31.交流とつるはし完成
二週間ほど経った。
この二週間、俺は銅鉱石を掘っては拠点へ輸送を繰り返し。
その結果、相当量の銅鉱石を持ち帰ることが出来た。
今は早速ドワーフたちに銅鉱石をマナブロンズに加工してもらっている。
だが、マナブロンズへの加工は魔鉄よりも難しいらしく、それなりに時間がかかるようだ。
それならしょうがない、とドワーフ区画に新たに作った鍛冶場から出た俺は、珍しい姿を目にした。
「ハイラ? 珍しいな、鍛冶場に来てるなんて」
「おや、代表様。こんにちは。……そうでしょうか? ですが確かに鍛冶場で代表様とお会いしたことはありませんね」
そこにいたのはエルフの代表、ハイラだった。
時間が空いたこともあったので、俺はハイラと話すことにした。
まあ別に俺一人で採掘に行ってもいいんだが、交流も大事だろう。
というわけで早速何をしに来ているのか、と聞く。
「作ってもらいたいものがありまして……矢じりです」
矢じり? 矢の先端につけるものだよな?
「はい、木を尖らせるのでも良いのですが、せっかくドワーフがいるのだから頼ろうと思いまして」
なるほどな。
そういえば俺はエルフが戦ってる姿は見たことが無かったな。
採集に出るときはハイコボルトたちが護衛についていたし。
なるほど……矢を使うって事はやっぱり?
「お察しの通り、我らエルフは弓を使います」
やっぱりか……俺の中でもエルフは弓使いってイメージだな。
それでドワーフに矢じりを頼みに来てる訳か。
「その通りです。……ふむ。主様、せっかく出会えたのですからお耳をお借りしてよろしいでしょうか? 一つ提案したいことがあるのですが」
提案?
もちろん構わないが……。
「ありがとうございます。提案と言うのは、見張り台の建設です」
見張り台か……。
「はい。周囲の木も多くが伐採され見通しがよくなりました。我々エルフなら高さがあれば周辺全てを警戒することが出来ます。それに代表様の家を作った経験を活かせば、十分な高さの見張り台を作れるでしょう」
なるほど。
この周辺には二頭鹿や三頭鹿といった強い魔物もいるし、進化していない者にとっては角兎ですら脅威だ。
警戒するに越したことは無い。
それを考えればハイラの提案は良い提案だ。
検討しよう。
「ありがとうございます。もし見張り台を作られたのであれば、我々エルフにお声がけを」
ああ、その時は頼む。
そんな話もしつつ一週間ほど。
マナブロンズつるはしが完成した。
「ふぅ~、ようやくじゃ……!代表殿、お待たせして申し訳ない……!」
いや……まあ、構わない。
差し迫ってもないしな。
「そう言って頂けてありがたいですぞい……!」
イアンはそう言い、心からほっとしているようだ。
いや……まあ、うん。
一週間かかったの……イアンたちのせいだしな。
俺がハイラと見張り台の話なんかをしていた翌日。
その時にはもうマナブロンズのつるはしは出来ていた。
なので俺は早速これで試掘に行こうと言ったんだが……。
イアンが拒否した。
「……だめじゃあっ!!申し訳ありませぬ……代表殿っ!こんな出来では、鉱石に申し訳たたぬっ……!」
そう言うとたった今出来たばかりのつるはしを再び炉に突っ込んだのだ。
はい? 何してるんだ?
俺は突然の出来事に混乱する。
そして、あんな事してるが良いのか? と言う気持ちで周りを見わたすが、ドワーフたちは皆それを当然の行為だとでも言う様に、腕組みをして見ていた。
えぇ……?
再び鍛冶を始めたイアンに疑問をぶつけると。
マナブロンズのつるはし、確かに完成こそしたが……採掘された銅鉱石の質を考えると、御粗末な出来だという事らしい。
これほどの質の鉱石を与えられ、この程度の品質しか作れないのはドワーフの名折れ。
それゆえに満足出来るまで作り直す……と。
いや、だがしょうがないところもあるんじゃないか?
