32.第三地層の先と炉づくり
そうしてそう時間がかかることなく。
俺は第四地層にたどり着いた。
俺は例のごとく創造神器の力によって地層の硬さの違いなど感じなかったのだが、採掘した鉱石を拾ってくれていたイアンとラウームが気付いてくれた。
別の鉱石が出ていると。
それを聞いた俺はまずその周囲をある程度掘り拡げ、何が出るのかを確かめる。
出た鉱石は三つ。
まず、風魔石。
緑色で持ってみるととても軽い石。
まあこれは正直予想していた。
ここまで欠かさず出て来てたしな。
次、銀鉱石。
銅が出たから次は……と内心考えていたらほんとに出た。
鈍色に輝いてつるつるしている。
イアンに聞いたら、精錬すれば魔銀……ミスリルになるらしい。
ファンタジー金属といえばでおなじみのあのミスリルだ。
楽しみだ。
最後、石灰石。
白っぽい石で俺には全然わからなかったのだがイアンに教えて貰った。
いろいろな使い道があるとイアンは言ったが……。
ここで俺の頭にひらめきが走る。
ん? 石灰石って……コンクリートの材料じゃなかったっけ?
たしか……そう確か、石灰石をドロドロにして砂利なんかと混ぜたものがコンクリートだったはず。
これは……実験してみないとな。
コンクリート、もし出来れば便利ってものじゃない。
建物だけじゃなく道路だって作れる。
夢が広がるな!
そしてこれは第四地層とは直接関係ないのだが……道中で種が三つ。
そう、種だ。
しばらく出てこなかったから忘れかけていたが、また出てきた。
採掘していたら種が出てくることについては、俺は異世界だからだろうと思っていたのだが、そうでもなかったらしい。
一緒に来てもらっていたイアンとラウームがとても驚いていたからだ。
「これは……種? なぜ地中から種が出てくるのじゃ?」
「いやもしかしたら何かの拍子に埋まったのかもしれないっすけど……それならもうとっくに寿命が尽きてるはずっす。なのにこの種まだ生きてるっすよ? どういうことっすか??」
異世界の住人である二人から見ても相当不可解なことらしい。
……ふむ。
俺のこれまでの経験からすると、異世界の常識でも測りきれない不思議はおおよそ創造神器に由来する。
つまりこれも創造神器の力……なのか?
そう考えたが確かめる方法なんてないので、俺は思考を止め、素直に種を得られたことに感謝することにした。
そういうわけで、第四地層まで採掘して得られたものはこれで全部だ。
種はいったんおいておいて、採掘できるものは確認した。
なら次にやることはは俺以外で採掘できるかどうか確かめることだ。
早速イアンとラウームに頼んで採掘してもらう。
その結果。
「うぅむ、これはまた相当の硬さですな……申し訳ありません、代表殿……」
「すんませんっす頭……地魔石使っても無理っす……」
掘れなかった。
今作れる最高の装備、マナブロンズつるはしに地魔石有りの土魔法を合わせても第四地層は掘れなかった。
これはまた、一気にガツンと硬くなったな。
さて、どうするか。
俺はそう考えるが、まあ解決策は思いついている。
銀鉱石だ。
イアンに聞く。
「……ミスリル製のつるはしであればこの地層も掘れるか……と?ふむ、可能だと思いますぞい。じゃが……ミスリルの加工となると……」
? イアンの歯切れが急に悪くなった。
「申し訳ない代表殿。ミスリルの加工は、それなりにお時間をいただくことになりますじゃ」
イアンが言うには。
炉がどうであれ全力を尽くす、とは言ったが。
ミスリルほどの金属ともなると、今現在の炉では相当に難しいらしい。
ミスリルという金属は今現在、世界で最も優秀な金属として名を知られている。
ミスリル以上の金属なんておとぎ話にしか出てこないのだとか。
そしてその優秀さだけではなく加工難易度もよく知られている。
一流の職人が一流の炉を使ってようやく加工できるようになるのだと。
「わしらの腕は一流です。そこは自負していますぞい。しかし、それでもわしらの腕だけでは加工は難しい。それがミスリルなのですじゃ……」
なるほどな……。
それならしょうがない。
ドワーフたちが満足できるような炉を作れていないこっちにも責任があるしな。
「満足していないなどとそんなことは!わしらを受け入れ、炉を作っていただけただけでありがたく……!」
そう言ってもらえるのはうれしいが、実際ミスリルの加工まではできない炉だしな……。
……よし!決めた!
