64.第一回レースピア祭
「えー……それではここに、第一回レースピア祭の開催を宣言します!!」
────ワァァァァァァーーーーーーッッ!!!
俺の開催宣言に大きな歓声が上がる。
もろもろの準備を終え……俺は第一回の祭開催までこぎつけていた。
時刻は夕方。
薄暗くなってるが、会場にはふんだんに光石を使っているので、たとえ夜になっても暗すぎるということはない。
そして今俺が立っている場所は地面から少し高くなっている特設ステージのような場所。
ルシュたちには普通の朝礼台みたいなやつで良いと言ったのに、なぜか全長十数メートルくらいの立派なステージが作られていた。
ちなみにルシュたちとしてはこれでも全然足りないらしい。
彼女らの主張を聞くと。
主様はもっと立派なステージに立つべきです。
ですが時間がなくこんなものしか用意できませんでした、しかし次回はもっといいモノを作りますので!
……とのことだった。
……まあ使い道はあるしいいんだけど。
そういうわけで目の前の四百人弱の集団に向けて壇上から挨拶している。
関所から続々と移住者も入ってきて、人口は順調に増えてきているな。
これだけ多くなってくると流石に声が後ろまで届かないと憂慮したが、それはリネイアが解決してくれた。
音波振動増幅魔法……まあ要するに声を大きくする魔法だな。
これを使って俺の声を拡声してくれた。
おかげでしっかり後ろの方まで届いているようだ。
属性を持つ魔法は精霊族の方が得手らしいが……こういう属性を持たない、いわゆる無属性の魔法なら私たちの方が得意だろう、と、そう言っていたな。
おっと。
歓声を上げていた者達もそれなりに落ち着いてきたようだ。
皆も屋台ご飯とか食べたいだろうしな、ささっと進めていこう。
祭の自由行動に入る前にやりたいことは三つ。
まず一つは前回の歓迎会以降に増えた新参の移住者たちの紹介。
調査団が連れ帰ってきたコボルト、エルフ、ドワーフ。
そしてクトネーたちアラクネ族とフリストルたちケンタウロス族、ニチャたちマイコニン族。
後は増えた精霊たちと、関所を通ってきた者達。
俺が壇上から合図を送るとその者達にサーチライトの様に光が降り注ぐ。
精霊たちに頼んで魔法でやってもらった演出だ。
サプライズでやったので照らされた者たちは驚いている。
クトネー……一瞬身体がびくついたが優雅さを崩さずに堂々としているな。
フリストルは……めちゃくちゃ驚いてすごくワタワタしている。
ニチャは……強い光が目に入ったのか地面をゴロゴロ転げまわっている。
……ニチャには後で謝っておこう。
そうやって光で照らし新参者の紹介を終え……次へ移る。
次は進化者の紹介。
そう。
少し前にそろそろ進化する者たちがいると言ったが……無事進化した。
以前に進化した者達はちゃんとお祝いしたのに、こっちはお祝いしない、となると進化した当人たちも寂しいだろう。
ということで今度は進化した者たちを照らしてもらい紹介。
皆照れ臭そうに体を揺らしたり頭をかいたりしているが……なんだかんだとても嬉しそうだ。
そして最後。
代表たちの紹介。
これは全員に分かりやすく示したいので壇上に上がってもらう。
メンバーはルシュ、フィーネ、ハイラ、イアン、ラウーム、イグニータ、ユウフ、リネイア、シエル、クトネー、フリストル、ニチャ。
クトネー以降は二回目の紹介になっちゃうな。
まあしょうがない。
代表者たちを並べてみんなに紹介する。
これはしっかり顔と名前を覚えてもらうためだな。
それぞれの種族の一番上の責任者は誰なのか、しっかり知ってもらう。
今はまだまだ大丈夫だろうが、これからどんどん人口が増えていくと組織……というか種族での指揮系統もわかりにくくなりそうだからな。
今の内からやっておく。
……よし、しっかり紹介も終わった。
それじゃあここからが祭本番だな。
「それじゃあ全体共有はここで終わりだ、屋台にたくさんの料理を用意しているから、皆好きに味わって欲しい! 一人で食事に舌鼓を打つのも、他の者と友諠を温めるのも自由だ! それじゃあ……レースピア祭、楽しんでくれ!!」
────ワァァァァァァァァーーーーーーッッッ!!!!!
俺の宣言に再び大きな歓声が上がる。
さっきよりさらに大きいな。
まあ分かる。
ここまでおいしそうな匂いが漂ってきてるもんな。
俺も食べに行こう。
「お疲れさまでした、主様。素晴らしい進行でした」
壇上を降りた俺を迎えてくれたのはルシュ。
こちらを労いながらサッ、とフライドポテトを差し出してくれる。
あ、ああ……ありがとうルシュ。
ルシュからフライドポテトを受け取って一口食べる。
いやほんと凄いな、揚げたてだこのポテト。
俺が壇上から降りる直前にダッシュで買ってきたのか……?
