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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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56.伐採と裂け目までの道

 調査団が連れ帰ってきた者達のそれぞれの区画、住居、施設。

 ある程度は形にすることが出来た。


 なので次にやるのは……。




「ありがとうございます、主様。俺の要望を聞いてくださって」


 俺にそう礼を言ってくるのはパード。

 俺は今、この果ての森に外から入るための裂け目……そこに向けて一直線に木を伐採している。


 そう、パードに提案された裂け目近くに拠点を作るため、まずはそこまで続く道路を敷設しようとしているのだ。


 礼は必要ないさ。

 俺だって有用な提案だと思ったからな。


 伐採の手は止めず、パードにそう返す。

 これは正直な本音だ。


 今、この町の人口増加手段は調査団に住人を連れ帰ってきてもらうこと。

 いや、勝手にやってきて増えてる種族……精霊種族……もいるが。

 基本的には年数回の調査団だよりなので増えるといっても緩やかだ。


 だが、裂け目近くに拠点を作り、そこまでの道を整備しておけばいつでも……は、難しいかもしれないがそれでもこれまでよりはるかに多くの住人を受け入れることが出来るだろう。


 まあ、いきなりめちゃくちゃ人数集まりだしたらどうしよう……とか、一気に受け入れたらいろいろ人間関係とか大変になったりしないかな……とか、懸念はあるが。


 それでもすべての種族を集めた街、この神託を達成するためにもより多くの住人は必須だろう。


 だから、まあ、そのあたりは、まあ。

 皆で頑張って……どうにかしたい。


 ……考えが甘すぎるか?

 でもなあ……実際やってみないとどうなるかなんて分からないしなー……。


 それに。

 この提案……裂け目拠点プロジェクトとでも名付けようか……を、進めるのは他にも理由がある。

 もう動き始めているからだ。


 パードに報告を受けた、食事に感銘を受け、こんな食事が食べられるのであれば……と、他の者を集めに行ったという十人ほど。

 このプロジェクトを早めに進めなければ、その者たちが集めてくるだろう者たちが宙ぶらりんになってしまう。

 さすがにそれはあんまりだろう。


 一応裂け目の中に獣対策をしたうえで食料を残してきたそうだが、受け入れる体制は早めに作った方がいい。

 というわけで住居も作り終わり、臨時の宿舎が空き始めているこのタイミングで道路を作り始めた。




 ふむ。

 いい進みだ。


 俺は自分でも作業を進めながらそう思う。

 ケンタウロス族の為の道路や馬車づくりなど……まだまだ人手が必要な作業は他にもあるのでそこまで多くの人手を割けているわけではないが……。


 それでも結構なペースで伐採が進んでいく。

 やはりミスリル製の斧の存在が大きいな。

 それにラウームたちハイノームの作るゴーレムも。

 創造神器ほどではないものの、それなりにスムーズにこの果ての森の硬い木を切り倒すことが出来ている。


 そして切り倒した木はケンタウロスやアラクネたちが運んでくれている。

 受け入れてもらったのだから当然だ、と手伝ってくれているのだ。

 それらの助けもあり伐採はガンガン進んでいく。


 だが当然道中にはトラブルもあった。

 一番大きかったのは三頭鹿の襲来だ。


 前に一度だけ見たことがある頭が三つある鹿。

 頭が多いだけではなく、身体もかなり大きくおそらくだが三メートル近くある。

 さらには以前の遭遇では気付かなかったが……魔力もかなり多いな。

 創造神器の魔力感知で測ってみるに……二頭鹿の軽く三倍ぐらいの魔力は持っているように感じられる。


 コイツがいきなり上から降って来た時には皆驚いたな。


 まだそれなりに距離はありますが、何か大きな獲物がいるようです、と、同行していたハイラが俺に忠告してきたその瞬間、ドガンと大きな音が鳴り。

 なんだなんだと皆が困惑していたところに上からズドンだ。


 正直あっけにとられた。

 いや、鹿だから高くジャンプできるのは分かる。

 分かるんだが……どれだけの距離を跳んできたんだ?


