33.二年目最後の収穫と冬備え
試行錯誤しつつしばらく、まだ完成はしていないものの炉づくりも順調に進んでいる。
これならそう遠からずドワーフの満足ラインに届く炉が出来上がるだろう。
と、言ったところで。
少しずつ、本当に少しずつだが肌寒くなってきた。
冬の到来だな。
後で慌てなくていいよう、余裕をもって冬の備えに入る。
去年と同じなら、次の収穫が終わった直後くらいに寒さが本格化しだすはずだ。
収穫にも時間がかかることを考えると、収穫前までに冬備えを終わらせたいところだな。
まあかなり人出が増えてるんだ。
楽勝だろう。
というわけで炉の作成はいったん後回し。
冬の準備を進めていく。
とはいってもそんな大仰にやることは特にない。
食料も冬を見越してしっかり備蓄しているし、各住居にも念のため大目に保存させている。
防寒対策もある程度は織り込んでどの住居も建築したし、やることと言えば……。
ハイコボルトたちに肉を多めに確保してもらい、保存食を多めに作ってもらうこと。
エルフたちに特に薬草を多く採取してもらい、各住居に割り当てておくこと。
ドワーフたちに雪が降った時に備えるためのスコップを作っておいてもらうこと。
後は……そうそう、魔物対策も一応やっておかないとな。
魔物だって動物であることには変わりない。
だから冬は基本的に動かない。
そう聞いたし実際去年の冬は魔物の襲来なんてなかった。
だが今年も同じだという確証はない。
熊だって冬眠せずに動き回る個体がいるっていうしな、警戒しておくに越したことはないだろう。
ふむ……それなら……。
罠を作るか。
ドワーフに頼んで罠を作り、それを周囲に仕掛ける。
一緒に何か音の出る仕掛けもつけておけば、罠が効かない相手であっても俺が駆け付けられるだろう。
さて……こんなものか?
これだけやっておけば十分だと思うが……。
備えって言うのは実際に使ってみるまでは十分かどうかわからないからな。
まあ、食料と薬、この二つさえしっかりしておけばそうそう大変なことにはならないだろう。
そう信じる。
そうして冬に備えつつ過ごし。
いよいよ今年最後の収穫の時が来た。
「よし、収穫したらどんどん運んでくれ!いつ寒くなるかわからないからさっさと終わらせよう!」
「「「はい!!」」」
畑もかなり広くなったが、人手も増えている。
次から次に収穫していき、それぞれの家に備蓄として運び込む。
入りきらない分は倉庫に入れる。
やはり八十人近くマンパワーがあると見る見るうちに作業が進む。
予想通りそう時間もかからず収穫を終わらせることが出来た。
皆に感謝だな。
ちなみに。
米や大豆と時と同じように、採掘中にぽろっと出てきたので植えておいた種。
これらもしっかり育ち収穫できた。
種の正体は……さとうきび、胡椒、トマト。
正直実を付けた時は興奮もしたが首を傾げた。
なぜならちょうど塩味以外にもいろいろ味が欲しいな、と思っていたところにこの作物。
さとうきびと胡椒は言うまでもないし、トマトだってケチャップの材料になる。
ケチャップ作るための酢はまだ作れないが……。
とにかく、これはさすがに都合良すぎないか? と俺は本格的に思い始めた。
ラウームやイアンだって地層の奥深くから生きている種が出てくるなんて、と、とても驚いていたしな。
そうして思考した結果。
やはりこれは、創造神器の力なのでは?
そう俺は結論付けた。
進化しかり、成長速度の加速しかり。
異世界の常識ですら計り知れないことはすべて創造神器の力によるものだ。
だからこの、俺が欲しがっている種が出てくるのも創造神器のおかげじゃないかと俺は結論付けた。
それ以外に何も理由が思いつかなかったともいうが。
まあ、なんにせよありがたいことに変わりはない。
この三つもガンガン増やしていこう。
……冬を越えてからな!
