02.転生初日、現状確認と水探し
えぇと……異世界に来たらまず最初に何をすればいいんだ?
俺、異世界に転生した経験なんてないから……。
とりあえずまずは……確認からか?
そう思い俺はまず神器が出せるか試してみる。
神器……出てこい!
そう念じるとあの空間と同じようにつるはしが俺の手の中に現れた。
よし……創造神器は出せる。
次は肉体。
鏡になりそうな物なんてないから手でぺたぺたと触ってみる。
いつもの自分より引き締まっているような……?
それになんだか体が軽いような気もする。
まあ特に問題はないから次。
持ち物を確認する。
持ち物は……何もない。
服装は寝間着。ゴムつきのやつ。
それとスリッパ。
スリッパは室内で使っていたが、一応外でも使えるタイプだ。
裸足で歩き回らなくていいことに安堵する。
身体に問題はない。
次に周りを確認してみる
今いる場所はなだらかな草原。
確かに街は作りやすそうか?
草原の向こうには山がある。
見たところかなり遠い。日帰りは出来なそうな距離だ。
そして両脇に森。
かなり大きな木が生えているし、草もそれなりに生えている。
そこまで確認し終えると、背後の状況も確認するために俺は振り向いた。
そうすると、そこにあった光景に俺は思わず圧倒された。
「たっ……高っかっ……!」
背後には山があった。
前方に見えていた山よりも近く充分に日帰りできそうな距離。
だが……その山はとてつもなくデカかった。
「嘘だろ……頂上全然見えないぞ……」
頂上には雲がかかり全く見通せない。
間違いなく数千メートル、下手したら一万メートル以上ありそうな威容。
常識外の光景に異世界に来たんだと強く実感させられる。
そのまま、しばらく感慨にふけっていた……が。
あまり感慨にふけってばかりもいられない。
俺は今何も持っていない身一つの状態だ。
生き残るためには水と食料を探さなければならない。
まず探すべきは水だ。
食料はなくてもしばらく持つが水はそうもいかない。
最低でも今日明日中に何とか見つけなければ……。
とはいっても水って、どう探せばいいんだ?
神様は俺に死なれると困るって言ってたから近くに水はあると思うが……。
とりあえず周りを確認した結果はだいたいこんな感じだ。
山山山山山山山山
森 草原 森
森 森
森 俺 森
森 草原 森
山山山山山山山山
そして今いる草原をざっと見まわしてみても水場は見当たらない。
じゃあ森の中か?
迷う。
迷うけど、行くしかない。
上を見る。太陽がある。
異世界の太陽がどの方向に動くかはわからないが、幸い太陽はかなり高い。すぐに日が沈むということもないはずだ。
動こう。
俺は創造神器を出して、左側の森に歩み寄っていく。
今のところ獣の声などは聞こえないが、万が一があるかもしれない。
一応は出したまま進もう。
木に傷をつけて目印にすることもできるしな。
そうして……軽く30分ほど探索したと思う。
結果は……何も見つからなかった。
木と背の低い草しかなく、水の気配なんて欠片もなかった。
まあ土が露出しているところも多かったから、探索しやすくはあったが……。
ここで気づく。
ん?思ったより疲れてないな?
思ったよりは歩きやすかったから気づかなかったが、舗装されていない森の中を歩いているんだ。もっと疲れていなければおかしいんじゃないか?
そう言えば神様が、肉体に手を加えたとか言ってたな。もしかしてそれのおかげか?
もしそうだとしたら……とてもありがたい。
神様に感謝をささげておこう。ありがとうございます!
さて、ここからどうするか……。
このまま探索範囲を広げるべきか、それとも反対側の森の方に行ってみるべきか……。
……俺は迷ったがこのまま行ってみることにする。
正解なんてわからないんだ。なら腹をくくるしかない。
とにかく悩む前に動こう。そう思い、歩き出そうとしたその時、前方の茂みが動いた。
びくっ!
