01.異世界転移
ふと思い立って書いてみました。よろしくお願いします。
”すべての種族の住む街を作れ”
はい?
俺の名前は築 悠真。
日々楽しみもなく、不安にさいなまれている人生を送っているさえない男だ。
俺は今日もまた、漠然とした不安に包まれるだけの一日を終え、無理やり不安を断ち切るように眠りについた。
だが……眠りについたと思ったらまるで宇宙空間のような場所に浮いていた。
生身で。
理解が追い付かないが状況は待ってくれない。
目の前にいる…人型の…銀河?
そうとしか掲揚できないような存在が直接脳内に語り掛けてくる。
”お前は死んだ”
「え?死んだ、んですか?俺?」
異常な状況で、異常な存在を前にしてつい敬語になってしまう。
”ああ。心臓麻痺でぽっくりとな”
「そう、ですか……死んだんですか、俺……」
自分でも驚くほどすんなり飲み込むことが出来た。
俺は不安やストレスで心臓が縮むような感覚もよく味わっていた。
そんな自分が心臓麻痺を起こしたと言われたら自分でもそうだろうな、と心から思う。
”ふむ……思ったよりも動揺しておらぬようだな?”
「あー……そう、です、ね。確かに、思ったよりショックは感じてません。俺の、人生……は、何もない、本当に、ただ理由もなく生きているような……そんな人生でしたから」
”……そう落ち込むこともない。今この瞬間からでも変わればよい。お前はチャンスを手にしたのだ”
「チャンス、ですか?」
”そうだ。これからお前を異世界に送る”
異世界に行けるってことか?俺もそういう小説は読んだことがある。それなら確かにチャンスかもしれない……。
「その、さっき言っていた、すべての種族を集めた街、ですか?それを……やらせようと?」
”そうだ”
街をつくる……あまり詳しくない俺でもそれがかなりの難題であることはわかる。
だが……だからと言って断るのか?
俺の人生はチャンスを逃し続けてきた人生だった。
友達を作るチャンス。経験を積むチャンス。自分を変えるチャンス。
やらない理由ばかり探し、言い訳ばかりしてきた。
だが、もし俺が本当に死んだのであれば……これが正真正銘の最後のチャンス。
最後のチャンスまで逃したくない……最後ぐらいは言い訳なんてしたくない!
「分かり、ました……!そのチャンス、ぜひつかませてください……!えぇと、神、様?」
相手の素性はわからないがこんな芸当が出来るのならまあ神様だろう。
神様に俺は腰を折り頼み込む。
”構わぬ。最初からそのつもりだった”
「ふぅ……頑張ります!……それで……その、今すぐに異世界に?」
”いや。お前には贈るものがある”
与えるもの?
”一つ。お前の肉体は蘇生したうえでこちらで手を加え異世界に送り出す。肉体そのものが贈るものだ”
肉体を蘇生して送る……つまり異世界転移ってことか。
転生だったら赤子とか子供とかで動けない時期があるかもだが、転移なら送られた瞬間から行動できるってことだな。
「その、手を加えるって具体的には?」
”お前の新たな肉体はかなり頑強にしてある。早々に死なれても困るのでな”
「それは……ありがとうございます?」
そっか……じゃあ次は心臓麻痺を起こすようなことはない……ってことかな?
”だが、頑強というだけで不死というわけでもない。過信はやめておけ”
「あっ……はい……」
まあそんなうまい話はないか。
人並みには健康にも気を遣うことにしよう。
”そしてもう一つ、お前には創造神器を与える”
「創造……神器?というのは?」
”うむ、神の力を宿した神器……これだ”
そう言うと人型銀河……神様から一つの星、いや光?がゆっくりと飛び出し、俺の体内に入ってきた。
「えぇと、これは……どうすれば?」
”神器を出そうと念じてみろ”
「は、はい」
神器……神器……出てこい!
そう念じると俺の掌に光が集まったかと思えば、その光は徐々に形を成していき、光が消えるとつるはしが俺の手に納まっていた。
「おぉ~?つる……はし?」
”創造神器は本来は様々な形態、様々な能力を持つ。だが、今の時点ではつるはしにしかなれぬ”
「え?なら、どうやったら他の形に変えられるんでしょう?」
”お前が作る街に種族が増えれば増えるほど、創造神器は新たな姿、新たな能力を使えるようになる”
「なるほど……つまりそのためにも種族を集めろってことですね?」
”その通りだ”
よし……これなら街づくりも思ったより何とかなるかもしれない。
”与えるものはこの二つだ。何か疑問があれば聞いておこう”
疑問、疑問か……。
ああ、そうだ。
「あの……種族を集めろって言いましたがその種族って……?」
もし昆虫や動物も含めた全種類と言われたらさすがに果てしないが……。
”種族とは知性を持ち意思疎通ができるものだ。モンスターは含まれない”
ああ、やっぱりモンスターとかいる世界なんだ……。
そのままもっと聞いてみる。
「あの、これから行く世界ってどんな世界なんですか?」
”それはお前自身の目で確かめるといい。ああ、一つ言っておくと、お前がこれから送られる場所は世界の果てと呼ばれている場所だ。十分に都市を作れるだけのポテンシャルはある故心配せずとも好い”
世界の果てって……それとなく物騒なネーミングだな。
でも死んでもらったら困るって言ってたし……一応安全は確保できる場所なのか?
「……分かりました。ありがとうございます…… あ!それと…異世界って言葉は通じるんですか?」
礼を言っている途中に気づく。
異世界なんだから言葉もおそらく違うだろう。コミュニケーションが出来なければいろいろな種族を集めることはできない。
”心配するな。肉体に手を加えたと言っただろう。言葉で不自由することはない”
「そうですか……。それならよかったです」
俺は安堵する。
そして他にも聞きたいことがないか考えてみたけど、これ以上はぱっと思いつかない。不安は残るが……行ってみるしかないだろう。
”それでは送るぞ。見事我が使命を果たして見せよ”
「ふぅー、はい!」
これが俺という人間に与えられた最後のチャンス。
頑張ろう。絶対に……素晴らしい街を作ってみせよう!
そう意気込むと、光が俺を包む。
まぶしさから目を開けていられず、俺は目を閉じた。
目を開けるとそこは見渡す限りの草原だった。
なだらかな草原と森、そして山。
世界の果てなんて言葉と全然違う、自然にあふれた光景。
柔らかな風が吹き、俺はつい大きく深呼吸する。
肺に新鮮な空気を思いきり取り込みながら異世界に来たという感動をかみしめて……そして思う。
街をつくるって言うのは簡単だけど……まず何をすればいいんだ?




