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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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34.二度打ちと皆の冬の様子

 ルシュに押し切られた翌日。

 俺は自室で座禅を組んでいた。


 いくらルシュが魅力的だったとはいえ……流れで押し切られてしまうなんて。

 意志が弱い。

 我ながら。


 心を落ち着かせ、もうこんなことはないように努めると決意をみなぎらせる。




 そしてその日の夜。

 俺の自室に今度はハイラがやってきた。

 またムイはいない。


 ……なんだか……既視感があるんだが……。

 ハイラ……用件は?


「はい、代表様。どうか私にお慈悲を頂きたく」


 ハイラは一切表情を変えることなく言い放った。


 けほっ!っと、驚いて思わずむせてしまう。


 エルフのハイラは常にクールな、冷静沈着な美人といった感じでその表情が変わるところはめったに見たことがない。

 だがこんな時にも表情を変えないとは。


 そのままハイラは無造作にこちらへ近づいてくる。


 まったまった待ってくれ!

 こういうことはよく考えた方がいいし、何よりルシュが……


「ご安心ください、ルシュ殿も納得の上です」


 え?


「代表様ほどのお人であれば相手が何人いようとも自然なことです。ですのでルシュ殿と話し合い順番だけ決めさせていただきました」


 ……え?


「ですのでどうぞ代表様はなにもお気になさらずに……どうか、お慈悲を頂けると」


 そう言ってハイラは身体が触れ合う距離まで近づいてきた。

 ふわり、と花のようなにおいが俺に届く。


 ……ハッ!

 いかんいかん!

 ここで流されたら何のために座禅を組んだんだ!

 ハイラには悪いがここは強い意思で流されないように……!


 そう考えたところで、ハイラの顔がふと目に入った。

 先ほどまでは距離があったからわからなかったが、ここまで近づいたら俺でも気付ける。


 いつもと変わらないと思ったその頬は、近くで見なければ分からないほど薄く色づき。

 そして、その尖った耳にもわずかに赤みが差し、瞳はうっすらと潤んでいる。

 さらには……その体はかすかに震えていた。


 女心なんてものには全然疎い俺でも理解できる。

 ハイラはそう見えづらいだけで……かなりの覚悟を固めて俺の元へ来たのだろう。


 そう考えたら……俺は、とても拒絶などできなかった。

 俺は流された。



 意志が弱い!!!俺は!!!(一日ぶり二回目)




 そして、次の日。


 俺は再び座禅を組みながら二度あることは三度あるかもしれないと身構えていたのだが。

 幸運? にも攻勢をかけてくる者はいなかった。


 ホッと息を吐く。


 なんだかんだルシュたちほどの美人に迫られるのは嬉しい。

 俺も男だからな。

 でも、女性慣れなんてしてないので、気恥ずかしさが勝る。


 この気恥ずかしさがなくなる日は来るのか……来ると良いな……。


 そう考えながら、特に誰も訪ねてこなかった平和な一日を過ごした。


 ちなみに、来なかったのはその日だけで。

 ルシュとハイラは冬の間ずっと夜に訪ねてきた。

 俺は頑張った。




 そして当然ながら冬は夜だけではない。

 昼だってある。


 冬の昼は大体みんな家にこもって何かをしている。

 俺があまり出ないようにと注意喚起したからな。


 まあ出てる者は出ているが……。


 例えば、念のための見回りにハイコボルトの一部。

 それと、冬でも火事場に入り浸っているドワーフなんかだな。

 あと一応、皆の様子を見て回っている俺もか。


 まあ、別に目くじらを立てることもない。

 天気がひどくなりそうならすぐに帰るんだぞ、と注意喚起だけする。


 家にいる者もそれぞれ思い思いのことをやってるな。


 シロとリル。


 この二頭は家の中でごろごろしている。

 とはいってもメインでごろごろしているのはリルで、シロはそれに付き合っている感じ。

 お腹もそれなりに膨らんできたからな。

 傍を離れたくないんだろう。


 ……でも流石にちょっと暇そうだな。

 気休めだが、木でボールを作って差し入れてあげた。


 結構喜んでくれた。


 ハイコボルトとコボルトたち。


 ここは去年と同じだな。

 木材を持ち込んで小物を作っている。

 見た限りコンテスト? のようなものをやっているようだ。

 誰がよりいい品物を作れるのか、といった。

 俺も審査員としてお呼ばれしたが、見る限りハイコボルトたちの方がいいモノを作れているように見える。

 これも進化した恩恵か?


 コンテストはハイコボルトたちの品物が上位になって終わった。

 コボルトたちは自分も進化すればあれほどの物を作れるかもしれないと前向きにとらえているみたいだな。

 まあやる気につながったのなら良かった。


 エルフたち。


 道具作りと的当て。

 道具は簡単な罠や、獲物に匂いを付ける玉、薬草を使った簡単な軟膏など。

 主に森の中で使うものだな。


 そして的当て。

 弓で小さい的を狙っている。

 修練も兼ねた遊び……みたいな感じか?