そんなこんなで。
冬が本格化した。
収穫が終わって二日後、一気にガクンと寒くなったのだ。
まだまだ外出できないほどではないものの、吐く息がわずかに白みがかるくらいには寒い。
このタイミングでそろそろウンディーネたちは凍眠に入るようだ。
フィーネが教えに来た。
「というわけでみんなおやすみだから~。何かあるなら今のうちに言っておいてほしいな~って~」
「特に何もないよ。……ああ、強いて言うならいろいろ世話になった。来年、いや来春からもよろしく頼むってことぐらいか。フィーネもありがとう。おやすみ」
「え? わたしは寝ないけど~?」
……はい?
話しを聞くと、どうやらこれも進化の恩恵らしい。
たとえ冬でも凍ることなく、体温もそのままに活動できると。
そんな恩恵まであったんだな。
「だから進化したときすっごく嬉しかったんだよ~!ほんとにあるじありがと~!」
お礼なんていい、こっちも世話になってる。
フィーネが冬眠しないということは……冬でも風呂に入れるのか。
これは正直かなり嬉しい。
寒い時期に入る風呂は本当にホッとできるからな。
よろしく頼む。
「うん~!任せといて~!」
そんな話をしながら俺たちは冬を過ごしている。
基本は家の中で過ごし、まだ出歩ける間は様子を見に行ったりこっちに顔を出してもらったり。
そうしていると、とうとう雪が降ってきた。
結構な勢いで降っている。
このまま降り続くならしばらく出歩かない方がいいな。
そう連絡を出して、俺たちも自宅にこもることにする。
さて、どうするか……。
去年もそうだったが、 今の街には本とかゲームなんてものはない。
自分で作ろうにも、電子機器どころか紙すらない。
紙は本当に欲しいな……来年までにはどうにかならないかな……。
そんなことを考えてしまう。
だが、どれだけ考えてもないものはないので、暇つぶしと言えばせいぜい創造神器で何かを作ったりすることぐらいになる。
でも小物づくりは去年もやったしな。
……いや、去年よりさらに上手く作れるだろうし、作って比べてみてもいいな。
モチベーションが上がるかも。
俺がそんなことを考えながら自室でゆっくりしていると。
扉がノックされる。
「失礼します、主様。少々よろしいでしょうか?」
ルシュ? 全然かまわないけど何か用事か?
「はい。……いえ、今ではないのですが……その、本日夜お時間いただいてもよろしいでしょうか? ご入浴後で構いませんので……」
時間を取るのは良いけど……何の用事だ?
俺はそう聞いてみるも、ルシュの返答はいまいちはっきりしない。
そのまま、用件は本日の夜に言いますので!と言い残し部屋を出て行った。
えぇ……?
そしてその日の夜。
頼まれた通り俺は時間を取った。
良くは分からなかったが、わざわざルシュが頼んできたことだしな。
そしてなぜかはわからないが、ムイはぽよぽよと部屋を出て行った。
いやまあ自由にしてもらっていいんだけどな。
そして待つこと少し。
ルシュがやってきた。
ルシュも入浴してきたのか、体から薄く湯気が立ち上っている。
正直かなり色っぽい。
「お、お待たせしました。主様」
「あ、ああ……うん」
ちょっと言葉に詰まる。
前世でも女性経験なんてなかったから、こういうときどう接すればいいかわからない。
仕事とか必要な話なら問題なく話せるんだが……。
「今夜はお時間を取っていただきありがとうございます……よ、用件なのですが、その……主様のお情けを頂きたく……」
ああなるほど、欲しいものがあったのね、お情けが欲しいと……。
お情け!!??
混乱する俺にルシュが抱きついてくる。
「はい……主様にお情けを頂きたいのです。だめ、でしょうか……?」
そう言って上目遣いでこちらを見つめてくるルシュの目は潤み、耳も不安そうに垂れ下がっていた。
俺は流された。
しょうがないだろ!ルシュほどの美人に迫られてこんなの断れるわけないって!




