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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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47.新たな形態解放と実験

 歓迎会の翌日。

 俺の頭に声が響く。


 ”累計十種族結集。新たな形態「ペン」「境界標」解放”


 そのアナウンスに、俺は寝ぼけた頭で記憶をたどる。


 ……ああ!そう言えば来てなかったな、アナウンス!




 ふぅ。


 完全に目が覚めた俺は、毎度のごとく新形態のテストをする為、前回のテストでも使った空き地に向かっている。

 ムイも一緒だ。

 新形態のテストをしようとすると、毎回いつの間にか肩に乗っている。


 にしても……気付くのが遅れたな。

 俺は創造神器の新しい形態や能力の解放条件は、移住してきた新しい種族が一夜を過ごす事、だと思っている。

 実際今までそうだったしな。


 だが今回、リネイアとシエルは街で一夜を過ごす前に、人手を確保する為街を出て行ってしまった。

 それゆえそのタイミングでは新形態は解放されず……歓迎会を終え悪魔族と天使族が街で一夜を過ごしたこのタイミングで新形態が解放されたのだろう。


 自分でもアナウンスが無かったことにもっと早く気づけよって話だが、しょうがないんだ。

 あの時俺はリネイアの剣幕……ではないな。

 迫力に押されて、少し浮足立っていた。

 気付かないのもしょうがない。


 ……しょうがないって事にしておいてくれ。


 とにかく。


 今は新形態のテストだ。

 ちょうど空き地に着いたし早速始めよう。


 解放された形態は二つ。

 ペンと境界標。


 境界標って言うのはよく分からないから後回し。

 なのでまずはペンから。


 俺がペンになれと創造神器に念じると、創造神器はその通りに形を変える。

 その見た目は……こういうの、羽ペンって言うんだっけ?

 よくファンタジーにも出てくるような、鳥の羽の先端を削ってペンとして使える様にしたアレ。

 そんな見た目のペンが俺の手に握られていた。


 特筆すべきことがあるとすれば……その羽の部分。

 羽ペンの羽は真っ白な羽、というのが俺の勝手なイメージだが、この羽ペンはそうではない。

 真っ赤だ。

 いや、真っ赤って言うのは正しくないな。

 より正確には、炎だ。

 ……いや、うん、炎ってどういうことだ? って自分でも思う。

 だがそうとしか言えない。

 何と言えばいいか……揺らめいているんだ。

 羽の色が。


 基本の色は赤。

 それが濃くなったり薄くなったり、大きくなったり小さくなったりとまるで羽が燃えているかのように揺らめいている。

 かといって別に熱を感じたりはしない。

 何とも不思議な羽ペンだ。

 異世界のペンって感じが凄くする。


 さて、いつまでも眺めていてもしょうがない。

 テストをしないとな……と、そこまで考えて気付く。


 ペンのテストをしようにも紙が無い事に。


 そう、これからリネイアたちが紙を作ってくれることにはなっているが……現時点ではまだ紙は無い。


 あー……そう言えばまだ紙なかったな……どうするか。

 適当な木の表面で試すって言うのも何だかな……やっぱり紙が欲しい。

 でも無い物はしょうがないか、テストは後回しに――


 と、そこまで俺が考えた時。


 パァッ……と、俺の目の前が光り。

 光が収まるとそこには一冊の本が浮かんでいた。

 外観は茶色のかなりしっかりした本みたいだ。

 表紙には何も書いていない。


 ……え?


 俺はあっけにとられる。

 いきなり目の前に本が出てきたからな。

 だがそんな固まっている俺の肩の上で、ムイが早く開けと急かすように俺をツンツン突いてくる。


 俺は気を取り直しつつも本を開いて確認してみたが……その本は全ページ白紙だった。

 再びあっけにとられる俺。

 こんな意味深に出て来といて全部白紙とかそんなことある?


 そして再びムイがつんつん突き始める。

 今度は俺じゃなくて開いた白紙のページを。


 今度は早くペンを試せと言っているようだ。


 え? この本で?


 幾ら白紙といえども結構しっかりした感じの見た目だし……流石にテストに使うのは。

 そう俺が躊躇するもムイのつんつんは止まらない。


 う~ん……まあ、この本、紙が欲しいって考えたから出てきたものなんだよな……? それじゃあ、まあ……一ページだけ……。


 俺はそう考え、折れる形で一ページをテストに使う事にする。

 そして何を書こうかと考え……ふと前世の事を思い出した。


 そう言えば……本に書いた事がそのまま現実になる、とかそういう話があったな。


 かなりしっかりした高級感のある本だったからか、突然目の前に出て来るなんていう不思議な現れ方をした本だったからか。

 俺はそんな事を思った。


 そして、まあ。

 テストなんだから書く事はなんだっていいやと俺はそう思い。

 悪ふざけでこう書いた。


「ムイは上空百メートルに転移した」


 すると。

 フッ……と、俺の肩から重さが消えた。

 見てみるとムイが居ない。

 肩から飛び降りたのかと思い周囲を確認するがそれでもいない。


 …………まさか?