声は出さなかったが身体が跳ねた。
異世界に来て初めての生物と対面することになるのかと緊張する。
というかなんだったらモンスターが出てくる可能性もあるのか?
つるはしを強く握りしめ、そのまま待っていると茂みから出てきたのは――
青みがかったぷるぷると震える生物。
スライムだった。
俺は少し気が抜ける。
スライムか……異世界の定番だな……。
スライムは作品によって敵だったり味方だったりするが、このスライムがどっちなのか、全然わからないな。
顔ないし……。
俺は敵だった場合を考え、念のためつるはしをスライムに向ける。
するとその瞬間、つるはしから何か暖かい感覚が流れ込んできた。
なんだ?この感覚は……?このスライムは……危険ではない?
どうやら、創造神器は目の前のスライムが友好的だと教えてくれているみたいだ。
なんだこれ?神器にはこんな機能が……?
俺は半信半疑でおそるおそるスライムに手を伸ばしてみる。
すると、スライムは俺の手に近づいて……ぷにぷにと頬ずり?をしてきた。
友好的……なのか?ほんとに?俺はスライムの感覚を味わいながら考え込む。
まさかこの神器、相手が危険かどうか判断できるような機能が最初から付いているのか?
確かに神様も最初は何の能力もついてない、とは言ってなかったもんな……。
もし本当にそんな機能が最初から付いているならとんでもなく有用だ。
さすがは創造神器。
俺は考え込んでいたが、スライムがぷよぷよと身体をこすりつけてくる感覚で現実に戻る。
そうだ、今はこんなこと考えている場合じゃない。
とにかく水を見つけないと……。
俺は立ち上がってスライムと別れようとした。
そうしたら。
スライムが俺の目の前でぴょんぴょん跳ね出した。
そして出てきた茂みとは違う方向に進もうとしている。
もしかして……俺についてこいって言ってるのか?
俺は悩んだ。
が、どちらにせよ水場の見当もついていないのだから着いていってみることにした。
つるはしで木に目印をつけることだけは忘れずにスライムについていく。
そのまま10分ほど歩くと、そこにたどり着いた。
ここは……洞窟か?
木々の枝葉に隠れるようにして、洞窟の入り口がそこにはあった。
スライムはその洞窟に入り、引き続きついて来いとでもいうようにぴょんぴょん跳ねている。
だが俺はどうしてもしり込みしてしまう。
いやさすがに明かりになるようなものもないのに洞窟に入るのは……。
俺がそう逡巡しているとスライムが光りだす。
え?この世界のスライムって光れるの?
俺が驚いている間もスライムは早く来いとでもいうように跳ねている。
ま、まあともかく、これで明かりが確保できた。
正直まだ怖いが、洞窟なら仮の拠点にも使えるかもしれない……中を確かめてみよう。
俺はスライムに続き洞窟の中に入る。
洞窟の中は思ったよりも広く明るかった。
壁を触ってみるが崩れる様子もない、しっかりしているようだ。
そしてそのまま俺はスライムについていき……一分もかからず奥にたどり着いた。
洞窟の一番奥には水があった。
水だ!
水が洞窟の壁から湧き出している!
出る水の量はかなり多い。
俺一人でも十分……どころかたとえ十数人いても大丈夫なくらいの量だ。
もしかしてスライムはここに案内してくれたのか?
俺がスライムの方を見ると、ぷるぷる……と、まるで肯定するように震えている。
俺は感謝を込めてスライムを撫でた。
ぷるぷるとした感触が心地いい。
スライムも喜んでいる?ようだ……。
しかし……水場を教えてもらえたのはいいが、この水が安全かどうかはわからない。
見たところは澄んでいて飲んでも問題ないように思えるが……。
俺がそう考えていると、再び創造神器からあたたかい感覚。
危険ではない……そんな感覚が伝わってくる。
え?この機能、生物以外にも使えるの?
俺はついまじまじと創造神器を見る。
当然使える……と、そう言っているかのように感じた……。
……よし。信じるぞ、創造神器!
