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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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57.補佐役とリネイアの提案

「何か困ったこと……ですか? 特にはありません。この街はとても素晴らしいですし、皆さん良くしてくれていますから」


 そう語るのは悪魔族、デモンズのリネイア。


「うんうん。最初紙作りの地獄に叩き落された時はアレだったけど……それ以降はゆっくり出来てるしサイコー」


 そう語るのは天使族、エンジェルのシエル。



 一旦裂け目のある場所に仮拠点まで作り街に帰還した後。

 俺はリネイアとシエルに街の住み心地を聞き取りに来ていた。


 それは良かった。

 ……いや、ほら。

 二人が来た当初は悪魔族も天使族も紙作りで忙しかっただろ? それでその後は新たな種族受け入れで俺の方が忙しかった。

 だからもしかしたら何か不満を溜め込んでるかもしれないと考えて聞きに来たんだ。


「なるほど……そういうことでしたか」


 リネイアがメガネをきらりと光らせながら得心がいったというように頷く。


「ですが先にも言いました通り、不満などありません。これは他の者も同じです。我々悪魔族は心からこの街は素晴らしい街だと思っています」


「同上どうじょー。そんな心配することないってー。……あ、これも天使族の総意って思ってくれていいよー」


 ……ありがとう。


 俺はほっと胸をなでおろす。

 そこそこ心配していたからな。

 私達のことほっときすぎでは? とか文句言われるかもしれないって。


「いやーそれは思ってるけど」


 思ってるんだ。


「まーまーまー!そんな深刻なやつじゃなくてさ、うっすらとだから。代表様が忙しいのもわかってるしねー」


 シエルは軽い調子で語ってくる。

 これだけ気軽に言われるとこっちも気が楽だな。


「……そんな代表様が忙しい時期にあなたは何をしていました? ごろごろと室内で転がっていたのをよく目にしましたが?」


「げ。見られてたの……? あーいや、アレは休憩だよ。ほら、見てないとこではちゃんと飛んでるから」


「……まあかまいません。紙作りに付き合わせた引け目もありますしね……信じましょう、今だけは」


「ずっと信じてよー」


 シエルとリネイアはそんなやりとりをしている。

 その中でシエルが言った飛ぶ……というのは、文字通りの意味だ。


 紙作りが一段落ついた後、悪魔族と天使族には上空を飛んでもらって周囲の警戒に当たってもらっている。

 数が少ないから全域は無理だし、常時も不可能だが。

 けれど警戒網なんていくらあってもいい。

 そういうわけで周辺警戒の任に当たってもらっている。


「……ふむ。代表様。一つご提案があるのですがいいでしょうか?」


 提案? 別に構わないが……なんだ?


「私とシエルを代表様の補佐として任じていただけませんか?」


 補佐?


「はい、この街も人が増えてきまして、収穫量、それぞれの食事量、倉庫の管理等々。すべて代表様が管理するのは難しくなってきていると思います。その負担を少しでも除ければ……と、そう考えてのご提案です」


 ふむ、なるほどな……こっちとしてはありがたいが……。


「いやーむりむりー。なんで当然のようにあたしも巻き込まれてんの? とか言いたいことはあるけど、まず第一に信用が足りないでしょ。まだ来たばっかの新参が街の運営にかかわるとかさー」


 あー……確かに。

 俺は気にしないが気にする住人もいるかもしれない。


「分かって言っていますよねシエル? デモンズにはその足りない信頼を上乗せする方法があること」


 ? それは?


「こほんっ! 代表様、ご説明させていただきます。我らデモンズは種族固有の魔法として契約魔法を使うことが出来まして……この魔法は読んで字のごとく契約を結び、それに違反したときペナルティを与えるものです」


