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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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48.牛と鶏、あと紙

 ――コケ―ッ!コケッコーッ!


 ――モォ~~ッ!


 分かった分かった。

 もう少しで出来るから。

 あとちょっと待っててくれ。




 天使族と悪魔族を受け入れて少し経ち。

 俺は今……牛舎と鶏舎を作っていた。


 なぜそんなことをしているのか?

 それは当然作る必要が出てきたからだ。


 そう、つまり……来たのだ。

 この街に。

 牛と鶏が!


 ……ついテンションが上がってしまう。


 仕方ない。

 牛乳と卵。

 俺が熱望していたものだ。

 これがあれば料理の幅が一気に広がる。

 甘味だって作れる。


 本当にありがとう。

 リネイア、シエル。


「いえ、移住させてもらう側として手土産を持ってくるのは当然のことです」


「そうそう、こういうのは助け合いでしょー? っていうかお礼何回目ー? リネイアもいちいち生真面目に返さなくてもいいんじゃない?」


 申し訳ない。

 それだけ嬉しいんだ。


「あー、ま、それならーこっちも嬉しいけどー」


「はい。それにお礼はフォイルに言っていただければ」


 ああ。

 戻って来たら言うよ。


 そう。

 フォイルは歓迎会の後にはもう街を発っていた。

 最後に見たのは歓迎会で料理に舌鼓を打っている姿だ。

 そこからふっと消えてしまった。

 さすがは怪盗だ。

 まあ、創造神器のアナウンスが無かったことから、おそらく歓迎会の夜のうちに出て行ったんだと思われる。


 戻ってきたらお礼を言って……それだけじゃ感謝を伝え切れないな。

 牛乳と卵が手に入った後に戻ってきたなら、それで作った甘味でもプレゼントしよう。


 そこまで考えて、俺は今やっている作業に意識を戻す。

 俺は今大きく円を描くように、柵をハンマーで打ち込んでいる。

 もう建物自体はほぼ完成している。

 後はこうやって柵を打ち込めば……よし、終わった。


 周囲に柵も打ち終わり、牛舎と鶏舎は完成した。

 ガッシリとした立派な造り。

 来たことはないがたとえ台風がやってきたとしても、崩れることも、中の牛や鶏たちに被害が出ることもないだろうと確信できる出来栄え。


 我ながらいい出来だ。

 いやまあ、手伝ってくれたコボルトたちのおかげ八割だけどな。


 ここまで本当にいろんな建物を建ててもらったからな。

 もう完全にコボルト、ハイコボルトたちの建築技能はプロ級、いやそれ以上だ。

 どんな建築であろうと安心して任せられる。


「主様、最終確認も終わりました。問題はありません」


 最後に施工確認をしてくれていたルシュが俺にそう声をかけてくれる。


 ありがとうルシュ。

 それじゃあ早速牛たちに移動してもらおうか。


 今、牛舎と鶏舎が完成するまでの間、牛と鶏たちには臨時で作った小屋に入ってもらっていた。

 まあ急ごしらえにしては居心地は悪くないだろう小屋だったが、目の前でこんな立派なものを建てられれば流石に見劣りするんだろう。

 建築途中から早く引っ越しさせろと大合唱していた。


 リネイア、シエル、移動頼めるか?


「分かりました。お任せください」


「了解ー」


 リネイアとシエルが連れて来たんだしな。

 完全に知らない人間である俺たちが誘導するより素直に入ってくれるだろうと、そう考えて二人に頼んだんだが。

 そんなこと考える必要なかったな。


 俺の目の前で臨時小屋の柵を開けられた牛と鶏が我先にとダッシュで新しい牛舎と鶏舎に飛び込んでいく。

 その姿はまるで濁流のごとしだ。

 誘導の必要なんて全くなかった。


 ま……まあ? それだけ気に入ってくれたってことだし? よしってことにしておこう……。


 俺がそう自分を納得させていると、新しい牛舎と鶏舎の柵を閉じたリネイアが話しかけてくる。


「代表様、改めて報告します。牛十頭と鶏十羽、確実に引き渡しいたしました」


 ああ、ありがとう。

 確かに受け取った。


 俺はそう返す。


「残念ながらまだ紙が出来ていない為書面に残すことはできませんが……出来次第記録しますので」


 ああ、頼む。

 でもあんまり追い込まないようにな?

