69.収穫と線路
そうしていろいろと手を広げていたらやってきた。
今年三回目の収穫の時だ。
今回の収穫はかなり楽しみにしていた。
なぜなら、作物の種類がまた一気に増えるからだ。
いやぁ、素晴らしい。
採れた野菜を見ながらついそんな言葉が口から洩れる。
増えた住人からありがたく譲り受けた様々な種。
それらはしっかり芽を出し、花を咲かせ、作物を実らせてくれた。
さすがに今回の収穫には間に合わないかな? と思ったんだが、間に合ったな。
数は多くないので、大々的に食用に使うのにはまだ時間がかかるが、それでも創造神器の畑ならすぐに増やせるだろう。
今回増えた野菜は、キャベツ、白菜、ほうれん草、レタス、にんにく、きゅうり……エトセトラエトセトラ。
本当に一気に増えてくれた。
そして種類が増えたのは野菜だけではない。
譲り受けた種の中には……果実もあった。
こちらはまだ収穫できるところまで行っていないものの、ある程度は成長しているので種類は分かる。
ぶどう、オレンジ、梨、等だ。
……にしても。
どの野菜も果実も俺の知っている姿まんまだな。
この世界でもこういう種類になっているのかと思って、種を譲り受けた者たちに聞いてみたものの、彼らの知っている姿とは違うらしい。
うーん、それならやはり原因は創造神器か?
前もリンゴに似た、しかし違う果実を創造神器の畑に植えたら、リンゴと同じ姿と味になった、ということがあった。
今回もそれと同じで、異世界の野菜と果実が俺の知っているそれになったのかな?
まあ、正直ありがたいからいいが。
ともかく。
今回は作物の種類もさらに増え、既存の作物の量も増えた。
畑もどんどん拡張していっているからな。
一気に住人が増えて行っているが問題なく食料は賄うことが出来るだろう。
少し心配があるとすれば肉だな。
今は狩りで賄ってるけど、狩り尽くしたときのことを考えたら……。
畜産にも手を出した方がいいか?
まあ、こういうのは後で考えよう。
採れた野菜を倉庫に運び込み、種類、量、保存場所、等々を悪魔族と天使族たちにまとめてもらう。
その間にこっちは再びの耕作。
これが今年最後の耕作だな。
今回増えたキャベツなんかの畑を一気に増やしていく。
こうすれば冬までにそれなりの量が収穫できる。
冬備えのためにも食料は多く確保しておきたいからな。
創造神器でガンガン畑を耕していく。
他の者も創造神器ほどのスピードじゃないが順調に耕していってる。
まあ数が違うから全体で見れば俺の方が遅いんだけど。
そして他の者が耕した畑でも、創造神器の「土壌強化」の能力を使えば、その畑は創造神器で作られた畑と何ら変わらなくなる。
やっぱり凄い、創造神器!
というわけで住人の数も増え、人海戦術がさらに強くなったこともあって、畑はすぐに作り終わる……。
なんてことはなかった。
まあ、住人が増えた分畑も増やしてるからな。
だが、そう長くかかることもなく、スムーズに耕作は終了。
やはり人手は正義。
そして収穫と今年最後の耕作も終わったタイミングで。
「代表殿、線路が完成いたしましたぞ」
そうイアンが報告に来た。
報告を受けた俺は鉱山に急行。
その光景を目の当たりにする。
おお……凄い……!
坑道に線路が走ってる……!
