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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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07.井戸づくりと家づくり

 翌日。


 俺は簡易テントの中で目を覚ます。

 そんな俺の頭に声が響いた。


 ”累計二種族、結集確認。新たな形態「ハンマー」、新たな能力「環境最適化」解放”


 どうやら創造神器の新しい形態が解放されたようだ……って能力?


 確かに能力も解放されていくと神様は言っていたが……同時に開放されるとは。

 毎回か? それとも今回だけ?

 ……まあこの先も種族を集めていくならそのうち分かることだな。


 今はこの新しい形態と能力を試してみよう。


 ということで俺はさっそく簡易テントから出る。


「ああ、お目覚めですか主様。おはようございます」


「ああ、おはよう……って先に起きたなら起こしてくれてもよかったのに」


「いえ、私が早く目覚めただけですから」


 ルシュが声をかけてきた。

 言葉通り残りのコボルトはまだ休んでいるようだ。


 おそらく落ち着けるところを見つけた安心感から深く寝入っているのだろう。


 それなら起こすのも忍びない。


 ルシュにまだゆっくりしていていいと言い、俺は少し離れて創造神器の新たな形態を試すことにする。




 これは凄い。


 創造神器ハンマーを試してみた俺の素直な感想だ。


 俺はまずハンマーといえば土を固めることに使うモノだろうと思い、つるはしで掘った土をハンマーでたたいてみた。


 するとハンマーでたたいた土はとてつもなく硬く固まったのだ。

 軽く手でたたいてみるが、まるで鉄かというような感触が伝わってくる。


 これほどに土を固めることが出来るのならば……やれることが広がる。


 これまで俺は崩落が怖くてあまり深く掘ることはなかった。

 だがこのハンマーで周囲を固めながら掘ればよほどのことがなければ崩落はないだろう。


 さらに奥まで鉱石を掘ることが出来るほか、これならもしかしたら……井戸を掘ることが出来るかもしれない。


 そう井戸だ。


 今はまだ洞窟の湧水で何とかなっているが、この先どんどん住人も増えていく。

 ならばもっと水を確保しなければならない。

 洞窟の湧水だけでは追い付かないからだ。


 洞窟からは湧水も出ているし、川も近くにある。

 水源がない……ということはないはずだ。

 おそらく。


 そしてもう一つ。

 ハンマーといえば建築に使うモノというイメージもあった。

 ので俺は適当に切った木をハンマーで地面に打ち付けてみる。


 すると。

 まるで豆腐に向かって打ち付けているかのように軽々と木は土中に入っていった。


 すばらしい。

 これから家を作ろうとしている身としては、ハンマーはとても助かる形態だ。


 そして、気になったので俺はハンマーで固めた土に同じくハンマーで木を打ち付けてみる。


 矛盾の話と同じだ。

 固めた土と打ち込む木材どちらが勝つか気になったのだ。


 勝ったのは……木材だった。

 普通の土に打ち込むことより苦労したものの、それでも木は打ち込むことが出来た。


 どうやら固めると打ち込むでは打ち込むの方が勝つようだ。


 ハンマーのことはある程度分かったのだが、もう一つ解放された能力……環境最適化のことは何も分からなかった。

 字面通りに受け取るなら環境に作用する能力のようだが……。


 いろいろ試してみても実感が得られなかった。


 この能力のことはゆっくり確かめることにする。




 というわけで、あらかた試し終えた俺はコボルトたちのところに戻ってきた。


 見る限り半分ほどは起きてきているようだがもう半分はまだ寝ているようだ。

 ルシュが申し訳なさそうな顔をこちらに向けてきている。


 俺は気にするなとジェスチャーして、まだ時間があるのなら試しに井戸を掘ってみることにする。


 出るかどうかはわからないが、まあ出なくても井戸掘りの練習にはなるだろう。


 そうして井戸を掘り始めたのだが……。

 思った通りかなりサクサク作れる。


 創造神器つるはしで掘り進め、周りを創造神器ハンマーで固める。


 念のため少しずつ様子を見ながらやったが、掘った穴が崩れる様子は全くなかった。

 ちなみにはしごは創造神器(斧)で互い違いに切れ込みを入れた木材で代用した。

 使い続けるわけでもないし今はこの程度の物でいいだろう。


 そしてだいたい十メートルくらい掘ったころ。

 さすがに出ないかと俺が諦め埋め立てるために上がろうとしたところ。


 出た。


 水が。


 正直唖然とした。

 出たらいいなあと考えていたがまさか本当に水が出るとは思ってなかったのだ。


 創造神器を向ける。

 危険は伝わってこない。

 どうやら飲むこともできる水のようだ。


 初回で水が出るなんてどれだけ幸運なんだ……。


 と、そこで気づく。


 もしかしてこれ……環境最適化の力か?


 まさかとは思うが、創造神器で掘ったり開拓した場所は生物にとって最適な環境になる……?

 だから飲める水が出てきたのか……?