 ああ……なるほど、理解できた。

 つまりその契約魔法のペナルティを重くすることでその分の信頼を得るってことか。

 ……それにしても悪魔族が契約魔法か……またイメージ通りというかなんというか……。


「代表様のご理解の通りです。それで……どうでしょう?」


 うぅん……俺としてはそんなもの無くていいと思う、けど……それで納得しない者もまあいるだろう……どうするか……。


 と、俺がそう考えたところでふと気づく。


 契約……そういえば創造神器にもそういうのがあったな……。


 そう気づいた俺はさっそく創造神器をペンに変化させる。

 すると、実験で使った時と同じように豪華な装丁の白紙の本にも同時に変化した。


「うん? なにそれ? ペンと……本? うわめっずらしい、本なんてすごく貴重なのに。しかもこの装丁……すっご、あたしでもお目にかかったことないよこんなの……しかもペンの方も……なにこれ? 何の羽を使ったらこんなペンが作れるの……?」


「シエル、不躾ですよ。 ……ですが……その、代表様。正直に申しますと私も興味があり……み、見せていただいても?」


 シエルが興味深げに本をまじまじと至近距離から見つめ、リネイアはがそれに苦言を呈す。

 だが苦言を呈しつつもちらちらとこちらを見て、許可を求めてくる。


 俺が許可を出すと、ぱあと表情を輝かせ、ペンと本を注視し始めた。


「この装丁……牛革? いえ感触が違います……おそらく革ではあると思われますが一体何の……、こちらのペンも全く見たことがない羽……こんな羽をもつ生物など知識にありません……まるでお伽噺の……そう、フェニックスの羽のような……」


 ぶつぶつとつぶやきながら、真剣な表情で観察している。


 しばらく観察を続け、何も分からないということが分かったのか、こちらへ声をかけて来た。


「代表様……こちらは一体?」


 ああ、これは契約本とペンだ。


「「はい……?」」


 ?を浮かべている二人に説明する。


 この契約本にこのペンで書かれた契約は必ず実現すること。

 突然吹っ飛ぶなど突拍子もないことでもお互いの同意があれば現実化すること。

 契約を破ろうとする行動がそもそも出来ないこと。


 等々。


 それを聞いた二人の反応は真逆だった。


「必ず実現し破ることがそもそも出来ない契約……そんなものが……。にわかには信じがたいですが、ですが代表様のおっしゃられるのであれば……」


「いやいやーさすがにないでしょ。あたしも代表様のことは買ってるけどさー? そもそも破ることが出来ない契約とかめちゃくちゃすぎるってー。そんなのが存在していいのは神話の世界の中だけでしょ」


 リネイアは肯定派でシエルは否定派。

 少し前から思ってはいたが、なんというかこの二人、本質は見た目の印象とは逆っぽいんだよな。

 きっちりしているブレーキ役の様に見えるリネイアが、実際はやりたいことを優先するアクセル役で、軽い物言いのアクセル役の印象を受けるシエルが、実際は現実的なブレーキ役。

 ……いいコンビなんじゃないか? この二人。


「ですがシエル。代表様が私たちに嘘をおっしゃったことなど一度もありません。であればこれも真実でしょう」


「そーかもだけどさー? さすがにレベルが違うってこれは」


「……ふむ。手っ取り早く確かめる方法があります、シエル。代表様、その契約本実際に使っていただけませんか?」


「えぇ? そりゃ実際に効力を確かめるんなら使ってもらうのが一番だけど、そんな、リネイアが自分の身を使ってまで確かめる必要は――」


「? 使っていただくのはあなたに対してですが」


「――ってあたしかーいっ!」


 シエルがガクッとつんのめる。


「当たり前でしょう? 私に使ってもらった場合は、かなり無理筋ですが私と代表様が結託してあなたを騙そうとしているという可能性が消えません。であればあなたに使ってもらうのが当然の帰結です」


「いや分かる! 分かるけどさー! あたしの心配返してよこの悪魔!」


「はい? 私はもとから悪魔族ですが……?」


「あーもー……」


 そう言ってがっくりと肩を落とすシエル。

 だがすぐに顔を上げたかと思うと、その顔にはにんまりとした顔が浮かんでいた。


「まーいーや。さすがにそもそも破れない契約とかありえないしねーあたしに使っちゃってよ代表様ー」


 こっちとしては構わないが……本当にいいのか?