今度はドワーフたちが気を遣うことなく満足だとそう言える炉、そう言える鍜治場を作ろう!
それまでは第四地層は俺だけで採掘だな。
ゆっくりやっていこう。
そう決意して少し。
収穫の時が来る。
いやあやはり成長速度が速いのはいいな。
みるみる食糧が増えていくのを見るのは気持ちがいい。
エルフとノームたちもしっかり世話してくれているし、目立った問題も起きてない。
完全に安定したと言っていいだろう。
そしてこのタイミングで、採掘した時に見つけた三つの種を植えておく。
一体どんな作物なのか楽しみだ。
その後、今年最後の畑づくりを終え、採掘の日々に戻る。
採掘は順調。
マナブロンズつるはしでも歯が立たない地層だろうと、創造神器ならサクサク掘れる。
ミスリル、風魔石、石灰石……第四地層は現時点では俺しか掘れないからガンガン採掘しておく。
そしてもう一つやっていることがある。
炉の作製だ。
ドワーフたちに満足してもらえるものを!と決めて作り始めたはいいものの……。
こっちはあまり上手くいっていない。
問題は……魔力だ。
「うぅむ……良い炉です、良い炉ですが……ミスリルの精錬には不足と思われますぞい」
今回もダメか。
結構良い感じで作れたと思ったんだが。
「申し訳ありませんぞ……。わしらももっと力になれればよかったのですが……」
炉の試作を始めてから二週間ほど。
試作四号炉も失敗。
いや、失敗ではない、失敗ではないんだが……ドワーフの満足ラインには届かず。
やっぱり魔力を炉内にとどめるのが難しいな。
マナブロンズやミスリルなどといった金属は魔法金属と呼ばれ、精錬する際に中に魔力を込める必要がある。
そのため魔法金属を精錬するための炉は、熱だけではなく魔力も逃がさずに内部で高め、金属に伝えなければならない。
そうしないと金属から魔力が抜けてしまい、魔法金属は精錬できないからだ。
いちおう魔鉄や魔銅、マナブロンズくらいなら多少抜けたとしても、抜け切る前に精錬しきることも出来るらしい。
実際マナブロンズのつるはしはそうやって作ったからな。
だがミスリルともなればいくら鍛冶が得意なドワーフでもその手は使えない。
なのでしっかり魔力を逃がさない炉を作らなければならないわけだが。
それが難しい。
俺は魔力関係のことなんて何もわからないからな。
精霊族ゆえに魔力に詳しいラウームにいろいろ聞いて試行錯誤しているものの、いまいち結果が出ない。
「すんませんっす……もっとわかりやすく教えられたらいいんっすけど……」
ラウームは悪くない。
……いや、悪いかもしれない。
ラウームはノーム、土精霊族だ。
だからなのか……感覚派だ。
魔力を留めたければぎゅいーんとすればいいっす、とか……がばうっ!って感じっすよ!とか、擬音メインで教えてくる。
正直かなり分かりづらい。
雰囲気と試行錯誤で何とかしている。
だけどまあ最初に比べればだいぶいい感じになっては来ている。
最初なんて魔力にとってはザルみたいな炉だったらしいからな。
だが試作を重ねるにつれてどんどんそのザルの目を小さくすることが出来てきている。
この調子なら次の冬が来る前……は、無理かもしれないが。
冬が終わる前にはきちんと魔力も逃がさないようにした炉が作れるのではないかと思っている。
焦らずに少しずつ作り進めていこう。