 多少時間がかかってもいいから……。


「寛大なお言葉、ありがとうございます。ですが……そうお待たせすることなく作り上げてみせますので!」


 リネイアは気合が入っている。


 まあ、気持ちもわかる。

 リネイアは紙を作って作物の収支なんかを記録する為人手を集めて来た。

 そして歓迎会の翌日から早速着手していたのだが、いまだに紙の作製に成功していない。

 原因は原材料。


 ここ、果ての森の木材はこれ本当に木か? ってくらい硬い。

 そのため……これまでの紙の製造法をそのまま使ってもなかなか成功しないらしい。


 いろいろと試行錯誤をしているが上手くいっていないみたいだ。

 まあ、気長に構えてもらっていい。

 これまでない状態でやってきたから最悪無くてもいいしな。


 などと俺は考えていたんだが。




 三日後。


「代表様!お待たせいたしました!紙が完成しました!」


 と、リネイアが真っ白な紙を持って俺の執務室に入ってきた。


 ……まじ?


 俺は目が点になっていたが、気を取り直してリネイアに声をかける。


 ああ……み、見事だ。

 それにしても、あんなにてこずっていたのに……どうして急に?


「はい、皆さんの助けのおかげです」


 ふむ?


 詳しく聞いてみると。


 あの後。

 俺の予想通り、リネイアたちは紙の作成には苦戦していた。

 だがそこにたまたまユウフが通りかかったらしい。

 そしてユウフは苦戦しているリネイアたちを見かねて助力した。

 すると。

 これまで苦戦していた紙作りが上手くいき始めた。


 それから、リネイアたちはユウフ以外にも街にいる色んな者にアドバイスを求め、試行錯誤を続けて行った結果……なんと三日で形になったらしい。



 いやぁ……凄いな。

 三人寄れば文殊の知恵って言うが、やっぱりみんなで知恵を出し合うって言うのは凄いな。


「本当にありがたいことです。この後みなさんにお礼を言って回ろうと思います。……それで代表様、この紙のことなんですが……」


 ああ。


「製造に魔法を使います。私やシエルなら問題はありませんが……他の者が作るには属性魔石を使う必要があります。その分とても質の良い紙が出来るのですが……」


 そう言ってリネイアは俺に手に持った紙を渡してくる。

 俺はその紙に指を滑らせるが……凄い。

 とてつもなくさらさらとした感触が指に伝わる。

 何かを書くまでもなくわかる。

 いい紙だ。


 ふむ……なるほど。


「申し訳ありません。質もよく保存性も高いのですが、属性魔石を使わずに多く生産するのは現時点ではほぼ不可能でして……」


 いや、構わない。

 属性魔石はもう十分掘れるようになってるしな。

 尽きる気配も今のところ全然ないし……ガンガン使っちゃっていいだろう。


「ありがとうございます!」


 よし、それじゃあこの調子で大量に生産してしまってくれ。

 木材が足りなくなったら、俺とか……あとはルシュとかハイラとかに声をかけたら調達してくれると思う。

 俺からも話は通しておくから。


「はい!かしこまりました!秋までには十分な量の紙を余裕をもって用意できると思います!」


 うん? 秋?


「え? ええ……作物の収穫は秋。なら収支記録の為に大量に紙が必要になるのはその時ですよね?」


 ……ああ、そうか、悪い。

 言ってなかったな。

 うちは収穫が年四回あるんだ。


「……はい? 収穫が年……四回?」


 そう。


「ふ……ふふ……。代表様は冗談がお上手なのですね……」


 いや。

 冗談じゃない、本当に悪いけど。

 次の収穫までそんなにかからないと思う。


 俺がそう言うと。


 ふらっ……と、リネイアの身体が揺れる。


 ……えぇ、と。

 リネイア? 大丈夫か?


 俺が声をかけるも、リネイアは顔を伏せ答えない。

 そして……ふっ、と顔を上げたかと思うと、その顔には満面の笑顔が浮かんでいた。

 だが……心なしかその笑顔には影がかかっているような気がする。


「ええ……もちろん大丈夫です。次の収穫までには十分な量の紙を用意して見せます」


 リネイア? 無理はしなくても……


「無理? ふふ……無理などしていませんよ、代表様。ご安心ください。私どもを移住させて良かった……と、そう思っていただける結果を出してみせましょう」


 そう言うとリネイアは笑顔のまま俺の執務室を出て行った。


 ……あー……。

 短い付き合いだがなんとなく……本当に何となくだが……。

 シエルがひどい目にあう気がする。

 すまないシエル。


 俺の視界の端に涙目のシエルがよぎった気がした。


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