一応現時点で作れる一番いい炉を作っているとはいえ……本格的なそれと比べたらまだまだ全然だろう?
なら多少品質が落ちるのは仕方ないんじゃ……。
俺はそう言ったが。
イアンたちが言うにはどんな条件でも良い物を作るのが職人と言うもの。
炉のせいにするなど未熟者ですらない恥知らず、だそうだ。
う~ん、職人って感じだ……。
確かに俺のイメージでもドワーフは職人気質ってイメージだったが、まさかそのイメージ通りとは。
今までの生活ではたまたまその面が出てなかっただけか。
そういうわけで、急ぎでも無かったのでドワーフたちの意思を尊重し、彼らが納得できるつるはしが作れるまで待つことにしたのだ。
……まさか一週間待つことになるとは思わなかったが。
紆余曲折あったが、マナブロンズつるはしは完成した。
なので早速試掘に行くことにする。
メンバーは前と同じ俺、ムイ、イアン、ラウール。
他のドワーフとノームたちにはいつも通り鍛冶と採掘をやってもらっている。
という訳で第三地層だ。
これまでの魔鉄製つるはしではノームに地魔石を使ってもらわなければ採掘できなかった。
早速、イアンにマナブロンズ製つるはしで採掘できるかどうか試してもらう。
結果は…………。
成功。
イアンが振るマナブロンズ製のつるはしはしっかりと壁に刺さり、第三地層を問題無く掘る事が出来ていた。
「やりましたぞ!成功ですじゃ!代表殿にお待ちいただいた甲斐があったというものですじゃ!」
「いや、凄いっすね!地魔石使ってないのにザクザク突き刺さってるっすよ!」
そう、ラウームの言う通りだ。
地魔石の増幅無しの普通の土魔法だけで採掘が出来ている。
これなら第三地層もドワーフ、ノームだけで採掘できるだろう。
光源の問題も解決できているしな。
「よし、それじゃあこれからは第三地層も採掘しに来てくれ。光源は……」
「分かってるっす、頭。光石を使えばいいんっすよね?」
その通り。
内包する魔力が尽きるまで光り続けるという光石。
つるはしが出来るまでの一週間。
そこそこ暇だったから少し実験してみたが、かなり便利なものだった。
何より便利な点は、光るのに魔力以外は必要無いという点。
俺は土を固めて密閉した場所に光石を置き、時間が経った後にそこに外から創造神器を刺し入れ内部に毒があるかどうか調べる……という実験を行った。
創造神器は向けたものに害があるかどうか調べる事が出来るからな。
結果は反応なし。
火で同じことをやってみたところ、しっかり創造神器は反応したので、光石は有害物質を出すこと無く光っていると言う事だ。
さらにはその実験後も観察していたのだが、一週間経ってもその明かりが消える事は無かった。
イアン曰く、こちらも例に漏れずかなり質が良いため、もしかしたら年単位で持つかもしれない、とのことだ。
有害なものを出すことなく年単位で光続ける光源。
まさに最適な明かりだ。
採掘用に。
いやあ……このタイミングで採掘出来て良かったな、光石。
ちょうど皆が採掘する際の光源をどうしようか悩んでいた所だったんだ。
さて、光石とマナブロンズ製のつるはしがあれば第三地層もドワーフとノームたちだけで十分採掘を進められる。
なら俺が次にやる事は……さらに奥に進むことだ。
あるかもしれない第四地層を目指して。
……あるかもとは言ったが、実際あるだろうと思っている。
ここまで段階的に硬くなる地層が続いているからな、二度あることは三度あるというし第四地層もおそらくはあるだろう。
そう半ば確信しつつ、俺はムイ、イアン、ラウームを引き連れ、そのままさらに奥へ向かって創造神器を振り始めた。




