03.転生から一夜明けて
なんとなく身体が重い気がして目を覚ます。
目を開けると俺の胸には淡く光るスライムが乗っていた。
そうだ……俺は転生して……。
夢じゃなかったんだな。
分かっていたはずだが一夜を越えると現実感が体を包む。
この感覚にもっと浸っていたい気もしたが……やらなきゃいけないことがたくさんある。
さっさと起きて動くことにしよう。
身体に不調はない。
どうやら本当に水に問題はなかったようだ。
ありがとう創造神器……。
そう思いながら体を起こすと……俺の脳内に声が響いた。
”累計一種族、結集確認。新たな形態、「斧」解放”
斧、解放?なんだこれ……と思った所で神様の言葉を思い出す。
”お前が作る街に種族が増えれば増えるほど、創造神器は新たな姿、新たな能力を使えるようになる”
これは……俺の作った街に種族が増えたってことなのか?
でもまだ街なんて作ってないし、種族も……もしかしてスライムか?
俺の作った拠点でスライムと一緒に寝たから新しい形態が解放された……?
いやそもそもスライムって種族なのか?意思の疎通は出来て?いたが……えぇ……?
よくわからないが、まあ今はラッキーと思っておこう。
斧があれば木を切ることが出来る。
木を切ることが出来れば家……本格的な拠点を作ることも出来るだろう。
そう考えていると、腹から音が鳴る。
ああ……そうだそうだ。まずは食料を探さないと。
捕らぬ狸の皮算用ってやつだ。
まずは住居より食量を確保しないと。
そういうわけで俺は入口に盛っていた土壁を壊す。
やっぱりドアとか欲しいな……。
いちいち出入りするたびの壊すのは面倒だ。
そして外に出て行こうとすると……スライムが俺の肩に飛び乗ってくる。
もしかして一緒に行こうってことか?
水の場所を教えてくれたし……もしかしたら何か食べられるものがあるところも知っているかもしれない。
俺はスライムと一緒に食料探しの旅に出かけることにした。
一緒でよかった。
洞窟から歩くこと30分ほど。
スライムが方向を示し案内してくれた場所には赤い果実?が実った木があった。
成っている場所はそう高くない。土を盛って踏み台を作れば十分取れるだろう。
俺は果実を取る前に創造神器を向けてみる。
あたたかい感覚。
危険はないようだ。
これまで創造神器の危険感知に嘘はなかった。
信じて食べてみよう。
俺は果実を手に取りかぶりつく。
これは……美味い!かなり美味い!
リンゴのような味わいで、噛むたびに甘い果汁が溢れて来る。
俺は夢中になって食べ続けてしまった。
そうしていると、俺の耳に茂みが震える音が届く。
慌ててそちらに身体を向けると、茂みから角の生えた兎が飛び出してきた!
その兎は俺の方にその角を向けて跳んできている。
俺は咄嗟に神器をその兎に向かって振った。
すると……一切手ごたえを感じずに神器は振り切られた。
当たらなかったか? と思うのもつかの間、兎が俺の横に落ちる。
その兎からは頭がなくなっていた。
やってしまった。
咄嗟にやったこととはいえ命を奪ってしまった。
ショックを受ける。
だが、今の状況を考えれば肉を得ることが出来たのは大きい。
俺は兎に手を合わせ、生きるためにいただかせてもらうと誓った。
そうしていると、一緒に居たスライムが兎を包み込んでしまった。
え? 俺が食べようと思っていたのに……。
そう思っているとスライムが兎を吐き出した。
吐き出された兎は毛や皮がなくなり肉だけが残っている状態になっていた。
まさか……毛と皮だけはいで肉を取り出した?
異世界のスライムはこんなことが出来るのか?
スライムの方を見ると食べていいよとでもいうようにプルプル震えている。
ま、まあ……手間が省けたし、ラッキーだと思おう。
俺は兎の肉に神器を向けてみるが危険反応はない。
毒はないようだ。
それでも生で食べるのはな……。
それに皮や毛だけじゃなく、血とか内臓も処理しないと……。
そう思った俺は木の棒に兎を吊るし血抜きをしつつ、何とかして火をおこす方法を考えてみる。
やっぱり一番に思いつくのは木の板に木の棒をこすり合わせ火種を起こす方法だ。
ちょうどよく創造神器の斧形態も解放されていたので、周囲の木に斧をたたきつける。
すると、創造神器(斧)は一気に木の三分の一ほどの切れ込みを入れた。
つるはしもそうだったがさすがは創造神器。
これなら三振りで木を切り倒すことが出来る。
そうして俺は切り倒した木から板と棒を切り出す。
かなり大雑把になってしまったが火をつけるのには使えるだろう。
早速草や葉を木の板にセットして思い切りこすり合わせてみる。
だが、だめだった。
火はつかない。全然摩擦が足りていない。
せっかく肉を手に入れたが、火を通せないのは怖すぎる。
食べるのは諦めるほかないか……。
俺がそう考えていると、スライムが俺の持っていた木の棒の片方を飲み込む。
そして飲み込んでいない片方を木の板に押し付けた。
そうすると、木の棒がすさまじい勢いで回転し始めた!