スライムも実際友好的だったのだ。
俺は創造神器を信じることにする。
だがまずは水を飲む前に、ここを仮の拠点にしてしまおう。
水を飲んでもし万一何かあったら事だし、 暗くなる前にある程度安心できる寝床を作っておきたい。
そう決めると俺はまずある程度のスペースを確保するために、洞窟の壁につるはしを打ち付ける。
すると……
ごりっ!
……と、あきらかにつるはし一振りじゃ惚れない範囲を一気に掘ることが出来た。
え?思わず掘った場所を凝視する。
すさまじいな……危険の判定?もだが、一振りで一気に範囲掘りが出来るなんて……。
さすがは創造神器といったところか。
これならたいして手間もかからずに仮拠点を完成させられる。
俺は周りをある程度広くしたら、掘った時に出た土を入り口に盛りつけた。空気穴も忘れずに開けておく。
この時に気づいたことがある。
土を盛る時、掘って出た土を創造神器の背で押すようにして盛り付けたのだが、重さを感じることなく盛ることが出来た。
創造神器を使うのであればある程度重さを無視して動かすことが出来るようだ。
つるはし一本で動かすことのできる土の量はたかが知れているが、それでも楽になることには変わりはない。
創造神器に感謝だ。
それともう一つ。
神様が手を加えたと言っていたこの身体……だいぶ体力が増強されているようだ。
転移前の俺なら息を荒げる作業量でもたいして疲れずにこなすことが出来た。
俺の想像以上に神様は気を遣ってくれていたようだ……。
神様にも感謝の祈りを送っておく。
さて、思っていたより楽に一応の拠点が完成した。
まあほんとは簡易的なドアとか作りたかったが、今の状態ではこれが限界だ。
そういうのは本格的な拠点を作る時に取っておこう。
そして仮拠点を作り終わったとき、だいぶ喉が渇いていることに気づいた。
だいぶ夢中になってたみたいだな。
一抹の不安はあるが、湧水を飲むことにする。
創造神器は大丈夫と言っている……大丈夫、な、はずだ。
俺は覚悟を決めて、水を手ですくい飲み込む。
湧水は……かなり美味しかった。
異世界の水だからなのか? それともここの湧水が特別……?
分からないが俺はその美味しさからごくごくとお腹がタプタプになるまで飲んでしまった。
飲んでみたところ……身体に変化はないな。
本当に湧水に危険はないのかもしれない。
だが念のため今日はここで探索を終わろう。
食事がないのはきついが水は見つかった。
一晩寝てこの水に本当に問題がないようなら、次はここから食料を探しに行こう。
そう決めて俺は寝転がる。
だが洞窟の地面だ。なかなかに硬い。
そうだ。
俺はつるはしを出して横になる予定の場所を軽く掘り返す。
そうすると、それなりに柔らかい土のベッドが出来た。
改めてそこに寝転がり、俺はさっさと寝ることにする。
横になりながら考える。
現状は街をつくるには全然遠い。
だが、まずは生き残ることだ。
生活基盤も何もないのに人を増やすことはできない。
まず自分一人……いやスライムがいるから二人?……が生きていけるだけの環境を作って、それが出来たら少しずつ人を増やしていけばいい。
千里の道も一歩からってやつだ。
よし、そうと決めたら明日からも頑張ろう!
まずは自分が十分に暮らしていける環境を作る!
そう決め俺は眠ることにする。
すると、寝転がった俺の上に、ぽよん!とスライムが乗っかってきた。
もしかして、一緒に寝たいのか?
まあ、スライムには水場を教えてもらった恩があるし、好きにさせておく。
それにぷにぷにとして気持ちいいしな。
そして俺はそのままスライムと共に眠りに落ちた。
そのあと。
俺はお腹がタプタプになるまで水を飲んだせいで尿意に襲われ目を覚まし、入り口に盛った土を壊して小に行くハメになった。
壊した土の壁はもう一回盛り直して寝た。