俺はついテンションが上がってしまう。
創作物なんかでは見たことがあるが、実際に坑道に線路が引かれている光景を見るのは実際初めてだ。
しかも引かれたばかりで線路はまだぴかぴか。
少年心をくすぐられる。
「この線路は現在時点の行動の最奥、すなわち第七地層まで続いております。これで運搬の手間が省けますぞ」
そう報告してくれるイアン。
その通りだな。
このトロッコには残念ながら動力の類なんかは付けてない。
言ってしまえば車輪のついた荷台だ。
まあ鉱石を持ち帰るのには役に立つだろうけど、せっかくなら……乗りたい。
線路を実際に目の当たりにしてさらにその気持ちが強まった。
なので……動くようにしよう。
ふむ、どうするか……。
トロッコを一台借りてきてその前で俺は考え込む。
動くようにするとは言ったものの、俺は動力……エンジンの作り方なんて当然知らない。
真っ先に思いつくのは魔法だが……魔法もあまり詳しくはない。
まあ、魔導エンジン付きトロッコというのもカッコいいから、そういうトロッコもいつか作るが、今は無理だ。
なら……手動力で動かすしかないな。
イメージとしては自転車。
トロッコの前方部分に、ペダル、ギア、チェーンを付けてもらってそれを車輪とつなぐ。
鉱石を運ぶ時は一人じゃ難しいだろうし、後方部分にも同じように付ける。
車輪なしの自転車がトロッコを挟み込んでいるイメージだ。
俺としてはギアとチェーンなんて流石に難しいだろうか? と思ったが。
さすがはイアン率いるハイドワーフたち。
見事に作り上げてみせた。
だが、やはり難易度は高いようで、量産はかなり時間がかかるだろうと言っていたが。
早速出来上がったトロッコを洞窟の外の線路に乗せる。
とりあえずまずは荷物など載せず、一人で漕いでいく。
ガッ──ガガッーーーー……。
……動いた。無事に。
最初こそ重くてダメか? とは思ったものの、力を入れてペダルを踏み込めばトロッコは動き出した。
そしてスピードに乗れば……もう漕ぐ必要もない。
勢いよく進んでいく。
さて、問題なく進めることを確認したうえで……一旦トロッコを止め、戻る。
洞窟には入っていかない。
あくまで試乗だからな。
戻ってくると、その場にいたイアンたちが興奮していた。
「まさか押すこともなく乗った状態で動かせるような仕組みを作るとは……さすがは主殿ですな! 素晴らしいですぞ! それで……ワシらも乗ってみても?」
ああ、もちろん構わない。
トロッコに荷物を載せてもちゃんと動かせるかどうかも試してもらっていいか?
「もちろん構いませんぞ! では道中の適当な地層から何か掘り出して持ち帰って来ますぞ!」
そう言うが早いかイアンは自転トロッコの前席に乗り、後席にもう一人を乗せて出発していった。
そして待つことおよそ十分ほど。
トロッコ部分に鉄鉱石を満載に積んだ自転トロッコが帰ってきた。
「ふぅ……代表殿、問題なく行けましたぞ! しかも自分で乗ってみてわかりましたが……押すよりも軽い! まことに素晴らしいトロッコですぞこれは!」
帰ってきたイアンが興奮気味にそう報告してくれる。
そう言ってくれるのは良かったが……。
本当に大丈夫だったか?
鉱石満載にしたらさすがにこれでも重いかと思ったんだが……。
「確かに重たかったですが……わしらならば問題なく動かせますな」
むん! と力こぶを作りながらそう言うイアン。
鉱石を軽々と持ち上げているから分かってはいたが、かなり力持ちだな。
進化したイアンたちは。
まあそれなら問題ない。
これで第六、第七地層もスムーズに採掘できるようになるだろう。
しばらくは線路はこれ一本しかないから、言うほど効率は上がらないだろうが。
これから線路を増やしていけばいいだけの話だしな。
そういうわけでトロッコの試乗が完了したので、第七地層に鉱石を掘りに行く……自転トロッコで。
別に俺だけなら創造神器の蹄鉄使ってダッシュで行けばいいんだが……せっかくなら乗りたい!
というわけで、荷台に第七地層の光源になってもらうためにムイを積んでいざ出発!
第七地層までの自転トロッコでの道のりは洞窟アドベンチャーみたいでとても楽しかった。
ムイもプルプル震えてご機嫌だった。
これからもたまに乗らせてもらおう。