 そう思い上を見上げる。


 そしたら……いた。

 ムイが今まさに落下してきていた。


 ムっ、ムイーーーーーーーっ!?


 俺は慌てふためき、落下地点に入りとっさに受け止めようとする。

 と、そこで。


 バッ!と、ムイが大きく体を広げ落下速度を軽減。

 そのままゆっくりと降りてきて……俺の肩にピンポイントでふわりと着地した。


 ……あぁ、そう言えばそうだった……っ!ムイは一人? パラシュート出来るんだった……!


 とっさの事で頭から飛んでいたが、前回のテストで上空に打ち上げられたムイは同じ方法で地上に帰って来ていた。

 俺はほっと胸をなでおろす。


 はぁ……良かった。

 ごめんな、ムイ。

 まさかこんな事になるとは……俺の思慮が足りてなかった。


 落ち着いた俺はムイに謝る。

 いきなり上空に放り出すとかムイじゃなかったら大惨事だ。

 ……ムイじゃなかったならこんな事書かなかったかもしれないが。


 俺の謝罪にムイは気にするなとぷるぷる震えている。

 むしろもう一回やってくれとでも言う様にかなりぽよぽよしている。


 ……ちょっと俺の精神衛生上よくないので丁重に断らせてもらって、俺は開いたままだった本のページを見る。

 そこには書かれていたはずの文字が無くなっていた。


 ……ムイを受け止めようと動転した時に別のページを開いちゃったか?


 そう考え他のページを確認するも、俺が書いたはずの文字はどこにもない。

 本は再び全ページ真っ白になっていた。




 その後。

 いろいろと試してみていくつか分かった事がある。


 どうやらこの本は契約書……いや契約本? のたぐいらしい。

 本に書かれた契約は必ず遵守される。

 そういうことのようだ。


 まず、なぜ「書いた事が何でも実現する本」じゃないと判断したかと言うと。

 何でもは実現させることが出来なかったからだ。


 具体的には……スマホ。

 俺はあの後、スマホが俺の手の中に現れる、といった事を本に書いたのだが、それは実現することなく、文字は溶けるようにすぐに消えてしまった。

 他にもパソコンや、車等……そういった物品を実現させることはできなかった。

 なので書いた事が何でも実現するわけではない、と判断した。


 そして、なぜ契約を遵守させる本だと結論付けたかと言うと。

 正直暫定だが、それが一番しっくり来たからだ。


 例えば、俺は本に「ムイは一分間俺の肩に乗る事は出来ない」と書いた。

 するとそれはその通りになった。

 俺がムイを乗せようとしてもなぜか弾かれた。


 他にもいろいろ試してみて、分かった事が、相手が同意していれば大抵の事は実現できるが、同意していなければ文字は直ぐに消える、ということだった。


 この事から俺が一番ふさわしく思えたイメージが契約遵守の契約本だったのだ。




 と、ここまで色々試してみて思ったが……。

 俺はこの本が特別な契約本だと思ったけど、もしかして特別なのは創造神器のペンの方か? このペンで書くからこそ、こんな契約を遵守させる、なんて芸当が可能になる……?

 もしかしたら両方特別なのかもしれないが……今は分からないな。

 これは紙が出来た時に確かめればいいか。




 さて、ペンのテストで結構な時間をくってしまった。

 もう片方もテストしないと。


 もう一つ解放された形態は……境界標。

 どんな形態なのか全く想像がつかない。


 なので早速変化させてみる。


 俺が創造神器に念じると、創造神器は姿を変えた。


 境界標、その姿は……四角錐。

 ピラミッドを縦に長くしたような形の……杭? だった。




 ふむ?

 形は分かったが……何に使うんだ? これ?


 俺は困惑する。


 杭っぽいし地面に刺して使う物なのか……?