 そして弓も大きなものではない。

 手のひらサイズの小さいものだ。

 俺は修練兼遊びにだけ使う弓かと思ったら、実際に使う物らしい。

 獲物をしとめるためでなく、意表を突いたり、毒を打ち込んだり。

 そう言った用途で使う物だそうだ。


 そのためエルフたちはこの弓を片手で撃てるのだとか。

 本当か? と半信半疑になった俺にエルフたちは実際に見せてくれた。


 およそ十メートルほど離れた的に片手で次々と当てていく。

 上手い者は走りながらや前転しながらでも的のど真ん中に当てていた。


 はぁ……凄いな。

 弓が得意だとハイラに聞いていたがここまでとは。


 これならハイラの提案通り見張り台作ったら相当の警備効果がありそうだ。


 ドワーフたち。


 鍛冶場に行っている者もいるが、住居に居る者もいる。

 こっちにいる者達はだいたい研ぎ作業をやっているようだな。

 シャッシャッシャッ……と、小気味いい音がリズムよく鳴っている。

 さすがはドワーフたちだ、その手付きに一切よどみはない。


 何でも、炉が作られるのをただ待つのではなく、それまでにさらに腕を上げ炉にふさわしい……いやそれ以上の腕を手に入れるのだとか。

 外は寒いがドワーフたちの心は熱く燃えている。


 今は冬で炉づくりもいったん中断しているが、手ごたえはある。

 春には必ず炉を完成させ、ドワーフたちの研鑽に報いよう。


 ウンディーネとノーム。


 ウンディーネはあまり語ることはない。

 フィーネ以外は凍眠しているし、フィーネものんびりしているだけだしな。

 だけど毎日お湯を用意してもらってそれはすごく感謝してる。

 ありがとう。


 ノーム。

 ノームもあまり言うことがない。

 ウンディーネみたく凍眠するわけではないものの、ノーム達も冬の間は大人しくなるらしい。

 住処の中でじっとしているのだと言っていた。

 様子を見に行ったとき、ラウームが教えてくれたのだが、それなりに気だるそうだった。

 負担をかけるのは忍びないし、様子を見に行くのは最低限にする。




 ふむ。

 こうやっていろいろ様子を見に行ってみたが、皆思い思いのことをして過ごしている。


 様子を見て回るのもいいが俺も見習うか。

 そう俺は一人で自室に陣取りつつ考える。


 とはいっても何をするか。

 正直今の街事情じゃ木で何か作る、くらいしか思いつかないんだよな……。

 小物なんかを作るのもいいが、そればかりだと飽きる。

 可能ならば何か暇をつぶせるようなものを作りたいが……。


 ……トランプ!

 は、無理だ。

 裏面を統一できないからカードがバレる。


 なにか、木で作れるもの…………将棋?

 いやまあ作れはするが、俺は将棋初心者だしすぐ飽きるだろ。

 もっと他の……って、あ、そうか。

 オセロで良いな。


 ……なんでこんな簡単な発想が出なかったんだ。

 ボードゲームと言えば真っ先に出てくるような存在だろ、オセロは。


 自分で自分に呆れつつ早速作る。

 創造神器をノミに変化させれば木材を思った通りに成型することが出来る。


 ほんの数十分で一セット作り上げることが出来た。


 と、ちょうど作り上げたタイミングでルシュがやってきた。


「主様、それは?」


 ルシュも丁度出来上がったばかりのオセロに目を留めたみたいだ。

 オセロの説明をする。


「なるほど……そういった遊戯なのですね。分かりました。不肖ルシュ、主様のお相手を務めさせていただきます」


 よし、ラッキー。

 あっさり相手が確保できた。

 早速対戦を始める。


 ああ、そうだ、念のため。

 わざと負けて俺に華を持たせようとかそんなこと考えなくていいからな。

 一緒に楽しんでくれたらうれしい。


「……主様がそうおっしゃるのであれば……分かりました。楽しませていただきます」


 それでいい。

 楽しもう。


 オセロ勝負。

 最初は俺が連勝した。

 まあルシュはルールを知ったばかりの初心者だからな。


 だが対戦を重ねる度にどんどん学習して最終的にかなりいい勝負になった。


「主様!主様が考えたこの遊戯……とても面白いですね!さすがは主殿です!」


 俺が考えたんじゃないけどな。

 まあ楽しんでもらえてるならこっちとしても嬉しい。


 そうやって二人で楽しんでいると。

 今度はハイラがやってきた。


「おや、お二人とも。それは何を?」


 ハイラにもオセロの説明をしてやってみないか誘ってみる。

 ルシュにも言ったようにわざと負けようとしなくていいと言って。


「……なるほど、面白そうですね。分かりました。代表様、お相手願えますか?」


 もちろん構わない。


 ん? 今って……よく考えてみたら、夜俺の部屋に訪ねてくる二人と一緒にいるのか……。

 ふと気づいてしまい、俺を何とも言えない気恥ずかしさが襲ってくる。

 くっ……俺が女性慣れする日はまだまだ遠いようだ。


 俺は深呼吸して、そのことは今は考えないようにする。

 勝負に集中するんだ。


 とはいってもハイラだって今ルールを知ったばかりなんだし、多少心乱れてても勝てるだろう。

 そう楽観して勝負に挑んだ結果。


 普通に負けた。


 え……えぇ……? は、ハイラさん……? 強くない……? しょ、初見のハズ、ですよね……?


 あまりの衝撃につい敬語になってしまった。


「はい、このような遊戯は初めてです。流石は代表様です。とても面白いですよ」


 あ、ああ……それはいいんだが……なんでそんな強いんだ……?


「?ルールを教えていただきましたので」


 ルールを知っただけでいきなり強くなれるんならどんなプレイヤーも苦労なんてしないんだが……。

 ハイラってもしかして、めちゃくちゃセンスあるのか?


 その後もルシュと入れ替わりつつ、ハイラに勝負を挑んだんだが。

 俺もルシュも全敗だった。

 それも惜敗とかじゃなくぼろ負け。

 対戦を重ねるほどに差が開いていったような気がする。

 ハイラ、ほんと強いな……。


 今度何か他のテーブルゲームも作って勝負してみよう。


 怖いもの見たさでそう決意しつつ、冬の日々は過ぎていった。


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