 もしそうだとしたらとんでもない力だ。

 二種族目でこんな能力が覚醒するなんて、神様はとんでもない太っ腹だな。


 さて。

 俺の仮説が正しいのなら開拓や整備を進めれば進めるほどここは住みやすくなる。

 もっともっと頑張って拠点を広げていかないとな。




 そうして井戸から出てきた俺をルシュが迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、井戸を掘られていたようですが……水は出たのですか?」


「ああ、出たよ」


「やはり……そう気を落とさず……って、え? 出た、んですか?」


 ルシュはかなり驚いているようだ。

 まあそれはそうだよな。

 俺だってまあ出ないだろうと思って掘っていたんだし。


「なるほど……さすがは主様です。ここに居着く判断をしたのは間違いではなかったようです」


「そう言ってもらえて嬉しいよ。だけどまだこれからだ。もっと住みやすくしていきたいからな。」


「ええ、お手伝いいたします。それで……早速なのですが、皆が目覚めました。主様さえよければ今から建築に入ることもできますが……」


 そういう彼の後ろにはコボルトたちが集合している。

 昨日も思ったけど、十人も並ぶと壮観だな……。


 昨日はそれどころではなかったので改めて名前を聞く。


 まず集団の代表はルシュ。

 灰色の耳と尻尾をもった女性。

 コボルトは小柄だから分からなかったが成人しているらしい。

 そして、ワワ、スフン、ドル、フレン、チュア、シュナ、ルチー、ニアン、パード。

 男女構成はちょうど半々。


 さすがに一気に覚えるのは難しいな、と俺が思っていると、ルシュが気を遣ってくれた。


 しばらくは代表として自分が取次ぎをするのでゆっくり覚えてくれたらいいと言ってくれたのだ。

 申し訳ないが俺はその言葉に甘えることにした。




 そしてその後。

 俺はコボルトたちと一緒に家づくりを始めた。


 俺はまずコボルトたちの家を作ろうと言ったのだが、彼らがやんわりと反対した。

 自分たちには簡易テントがあるから先に俺の家を作ると言ったのだ。

 昨日の食事の恩を返したいと言われてはさすがに遠慮できなかった。


 というわけでまずは俺の家から作り出す。


 と言っても俺がやることは周囲の木を切り出し、家を作る場所の土を固め、指示された場所に木材を打ち込むことだ。

 後のことはコボルトたちがやってくれた。


 俺が家を作りかけていたところを片付け、そこに見る見るうちに家の形が出来上がっていく。


 コボルトたちはとても器用だった。

 これを見せられたら俺が試行錯誤していたのは家づくりなんて言えないな。

 せいぜい小屋づくりだ。




 そうやって感嘆しているとシロが帰ってくる。

 シロには角兎をたくさん狩ってくるようにお願いしておいたのだ。


 コボルトたちの食料を確保する必要があったからな。


 家を作る前にルシュに聞いてみたんだが、コボルトたちでは十人がかりでも角兎に勝つのは難しいらしい。

 まあみんな背丈が俺の腰ぐらいまでしかないからな。

 仕方ないだろう。


 そういうわけでコボルトたちには建築に集中してもらい、狩りはシロに行ってもらった。

 角兎を多く狩ってもし見かけたら奴を誘導してほしいと頼んでおいたのだが……どうやらシロはしっかり頼みを果たしてくれたようだ。


 森の中から大きな音がする。


 コボルトたちもその音で気づいたようだ。


 森の中から奴……二頭鹿が歩みだしてきた。


 ふぅ……来てくれて良かった。

 食料がカツカツなんだ。

 申し訳ないが有り難くいただく……。

 俺がそう思っていると。


「まずいです!主様!あれはオルトディア―……!一体で街を壊滅させることが出来るほどのモンスター!逃げましょう!ここは惜しいですが命の方が大事です……!」


 ルシュがそう声をかけてくる。

 コボルトたちも皆、耳を垂らして恐怖しているようだ。


 俺はルシュに安心してくれと声をかけると創造神器を出し奴に近づく。


 そして、一閃。


 二頭鹿の首が落ちた。


「え? え? オルトディア―が? え……?」


 ルシュたちは混乱している。

 だが、状況が飲み込めたのか俺に声をかけてくる。


「主様。主様は私たちが思っていたよりはるかに……素晴らしい方だったのですね……!主様と出会えて、私たちは幸運です……!」


 さすがにそこまで言われるとちょっと恥ずかしくなる。

 創造神器の力ありきだからな。

 謙虚さは忘れないようにしたい。




 その後コボルトたちに手伝ってもらい、二頭鹿を解体する。

 ここでもコボルトたちはさすがだった。


 もっていた小刀でするすると解体を進めていったのだ。

 皮のはぎ方、血の抜き方……なあなあでやっていた俺とは段違いの手際だった。

 しかも、彼らは干し肉を作る方法も知っていた。


 ありがたい。

 干し肉を作ることが出来るなら食料の不安も少しは減らせる。


 干し肉の保存のために地下に保存庫を作りたいというので、当然承諾する。


 コボルトたちの家を作るのが遅れるのはいいのか、と聞いたら、それよりも保存庫の方が重要だと返された。


 俺にとってはありがたいが……ガンガン働いてコボルトたちの家にも早いところ着手するとしよう。


 仕留めた二頭鹿の肉を食べながら俺はそう決意した。



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