 俺がそう頭を悩ませていると。


 ぴょん、とムイが地面に飛び降りた。

 そして先ほど本にやっていたみたいに……今度は地面をつついている。

 いいから刺してみろ……と、そう言っているようだ。


 ……まあ、確かに使ってみないことには分からないか。


 俺はそう判断して、ムイの助言? に従い境界標を地面に刺してみる。


 すると。


 ブワッ!!……と。

 何か……神聖さを感じる様な……半透明な力場? が半円状に広がった。

 自分でもふわふわした事言ってるなと思うがそうとしか言えないから仕方がない。


 しかしその力場が広がったこと以外に変化は無い。

 俺が首をかしげていると。


「なになになになにー!?何が起きたの!?何この結界!?」


 シエルが慌てた様子で飛んできた。




 シエルを落ち着かせて話を聞くと。


 この半透明の力場? は結界らしい。

 内と外を分けるもの。

 俺が結界と聞いて想像する様なそれだな。


 シエルも含めた天使族は魔物が入って来れない様になる結界を張る事が出来るらしいが……張れても小型。

 せいぜい半径五メートルが良い所らしい。


 だが今創造神器によって張られた結界は軽く半径百メートルはある。

 それゆえシエルは泡を食って駆けつけてきた、とそういうことのようだな。


「はぁーほんとびっくりしたー……。それじゃあ特に何も起きて無いんだよね? とんでもなく強い魔物が攻めてきたりとかしてないんだよね?」


 ないない。

 ちょっと試しに使ってみてただけだ。


「ふぅー……よかったぁーほんと……寿命縮むかと思ったよ……」


 そんなにか?

 それは……驚かせてしまって済まない。


「いいよいいよー気にしないで。勝手に慌てたこっちも悪いし。そういうことなら続けてて大丈夫だからー」


 ……そうか?

 まあそう言ってくれるなら……。

 あ、ついでに見ていくか?


「あははー心躍る誘いだけど。他にも慌てた子が居てーそっち落ち着かせてくるからー」


 あー……ほんとすまない。


「いいっていいってー。それじゃ頑張ってねー」


 そう言い残してシエルは飛び去って行った。


 ふむ。

 シエルはそのまま続けて大丈夫だと言ってくれたが、あれ程に慌てさせておいて素知らぬ顔で続けるのはなんかちょっと気が咎めるな……。

 せめて、この結界がシエルたちを慌てさせないほど小さい物だったら……。


 と、俺がそう考えると。


 ギューン……と、結界が明らかに縮んだ。


 …………。


 ……大きくなれ。


 結界が広がる。


 ……小さくなれ。


 結界が縮む。


 ……四角くなれ。


 真四角の結界になった。


 ……さすがは創造神器。

 好きに可変が可能とは。




 その後。

 俺は小さくした結界で実験を続けた。


 分かった事は。


 一つ。

 結界は大きさも形も好きに変えられる。

 最小でおよそ半径三十センチほど、最大は試してないが最初に張った結界は半径百メートルはあった。

 形も自由自在だ。

 円に四角、三角、果てにはらせん状にすることすらできた。


 一つ。

 結界は敵意を持つものを弾く事が出来る。

 敵意を持つもの、具体的には魔物だな。

 角兎で試してみたんだが、角兎はどれだけ突進を繰り返しても結界を破る事が出来なかった。

 結界はびくともしなかったな。

 それと……なんと弾くものは生物に限らない。

 腐った果実や毒を持った植物なんかも弾くことが出来たのだ。

 ……植物に敵意も何もなくないか?

 異世界だとあるのかな?


 一つ。

 別に弾くものは敵意を持つ者に限らないこと。

 ついさっき言っておいてなんだが、別に弾けるのは敵意を持つ者に限らない。

 弾く対象は正確には……俺が弾くと決めたもの、だ。

 いろいろ試した結果、どうやら創造神器の杭……境界標を地面に刺す時に俺が弾きたいと念じていたものが弾かれるようになるらしい。

 適当な枝を弾きたいと念じて結界を張ったら、木の枝は広がる結界に押されて転がって行った。

 ちなみに特に何も考えずに刺した場合、先に言ったように敵意を持つ者を弾く結界になる。

 デフォルトではそう言う設定? になっているみたいだな。

 創造神器が俺に対する敵意……というか害? を感知できるのと何か関係しているのだろうか……。


 と、まあ。

 分かったことはこんな所だな。


 境界標。

 結界を作れる形態。

 魔物が入ってこれない領域を作れるというだけでとてつもなく有用だろう。

 さらには弾けるものを自分で決められると来た。

 便利すぎるな。


 ……もし、この街を強大な魔物が襲う……なんてことがあった時。

 境界標があれば街を守ることが出来るかもしれない。

 期待しよう。





 さて、今思いつくことは大体テストしたな。

 ペンも境界標も……これからとても役に立ってくれそうだ。

 よし、それじゃあやることはやったし……。


 いきなり結界張ってごめんって天使族たちに謝りに行くか。


 そう決めて俺は天使族たちに謝りに行った。

 みんな二つ返事で気にしないでほしいと言ってきた。

 心が広い。


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