシュたちは感激したように目を潤ませる。
この調子で他の区画にも、素晴らしい駅舎をどんどん作っていって欲しい。
「「「はい!!」」」
そうしていくらかの人手を駅舎建築に割いて、俺たちは次へ。
次に建築……というか改築? するのは水回り。
公衆トイレや公衆浴場なんかだな。
トイレの方は今となってはそれぞれの住居近くに専用で作っているものの、急なトラブルなんかでこっちを利用することもあるだろう。
なので広げておく。
そして公衆浴場の方。
こっちはかなり広くする。
ウンディーネも増えたが、それでもそれぞれの住居全てで湯を用意するのは非効率的だ。
なので大きい公衆浴場をいくつか作り、ウンディーネたちにはそこにお湯を用意してもらう。
……種族も増えたし、お湯の用意をウンディーネたちだけに任せる必要もなくなったんだが。
それでもウンディーネたちが魔法で用意するお湯は、他の者たちが用意するお湯よりも素晴らしいらしく、俺のもとにもウンディーネたちにお湯を用意してもらいたい、という声は結構届いていた。
俺自身、フィーネが用意してくれるお湯に入り続け、心なしか以前より肌艶と髪艶が良くなったしな。
そういうわけでウンディーネたちに負担なくお湯を用意してもらう為、公衆浴場を増築する。
広くなった公衆浴場はまさに銭湯と呼べるものに仕上がった。
俺がちょくちょく口を出したからな。
公衆……いや、銭湯の外観は二階建て。
入口を入るとまずあるのは広いホール。
どれくらい広いかというと……だいたい百人を余裕を持って受け入れられるレベルだ。
ホールには大きないすやテーブルが備え付けてあり、入浴後ここでゆったりすることもできる。
そしてホールにはとても大きな棚と、十人同時に潜り抜けられそうな大きな入口が二つ。
棚には綺麗草、そしてタオル。
自前で用意してきていない者はここから好きに取っていいことにした。
ハイラたちの努力で綺麗草もとても増えているし、タオルもアラクネたちに大量に生産してもらったからな。
そして、二つの大きな入口はそれぞれ男湯と女湯に続いている。
これもアラクネたちに作ってもらった大きな暖簾をくぐると、中は脱衣所。
木で作られた棚とその中に入っている木のかご。
まさに銭湯の脱衣所といった風景。
ちなみに木のかごは冬にコボルトたちが大量に作って余っていたのを使った。
有効活用だ。
そして、脱衣所には他にも、更に奥へ続く扉と階段。
両方浴場に続くものだ。
この浴場は二階構造になっている。
俺は最初、浴場を二階にも作る必要はないだろう、と言った。
だがルシュたちが二階以上に浴場を作る経験を積みたい、と言ったので、結果としてこうなった。
ウンディーネたちも問題なく対応できるって言ってくれたからな。
そして出来上がったのがこの浴場だ。
とはいっても一階と二階でさほど違いはない。
両方にそれぞれの種族に合わせた浴槽を用意している。
例えば……。
未進化のコボルトたちの様に小柄な者用の浅い浴槽。
ケンタウロスやアラクネたちのようなかなり大きい種族用の深く広い浴槽。
デモンズやエンジェルが翼を濡らさずに入りたい時用のうつ伏せで浸かれる浴槽など。
これは以前の公衆浴場は一種類の浴槽しかなく、使いづらそうにしていた種族もいた、と聞いたからだ。
そしてもちろん洗い場も一階と二階両方に用意している。
これもそれぞれの種族に合わせ、大きないすだったり小さな椅子だったりを用意している。
まあ、違うとすれば……二階には思いつきで作った半分外に突き出している露天浴槽と、後はイフリータに協力してもらって作ったサウナがある事くらいか。
それぞれ前世のことを思い出して、あるといいか? と思って作ってもらった。
ちなみに後から聞いた話、これらは結構評判が良かったらしい。
まあどっちもいいモノだしな。
そういうわけで二階構造の銭湯も無事建築終了。
二階層の銭湯施設もしっかりルシュたちの経験になったみたいだ。
同じように他の区画にも頼む、といったら力強い返事を返してくれた。
さて、まだまだ作りたいものはあるし次だ。