俺が唖然としていると焦げ臭いにおいが鼻を衝く。
どうやら火種が出来たようだ。
す、すごいな……このスライム。
俺は慌てて草や葉を追加し、大きくなった火を薪に移そうとしてみる。
乾いた木でなければ燃えない……と、昔そう聞いた覚えがあるが、問題なく火はついた。
異世界の木だから?それとも神器で切り出したから……?
とにかく火が付いたのはラッキーだ。
俺はスライムを感謝を込めて撫でつつ、火が大きくなるのを待つ。
その間に兎肉を内臓を傷つけないよう大雑把に創造神器(斧)でぶつ切りにして木の棒にさす。
そして木の棒にさした兎肉を大きくなった火であぶり口にした。
何の味付けもされていないそれはお世辞にも美味しいと言えなかった。
だが命を食べているという感覚をダイレクトに感じた。
この先も頑張っていこうとそういう気持ちになった。
ふぅ。
食べ終えると、ちょうど日が真上に来ていた。
俺は食べきれなかった分の兎肉と果実を持てるだけもって拠点に戻った。
さて、一応の食糧確保は済んだ。
果実と、後はたまに兎を狩ることが出来れば当面は大丈夫だろう。
野菜や塩分などいろいろ心配なところはあるが……。
今はそれより安全を手に入れたい。
森だから獣はいるだろうと思っていたが、まさか兎にすら角が生えてこっちを狙ってくるとは思わなかった。
兎なんだから草食だろう?動物を仕留めてどうするんだ?
そう思ったが事実は変わらない。
敵対的な獣……モンスターがいる以上、一定の安全は確保したい。
起きているときなら神器でどうにかなるかもしれないが、寝ているときは無防備だからな。
というわけで俺は洞窟周辺の土を掘り、出た土を盛り建てて高低差を作り簡易的なバリケードとした。
大したものじゃないがまあないよりはましだろう。
ついでに周辺の木から大きい板を切り出し、一つは洞窟の入り口に取り付けた。
ドアにもなってない立て板だが、まあ今はこれでいいだろう。
いちいち土を盛るのは面倒だしな。
そしてもう一つは洞窟の寝床に設置して上に草を敷く。
簡易的なベッドだ。
あとは、火をつける場所が欲しいな。
洞窟の中に作るのは怖すぎるので洞窟の外に作る。
洞窟の入り口横を軽く掘って、土で簡易的なかまどを作った。
掘っている最中、創造神器に何か硬いものが当たるような感触があった。
何だ? と思ってみてみると黒い鉱石が2つほど壁から転がり落ちてきた。
どうやらこれを掘り当てたようだ。
ふむ。
俺はまさかと思いその鉱石を打ち合わせてみたら……火花が出た。
これまさか……火打石か?
分からないが打ち合わせるたびに実際火花が出ている。
このあたり……鉱石が出るのか?
まさか背後にあったあのデカい山は鉱山……?
疑問は尽きないが、これはありがたい。
これなら俺一人でも火をおこすことが出来る。
他にも鉱石が出るのかは気になったが、今は先に仮拠点を作る方が先だ。
採掘は後回しにして作業を続ける。
次に作るのはトイレだ。
転移してから今まではちょっと行儀が悪いが小だけを森の中でしていた。
だがその内、大もしたくなるだろうし、小だって考えなしに何度もしていれば匂い問題が出るかもしれない。
とりあえずは、適当に穴を掘りそこにすることにする。
拭くものは周囲の木から柔らかそうな葉を見繕ってきた。
一応神器で毒がないことも確認済だ。
した後は埋め立てれば匂いも一応大丈夫だろう。
これだとすぐにトイレで場所が埋まってしまうが、埋まる前に本格的な拠点、もしくはトイレ場所を作ればいいだろう。
ここまでやると暗くなってきた。
昼に腹いっぱい食べたが、そこそこ動いたこともあって腹もだいぶ減っている。
俺はかまどに火をつけ、兎肉を焼いて食べる。
明日まで持つかはわからないので、兎肉は食べきってしまう。
食事を終え腹がいっぱいになったら眠気が襲ってきた。
ので今日はこれで眠ることにする。
木の板に草を敷き詰めただけのベッドは寝心地が悪かったが、スライムを抱き枕にしたらそのぷよぷよ感が気持ちよくすぐに眠りについてしまった。
また明日からも、頑張ろう。