 ハイラもあっけに取られているところを見るにかなりの距離を跳んできたんだろう。


 そしてそんな三頭鹿がこちらに一歩踏み出し、衝撃から立ち直ったハイラが俺の前に出る。

 だが、俺はハイラを制して更に前へ。

 三頭鹿に近づき、創造神器を軽く振り抜き……。


 三頭鹿の首が全て落ちた。


 それを見て再び口を大きく開ける面々。

 大きな音を立てて倒れる三頭鹿の身体。

 正直ちょっと面白い状況だった。


 その後はなかなか伐採作業に戻れなかったな。

 ハイラに自分で倒すのが一番早いとお考えになったのは分かりますが、万一のことをお考え下さい、と心配されたり。

 伐採作業や運搬作業をやっていた者たちに流石です、とキラキラした目で見られたり。

 三頭鹿を街に持ち帰るという作業が追加で発生したこともあって、その日は作業があまり進まなかった。


 と、まあ、そんな大小のトラブルがありつつも……およそ二週間後。

 裂け目までのルートが開通した。




 ふむ……話には聞いていたがこれがそうか……。


 今、俺の前には岩肌にぽっかりと空いた裂け目が姿をさらしていた。

 何度も報告では聞いたが、初めて見る裂け目。

 情報だけ知っていた観光名所に実際訪れたような、そんな感覚が俺の中から湧き出してきている。


 いやあ……にしても思ったよりも早かったな。


 そう、この裂け目まで俺の体感になるが……おおよそ二十キロほど。

 誤差はありまくると思うが多分それくらい。


 後半なんて、かつてコボルトが使ってた簡易テント引っ張り出して野営しながら作業したからな。

 久々に星を見ながら眠りにつくのは結構いい気分だったが。


「主様。報告いたします。裂け目内部に置いておいた食糧ですが、無くなっている様子はありませんでした。フェンリル様もどうやら他者の臭いを感じられないらしく……おそらくはまだ戻ってきていないものと思われます」


 そう思いをはせている俺に報告してくれるのはパードとシロ。

 裂け目内部を調べに行った結果を俺に報告してくれる。

 どうやら人をもっと集めてくると行って離れていった者達はまだ戻ってきていないようだ。

 シロの鼻でも見つけられないなら、まず間違いないだろう。


 そうか。

 まあ正直良かった。

 どれだけ人を集めてくるのか分からないが、この森は危険も多いからな。

 出来ればすぐに街に受け入れたい。

 そう言う意味ではまだ戻ってきてなくてよかった。

 さて、それじゃあ次にやることは……。


 道路の敷設。

 そして仮拠点の建築だ。


 道路は言うまでもない。

 人や物をスムーズに運搬できるように道は整備しておきたいからな。

 だがこれは問題ない。

 ある程度伐採が進んだ段階で、ハイノーム達と一部のハイコボルトたちに整地とマナコンクリの敷設をお願いした。

 順調なら今頃どんどんこちらに向かって道路が作られているはずだ。


 そして同時並行で仮拠点の建設。

 こちらは本格的な拠点が出来上がる前に、移住者たちが来た場合に備えるためだ。

 さすがに落ち着ける場所ぐらいは用意してあげたい。

 それに本格的なモノが出来上がった後でも倉庫か何かに使えばいいしな。

 裂け目に近くなった時点で切り倒した材木はこっちに運ぶようにしたし、まあ行けるだろう。


 と、いうわけで建築を開始……そして完成。

 爆速だった。

 まあ一時的に使う小屋、みたいな簡易的なモノだしな。

 うちの建築のエキスパートハイコボルトにかかればわけない建築だった。


 さて、仮拠点は作り終えたが道路はまだ少し時間がかかる。

 だが、幸運? なことに裂け目から人がやってくる気配は今だ無い。


 これは……本格的な方の拠点も作れるか? 移住者が来る前に。


 俺はそう考えるも、そう上手くは行かないか? と思い直す。

 まあどちらにしても最低限の準備は整ったからいいだろう。


 俺はそう考えいったん街に戻ることにする。

 まだ道路開通して本格的な拠点づくりが始まるまでは時間がある。

 俺は他にもやることがあるしな。


 次にここに来るのは道路が開通して本格的な拠点を作るときか、もしくは誰か移住者がやって来た時だ。


 そう長くはないと思うが、それまでここの管理頼めるか、パード?


「はい、もちろんです主様! お任せください!」


 そう言ってパードが頭を垂れる。

 耳もピンと立っていてやる気十分だ。


 それじゃあよろしく頼む。


 最後にそう声をかけて、俺は創造神器の蹄鉄を靴裏に装着。

 シロと共にダッシュで街に戻った。


 走破タイムは五分。

 やっぱりヤバいな創造神器。

 一緒に思い切り走り抜けたシロも満足そうだった。


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