ルシュはしっぽをぶんぶん振りながら何かを期待したような目でこちらを見ている。
なので頭を撫でながら礼の言葉をかけた。
「ッ! もったいないお言葉です! 他にも取って参ります!」
あ、ルシュ……。
止める間もなく行ってしまった。
ルシュに貰ったポテトを食べながら周りを見ると、先ほどまで壇上に居た面々が歓談してるな。
仲良くやってくれているようで何より。
……ああ、そうだ。
リネイア、シエル、さっきは拡声の魔法をありがとう。
お陰でしっかり皆に声を届けることが出来た。
「いいえ、当然のことです。もし使う機会が必要になったのならいつでも声を掛けてください」
「そうそうー……もぐもぐ……気楽に言ってくれていいからねー……もぐもぐ……」
リネイアは真っ直ぐこちらを見て、シエルはおにぎりを食べながらそう言ってくれる。
「すみません、代表様。シエルが……」
いや構わない。
楽しんでくれと言ったのはこっちだしな。
シエルも早速食を楽しんでいるようで何よりだ。
リネイアもここからは楽しんでもらって構わない。
「……そうですか? 分かりました……ありがとうございます」
そう言ってリネイアも食事をとりに行く。
さて、あとは……。
ああ、いたいた。
「? あるじ~どうしたの?」
ああ、お礼を言いに来たんだよ。
俺は精霊族の代表が集まっている場所を見つけ、皆に礼を伝える。
皆のおかげで分かりやすく新移住者たちを照らすことが出来たからな。
助かった、ありがとう。
「気にしなくていいっすよ~! 頭を助けるのは当然のことっす!」
「その通りだ! この街で世話になっている身だしな!」
「……まぁそういうこと。だから気にしないで」
そう言ってくれるのはこっちとしてはありがたいがそれでも言わせてくれ。
ありがとう。
「どういたしまして~!」
「まあ頭がそこまで言うなら……」
「ハハハ! ではその感謝を受け取ろう!」
「ま、それじゃ……どういたしまして」
精霊たちに感謝を伝えてその場を後にする。
次に目についたのは、クトネー、フリストル、ニチャの三人。
同時期に街に来たからか仲良くやっているようだ。
「あら……代表様。お疲れさまでしたわ」
こちらにいち早く気付いたクトネーが労ってくれる。
「ああ、代表さん! 聞いた時はこんなこと出来んのか? って思ったけど……しっかり開催しちまうなんてほんと代表さんは凄いな!」
「私としてはこんなわいわいしたところはそんな得意じゃないけどぉ……でもご飯美味しいからオールオッケー……」
フリストルとニチャもそう声を掛けてくる。
ありがとう。
皆が協力してくれたおかげだ。
祭はこれからも定期的にやっていくからこれからも協力頼む。
「「「はい/おう/うん」」」
頼りになる返事を聞き届け、次に目に入ったのはイアン。
……なぜかシロとムイもいる。
珍しい組み合わせだな?
「おぉ……主殿。そうですな。しかし……普段関わらないものと関わるというのもこういう機会の醍醐味でしょうぞ」
……それもそうか。
それでどんな話を……ってそもそも話できるのか?
「ハハハハ!」
? 出来るのか? 凄──
「できませぬ!」
出来んのかーいっ。
「まあ言葉が伝わらずとも共に過ごすだけでも十分でしょうぞ」
その言葉に同意するようにシロもムイも身を震わせている。
まあ、それもそうだな。
それじゃあ楽しんでくれ。
「はい」
「ウォフっ」
ぷるぷる……。
そうやってあらかた様子を観終えたタイミングでルシュが帰ってきた。
その横にはハイラを連れている。
二人とも両手いっぱいに屋台の料理を抱えているな。
「お待たせいたしました、主様。量が多かったので少し時間がかかってしまい……一人では持ちきれなかったのでハイラにも手伝ってもらいました」
「いえ、構いません、ルシュの頼みですし代表様の為ですから」
そう言いながら二人が俺に手に持った料理を渡してくる。
ありがとう、けどさすがに一人で食べきれないな。
一緒に食べよう。
「いいのですか?」
ああ、もちろん。
「代表様がよろしければ」
そしてその後。
ルシュとハイラと一緒に料理に舌鼓を打ちながら他愛ない話をする。
話題はいろいろだ。
最近来た住人のこと、これから建てたいものや、薬草畑の様子など。
いろいろ忙しくしていたから二人とはあまり一緒に過ごせていなかった。
……まあ夜はちょこちょこ一緒に過ごしていたんだが。
久しぶりに二人止まったり過ごせて……なんというか、ホッとするような活力が生まれた。
こういうのもいいモノだな。
最後に。
俺は祭を回ってみたが皆楽しげに過ごしていた。
料理を味わいながら涙を流していたものまでいたな。
そこまで喜んでくれたら企画したこっちとしても嬉しい限りだ。
だがまだまだ前世の祭を知っている俺からすると、物足りない場所もまだまだある。
これから改善しながら次の祭は今回よりももっと楽しんでもらえることを目標にしながら頑張っていこう。
そう思いながら祭の夜は更けていった。