「いーよいーよ。代表様なら酷いこと書かないだろうし、そもそもその契約本にも相手の同意がいるんでしょ? なら問題ないでしょー」


 そう言ってのほほんと笑うシエル。

 まあそれもそうだな。

 実験でも確かめたが、同意しなければ契約は無効になる。


 それじゃあ乗り気みたいだし早速やるか。

 そうだな……契約の内容は……じゃあ「今すぐに俺の目の前で三回回ってワンと鳴く」で。


「あはははっ! おもしろー。いいよいいよ、同意どういー。」


 シエルは笑いながら躊躇もせずに契約に同意する。

 すると――。


「あははっ!ほらー別に破ることは出来る……って……?」


 そう言ったシエルの体が宙に浮く。

 そして俺から見て右方向に三回回って――。


「ワンッ! えっ!? なにこれっ! あたしこんなことやろうとしてないのにっ!」


「おお……まさか本当に破ることが出来ない契約が存在するなんて……」


「何感心してんのー! うぅ……まったく恥ずかし……い?」


 そう感心しているリネイアに文句を付けていたシエルの身体が今度は左方向へ三回回る。

 そして。


「わんっ! ……ちょっとー! なにこれー!」


 そう言いながらまたもやシエルの身体は回る。

 今度は上方向へ。

 そして――。




「ぅっ……うぷっ……気持ちわるいぃ……」


 上下左右、そして斜め。

 合計八方向×三の二十四回転を味わったシエルはグロッキーになっていた。

 どうやら自分の意思ではない強制的な回転はキツかったようだ。

 俺はシエルの背中をさすってやる。


「素晴らしいです、代表様。破ることのできない契約……しかと見届けさせていただきました」


 ん? あ……ああ、見せられてよかったよ……。

 でもなんでこんな……何回転もしたんだ?


「ああ、それはおそらく契約文の問題ですね」


 契約文の?


「はい。”三回回ってワンと鳴く”……どの方向へ回るのか明確な指定がなかったでしょう? ゆえに上下左右斜めまで全方向へ回ったのだと思います」


 はぁ……なるほどな……。


「わ……分かってたなら……止めてよ……」


「止める前にあなたが同意したので」


 リネイアがしれっとうそぶく。


「この……悪魔……っ」




 そして。


「はぁー……ようやく落ち着いた。ありがとねー代表様」


 いや、構わない。

 こっちも軽率だったしな。


 背中をさすること十分ほど。

 シエルは復活した。


「さて、シエルも復活しましたね。それでは代表様、早速ですが……」


「いやちょいちょいちょいー。もっとこっちを気遣ったりとかさー」


 シエルがそう、話を進めようとしたリネイアに口を挟む。


「? もう完全に復調したように見えますが……?」


「あー、もーいーや。進めて進めてー」


「? はい、では……」


 呆れた様子でシエルはさじを投げ、リネイアが話を進める。


「こほんっ! 代表様に見せていただいた契約の効力、素晴らしいものでした。ですので代表様、私たちが代表様の補佐を務めるにあたって、その契約本で契約書を作らせていただけませんか?」


 何度も言っている通りこっちとしては構わない。

 だけどそっちは良いのか?


「ええ、もちろん。デモンズとしては労働に当たって契約を結ぶのは当然のことです」


「あたしらエンジェルとしては当然じゃないけどー。まあそっちの方がお互い安心できるし。それにこの街も気に入ってるしねー」


 二人はこちらの目をしっかりと見つめながらそう言ってくる。


 二人がそこまで言うならこれ以上は野暮だな。


 俺はさっそく契約書を作る。

 ちなみに契約文はリネイアがパパっと作ってくれた。

 俺も契約本に書き込む際確認したが、特段問題はなかった。


 そしてその契約書を前に二人は同意を示し……契約は結ばれた。


 ……これでオッケーだな。

 それじゃあこれから補佐としてよろしく頼む二人とも。


「うん、よろしくー」


「よろしくお願いします。……それでは早速ご提案があるのですが」


 ……いきなりか!?


「あははー代表様も被害にあってるーおもしろー」


 シエルがこちらを見てにやにや笑っている。


 いや、まあ、いい。

 聞こう、リネイア。

 提案って?


「はい、代表様。早速なのですが……戸籍を作りませんか?」


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